名探偵コナンにも登場?「新潟市歴史博物館みなとぴあ」で歴史ある建物を観賞し、新潟の歴史を楽しく学ぶ/新潟市


2025年05月09日 29ビュー
2024年に開館20周年を迎えた新潟市歴史博物館「みなとぴあ」。敷地内には国指定重要文化財の「旧新潟税関庁舎」がありますが、学芸員の森行人さんによると「以前はそちらを資料館として活用していた」そうです。さらに充実した施設を整備し、市民の共有財産となる新たな博物館を建設する計画が進められ、みなとぴあが誕生しました。
本館の建物は1911(明治44)年に建てられた2代目新潟市役所庁舎のデザインを用いたクラシカルな外観をしており、開港後から昭和にかけての新潟の景観を再現した周辺部と、見事に調和しています。

水と共に歩んできた新潟の歴史や文化を知る

入るとお出迎えしてくれるのが、兵馬俑のレプリカ。実はみなとぴあは2007年に西安博物院と友好館提携を結んでおり、2015年に寄贈されました。兵馬俑は兵士や馬をかたどったものが多く、こちらに展示してあるような将軍の姿を表したものは、数が少ないそうですよ。
新潟は幕末の開港5港にも選ばれた地で、水と地域の発展は深い関係にあります。2階の常設展示室が伝えるのは「郷土の水と人々の歩み」。導入部のプロローグは、光のアートのような空間。床に映し出される模様は水面(みなも)をイメージしたものです。
最初のテーマは「水がつくる」です。まず、大きなスクリーンと新潟の大地をかたどった大きな模型が見えてきます。「新潟市を中心に広がる平野部がなぜできたのか、この模型と映像から、信濃川や阿賀野川が越後平野を作り出していったことが一目で分かります」と森さんは解説。最後にブラックライトで水路が美しく浮かび上がるので、ぜひそこまで観賞してみてください。
次に掲げるテーマは「水がむすぶ」。海や川を通じた交流を暮らしに活かしてきた、新潟の人々の歴史を紹介しています。まずは6,000年前の縄文時代から。当時の人たちの暮らしぶりを、発見された遺跡などから読み解いて伝える展示になっています。
上の写真は縄文時代の新潟を表したもの。
新潟の水の恵みのひとつにサケがあります。奈良・平安の時代には、かなり大規模なサケ漁を行い、加工もしていたことが分かる展示もありました。越後のサケは当時から特産物で、加工品を都への税として納めていたそうですよ。
館内には「Qステーション」というものがいくつか設置されています。分からないことがあって後で確認しようと思っても、たくさんの展示を見ているとつい忘れてしまいがち。そんな時のためにQステーションで配布されているQチケットを活用して、浮かんだ疑問や質問をメモ! 観賞後は1階の情報ライブラリーで調べてみましょう。
荷物を運ぶベザイ船という回船の模型や、当時の水運の様子を伝える大絵馬展示なども大変興味深かったのですが、私が一番心惹かれたのは「あまのてぶり」という絵巻物です。1843(天保14)年、新潟は長岡藩領から幕府直轄の天領に変わりました。その時、初代奉行としてやってきた川村修就(ながたか)は、新潟の文化に大いに興味を持ち、当時の風物を描かせたものが「あまのてぶり」なのです。他にも女性が働き手として活躍していたため戸主として認められていたことなど、庶民の生活が伝わってくる展示を見ていると、歴史がぐっと身近に感じられます。
こちらは初代萬代橋の模型展示です。おお、すごく長い感じがするなあ…と思ったのですが、実際に当時は現在の倍以上、782mもの長さがあったのだとか。「後に大河津分水ができたことで下流への水量が減り、両岸も埋め立てられたため、現在の橋はずいぶん短くなった」そう。治水工事は水害を防ぐだけでなく、さまざまな影響を生活に与えていることが伝わる展示でした。
水と人とが共存するために、先人たちは多くの努力や犠牲を払ってきました。それが次の「水に挑む」というコーナーで紹介されています。湿地を田に変える、潟の水を抜く、2つの川を立体交差させるなど、今のような重機もない時代に、さまざまな難事業に挑んできた様子を見ることができます。
上の写真は、潟の水を海に流すために新川を掘っている様子で、交差する西川の下をなんとトンネルでくぐり抜けさせるという壮大な事業をジオラマで再現したもの。
ほかにもまだまだ紹介しきれていない展示がたくさんあります。かつての花街の接待で提供されていた宴席の様子を伝えるごちそう(模型)や、新潟出身で全国的に有名になった芸能人の紹介等々、興味深い展示がたっぷりありますよ!
展示と合わせて、常設展示室の隣のミュージアムシアターで映像作品を楽しんでみてはいかがでしょうか。展示の内容を補足するような『新潟・水の記憶』、平安時代後期の越後国の伝説の妖術使いで、最後は源義綱に討ち取られたとされる黒鳥兵衛(くろとりひょうえ)を描いた民話作品『黒鳥伝説』、初代新潟奉行・川村修就から見た新潟文化を描いた『あまのてぶり』の3作品が上映されています。タイムスケジュールは館内に展示されていますが、上映が近くなると展示室内に予告アナウンスも流れますよ。

