スイーツやパンを通して、大好きな関川村を盛り上げたい/関川村


2024年02月12日 1943ビュー
高瀬・鷹ノ巣・雲母(きら)・湯沢・桂の関の5つの温泉が湧き、米沢街道が通る交通の要所として古くから栄えた関川村。国指定重要文化財の渡邉邸をはじめ、佐藤邸、津野邸などの歴史的建造物も点在し、江戸から明治期の街並みを今に伝えてくれます。この歴史ある静かな村に移住し、得意のスイーツづくりを通して村の活性化に尽力する吉田美香さんにお話しを伺いました。
吉田 美香
1986年、村上市(旧山北町)生まれ。高校卒業後、東京の製菓専門学校で2年間学び、その後は都内の製菓店やカフェなどでパティシエールとして働く。30歳のとき、ワーキングホリデーの制度を利用して、渡仏。1年ほどパリで働きながら語学を学び、フランスでの暮らしも経験。2021年春、夫とともに関川村に移住。地域おこし協力隊員として、「東桂苑」内のカフェなどで提供するスイーツメニューや関川村の特産品の開発に取り組む。2023年3月には、週に1日だけ営業するパン屋をオープン。手づくりパンの販売もはじめる。

―明治期の趣ある古民家「東桂苑」。こちらのカフェメニューも開発されています。

はい。「東桂苑(とうけいえん)」は、明治38年に渡邉邸の分家として建築された建物だそうです。風情があって、静かで、木々に囲まれていて、秋には紅葉も楽しめます。すてきな場所ですよね。

私は、2021年4月から関川村の地域おこし協力隊員として活動させていただいています。おもなミッションは、地域の名産品開発です。こちらへ移って来たばかりで何もわからない中、いろいろな方のサポートもいただきながら、まずは、ここ東桂苑内で営業するカフェのメニューを開発することになったんです。
純和風の庭園との調和もみごと
レトロな大正硝子越しに眺める庭園は、ゆらりと歪んでとても味わい深い

―地場産の食材にこだわっていらっしゃるとか。

「栃の実のシフォンケーキ」「越後姫と酒粕のカップケーキ」「焼き芋のロールケーキ」など、地場の食材を使った、皆さんに喜んでいただけるような美味しいスイーツをめざして開発してきました。夏場には、地元の越後姫やブルーベリー、青梅などを使ったかき氷も提供します。おかげさまで、どれもとても好評です。
関川村で収穫されたかぼちゃを使った「かぼちゃプリン」250円。
かぼちゃの風味とほんのり自然な甘さが美味
また、東桂苑で10月後半から1か月ほど提供していた「ふるさと関川 秋御膳」では、デザートを担当させていただきました。「ふるさと関川 秋御膳」は、関川村で大切に伝えられてきた郷土の料理を村の人たちが手作りで提供したメニューで、生活改善研究会の皆さんなどが中心になって進めた企画です。米は関川村コシヒカリを使いました。

ただ、活動2年目の2022年の夏に豪雨災害が起きて、東桂苑も半年以上閉館を余儀なくされました。そのときは、地域の皆さんと一緒に、復旧のお手伝いなどのボランティア活動をしていました。
木造2階建て入母屋造りの風格あるたたずまいが印象的。座敷には囲炉裏も

―地元の方の反応は?

皆さん喜んでくださいますし、開発にも熱心で、生産者さんが「こんなものが採れたから何か作ってみて」と野菜や果物を届けてくださったりします。届けられた食材をみて、「何が作れるかなあ」と考えることが多いですね。

そうやって皆さんからいろいろな宿題をいただくんですが、難題も多いですね。たとえば、関川村の特産品である「猫ちぐら」のスイーツを作ってほしいと頼まれたこともありました。「え~、どうやって作ればいいんだろう」と悩んだ末に生まれたのが、「猫ちぐらのモンブラン」でした。言うのは簡単なんですけど、それをカタチにしていくのは難しかったですね。

―今年3月にはパン屋もオープンされました。

はい。「旧斎藤医院」という明治期に建てられたかわいらしい洋館があるのですが、そこの玄関先で「ぽっかりパン」というパン屋を始めました。毎週金曜日に、20種類ほどの焼きたてのパンを販売しています。今年は11月24日が最終営業日で、現在は冬季休業中です。再開時期は、「ぽっかりパン」のインスタをチェックしてください。
「旧斎藤医院」の入り口で手づくりパンの専門店、「ぽっかりパン」をオープン
地元の食材を使った焼きたてのパンがショーケースに並ぶ
関川村にはパンの専門店がなく、以前から「村にパン屋さんが欲しい」という住民の方の声が多かったんです。それにお応えするかたちで始めたのですが、実は、関川村のPR動画の撮影もきっかけのひとつになっています。

