人気施設の設計者「建築家 神田陸」を直撃!本人が語る建物の5つのストーリー/新潟市・阿賀野市・三条市


2024年02月08日 849ビュー
こんにちは、大工の娘、小柴ぱせりです。
ここのところ立て続けにオープンする気になる施設はどうやら設計者が同じらしい。というわけで、建築大好きの私が、建築家 神田 陸さんのお話を聞きながらお店や宿泊施設を紹介します!
フルーツランド 白根グレープガーデン/新潟市南区

まぐろ食堂 蔵/フルーツフォレスト/マチーシャプロジェクト/新潟市秋葉区

環翠楼 臨泉閣/阿賀野市

ITOYA CAFE/三条市

(建築写真提供:㈲神田陸建築設計事務所)

フルーツランド 白根グレープガーデン

私にとって白根のぶどう園といえばフルーツランド 白根グレープガーデン!
幼い頃、親と一緒にお弁当持って楽しんだ思い出のあるところです。
開園以来約50年が経つ歴史ある果樹園ですね。
--入場無料持ち込みOK、ふらっと行っても、何も買わなくてもいい。季節のフルーツ見ているだけでもいい公園のような場所です。果物に特化した全天候型の建物を作りたいと依頼が来ました。

 --ここはジェラート、ドライフルーツなど収穫したものを全部使うフードロスゼロの果樹園。加工場で作ったものをそのまま販売できるようにし、空調やトイレを整備、利用者に優しい施設にしたい。ということで、建物の半分は加工場、半分はカフェという施設を設計しました。
--見せ場としては、自然となじませて内と外を繋げたところ。室内と屋外を一体に感じるような、あいまいに繋がっているようなところをめざしました。
親がジェラートを食べている脇で子どもが遊び回っても安心な空間を創り、コロナ禍だったので感染症対策として、室内と屋外を使い分けるお客様に配慮しました。
 
照明がかわいいですね。
 
--これはぶどうの房をイメージしています。
--屋根が長く大きく出ていて、軒下の東屋のようなエリアと外が融合して広く感じられます。屋根の下は人気ですね。
 
--内と外を隔てる窓は全部開放することができます。けれど全開放できるのは日本の四季のうちほんの数日で、でもその数日に出会うところに特別感がありますよね。
--贅沢さ高級感を出したいために建物に黒を使いました。
金銭的にというわけではなく、体験や経験ができるという価値観を表現しました。
外構工事はアプローチと植栽を果樹園さんが担当し、一緒に作りあげた一体感がありました。
 
--四季に応じておもしろい感じが出てくるんですよ。雪は雪でいいし、春は春で当然いいし、夏の暑いとき避難場所になる。収穫と色づく秋もいい。
それが日本の建物の元々の姿だと思うんです。日本の家も庭を見せていた、たぶんあれは四季を楽しめるようにそうしたんじゃないかなと思います。
 
ジェラートを食べながら、四季折々のテラスの景色と風も味わってみてください。
フルーツランド 白根グレープガーデン

フルーツランド 白根グレープガーデン

住所:新潟市南区鷲ノ木新田573
TEL:0120-362-558
入場無料
開園時間
11月〜6月10:00〜17:00(最終受付:16:30)
7月〜10月9:00〜17:00(最終受付:16:30)
大型無料駐車場 /全天候型休憩センターあり

まぐろ食堂 蔵/フルーツフォレスト/マチーシャプロジェクト

マチーシャプロジェクトとは、新潟市秋葉区の新津駅前にある地元診療所高塚医院の先生に相談を受けた敷地約5000㎡の一角の開発です。
 
高塚先生の、
『医院のある場所を街に活かしてもらい、街に貢献したい。これまでは医者として、病気の人とかお年寄りを相手にしてきた。今度はこれからの世代に、なにか活用できるものを提案して欲しい』
という言葉に、地域の馬場工務所が企画・施工、神田さんが設計したチーム「sheep」で請け負った仕事です。
「sheep」は新津本町中央公園を中心とするエリアの八帖二間、おばな家本店、私が以前取材した時々カフェを企画から設計施工しています。
以前の医院の森を訪ねたことがあり、前の建物の写真がありました!
--高塚医院の敷地内には蔵と倉庫がありました。これを壊して新しいものを建てるのは簡単だけど、街に埋もれる財産を最後まで使い切りたい。新築は誰でもできるでしょ。古い建物を施主の気持ちや物語も含めて活かせるのは僕らが絶対うまいはずだ。と、長い時間話し合って、この森を中心に、森が主役で企画を進めました。
 
