熊・鴨・鹿を食す!ハンターシェフによる奥深きジビエ料理「日本料理 福楽」/新潟市


2024年02月11日 1434ビュー
皆さん、こんにちは。新潟市取材ライターのエムコネです。

新潟の冬の味覚と言えば何を思い浮かべますか?ズワイガニ、あんこう、ブリ、牡蠣など、やっぱり日本海の魚介ですよね。

…と言いたいところですが、新潟の冬の味覚は海の幸だけではありません。

自然豊かな里山にも恵まれた新潟には、熊、鴨、鹿といった〈ジビエ〉という山の幸・野の幸も!

実は私、正直に言うと「ジビエってなんだか癖が強そう」と勝手な固定観念があり、きちんとしたコース料理の中でジビエを味わったことはありませんでした。

ところがその観念を覆す、驚きのジビエ料理たちと出会ったのです……!

今回は、新潟市の郊外にある「日本料理 福楽(ふらく)」をご紹介します。

随所にこだわりが光る日本料理店へ

向かったのは新潟市江南区大渕。新潟市中心部から車を20分ほど走らせ、田園地帯の中にある閑静な住宅街へ。

大きな看板はなく、あるのは小さな表札のみ。まるで隠れ家のような佇まいで、初めて伺う際は迷ってしまうかもしれません。

駐車場に車を停めると、お店の入り口まで趣のある庭園が広がります。
店内は、白を基調に木のぬくもりが溢れ、落ち着いた和の雰囲気が漂います。
大きな窓が印象的なカウンター席と、小上がりの個室を完備。個室は、会食や接待だけでなく家族の祝事など、幅広いシーンで利用される方が多いそうです。

食材を自らの手で!狩猟と釣りを趣味に持つ料理人

店主の媚山潤さんは、生まれも育ちも生粋の新潟人。調理師専門学校を卒業後、20歳で料理人の道へ。新潟県内の日本料理店などで修業を積み、2022年の春に「日本料理 福楽」を開店しました。

なんと、媚山さんの趣味は、狩猟と釣り

狩猟は料理人の道と同じく20歳の頃からはじめ、釣りに至っては学生の頃から。趣味と言えども、その腕前はこの道25年という実力の持ち主です。

「若い頃から、日の出前に起きて釣りや狩猟に行き、仕事に行く。休みの日は1日中趣味に明け暮れる、という日々を過ごしていました。よくお客様からは『狩猟も釣りもやる料理人だなんて珍しいね』とおっしゃっていただきますが、自分にとっては、どれも好きでやっていることなのでごく自然なことです」と話します。
春・夏・秋は佐渡沖まで船釣りに、冬はシーズンになれば山へ狩猟に。それは媚山さんにとって、ごく自然なライフワークの一つなのです。

一年を通して、旬の食材を生かしたお料理を提供されていますが、特に常連さんに好評なのが冬のジビエ料理。

「ジビエは個体差がものすごく激しく、目利きが難しいんですよ。不特定多数ではなく仕入先を厳選し、業者さんと信頼関係を築かないと、本当に良い品は手に入りません。過去にジビエを食べて、口に合わなかったという声を聞くと残念に思いますね」と媚山さん。

同店のジビエ料理に定評があるのは、シェフ自らがハンターで、一朝一夕ではない知識と経験が為せる目利きがあるから。そして、自らの足で築き上げた、その道のプロとのつながりがあるから。

だからこそ、上質な食材が手に入り、それらを自らの手で調理する、唯一無二の洗練された日本料理が楽しめるのです。

2023年新潟ガストロノミーアワード新人賞を受賞

「新潟ガストロノミーアワード」とは、地域の風土、歴史や文化を料理に表現する「ローカル・ガストロノミー」を体現し、地域社会との関わりに積極的な、新潟県内の飲食店や宿泊施設などを表彰するという試み。

初開催となった2023年のアワードでは、飲食店部門にノミネートされた新潟県内の飲食店100店舗のうち、1店舗だけに贈られる「新人賞」を受賞。

審査員を務めた県内外の美食家たちの舌を唸らせ、「訪れる期待値が存分にある」と評価されました。

開業初年度にして、早くも注目店に。同店の唯一無二の素晴らしさは、お墨付きなのです。

おしながき

メニューは、昼夜ともに3つのコース料理のみとなります。※2日前まで要予約

・6,600円コース
・8,800円コース
・11,000円コース

今回は、ジビエを堪能できる冬のコースをいただいてきました。
日本鹿のたたき 大根おろし ポン酢ゼリー

まず先付けでいただいたのは、鹿のたたき。驚いたのは、臭みや雑味が全くないんです!赤身なのであっさりしていて、それでいて肉々しさが。

これから始まるジビエ料理の数々に、期待が高まります。
鴨つみれ

鴨つみれの中には砂肝を忍ばせてあり、食感の違いが楽しい一品。つみれの上には、自家栽培の白菜と長ねぎをあしらって。鴨のガラを10時間かけてゆっくりと炊いた鴨出汁と、白菜の出汁を合わせてあります。

同店で使用する野菜は、ほとんどが農家を営む家族の畑で育てたもの。魚や肉だけでなく、野菜も採れたてで新鮮なものを提供されています。

次のお料理に出てきたのは…
熊の脂身です!

