豊かな食文化を堪能。城下町・村上の鮭料理 「料亭 能登新」/村上市


2020年10月21日 6745ビュー
日本海美食旅(ガストロノミー)プレミアムレストランでは、新潟県と山形県庄内の食文化の発信をテーマに、メニューやコースとして料理提供をしている飲食店を紹介しています。日本海美食旅(ガストロノミー)を通じて、その土地の風土や歴史を感じてください!

今回は、県北の城下町・村上市にある料亭 能登新(のとしん)さんです。


山形県との県境に位置する村上市。瀬波温泉笹川流れなど県外からも多くの観光客が訪れます。
ブランド牛の「村上牛」や国の伝統工芸品「村上木彫堆朱(ついしゅ)」、北限の茶処の「村上茶」などもご存じの方も多いのでは?
また、新潟の3大コシヒカリの一つといわれる「岩船産コシヒカリ」の産地でもあります。
かつて五つの武家屋敷が並んでいたという「五軒丁通り」にある、きりりとした黒塀を構える料亭。江戸時代中期の創業、250年の歴史を誇る能登新です。

現在、お店を取り仕切るのは11代目の山貝誠社長兼料理長。
昔のことをただ残すだけでなく、大切なのは「伝統の良さを残しながら、時代と共に新しい変化を求める『不易流行』(松尾芭蕉の言葉)」と語る山貝さん。
村上の食文化を紡ぐ一人です。

村上は鮭のまち

豊かな食文化が根付く村上。特に鮭との関わりは深く、平安時代に租税として鮭を納めていたという記録が残っています。
また、江戸時代に世界で初めて鮭の人工ふ化増殖に成功した地であり、この地を語る上で鮭は欠かせない存在。
 
村上の方言では鮭のことを「イヨボヤ」といいますが、「イヨ」も「ボヤ」も魚を意味する言葉。キング・オブ・キングスならぬ“魚の中の魚”なんですね。
庭を望む軒先には、身が締まり飴色になった「塩引鮭(しおびきざけ)」が吊るされています。
「塩引鮭」は村上の代表的な鮭料理の一つ。塩をすり込んだ鮭を冬に吊るし、日本海の寒風にさらすことによりうま味を増す伝統の保存食。現在はお歳暮や贈答品としても人気です。
塩引鮭は通常2~3週間で出来上がりますが、塩引鮭をさらに半年以上干し続け、うま味を熟成させたものが「酒びたし」となります。(※酒びたしについては後ほど)
軒先の鮭はすでに9カ月もの時間が経っています。

鮭づくしの料理がずらり

塩引鮭や酒びたし、他にもはらこ丼(イクラ丼)などもよく知られていますが、地元では鮭は捨てる部分がないとされ、さまざまな鮭料理が今に伝わっています。
そんな鮭料理の数々を堪能できるのが、能登新の「越後村上鮭料理」コースです。
※写真はイメージです。

コースの一例 ※税別 ※15,000円以上のコースは要予約>
●11品16種…6,000円 ●13品17種…8,000円
●15品24種…10,000円
●17品26種…15,000円 ●24品26種…20,000円
 
今回は、鮭づくしの前菜である一の膳について詳しくご紹介します。
※内容は変わる場合があります。
奥/氷頭なます
頭の軟骨を薄切りにして塩・酢に漬けたもの。大根おろしの甘酢漬とはらこと和えて。
右/スッポン煮(氷頭の煮付け)
氷頭をとろ火で4~5時間じっくり煮たもの。骨までやわらか。
左/どんびこと白子のうま煮
「どんびこ」とは心臓のこと。新鮮な白子と一緒に。
奥/飯ずし
鮭の身、はらこ、ご飯などを麹漬けしたなれずし。古くから年越しの年取り魚として食べられてきたもの。
右/酒びたし
塩引鮭をさらに長期間乾燥・熟成させた天然の燻製。薄切りにして地酒に浸します。チーズのように濃厚な鮭のうま味と地酒が生み出す美味!
左/はらこのみそ漬け
みその甘さと香りをまとったコクのあるイクラ。みそは地元みそ蔵のもの。

一の膳の他にも、「鮭の揚げしんじょう」や「鮭の焼き漬け」、「めふん」(背わたの塩辛)、「なわた汁」(内臓のみそ汁)などさまざまな鮭料理がずらり。
地元で鮭が獲れる秋~冬は、この時期にしか味わえない鮭料理もあるので特におすすめです。「新鮮な生鮭でしか作れない『川煮』は10月から年内までの限定です」と山貝さん。
※能登新では8,000円以上のコースで提供
 

村上の伝統工芸とともに

お膳の左上と右下に寄せるように置かれた一の膳。これはお膳の柄を楽しめるようにという意図があります。漆黒のお膳は地元で作られたもので、本来は観賞用の漆器に用いられる「三彩彫り」という高度な技法が使われています。
「三彩彫り」とは彫りの無い真っさらな木地に朱・黄・緑、そして黒を塗り重ね、そこから掘り下げることによって絵を表現するという、とても繊細な技法。
 
昔から伝わる鮭料理とともに、国の伝統工芸品である「村上木彫堆朱」の技を堪能できるのはとても贅沢ですね。

「村上牛」も捨てがたい。両方楽しめるコースも。

新潟県のブランド牛として絶対的人気の「村上牛」。
能登新では、A5ランクの村上牛を使ったステーキなどをコースや単品で提供しています。
また、鮭も村上牛も楽しみたい人は、「村上堪能料理(鮭料理と村上牛会席料理)」や「おまかせコース」もおすすめ。

いずれにしても村上ならではの料理を満喫できることは間違いありません。
さらには、「うな重」もおすすめとのこと…これは一度では堪能しきれません!
※写真はうな重(上)

これでもかというほどの魅力あふれる料理が満載の能登新。
落ち着いた空間で、良質なおもてなしと共にぜひお楽しみください。
ご利用の際は予約をおすすめします。
 
料亭 能登新

料亭 能登新

村上市飯野2-1-9
TEL.0254-52-6166
営業時間/昼11:30~14:00(LO.13:30)、夜 17:00~23:00(LO.22:00)
https://notoshin.com/

この記事を書いた人
ケバブー

長岡生まれ新潟育ち。 ​
郷土料理からラーメン、地酒やスイーツまで新潟の食を広く愛するフォトライター。

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