雲上の秘湯!野趣あふれる蓮華温泉で心と身体をリフレッシュ

2018.08.09

北アルプス(飛騨山脈)の北端近く、雪倉岳や朝日岳を望む白馬岳の山腹に、大自然のなかで入浴を楽しめる「蓮華温泉」があります。

数多くの源泉が湧き出る蓮華温泉では、効能の異なる複数の湯に浸かることができるうえ、そこから見える景色は特筆すべき素晴らしさ。心と身体のリフレッシュにはうってつけです。入ればきっと一生の思い出になる、開放感あふれる秘湯を案内します。

真冬は道路が閉鎖。蓮華温泉での入浴は季節限定のお楽しみ

  • 北アルプスの山々

蓮華温泉は、中部山岳国立公園内の標高1,475m付近にある天然温泉です。新潟県側から北アルプス山行を目指す登山家たちの拠点でもあります。

JR糸魚川駅からバスで約90分。麓の町とは10℃前後の気温差があり、真夏でも朝晩は肌寒さを感じるほどです。入浴を楽しめるのは、3月半ば~10月20日ごろまで。冬は大雪が降るため、蓮華温泉を管理しているロッジはクローズします。春先でも雪はまだ数メートル単位で残っているので、5月いっぱいは雪景色の入浴が楽しめるのだそう。

※10月20日~6月下旬までは、山道の車両通行ができません。バスの運行は7月半ばから10月半ばまで。それ以外のシーズンは栂池スキー場から山スキーで訪れることができます。
  • 定期運行バス

定期運行バスは夏から秋のみ運行。糸魚川駅・平岩駅と蓮華温泉をつなぎます。
  • 蓮華温泉ロッジ

バス停から3分ほど歩くと、蓮華温泉を管理している蓮華温泉ロッジに到着。日帰りで入浴する場合も、ここで手続きが必要です。
宿泊は一泊二食付きで9,800円、素泊まり7,800円、入湯のみの利用は、野天風呂だけであれば500円、内湯のみもしくは内湯と野天風呂を使う場合は800円を支払います。

山道を登って、個性的な4つの野天風呂を満喫

  • 野天風呂の案内版
  • 野天風呂の案内版

野天風呂があるのはロッジの裏手。登山道を登っていくと、4つの野天風呂に入ることができます。

足元は斜面でぬかるんでいることもあるので、歩きやすい靴を履き、脱ぎ着しやすい服装で行くのがおすすめです。アメニティやタオルはもちろん、脱衣所もシャワーもない所なので、必要な手回り品をお忘れなく。

森のなかに突如として現れる「黄金湯」

  • 黄金湯へと続く道
  • 黄金湯へと続く道

まずは「黄金湯」を目指して登山道へ。10分ほど歩くと、案内板が見えてきます。
このあたりでは登山客とすれ違うことも。すれ違う際には「こんにちは」と挨拶するのが山のマナーです。
  • 黄金湯

パッと視界が開け、突如として黄金の湯が現れます。
もともと上杉謙信が鉱山を掘っていた時に、偶然見つけたという蓮華温泉。
鉱夫たちが疲れを癒やすために使ったこの湯をありがたがり、「黄金」と呼んだのではないかと言われています。
  • 黄金湯

1メートルほどの深さがあるので、肩のあたりまで浸かることができます。
周囲に広がる美しい緑を眺めながら、森林浴と入浴を同時に楽しめるというなんとも贅沢な時間。
耳を澄ませば、ウグイスなど野鳥の声も聞こえてきます。

黄金の湯の泉質は、含硫黄マグネシュウム炭酸水素塩温泉という少し珍しいもの。
適応症は、切り傷やアトピー性皮膚炎、尋常性疥癬、慢性湿疹などで、皮膚に良い温泉と言われています。

野天風呂はすべて混浴ですが人が来てもすぐに気がつくため、「少し待ってください」と声をかけてお互いに利用しやすいように配慮すれば大丈夫でしょう。

仙人になった気分を味わえる!?絶景を独り占めできる「仙気の湯」

  • 珍しい高山植物
  • 珍しい高山植物

黄金の湯を出たら、さらに山道を進みましょう。足元に目をやると、食虫植物のモウセンゴケやかわいい赤い実をつけたイワハゼなど、珍しい高山植物を見つけることができます。

少しずつ空が開け、石がごろごろ転がっている道を歩いた先に現れるのが「仙気ノ湯」です。
ここは、山からの絶景を眺めながら入浴できる野天風呂で、知る人ぞ知る秘湯。
天気がよければ、正面に旭岳を見ることができます。熱めのお湯の気持ち良さと景色の素晴らしさに、思わず息が漏れます。
  • 仙気ノ湯

その昔、下腹部の痛みを「疝気(せんき)」と呼びそれに効くとされていたことから、「仙気ノ湯」と名付けられたのだとか。疝気という言葉がほとんど使われなくなった今では、「仙人の気分になれる湯」と呼ばれ、温泉フリークの間で人気が高まっています。
泉質は単純硫黄温泉(硫黄水素型)、成分が濃いからか全体的に白濁しており、硫黄の香りが強めです。
  • 仙気ノ湯

他に入湯客がいなければ、このとおり絶景を独り占め!まるで仙人が山を見渡しているかのような、非日常的な体験をすることができます。温度は少し高めなので、1〜2分もすれば汗が吹き出してきます。

