「新潟5大ラーメン」を食す!【②燕背脂ラーメン 編】/燕市


2021年03月30日 191023ビュー
豊かな食文化を誇る新潟県。
ラーメンも県内外から「新潟はレベルが高い!」と評価されています。

中でも「長岡生姜(しょうが)醤油」「燕背脂」「新潟濃厚味噌」「新潟あっさり醤油」「三条カレー」の5種類のラーメンは「新潟5大ラーメン」といわれています。

そんな県内各地で愛されている5つのご当地ラーメンをご紹介。
「長岡生姜醤油ラーメン」に続く第2弾は、「燕背脂ラーメン」です!

杭州飯店(こうしゅうはんてん)

1店目は、燕背脂ラーメンの元祖といわれる「杭州飯店」さん。

1933(昭和8)年の創業・・・って、もうすぐ90周年です。スゴイ...

外観はいたってシンプルですが、店内は中華飯店の趣き。
こちらは相席が基本です。奥にお座敷もあります。
「嘉賓雲集(かひんうんしゅう)」の大きな板額。
嘉賓とは良い客のこと。「いいお客さんがたくさん集まる」という意味でしょうか。
看板通り、杭州飯店は行列ができる人気店です。

昼営業後の休憩時間におじゃましたのですが、厨房ではスタッフ総出で餃子の皮作りの真っ最中。
まるで本場の中華飯店にワープしたようなワンシーン。
中央にいらっしゃるのが2代目の徐勝二さん(会長)。

「餃子の皮はラーメンの麺と同じ粉を使っているんですよ」と教えてくれたのは、3代目で現社長の徐直幸さんです。
創業者であるおじい様は中国のご出身とのこと。


こちらが自家製の麺です。
太い!
やや平べったい極太麺。

地元の人々は、年末になるとこの極太麺を買い求め、年越しそばならぬ“年越しラーメン”を楽しむそう。

この太さにはある理由があるのですが、それは後ほどご紹介することにして…
そろそろ主役のラーメンにご登場いただきましょう!

中華そば(850円/税込)

背脂が漂うスープと極太麺、その上にはチャーシューとみじん切りした生タマネギが載っています。
背脂の量はお好みで「大脂」「普通」「少なめ」「脂抜き」を注文できます。
写真は「普通」です。

背脂ラーメンは、脂っこいイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらの元祖背脂ラーメンは見た目よりもマイルド。
また、タマネギが口の中をさわやかにしてくれます。

ちなみにメニューは中華そば以外にも、麺類は麻婆麺やタンメンなど、ご飯ものも五目チャーハンや中華丼などがあります。

杭州飯店では地元の「越後もちぶた」の新鮮な背脂だけを使っています。
じっくり煮込んだプルプルの背脂を平ざるに載せ、丼の上で振ると背脂がスープの上に散りばめられます。
「背脂チャッチャ系ラーメン」ともいわれるゆえんですね。
新鮮で良質な背脂は上品な甘みがあり、煮干しなどのだしと醤油だれが相まって奥深いうま味が感じられます。
チャーシューも「越後もちぶた」ですが、脂が少ないもも肉を使用。
もちろん背脂との相性は抜群です。

そして、極太で幅広の麺。
スープの味が馴染みやすい麺ですが、麺自体に味が感じられます。
存在感のある麺はコシがありながら、もっちりとした食感で、背脂もよく絡みます♪

背脂とこの麺なしには杭州飯店の中華そばは語れませんね。

「でも、創業当初は細麺で、背脂も載っていなかったんですよ」と徐社長。
昔は今よりも、お腹いっぱいに食べることが何よりの贅沢だった時代。
コストをかけずに(値段を上げずに)、お客さんに満足してもらおうと初代が考え出したのが背脂スープでした。
(背脂はスープを冷めにくくするという効果もありますが、それは偶然の産物だったようです)

また、金属加工の町である燕市では、工場への出前注文も多かったことから、2代目が伸びにくい極太麺を使うようになったとのこと。
 
背脂ラーメンは、お客さんにおいしく食べてもらおうという想いから生まれ、進化してきたんですね。


そして、こんなものを見せていただきました。
先代の頃からのラーメンの器たち。
(3つ並ぶのは初公開とのこと!!)

大きさの違いに歴史を感じます…。


さて、杭州飯店は餃子もおすすめなので最後にご紹介!
餃子(4個 800円、2個 400円/いずれも税込)

手のし・手切りした自家製の薄皮で包み、鉄鍋でカリッと焼く餃子。
口に入れると具材がほろほろと崩れます…絶品です!

他にも、「牛すじ煮込み」(650円/税込)などもおすすめですが、それはまたの機会に…。
杭州飯店

杭州飯店

新潟県燕市燕49-4
TEL.0256-64-3770
【営業時間】11:00~14:30、17:00~20:00
      ※土・日は通し営業 ※売り切れ次第終了
【定休日】月曜日(祝日の場合は翌日)、ほか月2回火曜日


 

大むら食堂

2店目は、「大むら食堂」さん。
1964(昭和39)年創業。杭州飯店さんとまではいきませんが、60年近く地元で愛されているお店です。

ラーメンをはじめ、そば・うどん、丼物など、さまざまなメニューがありますが、やっぱり人気は背脂ラーメン。
中華(785円/税込)

具材がたっぷり♪
写真では分かりづらいですが、器が大きい気がします。
それもそのはず、大むらの「中華」の麺はなんと300g!!!
一般的には160g~200gくらいが普通だと思いますので、これはもう大盛りです。
 