昨年夏ごろに、観光課の取り組みで関川村のPR動画を作ろうということになり、『パン屋がほしい村』という動画を撮影したのですが、そのときに声をかけていただいて、撮影の中で使うパンを作って納品しました。それが好評で、「実際に作って販売してみない?」と。
パンを焼くには機材も必要ですし、私の専門はスイーツで、実はパンづくりはまったくの素人。自分にできるかどうか不安もありましたが、「皆さんに喜んでいただけるならやってみようかな」と決心しました。

昨年夏の豪雨災害のときに、被災者の方々に焼きたてのパンを食べていただきたくて、パンを焼いてお配りしたのですが、そのときの皆さんの嬉しそうな笑顔が忘れられなかったこともきっかけの一つです。でも、始めたのはいいけれど、発酵時間や温度管理などがなかなかうまくいかず、しばらくは試行錯誤の日々が続きました。
旧米沢街道沿いに佇む「旧斎藤医院」。レトロモダンな雰囲気の建物が住民の交流拠点に
毎週金曜日にオープンする「ぽっかりパン」。この日を待ちわびる住民も多い

―店名も、店の佇まいも、とてもかわいらしいですね。

店舗は、桐タンスをリメイクしたショーケースをはじめ、PR動画に登場する架空のパン屋さんのセットをそのまま使ったものです。お店の名前は、関川村の方言で「思いがけずもらった、おいしいもの」という意味の「ぽっかりもち」にちなんで名づけました。毎月最終金曜日には、「カフェぽっかりもち」として、カフェメニューも提供していました。

カフェのメニューも、パンも、どちらも関川産の野菜やシイタケ、くわの実、女川ハム工房のソーセージなどの素材を使い、丁寧に手づくりしたものをと心がけています。おかげさまで、多くのお客さまが並んで買いに来てくださって、パンはいつも昼頃には売り切れてしまうほどです。すべての工程が手作業ですし、私ひとりで作っているので、どんなに頑張っても作れる数には限りがあるんです。
絵本の世界に迷い込んだような愛らしい店内
月に一度開かれる「カフェぽっかりもち」では、ランチメニューも

―地元の方々とはどんなふうに連携を?

地元の食材を使ったメニュー開発を進める中で、生産者さんなど有志の方々と意見交換などを行う「関川村スイーツ研究会」を結成しました。「カフェぽっかりもち」や「ぽっかりパン」は、こういった地元の方々との交流の中から生まれた取り組みです。

また、「労働者協同組合パンプアップせきかわ」のメンバーとして、かぼちゃやハチミツなどの農作物を広く発信する取り組みにも関わらせていただいています。「労働者協同組合パンプアップせきかわ」というのは労働者が出資して運営する労働者協同組合で、県内では第1号となるものだそうです。関川村は、お米がおいしくて有名ですが、少しずつ園芸作物の栽培も拡大していきたいと考え、昨年からは、かぼちゃの取り組みを始めました。どんどん外に発信しようと活動しています。

―改めて、吉田さんのことを教えてください。どのような経緯で関川村へ?

私は旧山北町で生まれ、高校卒業後に上京。製菓専門学校で2年間お菓子作りを学び、その後は都内の製菓店やカフェ、結婚式場などで約10年間パティシエールとして働きました。 

コロナ禍に入る少し前ですが、ふと「もっと自然が豊かな場所で、緑に囲まれた暮らしがしてみたいなあ」と思いついたんです。本当に、なんとなくですね。東京の暮らしは、家は狭いし、満員電車も嫌いだし、もう少しゆったりと時間が流れる緑豊かなところで暮らしてみたいなあと思うようになりました。

それでちょっと検索してみたら、ちょうど東京ビッグサイトで移住相談フェアが開催されることがわかり、たまたま夫も休みの日だったので、ふたりで出かけてみました。新潟も含め、いろいろな地域のブースを回って説明を聞いてきました。

―新潟に戻ろうということではなかったと?

