老舗和菓子屋・川西屋で名物アイスキャンデーを味わう/長岡市


2025年08月13日 18ビュー
長岡の夏の風物詩といえば花火、そして川西屋アイスキャンデーでしょう。
川西屋は長岡市神田町にある老舗和菓子店で、現在発売されているアイスキャンデーは小豆イチゴミルク抹茶(いずれも120円・以下全て税込)と、ミルク・イチゴ・抹茶の3つの味が楽しめる三色(150円)の5種類。
発売はいつから?そのきっかけは?そして歴史的人物が愛したお菓子など、たっぷりとご紹介します。

長岡の夏を彩るアイスキャンデー

川西屋の創業は1909(明治42)年。それに先立って1890(明治23)年に創業していた川西屋本店(長岡市殿町)からのれん分けする形で誕生しました。現在の社長・早川吉博さんは三代目になります。アイスキャンデーは6月から9月までの販売と店の看板には書かれていますが、近年の猛暑を受け昨年は10月末まで販売を続け、今年は4月下旬頃には販売を開始したそうです。
ちなみに、店頭の冷凍ケースを見ても分かる通り、表記は「キャンディー」ではなく「キャンデー」なのです。
アイスキャンデーを作り始めたのは1938(昭和13)年から。主力商品である饅頭は夏になると売れ行きが落ち込むという状態が毎年続いていました。そんなとき近隣でスイートポテトやアイスキャンデーなどを売っていた店から「和菓子店なら砂糖がたくさんあるのだから、川西屋さんもやってみたらどうか」と勧められたのがきっかけで作り始めたそうです。
始めたアイスキャンデーは大当たり。かつては多くの店でアイスキャンデーを扱っており、昭和30年代頃には長岡に専門の組合もあって、なんと100店舗以上が加入していたそうです。その後、大手メーカーの台頭などで、自店で製造販売するアイスキャンデーは減っていきましたが、川西屋はしっかり残りました。
それについて早川さんは「やはり親父の努力に寄るところは大きい。とにかくアイスキャンデーが大好きで、作ることに誇りを持っていた。自店で売るだけでなく、他の店でも扱ってもらうようにして『川西屋のアイスキャンデー』をお客さまに覚えてもらえたことが今につながっている」と話しました。
ところで、なぜアイスキャンデーの棒は斜めになっているのでしょうか。その答えは製造過程にありました。まずアイスの原料を型に流し込み、そこに棒を差し入れます。そのときはまだアイスは固まっていないため、棒は容器の中で傾くのです。ずっと気になっていた謎が解けてスッキリしました!
マイナス30度のアルコールで冷やすことおよそ30分。アイスキャンデーができあがります。完成したものを1本ずつ、袋詰めして完了。昔に比べて一般家庭の冷凍庫が大きくなり、大量に保存できるようになったため、まとめ買いする人が増えているそうです。中にはクーラーボックス持参で数十本買っていく人もいるのだとか。
川西屋でアイスキャンデーを買うと、新聞紙にくるんで渡してくれます。「新聞は保温性が高く熱を逃さないと同時に、冷気も逃がさない」と早川さん。お店のスタッフも「暑い車内などに放置したらあっという間に溶けてしまいますが、普通にお持ち帰りいただく分には30分くらいなら大丈夫」と太鼓判を押しました。
売り場には小銭を入れておく古い機械が置かれていました。往時を偲ぶ一品かと思いきや、いまだに現役で活躍中だとか! 時代をリアルに感じられるところがいいですね。
アイスキャンデーが注目を集めていますが、アイスモナカ(150円)も合わせてぜひ。いつから販売するようになったのか、時期ははっきりしていませんが、早川さんいわく「私が子どもの頃には、すでにあった」そうで、こちらもロングセラーの夏の定番の一つです。
紅白の皮にサンドされた中身はバニラアイスクリーム。ころんとした丸い形がかわいいですよね。