「熊は、脂身が多いほど価値が高いんですよ。お肉よりも脂身を召し上がっていただくのが、醍醐味ですね」と目の前で熊すきを仕上げてくださいました。

私、ずっと前からこの熊すきを食べてみたかったんです~!
熊すき

甘めのタレと、長ネギ、しいたけ、卵黄を添えてすきやき風に。この脂身のおいしさの感動たるや…!

牛肉の脂とは違うすっきり感。脂なのにこってり感やしつこさがなく、滋味深い旨みと甘みがスーッと体に染み渡っていきます。当然、雑味や臭みなどは一切感じられません。

この美味しさというのは、牛・豚・鶏肉といった普段食べ慣れているものとは全く違いました。「世の中にはまだまだ知らない食べ物や美味しさがあるんだ!」と新たな世界に足を踏み入れたかのような、感動がありました。
鴨焼き

炭火でゆっくりと火入れをし、周りから中心までムラがないように焼かれています。柔らかさがありながらもほどよい弾力があり、噛めば噛むほど旨味が溢れてきます。

鴨焼きにする野鴨は、狩猟する鴨全体の3分の1にも満たないほど貴重な、上モノを使用されているとのこと。とても贅沢な一品です。
治部煮

鴨にとろみをつけ、旨味をぎゅっと閉じ込めてあります。こちらも驚くほど柔らかく、鴨が出汁の旨みを纏ってとろけるよう。口の中からなくなるのを惜しむようにいただきました。
そして、お料理の締めは、熊ご飯です。

土鍋で炊いた熊の炊き込みご飯には、自家栽培のふきのとうが!12月後半から1月頃に初物にお目にかかれ、次は3月頃にまた顔を出してくるとのこと。

思いがけない春の訪れに、とても嬉しくなりました。
うす衣でサクサクに揚げられたふきのとうと、熊ご飯。

熊の力強い旨味に、ふきのとうのほのかな苦味と香り。里山の恵み同士が相まって、こちらもまた想像を超えた美味しさではありませんか!!

言葉を失う食体験に感無量…至福のひとときでした。
甘味 さつま芋金時とジェラート

シルクスイートという、なめらかな食感のさつま芋を使用。豆乳クリームと合わせて、濃厚ながらもさっぱりと仕上げてあります。藻塩がいいアクセントに。

そして、食後の飲み物は煎茶かコーヒーを選べます。

煎茶は村上市「冨士美園」の村上茶を。そしてコーヒーは、自家焙煎コーヒー専門店「山倉珈琲」の、和食に合うオリジナルブレンドのものを。最後の最後まで、抜かりないこだわりようです!
「『料理は愛情』という言葉があるように、好きな人や家族に料理を作るときは、気持ちを込めて必要以上のことをしたくなります。お客様に提供するお料理もそれと同じですね。そして狩猟も釣りも料理も好きだからこそ、もっとうまくなりたいと努力できるんです。いただく命を最大限に活かして、お客様に喜んでいただくのが私の喜びですね」

​自然豊かな新潟の里山・里海・大地の恵みをもて余すことなく、存分に堪能できる「日本料理 福楽」。そして、これからも進化し続けるハンターシェフ媚山さん。

春には自ら釣り上げた、魚料理の数々が楽しめることでしょう。想像を超えた奥深き食体験をしに、ぜひ伺ってみてください。
 日本料理 福楽(ふらく)

日本料理 福楽(ふらく)

新潟県新潟市江南区大渕1196-2
025-282-7459
営業時間/11:30~13:00(最終入店)、17:00~19:00(最終入店)
定休日/火・水曜日
※コースのみ。2日前まで要予約。
※一部画像提供/日本料理 福楽

この記事を書いた人
エムコネ

富山県生まれ、新潟市在住のママライター。 グルメな夫、子鉄の長男、肉食の長女、リアクション芸人の私、の4人家族。 外食費と娯楽費が家計を圧迫していますが、おいしいモノとたのしいコトを求めて日々開拓中! 

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