10修験道では生命の源そのものである山の食材を食べることも、修行の一つとされている。山菜、きのこなど、使われている食材の数は50種類以上にのぼる。●[羽黒山斎館] 鶴岡市羽黒町手向字羽黒山33●TEL.0235‐62‐2357精進料理名シェフたちを魅了する庄内の在来作物時を超え受け継がれる出羽三山の精進料理 庄内地方は山形県の日本海に面した地域。最上川が流れ、肥沃な庄内平野が広がります。ここには在来作物と呼ばれる、地域独特の伝統的な野菜が多く残っています。その数は80種を超え、「先祖代々受け継がれてきた種を絶やすわけにはいかない」と、地元の農家が大切に受け継いできました。在来作物は「生きた文化財」。独特の風味や香りを持つだけでなく、その土地の暮らしや文化を今に伝えてくれるのです。 そんな在来作物にスポットライトを当てたのが、地元の食材にこだわる鶴岡のイタリアンシェフ。最近では「酒田フレンチ」のクオリティの高さにも注目が集まり、美食家たちが続々と訪れています。滋味あふれる在来作物、山形牛、庄内浜で揚がった海の幸…庄内の「地産地消レストラン」を訪れると、ここが「食の都」と称される理由が分かるでしょう。 庄内地方の南東にそびえる月山(がっさん)・羽黒山(はぐろさん)・湯殿山(ゆどのさん)の出羽三山は、東日本最大の山岳信仰の聖地。修験道や密教の修行の場として、多くの修験者を受け入れてきました。 ここで独自に発展したのが精進料理です。山伏の自給自足の食生活に、京の文化や技法が融合し、現在の形になったと言われています。国内だけでなく、海外からも高い関心と評価を集める出羽三山の精進料理。庄内の自然と修験道の精神が育んだ、豊かな食文化の象徴とも言えるでしょう。鳥海山や出羽三山などの秀麗な山々、その中を悠然と流れる最上川や豊かな海がある山形県庄内地域。「食の都庄内」と呼ばれ、四季を通じておいしい食材の宝庫であり、豊かな食文化が育まれてきた。江戸時代に北前船の往来で栄えた湊町酒田には、当時の文化が今に残る。
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