「雪中イチゴ」を「湯沢いちご村」で。豪雪の中で育った「越後姫」、なんと贅沢な味わい。/湯沢町


2025年03月23日 596ビュー
豪雪地帯にある湯沢町。2メートルも3メートルも積もるのは例年のことですが、今年の寒波では、えげつない積雪量がありました。いやあ、本当に雪っていうのは、生命の危機を感じさせるくらい恐ろしいものに思えました私。

でも、雪っていうのはこれもまた不思議なもので、吹雪が過ぎれば、美しいものだなあなんて思ってしまったりします。そんな豪雪地帯の湯沢町になんと、イチゴの観光農園があるんです。

雪国アグリパーク「湯沢いちご村」

魚野川のほとり、関越自動車道「湯沢インターチェンジ」とJR越後湯沢駅より、どちらも約2キロ(車で約5分)ほどの場所にある「雪国アグリパーク 湯沢いちご村」です。

これがイチゴのビニールハウス。雪の中から掘り起こしてるように佇んでいます。ハウスは3つあり、ひとつが750平米だそうで、かなりの大きさに感じます。
ひとつのハウスに約4,000個の苗が並び、ハウスは日替わりで開放されます。中に入ると真冬から一気に春となったような暖かさ。日中は25度以内をキープしているそうです。

なぜ豪雪地帯でイチゴの観光農園を?

ご担当の林信一さんからお話を伺いました。
林さん「来年(2026年)で20年目になります。湯沢町って、スキーと温泉の町でしょう。それ以外の観光スポットを作りたいと、うち(株式会社湯沢重機建設)の会長(当時は社長)が始めたんです。」
シバゴー「これだけの雪があってビニールハウスを維持するとなると、温めなければいけないと思いますが、温泉を使っているんですか?」
林さん「いや、灯油を使っています。」
シバゴー「!!!」
林さん「今年の1月から2月までで、もう1万4千リットルを使っていますよ。」
シバゴー「!!!!!」

そう話している間にも、観光客がどんどん入ってきます。
シバゴー「すごい賑わいですね。会長さんも喜ばれているでしょうね。」
林さん「今80代ですけど、時々、来て、除雪していますよ。」
シバゴー「すごい会長さんですね!」

香りが良くて甘くジューシーな「越後姫」

ハウスに入ると、ほのかにイチゴの甘い香りがします。
林さん「ここを始めるとき、いろんなイチゴを食べ比べして、やっぱり越後姫が、いちばん香りが良くて美味しいってことで決めました。ただ弱点があって、柔らかいんですよ。つぶれやすいから緩衝材に費用がかかるし、県外に出荷するのが、なかなか難しいんです。」
だからこそ、観光農園で摘みたてをすぐに食べられるのは、大きなメリット。
林さん「完熟した、最高の状態の物を食べていただけますよ。」
そのために管理で最も気を使うのが温度で、日中は25度以内、夜でも10度をキープするのだそうです。いや、灯油代…(笑)

管理については、その他にも「農薬はできるだけ使いたくないので、病害虫が寄らないような工夫をしている」と言われていました。
林さん「畑作というのは手間がかかるもので、作物を育て上げるのは大変です。苗を育てる所から手をかけてきて、ようやく収穫を迎えることができるのです。そうして、お客様から、こんなに美味しいイチゴを食べたことがないよ、なんて言っていただくと、やってよかったなと嬉しく思います。」

選べるのは摘み取りコースと30分食べ放題コース

料金は、摘み取りコースが入園料350円+100グラム350円(税込)。食べ放題コースは入園料と消費税込みで、大人(中学生以上)2,600円、子供(3歳以上小学生以下)1,900円です。

<ご注意ください>
※イチゴが品切れた場合、時間内であっても閉園することがあります。
※イチゴの生育または混雑状況によってはお受けできない場合があります。
※予約はお受けできませんのでご了承ください。
※開園状況などのご確認は電話(025-780-6011)またはX(エックス)、インスタグラムでお願いします。

では、摘み取りを開始します!

まずは受付をして、入れ物とハサミを受け取ります。マスコットキャラクター「るびーちゃん」がカワイイ。
いちごのサイズは小玉中心になってきて、量も少なめですが(2025年2月末時点)、時期によって変動します。
そっと触ると、瑞々しく、ふわふわの柔らかさに「やっぱり、越後姫だ。最高!」と嬉しくなります。小粒だとまた、かわいらしさも際立つように思いました。
丹精こめて、灯油もたっぷり使って育てられた、贅沢なイチゴ。ありがたく、いただきます…と、パチン。
摘み終わり、受付で量ってもらうと460グラムでした。金額は1,610円(税込)。
持ち帰りにはフタをしてもらえますが、私は車で来たので、このままもらって帰りました。

白と赤のコントラスト。雪中イチゴ。

湯沢へ訪れた川端康成は小説『雪国』を書きましたが、ラストシーンは火事の場面です。『雪国』は元々、いくつかの雑誌に短編として掲載され、昭和15年(1940年)『公論』に掲載されたのが「雪中火事」でした。

昭和10年(1935年)、乾繭場と劇場を兼ねた「旭座」の火事があり、川端は手紙で「この小説は雪国と題し(中略)雪に埋もれた活動小屋の火事で幕を閉ぢやうかと、昨夜火事を見て思ひつきました」と書いたそうです。(『湯沢町史 通史編 下巻』293P)

実際の火事は10月でしたので雪はありませんでした。でも、川端の頭の中では、白く冷たい雪がこれでもかというくらい降り積もった中、真っ赤な炎が天高く上がって行く場面が、思い浮かんだのではないでしょうか。白と、赤の。現実なのに夢を見ているような、不思議な光景がイメージされます。
さあ「雪中イチゴ」、眺めるばかりでなく、食べてみますか。
うわあ、甘い。いい香り。ふわりとしているので、いくらでも食べられそうです。今回は摘み取りコースにしましたが、今度は食べ放題コースにしてみようかな。
みなさまもぜひ、豪雪の中、丹精こめて育てられた「越後姫」を思う存分たっぷりと味わってみてください。湯沢ならではの体験として、楽しい思い出になりますように。
雪国アグリパーク 湯沢いちご村

雪国アグリパーク 湯沢いちご村

【住所】〒949-6102 新潟県南魚沼郡湯沢町神立750-1
【電話番号】025-780-6011
【開園期間】1月営業開始日より6月末まで(開園期間中は不定休)
【開園時間】10:00~16:00(受付は15:30まで)

雪国アグリパーク 湯沢いちご村

この記事を書いた人
シバゴー

南魚沼市在住。趣味は写真撮影と読書で、本で調べた所へ行って写真を撮ることをライフワークとしています。神社彫刻が好きで、幕末の彫刻家・石川雲蝶と小林源太郎、「雲蝶のストーカー」を公言する中島すい子さんのファン。地域の郷土史研究家・細矢菊治さんや、地元を撮影した写真家・中俣正義さん、高橋藤雄さんのファンでもあります。

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