--前の建物の中には町歌舞伎の道具など古くても価値のあるようなものが残っていて、掃除や整理から始めました。施主と工事関係者と、みんなで一緒にやったので団結力は高まりますね。ほかにも森の中でお茶席や焚き火会などの企画を実施したり、3年ほど前から計画をあたためていました。
--前の建物を2棟リノベーションしました。
「まぐろ食堂 蔵」は蔵を利用。蔵は残さないといけないと思い、客席を増やすのに増築しました。
--もとからあった建物を利用し、床から白壁の部分は塗り直しました。カウンター背面には鳥の巣箱を模した飾り棚を配置しました。そこから上の天井部分は床材を剥がして、建物構造の梁を見せています。床材は増築部分の床に利用しています。
 
材料も利用したんですね!
そういえば土蔵に穴を開けるって、大変じゃなかったですか?
 
--蔵を熟知した大工がいましたので、彼を信頼して開口を作る工事をしました。
--増築部分は窓から森の木漏れ日が入るようになっています。窓には適当に木材を入れているわけではなく、太陽高度を割り出して決める。森の木々も使って視線や日差しをコントロールしている。
デザインは機能を持たない限りただの飾りで、機能を持つことによって実用化されます。もともと斜めの材料は筋交いで、建築における補強材ですけどね。
--もう1棟、「フルーツフォレスト」は倉庫を、基本構造はなにも変えずにリノベーションしています。
木の中に溶け込んでいるような感じで軽井沢のような雰囲気ですよね。
フルーツフォレストの建物の外側には鳥の巣箱を、無機質な照明器具を覆い隠すために配置しています。
 
森の中の2棟は鳥の巣が共通のデザインだとか。
--室内の壁に木毛板を利用したのは、鳥の巣の中というやわらかい雰囲気にしたかったためです。
床もデザインの統一感を出すため、木材をパッチワークみたいな組木にして使用しました。
2階の窓を開けきることができるので、内と外が繋がる特別な時期を体験できます。
隣り合っていても少し違う、でも統一感のある建物を見比べられる楽しさがあります。森で鳥の声を聞いてみてください。
まぐろ食堂 蔵

まぐろ食堂 蔵

住所:新潟市秋葉区新津本町1丁目7−22 マチーシャフードコート内
TEL:0250-47-3018
営業時間11:00~15:00(日曜営業)
定休日木曜日、第3水曜日

フルーツフォレスト

フルーツフォレスト

住所:新潟市秋葉区新津本町1丁目7−22 マチーシャの杜(髙塚医院敷地内)
TEL:0250-25-7298
営業時間11:00~17:00(Lo16:30)
定休日木曜日、第3水曜日

環翠楼 臨泉閣

次は完成見学会に行けなかったのが悔しい、村杉温泉環翠楼の離れ 臨泉閣です。
--臨泉閣は明治に建った登録有形文化財です。この離れは所有する山から材料を取ってきて建物を作っています。臨泉閣は床柱も銘木ではなく、床の間の板もシンプル、とても素朴な建物です。それがまわりの環境とあいまって馴染んで見えます。自然治癒力に働きかける日本トップのラジウム温泉の、以前は湯治場として利用されていた建物です。
--入り口の土間を入ってすぐのところに、簡単なキッチン機能もあるカウンターバーを設置しました。調理器具、食器類も完備。いたれりつくせりのもてなしは環翠楼本棟で、離れ臨泉閣は、持ち込み可、少し大きい声で夜まで語らえる「どうぞご自由に」というおもてなし。だから1棟貸し切りで提供します。
 
--これぞ環翠楼というシンボルを作ってほしいという依頼でした。現地に行って気づいたのは滝の音。施主さんには当たり前に聞こえる音になっていて気にしていなかった様子なので、この滝をシンボルに使うことにしました。滝を眺めながら入れる、滝を活かしたお風呂を作ったのです。
わあああ素敵。
 
--環翠楼には露天風呂がなかったので、窓を引き込みで全開するようにして半露天風呂のような設計にしました。滝の音が聞こえるように、お風呂の湯口の音が聞こえないよう湧き出る泉のように工夫しました。
--環翠楼は床が畳敷きでスリッパを使用しない。だけど臨泉閣の二階ベッドルームはフローリングのため、肌触りが温かい桐を床に使いました。ベッドを設置するため床の間の障子を少し切り詰めたくらいで、建具などは補修しただけ。特に新しいものを使ってはいないです。
 
