日本海美食旅2020秋
9/32

8雪に閉ざされる中で受け継がれた食文化や暮らしの知恵 日本で一番おいしいといわれるコシヒカリの産地として有名な魚沼地域。日本でも有数の豪雪地帯であり、多いところでは毎年3〜4メートル積もる地域も。古くからこの地に住まう人々は、長く厳しい冬を乗り切るために、さまざまな工夫を凝らしてきました。 たとえば、発酵食品。春に採れた山菜、夏や秋に採れた野菜を、ひと手間もふた手間もかけて保存食に加工します。樽や蔵に棲む酵母菌や乳酸菌の力を借りて、豊かなうま味を蓄えた発酵食品は、一年を通して大切にいただきます。 そして雪解け水。魚沼には湧水がいたるところにあり、田畑を潤し、米を育てるだけでなく、美酒も育てます。旨みと香りを備えた魚沼の酒は、清らかで豊富な雪解け水あってこその味わいなのです。 この地を訪れたならぜひ見てほしいのが、大自然が作り出す、壮大な魚沼の絶景。枝折峠の雲海・滝雲は、奥只見湖で発生した大量の雲が雲海となり、やがて山を越え、まるで滝のように流れ落ちるもの。昼夜の温度差が大きい魚沼では、紅葉も美しく色づきます。破間(あぶるま)川渓谷、秋山郷、苗場山麓などでは、色鮮やかに紅葉した圧巻の渓谷美が楽しめます。魚沼に受け継がれてきた独特の食文化は、東京や京都で腕を磨いたシェフたちを魅了。雪に備えて仕込んだ保存食・発酵食。木の実やきのこなどの里山の恵み。各地に残る在来作物。地域の素材や伝統食を再構築して発信する宿やレストランも増えてきている。里山の恵みと雪国の食

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る