縄文の魅力を感じるスポットをまわろう!「長岡市立科学博物館」「馬高縄文館」「藤橋歴史の広場」/長岡市


2024年06月16日 275ビュー
縄文時代ってなぜか惹かれるものがありませんか?
どうやら最近は縄文ファンも「土偶推し」「土器推し」「遺跡推し」などに分類されるそうです。本当かな?

そうした縄文の土器の中でも有名なひとつに「火焔型土器」があげられます。
教科書で見たことがある人も多いのではないでしょうか?
この火焔型土器の分布域は新潟県の形とほとんど同じになる(隣県でもわずかに出土)とは知りませんでした。
もっと日本中あちこちにあるものだと思ってました…。
これって他県や海外の人に「新潟にはお米やお酒もあるけど、火焔型土器だってあるんだよ」とアピールできるポイントなんじゃないでしょうか!?
 
そんな火焔型土器の第一号が発見された馬高(うまたか)遺跡を含めた長岡の縄文スポットを訪ねました。

長岡の自然と人文の総合博物館

ひとつめの場所は長岡駅から2kmちょっと、中央公民館などが入るさいわいプラザの1階にある「長岡市立科学博物館」
プラザに入ると空を泳ぐ海牛ミョウシーの親子がお出迎え。
これは2006年に中越地震による災害復旧工事中、長岡市妙見町で発見されたことから「ミョウシー」と命名された海牛の化石が展示されており、それに基いて作られた復元模型だそうです。
科学博物館は地学・植物・動物・昆虫・考古・歴史・民俗・文化財の8部門を持つ総合博物館です。
歴史は古く1951年に新潟県での登録博物館第1号として悠久山公園の中で開館し、後にさいわいプラザに移転しました。
野鳥の愛好家が中心となり始まった博物館のためか鳥の展示も多めです。
考古部門は開館当初からあり、当時は県内に考古学の部門が少なかったために1960年代の室谷洞窟(阿賀町)の発掘調査にも携わったとのことです。
そこから出土した縄文時代草創期から早期・前期の土器は館内の重要文化財のコーナーで見ることができます。
(ちなみに縄文時代は1万年以上も続くため草創期、早期、前期、中期、後期、晩期の6期に区分されます。)
火焔型土器の出土した縄文時代中期より前の土器も見られるとはお得ですね。

なかには底がとがっていて、まともに置くことができない「尖底深鉢」なんてものも。
まさか高知の「べく杯」みたいに置くと中身がこぼれるから、お酒を飲み干すまで下に置けない大型ジョッキ?
と思いきや先端を炉に埋め込んで加熱する器らしいです。
そして科学博物館の小林さんにお聞きして一番興味を惹かれたのがお隣の「深鉢」の「ヒビ」と「穴」です。
このヒビは使われていた時にできたもので、後から穴をあけて紐でくくり、ヒビをふさいで使っていたのではないかと考えられているそうです。
縄文時代から「モッタイナイ」の精神が育まれていたなんて!
令和の若者にも聞かせてあげなくてはいけませんね。
 
長岡の歴史コーナーでは火焔型土器を見ることもできますし、その先の弥生時代以降の土器も年代順に並んでいます。
こうして見るとやはり火焔型土器だけがトガっています。
石器や土器の中にはシベリアや東北地方と同じ方式や模様で作られたものもあるそうで、歴史の雄大さを感じます。
時期ごとに企画展もされていて、2024年5月1日~7月7日は企画展「植物×鳥×ケモノ ~なぜ集める? どう守る?~」として、「博物館が標本を集めるのはどうしてか?」を展示を通じて解説されています。
縄文時代だけでなく自然から歴史・暮らしと長岡のことを総合的に知ることのできる博物館でした。
 
長岡市立科学博物館

長岡市立科学博物館

開館時:9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:第1・3月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/28~1/4)
入館料:無料
住所:長岡市幸町2-1-1 さいわいプラザ1階
電話:0258-32-0546
駐⾞場:300台

これぞ「The・火焔土器」が見られるミュージアム

お次は火焔型土器を知るならばここだ、というべき「馬高縄文館」です。
場所は科学博物館から信濃川を渡った対岸、長岡インターチェンジから車で5分ほどの位置にあります。
入り口前には見たことのない縄文オブジェが。
知らない間にこんな複雑な形の土器も出土したの!?と一瞬びっくりしましたが、
縄文造形家・猪風来さんによる「土夢華・宇宙創生」という作品だそうです。
火焔型土器の特徴も組み込まれていて、縄文時代の装飾や様式は現代アートに取り入れても見劣りするものではないなと感じました。
展示室の中に入ると一番はじめに出会うのが「火焔土器」
馬高遺跡で1936年の大みそかに近藤篤三郎さんが発掘したと言われるこの馬高A式1号の深鉢だけが「火焔土器」という愛称で呼ばれ、それ以降に見つかった同じ様式の土器は「火焔型土器」と呼ばれるそうです。
大みそかくらいお寺に行って鐘を突いたりお蕎麦を食べたりしたらいいのにと思うのですが、それだけのすごい情熱があったんでしょうね。
じっくり見ると本当にすごい模様や装飾です。
火焔型土器は観賞用ではなく実際に煮炊きに使っていた焦げ跡があるそうです。
たぶん特別なハレの日に使ったのでしょうが、料理をすくうには不便そうな突起だらけで5千年前の縄文人はなんでこんな器を作ったのかと不思議になります。
 
