山の中なのにしょっぱい温泉!?日本秘湯を守る会の温泉宿「嵐渓荘」でちょこっと贅沢な日帰りプランを満喫/三条市


2024年11月15日 185ビュー
お気に入りの場所を見つけたとき、「この素晴らしさを広めたい!」という思いと同時に「だれにも知られたくない……」と大事に隠しておきたい気持ちになることがあります。

日々の仕事が立て込み、気分転換や癒しを食や温泉に求めることはみなさま往々にしてあろうかと思います。わたし自身、疲労の蓄積がついにピークを迎えたため、ちょっと贅沢してやろうじゃないか!と、わくわくしながら日帰り温泉に行ってきました。

訪れたのは新潟県内でも有名な温泉宿「嵐渓荘」。ここはまさに、知ってほしいけど教えたくない、素晴らしい温泉宿なんです。

日帰り入浴と事前予約でランチが楽しめる

せっかく日帰り温泉に行くなら、贅沢ついでに旅館の美味しい食事も楽しみたいものです。嵐渓荘では、予約をしておくことで会席料理や定食など山の幸を堪能できます。今回は嵐渓荘自慢の山菜料理や鮎の塩焼きがセットになった『山菜定食』をいただきました。

焼き魚は鮎の塩焼き。串で立てて焼いているそうで、臭みもなく香ばしい。丁寧に味付けされたわらびの煮物やぜんまいが美味しく、天ぷらの衣がさくさくで、ぺろっと平らげてしまいました。
わたしは今回ロビーでいただきましたが、客室をとって寛ぎながらお昼を楽しむこともできます(利用時間11時〜14時半)。

※客室予約は1名からOK。会席料理をオーダーする場合は、ラウンジでの提供ができないため、客室予約必須です。軽食・定食利用の場合も客室予約は可能だそうです。
ロビーには嵐渓荘の源泉を使ったほうじ茶が準備されています。しっかり塩味を感じるのに不思議とまろやかで美味しい。ついつい飲み過ぎてしまいそうになります。

登録有形文化財に指定された歴史ある建物

ロビーのある3階建ての「嵐渓荘緑風館」は、2012年に登録有形文化財に指定されました。建築は1933年頃といわれ非常に歴史のある建物で、外から眺めても趣が感じられます。
このまま少し外を散策してみました。

庭の景色と川の流れ

嵐渓荘のシンボルとなっている水車です。庭の敷地内には用水が流れていて、この水は守門川から引いているのだとか。用水は3〜4km先の田んぼまで続いています。この地域の美味しいお米を作るための、貴重な灌漑用水の役割を担っています。
正面玄関を背にして右手に守門川。景色をゆったりと楽しめるようにベンチやテーブルが置いてあります。柔らかい秋風に揺られた木々の音と、守門川の瀬音が疲れた心を癒してくれました。

大浴場と“山の湯”のしょっぱい温泉

温泉は大浴場のほかに、“山の湯”の2種類のお風呂『石湯』『深湯』が楽しめます。大浴場は11時から14時半まで(清掃時間を除く)入浴可能です。

山の湯は山手の少し高台に位置するお風呂です。正面玄関からロビー脇の階段を進み、長い廊下をのんびり歩きます。
中庭の景色が素晴らしいんですよね。紅葉の季節もさぞ美しかろうと想像ができます。
山の湯に向かう、半分外の廊下です。ここでも川のせせらぎが心地よい。
廊下から見える外の水車です。映画のワンシーンのよう。
山の湯の入口。手前が深湯、奥が石湯ですがわたしが訪れた時間帯(13時~15時半)は深湯が男性、女性は石湯を利用できました。
こちらが山の湯(石湯)の露天風呂。特別に許可をいただき、写真を撮らせていただきました。ありがとうございます!
無色透明でぬるめの温度。
こちらは深湯の露天風呂。なんと、立ち湯です。肩までしっかり浸かることができるので、冬の寒い日は特に良さそう。

わたしも温泉を楽しみましたが、肌あたりが非常になめらか!少しお湯が肌にまとわりつく感じがあり、それが心地よくて堪りません。あとは、何と言っても嵐渓荘のお湯はミネラルが豊富でかなりしょっぱいのが特徴です。

宿泊の際に朝食で出される温泉粥は、出汁やほかの味付けをせず、この源泉だけで炊いて提供される嵐渓荘の名物だそうです。昆布茶のような旨味のある味わいの源泉で炊いた温泉粥……ぜひ食べたい……!