写真は新緑だけど、四季すべてが見どころです。ぜひ利用してみたいところですね。
環翠楼

環翠楼

国登録有形文化財 一棟貸切 臨泉閣 -RINSENKAKU-

住所:阿賀野市村杉温泉4527
TEL:0250-66-2131
駐車場 有り 40台 無料
チェックイン 15:00(最終チェックイン18:00)
チェックアウト 10:00

ITOYA CAFE

最後はITOYA CAFE!こちらの現場は神田さんと一緒に伺いました。
建築写真で見ると大きく見えますが、実際に行くとコンパクトにギュッとまとまっている感じです。
 
--はじめはちっちゃい建物が集合しているような施設を提案したんですが、オペレーションや空調管理など不安要素があったので、印象を変えないで、ぎゅぎゅっとくっついている建物にしました。
後方にある独立した棟は当初の名残で、1棟くらいそうした方がいいよねって、離れを作りました。レンタルルームとしても活用されています。2階は個室利用できます。
2017 第20回木材活用コンクール木材活用特別賞受賞
2017 ウッドデザイン賞2017入賞
2018 関東甲信越建築士会優良建築物受賞
--パパとママが初めてデートしたんだ。って子どもに伝える。そういうようなカフェを作ってほしいという依頼でした。
ポーランド製のポーリッシュポタリーのカップと、珈琲入りのサイフォン式の装置がそのままテーブルにきました。斬新だ!社長は仕事上、海外経験が多くカフェ好き。家具も海外で買い集めたものを利用しているそうです。もちろんカップのポーリッシュポタリーも社長のこだわり。
--仕事のときは、関係ないようないろんなことを聞くんですよ、そんなことまでを聞く?っていうところを聞くんです。それって設計に影響してくるんですよ。
意外と段差が多い店内ですね。カフェの中は上がって下がって、そして階段席。テーブル席もあればカウンター席もあって、個室みたいなところもあります。
 
--今日はこっちの席、明日はあそこの席というように、距離感の違う席を楽しんでもらいたいですね。
森が取り囲んでいるので、どの席もいい。
--バリアフリーの建物が多い中、社長がバリアあってもいいんじゃないかって考えでね。
以前テレビで見たんですけど、過疎化の進む小学校に車椅子の生徒が来ることになった。でもその子のためにエレベーター作るとかいう予算はない。そのままの校舎でどういう事が起きたかっていうと、先生がその子を抱っこして、生徒が車椅子を押してくれたり、段差があってもみんなが助けてくれるようになったんです。
 
--バリアがあることで積極的な人間のコミュニケーションが生まれる。整然と作っちゃったら使い方や想像を制限されたりしますけど、乱暴に上がり下がりを設計しても人って使いこなしてくれるんですよ。設計者の発想っていうのはほんの一部で、あとは使う側の工夫だとか発想だとかいろんなアイデアが出てくるんです。
だからリノベーションの面白みっていうのも、低い天井のお部屋がなんか落ち着くとか、そういう利用制限の発想にある気がしますね。
 
天井が三角折りの折り紙みたいで素敵ですね。
--なんでこういう屋根形状かというと、周りが森なので、1か所に雪が落ちないように複雑な形状になっています。屋根勾配がそのまま天井として見えています。
この建物には表裏がなく、どの角度から見てもいいし、中もいい。
 
神田さんとお仕事するのは楽しそうですね。私も自宅作るときに頼みたかったなあ。
ITOYA CAFEの周りには、神田さんの建築物が他に2つあります。
保育園みたいな歯医者さんのこもれびの森歯科医院と、カフェを思わせる家族葬施設花てらすです。
施工写真はHPをどうぞ。
ITOYA CAFE(イトウヤカフェ)

ITOYA CAFE(イトウヤカフェ)

住所:三条市荒町2-19-10
電話:0256-47-1741
営業時間:10:00〜18:30 (ラストオーダー18:00) 日曜営業
ランチタイム 11:30〜14:00
定休日:月曜日(祝日の場合は営業)
席数:50席
駐車場:13台(共有)

有限会社神田陸建築設計事務所

有限会社神田陸建築設計事務所

住所:新潟市秋葉区新津本町4-13-28
TEL:0250-47-4901

「建築家 神田陸」の建物探訪

この記事を書いた人
小柴ぱせり

72年新潟市生まれ、99年結婚、夫婦二人暮らし。イラスト描きます。 読書、創作、映画、音楽、演劇、着物など、文化系多趣味で、ちょっと?鉄子。企画運営好き。 15年-18年は信州暮らし。
https://314musubiya.9nzai.net/