そのときには、特に新潟に帰ろうと決めていたわけではなかったですね。ただ、7年ほど前に父が亡くなり、母がひとりで父方の祖母を看ていたので、何かあったときにすぐ駆けつけられるように、母の近くに住めたらいいなあという思いもありました。

移住相談フェアの際に登録していたので、夫のもとに新潟での仕事紹介のメールが届くようになりました。その中に関川村役場の仕事があり、軽い気持ちで採用試験を受けてみたら、幸運にも内定をいただけて。それがすべての始まりでしたね。

移住相談フェアに参加したのが2月、役場の採用試験を受けたのが8月頃。12月上旬には、ふたりで関川村を訪れて、役場の方に村を案内していただきました。まだ本当に移住するかどうかも決めていなかったのですが、ついでだからと住宅物件も見せていただきました。思いついてから1年も経たないうちに移住が決まったことになりますね。
「実家の近くに住むことになって、母も喜んでいます」

―トントン拍子に話が進んでいったのですね。

本当ですね。あれよあれよという間に夫の仕事で内定をいただき、「どうする?本当に行く?」という感じでした。

隣の市町村で生まれ育ったにも関わらず、実はそれまで関川村には一度も行ったことがなかったんですよ。こちらの事情もまったくわからなかったので、役場の方に相談したら、地域おこし協力隊のお仕事を紹介していただきました。仕事内容を聞いて、「ああ、そういうお仕事なら興味あります」と。でも、まさか自分がこんな仕事をするようになるとは、想像もしていなかったですね。

―実際に移住されてみていかがでしたか?

こちらへ来る前に、日本各地の移住についてネガティブな意見も含めていろいろ調べましたが、「まあ、一か八か行ってみよう」という気持ちで決断しました。実際にこちらへ来て住み始めてからは、「来てよかったなあ」と思っています。ほかの地域での移住失敗談などを読んだりしましたが、ネットで書かれているようないじわるをされることもここでは全然ありませんでしたし(笑)。

関川村で暮らすようになったのは、運命に導かれるようにしてここへたどり着いた感じです。今のお仕事も自分で能動的に行動した結果というよりは、まわりの方々の助けをいただいて、たまたまここに落ち着いたという思いが強いですね。

私は思いついてパッと行動したりすることも多いんですけど、自分ひとりではここまで来ることはできなかっただろうと思います。移住を決めたときも、ギリギリまで仕事が見つからなくて困っていたところ、運よく地域おこし協力隊に推薦していただけましたし。その後も、まわりの方が「これやってみたら」と提案してくださったり、サポートしてくださったり。そうした声に応えていたら、いつの間にか今の生活が出来上がっていたという感じですね。何かやろうと思ったときに、必ず助けてくれる方が現れるように思います。
「こんなお仕事をするようになるなんて、自分でもびっくりです」
パティシエールとしての経験を活かして地域の活性化に取り組む

―不便を感じることは?

雪は辛いですね。村民交流センター「雲母里(きらり)」内に6次産業化の商品開発などを行うための加工室があって、そこでパンを作る作業を行っているのですが、大雪の朝は、まずは雪かきをしないと建物に入ることもできません。施設を管理して下さっている方が前日の夕方には除雪してくださっているんですが、それでもぜんぜん追いつかなくて。ドカ雪の朝は大変ですね。

また、自宅の窓の隙間から虫が入って来るんですが、苦手なのでちょっと困りますね。ムカデが出たときは、びっくりしました。年に2回くらい害虫駆除の方に来ていただいたり、バルサンを焚いたりしています。

不便なことは、材料の買い出しですね。家で食べるものは近所の商店で調達できますが、パンやお菓子の材料は、少し大きなスーパーまで足を延ばさないと手に入らないんです。自宅からいちばん近いスーパーでも車で15分くらい。お菓子づくりの材料は、都会だったら何でも簡単に手に入りますが、ここでは売っていないので、早めにネットで注文しておかなければいけないですね。

でも、逆にこの不便さがいいなあと感じることもあります。東京で生活しているときは、忙しいとウーバーイーツで出前を頼んだり、近くの飲食店で外食したりしていましたが、このあたりの店は夜7時頃にはラストオーダーとなってしまうので、遅い時間に食べに行くことはできない。どんなに忙しくても頑張って自分で作るしかありません。でも、食費が安くてすみますし、身体に良いものを食べることができるので、いいことなのかなと思っています。

―関川村の魅力やおすすめスポットを教えてください。

自然が豊かで、静かでのんびりしていて、温泉もあるし、本当に良いところだと思いますね。
特にこの「道の駅 関川」周辺は、散歩コースとしておすすめです。道の駅敷地内には、「ちぐら・あいさい市」や日帰り温泉施設「ゆ~む」、猫ちぐらを作っているところを見学できる「にゃ~む」などがありますし、最近は大型遊具ができて家族連れにも大人気です。