あの偉人も愛した和菓子

川西屋を代表する和菓子といえば「酒饅頭」。「酒」と付いていますが、原料にお酒は使われていません。麹を発酵させ、うるち米と合わせて一晩寝かせた酒元を使っていることから命名されたそうです。
酒饅頭は現在4種類が販売されています(いずれも120円)。右奥の緑色の文字がほんのりとした甘みの「甘塩」、その手前の白文字の「塩小豆」は、甘くない塩味の餡になっています。左手前の赤文字の「甘あん」には、こしあんが入っています。左奥の茶色い文字は「しょうゆつぶあん」、地元長岡の摂田屋の醬油などをブレンドして皮の味付けをしています。
この酒饅頭を愛したと伝わっているのが、長岡出身で聯合艦隊司令長官を務めた山本五十六です。五十六は甘みのない塩小豆の酒饅頭を「水まんじゅう」として食べるのがお好みだったそうです。レシピには諸説あるようですが、役所広司さんが五十六を演じていた映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実』では、茶碗に水と氷を入れ酒饅頭を浸してふやかし、そこに砂糖をかけて饅頭を崩しながら豪快に食べているのが印象的でした。撮影の際にはスタッフから依頼があり、川西屋の酒饅頭を撮影スタジオに送ったそうです。
実際に作って恐る恐る食べてみましたが、予想以上の美味しさにビックリ! 氷を入れることで味がひきしまり、夏にぴったりのお菓子になりました。砂糖を入れすぎないほうがさっぱりといただけますよ。
お饅頭と同じ生地で作られているのが醬油パンです。長パン(400円)、丸パン(100円)の2種類があります。長パンをくるんでいる包装紙が、北欧のテキスタイルデザインのようでおしゃれですね。焼いてバターを塗って、ハムなどをサンドして食べるとおいしいと聞き、早速作って見ましたが確かにいけました。生地がモチモチしていて、ジャムやクリームなど、甘いものとも相性は良さそうでしたよ。
長岡名物のひとつ、醬油赤飯(400円)もあります。赤飯といえば普通はピンク色のご飯ですが、長岡では醬油で味付けをした茶色いものが主流。その不思議さゆえに『秘密のケンミンSHOW』などでも紹介されたことで、全国的にも注目を浴びた郷土食です。一説では通常の赤飯に入れる「ささげ豆」が貴重品だったため、醬油で代用したことがきっかけで誕生したと言われています。長岡へ観光に来た際にはぜひお買い求めください。
2024年からは人気のアイスキャンデーにちなんだグッズ販売も開始しました。ラインナップはTシャツ(2,500円)、トートバッグ(1,500円)、キーホルダー(500円)です。根強いファンがいるようで、全種類大人買いする人もいるそうです。早川さんによると、一番人気はお手頃価格のキーホルダーだそうです。

ひそかな趣味、店の奥にあるコレクション

店舗の奥にある事務所部分。通常は関係者以外立ち入りできない場所ですが、取材ということで特別に入らせていただきました。実はその場所、早川さんのコレクション展示室でもあるのです。集めているのはクリアファイル。業者などからもらうノベルティがいくつかたまったとき「実用的できれい。集めてみようかな」と思ったのがきっかけで収集を開始しました。
その数、数百枚。もう充分集まったからそろそろ終いにしようと考えたこともあるそうですが「観光地などに行くとつい買ってしまう」のだとか。「あれはどこで買ったもの、これは何年のあのとき」など、今では自身の思い出づくりも兼ねた行動記録のような役割を果たすようになっているそうです。
新潟名物「笹だんご」は5月から6月にかけての2カ月、限定販売しているそうですし、ほかにも紹介しきれなかった菓子がいくつもあります。アイスキャンデーを買い求めがてら、ほかのものもぜひご賞味あれ!

川西屋

住所:長岡市神田町1-2-29
TEL:0258-32-2588
営業時間:9:00〜17:00
定休日:月曜日

川西屋

エリア

長岡・柏崎エリア

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グルメ
この記事を書いた人
和田明子

長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中。