嵐渓荘の源泉湧出温度は16.5℃の冷鉱泉で、入浴に適した温度まで加温しています。湯の成分としては「療養泉」に該当するとのこと。ナトリウム塩化物冷鉱泉は切り傷、やけど、冷え症などによく効くそうです。特に皮膚への効能が高く、あせもの対策にもいいのだとか。

源泉をベースにした化粧品・美容液もあるため、ぜひお手に取ってみてください。
温泉を楽しんだあとは、こちらの湯上り処でまったり。中庭に面したスペースで庭を眺めながら穏やかに過ごせます。

謎の集団、日本秘湯を守る会とは?

嵐渓荘の各所にぶら下がっている提灯「日本秘湯を守る会」。温泉好きにとって今や聞き慣れた言葉である秘湯ですが、1975年4月、秘湯という造語を生み出したのが「日本秘湯を守る会」なのだそうです。

バスも通らないような交通の不便な小さな山の温泉宿33軒が集まり、創立されました。

“日本秘湯を守る会は、地球の恵みであり、限りある地下資源である温泉に感謝することを忘れることなく、その利用と管理に充分な配慮をし、枯渇させることなく守り続けるために自然環境の保持・保全に真摯に取り組んで行く宿の集団”とのことです。(日本秘湯を守る会ホームページ挨拶より抜粋)
秘湯の湯巡りスタンプ帳があり、会員宿に宿泊するとスタンプをもらえます。

集めたスタンプが10個になると、スタンプ帳に押印した中から思い出の宿に1泊無料で招待していただけるのだとか。

新潟県内では現在10軒の秘湯宿が登録されています。すべて網羅して1泊無料を目指すのも楽しそうですね!

新潟県央ピンクリボンの宿

嵐渓荘は新潟県央ピンクリボンの宿です。入浴カバーの貸し出しを行っており、必要な方にいつでも貸し出しできる体制を整えています。女性の脱衣所には、乳がんの触診方法の掲示もされています。

担当者の大竹由香利さんは、ピンクリボン加盟について「以前より乳がんを患われる方がとても多いと感じておりましたが、一番のきっかけは知人が乳がんで亡くなったことです。手術の技術向上もあるのでしょうか、入浴カバーの貸し出し依頼は多くありませんが加盟店となっているということで、少しでも安心感をもっていただけたらと思い、また早期発見の呼びかけで、多くの人に意識をもっていただけたらと願っています」と話してくださいました。

ロビーには多様な種類の書籍とレコード

ロビーには、背表紙を眺めているだけでも飽きないような本たちと、たくさんのレコードが置かれています。

本棚の書籍はすべて館主の私物なんだとか。読んでみたい本が何冊もありました。ほうじ茶を飲みながらレコードを聴いたり、本を読んだり、庭の景色を眺めたりするお風呂上りの時間……。贅沢ですね。

下田地域の豊かな自然を感じて

嵐渓荘の抜群の泉質を日帰り入浴で楽しんだ上に、丁寧に調理された定食をいただき非常に満足しました。なんといっても美しい景色と川のせせらぎ、秋の虫の音に癒された~~。

定食や昼会席を予約して、たまにはのんびりと日帰りプチ旅行を満喫してはいかがでしょうか。また、これから本格的な紅葉シーズンと雪見の時期に入っていきます。人気のお宿のため、宿泊予約は早めがおすすめです。
嵐渓荘のある三条市下田地区と隣町の福島県只見町は、約20㎞におよぶ峠の街道で結ばれています。国道289号線「八十里越」と呼ばれるその街道は長らく自動車通行不能区間となっていましたが、2026年頃に開通の目途が立ちました。

下田地域の皆さんがずっと待ち望んでいた八十里越の開通。新潟県と福島県会津地域の行き来にかかる時間が大幅に短くなることで、交流の活発化が見込まれます。人や物の流れが増え、より一層観光の賑わいが期待できます。

開通自体はまだ先の話ではありますが、雪の季節には毎年白鳥の飛来もあり、優雅なその姿を眺めることができますよ。嵐渓荘に立ち寄る際は、下田地域の周辺の観光もぜひ楽しんでいってください。
越後長野温泉 嵐渓荘

越後長野温泉 嵐渓荘

住所:新潟県三条市長野1450
電話:0256-47-2211

日帰り利用
■入浴・入館料(税込)
大人:1,000円
小人:700円※フェイスタオルの貸出含む

入浴回数券(大人用・6枚):5,000円

■利用時間
大浴場 11時~14時半

山の湯
《 石湯 》11時~12時(殿方)/13時~15時半(ご婦人)
《 深湯 》11時~12時(ご婦人)/13時~15時半(殿方)

越後長野温泉 嵐渓荘

この記事を書いた人
井高あゆみ

新潟県在住のフリーライター。「目の前のことを全力で楽しむ」好奇心旺盛なインドア人間 。店舗や企業のインタビュー・取材を中心に活動中。お笑いと爬虫類をこよなく愛する。