山奥に広がる隠れスポット!伝説の池に咲くカキツバタ/長岡市


2025年06月02日 618ビュー

大積谷内池のカキツバタ

細い山道を登り切った先に、紫色の絵具を落としたようなグラデーションに染まった池が目の前に現れます。その向こうには赤い屋根の、昔話に出てくる正直者のおじいさんとおばあさんが慎ましく暮らしていそうな古民家。絵に描いたような風景を目の前に、思わず深呼吸をしたくなります。この、1町8反(約17,851㎡)の谷内池を大きな布でふわり覆うように咲くカキツバタの群生は、知る人ぞ知る穴場スポットなのです。また、この池には大蛇や赤牛、若い男に化ける池の主の不思議な伝説が語り継がれています。大蛇と聞いただけで怖そうな伝説が思い浮かびますが、決してそのような話ではなく、私個人の感想ですが、寂しがりやの池の主が集落の人と仲良くなりたくて近づいたら誤解されてしまったのでしょうか。不器用な池の主が愛おしくなるような優しい伝説です。

大積谷内池かきつばたとは

その昔、この広く深い池で昭和40年代まで水田として耕作が行われていました。やがて田んぼとして使わなくなりカキツバタが自然に増え、今のような素晴らしい群生地に育ったそうです。池の中央に浮島が数か所あり、その下から冷たい水が湧いていて、一年を通じて水位が一定に保たれるという谷内池の環境がカキツバタの自生に最適なのでしょう。それにしてもこの深い池での農作業はさぞご苦労されたに違いありませんが、田植えなどの農作業の日を決め、前日から農作業終了後の慰労会用のごちそうをたくさん作り、どの家も総動員で集落が一丸となり一日がかりで終わらせるといった大掛かりで大変な農作業もお祭り騒ぎのように楽しむ姿勢は、今を生きる私達も見習いたいものです。
カキツバタの花言葉は「幸せは必ず来る」です。カキツバタは漢字で「燕子花」と書かれることもあるように、ツバメの姿に似ていると考えられていました。ツバメは幸運を運んでくれる縁起の良い鳥ということから「幸せは必ず来る」が、カキツバタの花言葉になったと言われています。ここでは時々、白いカキツバタの姿も見られます。白いカキツバタは「昨年のユキ」(コゾのユキ)と呼ばれとても珍しく、特に縁起が良いそうですので是非探してみてください。

群生地はどこにあるの?

大積谷内池のカキツバタ群生地は、関越自動車道「長岡IC」から、国道8号線を柏崎方面へ約9キロ進みます。大積3丁目に入ると間もなくカキツバタの時期だけに立てられる手作りの案内看板が出てきますので、ここから山道に入ります。
このような山道の先に本当に群生地があるのか不安になりますが、更に案内看板が現れホッとします。池を管理されている皆様、私達を安心させてくれる位置に看板設営ありがとうございます。
谷内池の周辺は一周できますので散策をするのもお勧めです。この辺りは水梨城のふもとに位置していたことから、南北朝時代には根小屋と呼ばれる家臣たちが暮らす集落がありました。今はもちろんその面影は何も残っていませんが、谷内池の周辺には石仏や稲荷祠などがひっそりと建っています。遊歩道は土地の所有者の方々によってきれいに整備されていますが、かつて谷内池の主だった伝説の赤牛が寝そべっていそうな雰囲気です。

水梨不動尊

谷内池を昔から見守り続けている、不動明王です。湧水の神として清い水で目を洗うと目の病が治るという「目の神」だそうです。清い水で病が治ることから伝染病撃退(新型コロナウイルス感染症など)の神様でもあります。一般的には、出世・昇進・商売繁盛・交通・家内安全などオールマイティーな神様のようです。この神様のご利益のおかげで谷内池の水が清らかでカキツバタが自生する最適な環境を保っているのかもしれません。どうかこれからも変わらず、毎年カキツバタが群生している姿を私たちに見せてくれますように!
越路など各所へ抜ける峠の途中に位置する谷内池周辺は、旅人が旅の無事を祈り、峠越えをしていたと思われる石仏がたくさんあります。小さな石仏ですがたくさんの旅人を見守ってきたのでしょう。静寂で澄んだ空気の中、素朴な美しさを秘めた姿に心が洗われるようです。