リピーターのなかには、夜中にここを訪れる人もいるそう。足元は真っ暗なので注意が必要ですが、天気がいい日は満点の星空の下で入浴を楽しむことができます。

一番高いところにある緑の温泉「薬師湯」

  • 看板

仙気ノ湯から薬師湯へは、地獄谷のような景色を見ながら進んでいきます。斜面のところどころから蒸気が吹き出し、硫黄が強く香るこのエリア。蒸気や危険なガスが吹き出ているので、張られたロープを超えないようにしましょう。

薬師湯は女性優先。温泉から少し離れた場所に表示版を掛けることで、女性だけでの利用が可能になります。「温泉には入りたいけれど、混浴はちょっと……」という方もこれなら安心です。
  • 薬師湯

4つの野天風呂のうち最も高い場所にあるが、この薬師湯です。
注目すべきは色とその効能。湯は無色透明ですが、なぜかここの浴槽の中だけ岩に藻が付着しており、全体を緑色に見せています。仙気ノ湯と同じく単純硫黄温泉で、昔から「目にいい温泉」だと伝えられているのだそう。
黄金湯よりもさらに温度が低くのぼせにくいため、ゆったり浸かることができるのも魅力です。

健康増進に期待大!名湯「三国一ノ湯」

  • 三国一ノ湯

薬師湯から道を下っていくと、4つ目の野天風呂「三国一ノ湯」に到着します。
一人入ればいっぱいの湯はかなりぬるめで、まさに温泉通好み。
信州、越後、越中のなかで最も優れた温泉だという意味で、この名前が付けられました。

底にたっぷりたまる湯の花。成分が濃厚な「総湯」

  • 総湯

ロッジの中にある総湯(内湯)は男女別になっており、脱衣所、シャワー完備、リンスインシャンプーとボディソープが備え付けられています。建物の中にあるとはいえ、大きな窓から見える景色のおかげで開放感は抜群。窓を開ければ爽やかな風が吹き込みます。

温泉の熱と成分が吹き出ているところに水を当てて温泉にしているという総湯は、成分がとても濃厚。湯船の底には湯の花がたっぷりと沈殿しています。すべての浴槽は毎日丁寧に清掃されているので、この湯の花はその日のうちに溜まったものです。

泉質は単純温泉(低張性弱酸性高温泉)。やや熱めの湯に入れば緊張感がスッとほぐれ、頭の芯からリラックスできるような感覚を得られるかもしれません。

湯上がりはビールやスイカ、天然水を楽しもう!

  • スイカ

温泉でたっぷり汗をかいたら、冷たい飲み物やスイカで水分補給をしましょう。ロッジでは天然水で冷やされた缶ビールやジュース、地元で獲れたスイカ(季節限定)を販売。食堂では生ビールの提供もしています。ロッジの蛇口から出てくる天然水は、もちろん飲み放題!

絶景を見ながらキンキンに冷えた水分を取り入れれば、パーフェクトな幸福感に浸れること間違いナシです。

宿泊客に供される「山の料理」もぜひ味わいたい

  • 夕食

せっかくなら宿泊して、ロッジでの食事も楽しみたいもの。この日の夕食には、近くの山でとれたヒラタケの味噌汁やフキの味噌をのせたトンカツ、オオヨモギの天ぷらなど、山ならではの料理が並びました。みんなで一緒に食事をとるので、色々な話を聞けるのも旅の醍醐味です。
  • 薬師湯

雄大な景色を眺めながら気持ちの良い湯に浸かれば、心も身体も思いっ切りリフレッシュできるはず。最近ちょっとお疲れ気味のみなさん、次の週末は蓮華温泉に行ってみませんか。

【蓮華温泉ロッジ】
営業期間 :3月半ば~10月20日ごろまで
所在地 :中部国立公園内
電話番号:090-2524-7237(ロッジ直通)
※事務所所在地:〒941-0067 新潟県糸魚川市横町5-5-14(ロッジの住所とは異なります)
※事務所電話番号:025-552-1063(冬季問い合わせ用)
客室数:29室
宿泊定員数:150名(混雑時は相部屋)
予約方法:ロッジ直通番号へ電話
その他:トイレ(男女別)、洗面台は共用。キャンプ場あり。
交通アクセス :JR北陸新幹線糸魚川駅から糸魚川バス白馬岳登山バス(蓮華線)で90分、またはJR平岩駅から60分/JR平岩駅から車で60分(約22キロ)、カーナビでの目的地設定は不可、看板に沿って進むこと。
※糸魚川バス白馬岳登山バス(蓮華線)の運行は期間限定。詳しくはこちら

【日帰り入浴料金】
内湯と野天風呂:大人800円、子ども500円
野天風呂のみ:大人500円、子ども200円
内湯のみ:大人800円、子ども500円
利用時間:10:00〜17:00

【持ち物について】
バス停からロッジまでは足場の悪い場所があります。スーツケースではなく、バックパックやボストンバッグの使用をおすすめします。また、靴は履きなれた歩きやすいものを持参しましょう。

〈必需品〉
タオル、着替え、歯ブラシなどの洗面用具、懐中電灯、歩きやすい靴

〈あると便利なもの〉
携帯チャージャー、着脱しやすい服(夏場は綿のワンピースが活躍)、マリンシューズなど濡れた状態で履けるしっかりした靴

※蓮華温泉ロッジは山の中にあります。ゴミは持ち帰りましょう。
※ロッジは自家発電で運営されており、21時には完全消灯されます。早起きの登山客が多い場所なので消灯後は静かに過ごしましょう。
※掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。お出かけ前に電話などで直接ロッジやバス会社にご確認ください。

蓮華温泉マップ