大谷地和紙って知ってる?昔ながらの製法で“冬の間だけ”作られる和紙の工房見学と紙漉き体験に行ってきた/三条市
2025年02月19日
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旅行にいくと、その土地でしかできない体験をしたくなるものですよね。トンボ玉作り、陶芸、蕎麦打ち、藍染め、エトセトラ……。
三条市はものづくりのまちで、三条伝統のさまざまなものづくりの「技」を体験できる施設(三条鍛冶道場)や企業のワークショップも盛んです。しかし、わたしには夏頃からずーっと心待ちにしていた体験がありました。
それが「大谷地和紙工房」でできる紙漉き体験!
「大谷地和紙工房」は、三条市下田地区にある大谷地(地名)にあります。昔は農閑期のお仕事として年貢の代わりに上納していたほど盛んな産業だった大谷地和紙。実は、和紙作り体験ができるのは毎年1〜2月のたった2ヶ月間だけなんです。
この貴重な機会を逃すまいということで、早速大谷地和紙工房に行ってきました!
三条市はものづくりのまちで、三条伝統のさまざまなものづくりの「技」を体験できる施設(三条鍛冶道場)や企業のワークショップも盛んです。しかし、わたしには夏頃からずーっと心待ちにしていた体験がありました。
それが「大谷地和紙工房」でできる紙漉き体験!
「大谷地和紙工房」は、三条市下田地区にある大谷地(地名)にあります。昔は農閑期のお仕事として年貢の代わりに上納していたほど盛んな産業だった大谷地和紙。実は、和紙作り体験ができるのは毎年1〜2月のたった2ヶ月間だけなんです。
この貴重な機会を逃すまいということで、早速大谷地和紙工房に行ってきました!

「いい湯らてい」の更に奥へ・・・。
「大谷地和紙工房」は三条市街地から国道289号線をまっすぐ下田方面に進み、日帰り温泉施設「いい湯らてい」より更に奥、大谷ダム方面に向かっていきます。1月下旬、今年は案外雪が少ない方でした。
五十嵐川沿いに進んでいくと右手に建物が見えます。
五十嵐川沿いに進んでいくと右手に建物が見えます。
あら、意外とこぢんまり?
入口は「大谷地和紙工房」と書かれた車庫の裏手にありました。
入口は「大谷地和紙工房」と書かれた車庫の裏手にありました。
手書きの入口がいいですね。
わたしがお邪魔した時間はちょうど工房の職人さんたちの休憩時間でした。「大谷地和紙工房」は体験施設として整っているわけではなく、工房として稼働しつつ、紙漉き体験や見学の時間を設けてくれています。

まずは工房のなかを案内していただきました。
作った和紙を貼り付けて乾かしている最中。工房のなかはさぞ寒かろうと覚悟してきたのですが、実はすっごく温かいんです。ストーブを常に炊いていて、紙が乾きやすいようにしています。
みなさんがお茶を飲んで休憩するその真ん中には大きいストーブがありました。
みなさんがお茶を飲んで休憩するその真ん中には大きいストーブがありました。
お湯を沸かしたり、芋を焼いたりもできる便利なストーブ。年季ものです。
一般的に和紙の原料になるのは楮(こうぞ)や三俣(みつまた)という木です。日本では楮を使った和紙が一番歴史が古く、大谷地和紙もこの集落で栽培されている楮を使います(写真は大谷地和紙保存会提供)。
和紙作りのおおまかな流れは、まず原料となる木を収穫し、外皮の下にある柔らかい内皮(白皮)のみ抽出して繊維状に叩きます。そこにネリと呼ばれる液体を混ぜて四角い木枠に巻きすを敷いたもので漉き、乾燥させて完成です。
和紙作りのおおまかな流れは、まず原料となる木を収穫し、外皮の下にある柔らかい内皮(白皮)のみ抽出して繊維状に叩きます。そこにネリと呼ばれる液体を混ぜて四角い木枠に巻きすを敷いたもので漉き、乾燥させて完成です。
収穫した楮を乾燥させてから、茹でたり蒸したりする釜がこちら。
大きな円柱を被せて蒸していきます。左側が乾燥させた楮です。
楮を蒸して柔らかくなっている間に皮だけを剥き「コウズタグリ包丁」と呼ばれる包丁で皮の内側部分をそぎ取ります。
楮を蒸して柔らかくなっている間に皮だけを剥き「コウズタグリ包丁」と呼ばれる包丁で皮の内側部分をそぎ取ります。
楮の白皮だけの状態になったら、皮を繊維状にするために叩いていきます。
以前は石と工具で叩いていたそうですが、今は餅つき機のような機械が導入されてました!このガッコンガッコンという音も工房とか工場っぽさがあって風情を感じます。
繊維状になった楮を洗浄します。この日、皮を叩く作業と洗浄作業を行っていたのが「大谷地和紙保存会」会長の小柳郁郎さん。
洗浄された楮の繊維は手作業で汚れや不要なものを取り除きます。こうしてようやく、「紙素(しそ)」ができあがりました。紙素とネリを混ぜて、紙漉きを行います。