大積のカキツバタを守る会

今回ご案内いただきました大積カキツバタを守る会の会長、脇屋雄介さんです。大積カキツバタは、大積地域にお住いの方とその土地の所有者の方々で「大積のカキツバタを守る会」を結成し活動しています。周辺の草を刈り、カキツバタに有害な外来種を除去したり、この自然を守り子孫に残したい!という強い思いで大切に守ってきたと仰る脇屋さんのお話は地域への愛が溢れています。
私有地であるにも関わらず、多くの皆様に見ていただきたいと脇屋さん。ただし観光地ではないのでトイレもゴミ箱も何もありません。皆様にお願いです。ゴミを捨てたり、池の水を汚すような事は絶対にやめてください。皆様がマナーを守っていただく事がこの地を守り、これからもずっと群生地を多くの皆様から見ていただける事に繋がりますのでどうかお願いいたします。
「大きく幸せを積む、この大積の地に自然に群生しているカキツバタと、時間の止まった空間を楽しんでください。」と力のこもったお言葉をいただきました。
カキツバタ群生地

カキツバタ群生地

●住所:新潟県長岡市大積3丁目
●問合せ先:花の開花状況は長岡観光コンベンション協会へお尋ねください。℡:0258-32-1187
※私有地ですのでマナーを守ってお楽しみください。

蔵造りのカフェ・雪甘月

帰りは来た道を戻り、国道8号線沿いにあるお気に入りの江口だんご本店で休憩します。古民家の佇まいが落ち着く江口だんご本店では、お土産のお団子や和菓子を購入したり2階の喫茶コーナーで食事やお茶が楽しめますが、お楽しみはここだけではありません。お店の奥には洋菓子を提供する隠れ家的なカフェでがあるのです。お店の中を奥まで進むとおしゃれな看板が営業中であることをお知らせしてくれています。
お店の奥にある蔵造りのカフェ!今回の旅のテーマである隠れスポットめぐりにぴったりなカフェです。落ち着いた雰囲気に期待が膨らみます。
蔵造りの雰囲気の中でいただくお茶も捨てがたかったのですが、お天気の良さに誘われオープンテラスへ!手作りのロールケーキやシュークリームが並んだケースの前に立ち尽くし、店員さんをお待たせしながらどれにしようか頭はパニックです。いっその事全部注文しちゃう?と意気込む気持ちを抑えプリンと村上紅茶を選びます。村上紅茶は一人分の紅茶が、小ぶりで丸みのある可愛いガラスのポットで提供されます。「このガラスポット欲しい!」と思う人は私だけではないはずです!緑豊かな里山の風景に心癒されながら、懐かしく優しい味のするプリンを味わいます。私好みの少し固めなプリンは卵の味が濃厚で美味しく、どんぶりで提供されたとしても絶対に食べきる自信があります。プリンの器の底が削れてしまうのではないかというくらいスプーンですくい、きれいにいただきました。
新緑が目にまぶしい5月の長岡。お庭や里山の風景を眺めながら休憩していると視力まで上がってきそうです。自然に包まれながら美味しい紅茶とプリン。なんて贅沢で穏やかな時間なのでしょう。帰りがけに大好きな5色お団子をお土産に購入するのを忘れてはなりません。
江口だんご本店

江口だんご本店

●住所:新潟県長岡市宮本東方町52-1
●問合せ先:℡ 0258-47-4105 雪甘月 ℡ 0258-47-4122
●営業時間:販売 9時~18時 甘味喫茶 10時~17時30分(ラストオーダー17時)  雪甘月 10時~17時(ラストオーダー16時30分)
●定休日:雪甘月は毎週水曜日(祝日は営業)その他の定休日は元日のみ

お出かけが楽しくなる季節になりましたね。皆さんも時間の止まった空間でゆったりとカキツバタを眺めてみませんか。きっと心から癒されるはずです。目まぐるしく変わるこの時代に、今の状態のままを守り続ける事がどんなに難しく貴重な事なのか、谷内池で昔と変わる事なく誇らしげに咲くカキツバタを見て改めて感じさせられました。この群生地は人の手を加えることなく自然な状態で毎年咲いてくれます。そして脇屋様を始めとする大積カキツバタを守る会の皆様も群生地が変化することを決して望んでいません。大積地域の宝としてこのままの状態で子孫に残していきたい。その思いに触れた時、変わらないものがある安心感に心が満たされ、清々しい気持ちでいっぱいになりました。どうかお越しになる皆様も、地域の思いを感じていただきゆっくりご鑑賞ください。
 
この記事を書いた人
岩内明子

「地元観光協会で働く主婦。日本酒と料理が好き。のんびり屋で動きが鈍く腰が重いタイプだが、面白いネタや美味しいネタには即効飛びつき直ぐに行ってみたくなる。」