トゲトゲがすごい火焔型土器が目立ってしまいますが、同時期の同じ場所から出土することから、火焔型土器と対になる意味があるのではないかと考えられている「王冠型土器」もたくさんあります。
ひかえめな王冠型も忘れないでいてほしいです。
 
一斉に並ぶ火焔型・王冠型の土器も圧巻です。
火焔型土器には鶏の頭のような「鶏頭冠把手」と名付けられた出っ張りが4つあります。
こうした「お約束」は信濃川流域のどこの火焔型土器でも一緒で、
「どんな意味があるのか」と「どうやって作り方を教えたのか」がとても気になります。
 
突起の部分の破片を並べただけの展示も、これだけで何かのアート作品だと言っても通じるのではないかと思います。
 
こちらも時期ごとに企画展やイベントをされていますが、
2024年4月13日~8月25日までは企画展「縄文土器入門~縄文土器の特色をさぐる」をされています。
縄文土器のいろいろな特徴について学べますし、用途がよく分かっていない側面や底部に穴をあけた珍しい土器もあります。
また縄文土器の人気投票企画も6月30日までされています。
縄文館の外には「北のムラ」、「南のムラ」として馬高遺跡の広場が再現され、
円形と長方形の「竪穴式住居」がそれぞれ復元されています。
 
どうやら馬高遺跡は長方形の竪穴式住居のほうが多かったようです。
さらに見過ごされてしまいそうなスポットとして北のムラと南のムラの間の木の下に、
第一号の火焔土器が出土したと伝えられている場所があります。
ここから全ての火焔型土器の歴史がはじまったという記念すべき場所ですが、かなり見過ごされがちです。

馬高縄文館のエントランスホールでは火焔型土器のレプリカを手に取って持ち上げることもできますし、
見て、歩いて、手に取って火焔型土器やその他の遺物を感じられるミュージアムでした。
長岡市馬高縄文館 火焔土器ミュージアム

長岡市馬高縄文館 火焔土器ミュージアム

開館時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:毎週月曜(休日の場合は翌日)、年末年始(12/28~1/4)
入館料:一般200円(150円)/高校生以下無料 ()内は20名以上の団体料金
住所:長岡市関原町1丁目3060-1
電話:0258-46-0601
駐⾞場:42台

丘の上から遺跡に思いをはせる史跡公園

そしてみっつめが「藤橋歴史の広場」
縄文時代中期・後期の資料を展示する馬高縄文館から3kmほど離れた場所にある、
縄文時代晩期の藤橋遺跡の集落跡地に整備された史跡公園です。
 
ここではたくさんの柱穴が見つかっていて、そこに復元住居「縄文の家」が建てられているのですが、
馬高のムラと違うのは「高床式の掘立柱建物」があることです。(床のない平地式の住居もあります。)
これは柱穴はたくさんあっても直火で火をたいた跡が見つからなかったためで、
床の上に粘土板を厚く敷いて火をたいたかもしれないとのことでした。
 
縄文時代って円錐形のテントみたいな竪穴式住居にだけ住んでいたと思っていたのですが、床のある家に住んでいた可能性もあるのですね。
これはもうちゃんとした立派な「掘っ立て小屋」です。
 
 
「遺構展示館」では発掘した柱穴を直に見学できます。
ショベルカーも鉄の道具も無いのに、深ければ2メートルの穴を掘って古民家にあるような太い柱を埋めたと考えると、建築作業はとても大変だったのだろうなと思います。

 
広場内の「ふじはし歴史館」2階展示ブースに行くと、いきなり縄文家族3人がお出迎えしてくれます。
ちゃんと床の上に暮らしています。
「浅鉢」や土瓶のような形の「注口土器」など土器の種類が増えていたこと、
糸魚川産のヒスイなどを加工して勾玉や丸玉を作っていた「玉づくりのムラ」だったことなどを上手に表現しています。

 
縄文時代中期の火焔型土器に比べると晩期の土器のほうが模様は簡素で、より実用重視になってきたことがうかがえます。
あちこち見比べていると違いが見えてきて、なんだか鑑定団のような気分になってきます。
なんで古い時代の土器のほうが手間がかかっているのかも気になりますね。
奥の展望広場は見晴らしがよく、長岡や県内の縄文集落の多くが「河岸段丘」に作られていたということがよく分かります。目の前の信濃川や山々は集落のあった約2500年前からそんなに多くは変わっていないのかと思います。
季節によってはドングリやクルミを拾うこともできるので、縄文時代に思いをはせながらピクニックをするのもいいかもしれませんね。

馬高縄文館の近くには「新潟県立歴史博物館」もあります。
ピクニックや散歩のついでにちょっと縄文時代に触れたり、
博物館の解説を時間をかけてじっくり読んで学んだり、人それぞれ楽しみ方があると思います。
信濃川流域にはいろいろな縄文スポットがあるので、新潟のルーツをぜひ訪ねてみてください。
藤橋歴史の広場

藤橋歴史の広場

開館時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:毎週月曜(休日の場合は翌日)、冬期休館(12/1~3/31)
入館料:無料
住所:長岡市西津町4157番地1
電話:0258-46-8441
駐⾞場:30台

この記事を書いた人
まきたろう

若い頃は自転車日本縦断や四国八十八ヶ所の歩き遍路など旅を住み家とし、新潟に戻っても漂泊の思いやまず仕事の傍ら県内外をさ迷っている人生まだまだ旅の途中の人。 昭和とか縄文とか古いものが好き♪五泉市在住。