背脂(こちらのお店では「背油」)の量はリクエスト可能。
「油無し」「普通油」「中油」「多油」、さらには「特油」もあるそう。

サッパリ担当のタマネギの他に、ほうれん草なども載っています。
 
今回お話をお聞きしたのは、店主の長沢ミヨ子さん。
横浜の中華街で修業をしたご主人とお二人でお店を始めたそうで、「最初は5~6席の小さな店だったんですよ」と長沢さん。
背脂ラーメンについては、ご主人が杭州飯店さんから学んだ作り方が基本になっています。

20年ほど前にご主人が亡くなられ、現在は息子さん、娘さんと共に大むらの味を守っています。
スープ作りは長沢さんの担当。
大きな寸胴鍋の前で、毎朝6時半からスープの仕込みに入ります。
「以前、水道管が新しくなったときは苦労しました」と長沢さん。水が少し変わるだけでもスープの味に影響が出てしまいます。それだけスープ作りは繊細な作業なんですね。
深い味わいのスープ。
だしには豚・鶏ガラ、煮干しなどを使い、たれは醤油ベース。
動物と魚介のうま味が効いたスープは、ほのかな甘みの背脂とよく合います。
背脂はマイルドな感じなので、「中油」でもいけるかも?
背脂は常に新しいものを使い、次の日に持ち越すことはしません。
麺は粉から仕入れ、お店の製麺機で毎日作っています。
コシのあるしっかりとした麺(300g!!!)は食べ応えがあります。

麺は太麺が基本ですが、ご希望で細麺に変更も可能とのこと。
細麺と背脂の相性も気になります。
細麺は女性のオーダーが多いそうです。

また、タマネギやほうれん草の量もリクエストOK。

「今度は大油にしてみよう!」とか、「次は細麺にしてみようかな?」など、自分好みのバランスに微調整できる、自由度が高い背脂ラーメンです。
大むら食堂

大むら食堂

新潟県燕市小高810-4
TEL.0256-62-4746
【営業時間】11:00~14:30、17:00~19:00頃
      ※火曜日はランチのみ
【定休日】水曜日、火曜夜


 

酒麺亭 潤(本店)

燕背脂ラーメンの3店目、最後は「酒麺亭 潤」さん。

燕市の本店を筆頭に「らーめん潤」(または「らーめん処 潤」)として、新潟県内の直営店のほか、県内・外にフランチャイズやのれん分けしたお店があり、県外に「背脂(煮干)ラーメン」の名を広めたお店の一つといえるでしょう。
また、「潤」以外のブランドも展開するなどラーメン業界を盛り上げています。
ちなみに、ドイツにも「Ramen Jun」を出店しているんですよ。
 
創業は1993(平成5)年。
社長である松本潤一さんの自宅を改装した、7席のカウンターしかないお店からスタートしたそうです。
 
今回は本店におじゃましました。
お話をお聞きしたのは、店長の中村正一さん。
うちのスープは、豚ガラ、鶏ガラ、そして人柄です!」…いきなり名言をいただきましたよ!!
 
では、ラーメン作りを拝見させていただきます。
 
まずは人柄も自慢のスープから。
豚・鶏ガラと香味野菜、3種類の煮干しなどを炊き込んだだしは透明な黄金色。
「最終的に“追い煮干し”をするんですよ」と中村店長。
終盤に煮干しを入れることによって、お客さんに提供する頃にも香りが立つように仕上げます。

白くきれいな背脂は、見るからにプルプル。
チャッチャされるのを待ちわびているように見えます。
チャーシューの煮汁を使った醤油だれを入れた丼に、背脂入りのだしをざるで濾(こ)すように注げば、背脂が漂うスープの出来上がり。

そこに茹で上がった麺を投入。
あとは具材を並べて完成です。
中華そば(800円/税込)
魚介と海苔の香りがたまりません!
そう、潤の背脂ラーメンには岩海苔(厳密にはバラ海苔)が載っているのが特徴なんです。
 
先にご紹介した2店もそうですが、燕市では「中華そば」=「背脂ラーメン」なんですね。
背脂は「小油」「普通油」「中油」、海苔以外の具が隠れる「大油」、そして海苔さえも隠れる「鬼油」があります。
 
ちなみに、単品の中華そばに半熟煮卵や温野菜など4種類のトッピングができる「マル得ラーメン」(890円/税込)があり、そちらを注文する人の方が多いようです。
動物系のうま味と豊かな煮干しの香り、そして背脂がまろみを加えているスープ。
潤のラーメンが「背脂煮干中華」と称されるのが分かります。
自家製の麺は極太ストレート。角があるタイプで、食感はつるりともっちりのツルモチです。
 
燕背脂ラーメンの基本を踏襲しつつも、オリジナリティーを感じる潤の中華そば。
「少しずつ改良をしている部分もありますね」と中村店長。
進化し続けるラーメンを皆さんもぜひ!
 
酒麺亭 潤 本店のお客さんは、大半が中華そばを注文するそうですが、中華そば以外のメニューもありますので、ご報告まで。
酒麺亭 潤 本店

酒麺亭 潤 本店

新潟県燕市小牧464-12
TEL.0256-66-3685
【営業時間】11:00~15:00、17:00~21:00
      ※土・日・祝は通し営業
【定休日】火曜日
※他にも、らーめん処 潤 三条店(三条市)/燕三条らーめん 潤 中山店(新潟市) などがあります。


 
今回は金属加工のまち・燕市で「中華そば」として育まれてきた燕背脂ラーメンのお店を3店ご紹介しました。

その他の4大ラーメンはこちら
①長岡生姜醤油ラーメン編
③新潟濃厚味噌ラーメン編

④新潟あっさり醤油ラーメン編
⑤三条カレーラーメン編

燕背脂ラーメンマップ

この記事を書いた人
ケバブー

長岡生まれ新潟育ち。 ​
郷土料理からラーメン、地酒やスイーツまで新潟の食を広く愛するフォトライター。

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