ここから、いよいよ紙漉き体験!
この木枠に巻きすを置いて挟みます。一度やり方は見せてもらえるのですが、うまくできるか緊張……。
「揺らしながら均一になるようにね」と丁寧に教えてくれます。一度掬って、少しゴミを取り除き、薄いようならもう一度くぐらせて紙を漉き……と結構感覚的にやっていきます。
「筋がいいね」と褒められて調子に乗っていたら、ものすごく薄い和紙になりかけました。やり直しはできるので、焦らなくて大丈夫!とのことです。
水が落ち切ったのを確認し、上の木枠を外したら巻きすごと横に立てかけて水分を落とします。
「筋がいいね」と褒められて調子に乗っていたら、ものすごく薄い和紙になりかけました。やり直しはできるので、焦らなくて大丈夫!とのことです。
水が落ち切ったのを確認し、上の木枠を外したら巻きすごと横に立てかけて水分を落とします。
重なっている和紙とズレないように巻きすを置きます。
ぐっと木の棒で和紙を押し付けるとするするっとはがれていくのが気持ちいい。
※写真はプロの技で巻きすから和紙をはがす金子聡さん。
※写真はプロの技で巻きすから和紙をはがす金子聡さん。
ちなみに、黄色いリボンが挟まれているのがわたしの作品です。混ざらないように目印を付けてくれます。
このあとは順番に和紙を乾かしていくため、乾燥が終わってから郵送で届けてくれるんだとか。あとから仕上がりが分かるのも楽しみですね。
このあとは順番に和紙を乾かしていくため、乾燥が終わってから郵送で届けてくれるんだとか。あとから仕上がりが分かるのも楽しみですね。
ちなみに、後日届いた和紙がこちら!風合いがとっても素敵。我ながらなかなか良いじゃないですか。はがきサイズに加工するなど、自分で使い道を工夫できるのも良いですね。

集落で復活させた大谷地和紙の特徴は“丈夫さ”
大谷地和紙の起源は定かではないものの、古くは江戸時代に村松藩の御用紙として上納していた記録があるそうです。昭和初期には農閑期の副業として栄えた産業だったのだとか。
大谷地和紙の特徴は“丈夫さ”で、「厚みがあってちょっとやそっとじゃ破れないと評判だった」と集落の人たちは話します。
昭和30年代に一度姿を消した大谷地和紙が復活したのは2008年。「大谷地和紙保存会」は当時の大谷地の集落全50戸が参加して発足されました。
本格的な和紙作りは楮を刈り取る11月からですが、6月には「芽かき」という作業を行います。これは、幹から伸びる脇芽を摘んでいく作業で、芽かきをしっかりしないと枝だらけになるため刈り取りやその後の作業が大変になるのです。ほかにも肥料の散布や草刈りなど、成長した楮を刈り取るまでの準備も、保存会である大谷地集落のみんなで行っています。
大谷地和紙は大量生産ができません。だからこそ、ひとつひとつの出来を大切にしています。
大谷地和紙の特徴は“丈夫さ”で、「厚みがあってちょっとやそっとじゃ破れないと評判だった」と集落の人たちは話します。
昭和30年代に一度姿を消した大谷地和紙が復活したのは2008年。「大谷地和紙保存会」は当時の大谷地の集落全50戸が参加して発足されました。
本格的な和紙作りは楮を刈り取る11月からですが、6月には「芽かき」という作業を行います。これは、幹から伸びる脇芽を摘んでいく作業で、芽かきをしっかりしないと枝だらけになるため刈り取りやその後の作業が大変になるのです。ほかにも肥料の散布や草刈りなど、成長した楮を刈り取るまでの準備も、保存会である大谷地集落のみんなで行っています。
大谷地和紙は大量生産ができません。だからこそ、ひとつひとつの出来を大切にしています。
これは和紙作りの職人である曽根さんが大谷地和紙を使って作ったランタン。味わいがあって素敵です。

大谷地和紙の購入は道の駅で!
体験当日は持って帰れない大谷地和紙ですが、「道の駅 漢学の里しただ」や「いい湯らてい」で購入することができます。
はがきサイズは5枚300円、色紙サイズは2枚で400円でした。
冬の三条市下田はお楽しみスポットがたくさんあります。この時期ならではのスポットは、白鳥の郷公苑。
白鳥はお出かけ前の早朝と戻ってきた夕暮れがいちばん賑やかなので、紙漉き体験に行く前に立ち寄るのがおすすめです。
帰りはいい湯らていや嵐渓荘で、日帰り温泉を楽しんではいかがでしょうか?ゆっくり、冬の下田郷を満喫してください。
大谷地和紙工房
住所:新潟県三条市大谷地
【体験メニュー】
■大谷地和紙の紙漉き体験
体験料金:はがきサイズ4枚 1,000円/賞状サイズ2枚 1,000円
※完成した和紙は後日郵送します。
体験時間:1時間
体験可能期間:1月~2月(月・金除く)
1回の体験人数:3~10人程度
服装:腕まくりできる服装、エプロン、タオル
和紙に押し花等のかざりを入れたい場合は持参
【体験・見学申込、問い合わせ先】
三条市 経済部 営業戦略室
電話:0256⁻34⁻5603
FAX:0256-36-5111