少し歩けば「渡邉邸」や「せきかわ歴史とみちの館」、「旧斎藤医院」など歴史を感じられるスポットも点在しています。古い町並みの面影を眺めながら散歩するだけで楽しいですよ。特に秋は紅葉がきれいで、観光客の方も多く訪れます。
国指定重要文化財の「渡邉邸」。3,000坪の敷地内に500坪の大宅と6つの土蔵が建つ
「せきかわ観光情報センター にゃ~む」では、村の特産品である「猫ちぐら」の製作実演も見学できる(土曜日を除く10:00~15:00頃)
関川村の特産品「猫ちぐら」。ミニサイズ10,000円~
「桂の関温泉 ゆ〜む」。大浴場、露天風呂、サウナも完備
「古民家カフェ 元麹屋」さんも大好きなお店です。山と川に囲まれたのどかな場所で、ゆったりした時間を楽しむことができます。コーヒー、ケーキ、軽食、なんでも美味しいですよ。
元麹屋のパスタセット(ボンゴレ・ビアンコ)1,300円
明治36年に建てられた古民家。土間や囲炉裏が昔を思わせる
でも、何といってもいちばんのおすすめは、ここ東桂苑ですね。この落ち着いた空間で、ゆっくりお茶やスイーツを楽しんでいただけたらと思います。東桂苑では1時間400円で、レンタルオフィスとして仕事をすることもできるんですよ。こんなに風情のある場所でお仕事できるなんて、すてきだと思いませんか?
東桂苑2階。Wi-Fi完備でレンタルオフィスとしても活用できる
また、地元の方々は皆さん温かくて、いつも助けていただいています。たぶん皆さんからすると、助けてあげているというつもりもなく、ごく自然に接してくださっているのでしょうけれど。関川村には、そういう面倒見の良い方がたくさんいらっしゃいますね。それは都会では得られないつながりです。

―今後の目標は?

地域おこし協力隊の任期は、1年ずつの更新で最長3年まで、というきまりになっています。今は3年目ですので、今年の3月末で終了となります。4月からは、個人事業主としていろいろな活動に関わっていけたらと考えています。

私を温かく迎え入れてくれた大好きな関川村で、これまで培ってきたお菓子作りやパン作りなどの特技を生かして、地元の方々に喜んでいただける活動をして、地域を盛り上げるお手伝いができたらいいですね。
東桂苑

東桂苑

関川村下関906-2
開設期間/4月中旬~11月上旬
開館時間/9:00~16:00
入館料/無料
問合せ/関川村自然環境管理公社 0254-64-0252

ぽっかりパン

ぽっかりパン

関川村大字下関913 旧斎藤医院
090-5818-4050
営業/毎週金曜11:00~14:00(売り切れ次第終了)
※「カフェぽっかりもち」は毎月最終金曜
※11月中旬~冬季休業中。再開時期はインスタにてご確認ください。

渡邉邸

渡邉邸

関川村下関904
0254-64-1002
営業/9:00~16:00
定休日/12月29日~1月3日
入館料/大人600円、小・中学生250円

せきかわ観光情報センター にゃ~む

せきかわ観光情報センター にゃ~む

関川村上関1252-1
0254-64-3311
営業/9:00~16:30
定休日/1月1日

桂の関温泉 ゆ~む

桂の関温泉 ゆ~む

関川村下関1307-11
0254-64-1726
営業/9:00~21:30
休館日/毎月第3水曜(休日の場合は翌日)
入館料/大人(12歳以上)700円、小人300円、4歳未満無料

古民家カフェ 元麹屋

古民家カフェ 元麹屋

関川村朴坂188-2
0254-64-0532
営業/10:00~18:00
定休日/水・木曜、12月~3月は冬季休業

せきかわ歴史とみちの館

せきかわ歴史とみちの館

関川村下関1311
0254-64-1288
営業/10:00~16:00
休館日/月曜(休日の場合は翌日)、年末年始
入館料/大人300円(20名以上は一人250円)
小中高生150円(20名以上は一人100円)

この記事を書いた人
新発田地域振興局 魅力見つけ隊

地元には、地元しか知らない素敵な魅力がたくさん詰まっています。
王道はもちろん、地 元あるあるネタまで、分かりやすくお伝えします。