フォトスポットで美しいステンドグラスを撮影

1階に降りる前に、立ち寄ってほしいのが2階のフォトスポットです。表示看板の矢印が指し示す方向にカメラを向けると見えるのが天井のステンドグラスです。実は人気コミック「名探偵コナン」101巻の表紙にはライトアップされたみなとぴあが掲載されており、2022年に発売になったときは話題になりました。天井の形がキーになるストーリーだったこともあり、作中に描かれたものと実際は違う形ということは承知しながらも、思わずジーッと見つめてしまいました。
なお、「名探偵コナン」にはそれと思しき建物が登場するというだけで、残念ながら実名で出てくるわけではありません。
企画展示室は1階にあります。みなとぴあでは年に4回の企画展と、1回の収蔵品展を開催しています。取材時は「にいがた てしごと・ものづくり」展(6月8日まで)を開催中でした。漆器・下駄・仏壇・織り物など、新潟で受け継がれてきた手仕事やものづくりの魅力を紹介しています。
写真は、南区月潟地域で作られていた「まゆ玉(せんべい)」。なんともかわいらしいですね。
企画展示室の向かいにあるのが情報ライブラリーです。先ほど紹介したQチケットに書いた疑問点はこちらで調べることができます。スタッフの方もいるので、気になる事はぜひ尋ねてみてください。(12~13時はお休み)
1階には他に、無料で利用できる「たいけんのひろば」があります。直接触れて体験できるハンズオン展示が中心で、楽しく遊びながら昔の風俗や暮らしぶりについて知ることができます。こちらではワークショップも行っており、子ども向けだけでなく、大人向けのプログラムも開催されていますよ。
興味を惹かれたのが「とびだす!にいがたの昔の風景」という写真展示コーナーでした。2019年に「みなとぴあ歴史発見プロジェクト企画展・地図と古写真でみる新潟の文明開化展」が開催されました。それに合わせて行われた体験プログラムで、かつての懐かしい新潟の町の様子を伝える写真を、立体加工したものです。加工ひとつで写真の見え方がこんなにも変わるのかと目からうろこ。まるでアート作品のようでした。
エントランスホールにはショップがあります。訪ねたときは企画展に合わせて、絵付けロウソクなどの職人の手仕事作品が販売されていました。「名探偵コナン」が話題になったときは、こちらでコミックの販売も行っていたそうです。過去の企画展のパンフレットなども一部置いてあります。

往時の水の都を今に伝える周辺を散策

みなとぴあの敷地には堀を模した水路が整備され、往時の様子が再現されました。水の都の風情を感じることができる素敵な環境なのですが、現在は一部の水路で水が抜かれており、復旧は未定とのことです。
敷地内には歴史的建造物が2棟あります。ひとつが国指定重要文化財「旧新潟税関庁舎」です。開港に伴い関税業務を担うために1869(明治2)年に作られました。当時の税関として現存する唯一の建物です。西洋建築はまだ一般的ではなかったため、職人たちが見よう見まねで作った「擬洋風建築」なのが特徴です。カーブを描いたアーチ、蔵でよく使われるなまこ壁など、和洋の混在に注目してみてください。
なお中にはレトロなテーブルがあり、飲食も可能になっています。重要文化財の中で持参したものを楽しめる、レアなスポットです。
もう1棟は1927(昭和2)年建築の旧第四銀行住吉町支店です。2002年から翌年にかけて、現在の場所に移築復元されました。こちらは映画『万能鑑定士Q-モナ・リザの瞳-』の撮影に使われたことがあります。
こちらを見学する際にチェックしてほしいのが、1階にある営業室だった空間です。実は壁の大理石に化石が埋まっているのです! ぜひ探してみてください。
駆け足でお伝えしてきましたが、最後におまけをひとつ。信濃川沿いに立地するみなとぴあの対岸は万代島で、正面に佐渡汽船のターミナルが見えます。そこからフェリーが出航する時に、ターンしてこちらに向かってくるさまは大迫力!森さんは「当館にいらっしゃった際に時間が合えばぜひその様子も楽しんください」と話していました。
新潟市歴史博物館みなとぴあ

新潟市歴史博物館みなとぴあ

住所:新潟市中央区柳島町2-10
TEL:025-225-6111
開館時間:9:30〜17:00(観覧券の販売は閉館30分前まで)
料金:常設展示観覧料(シアター観覧料含む)一般390円/大学生・高校生260円/中学生・小学生130円
※企画展示観覧料は、企画展ごとに異なる
※旧新潟税関庁舎、旧第四銀行住吉町支店、屋外芝生広場は見学・入場無料
定休日:月曜日(休日の場合はその翌日)、年末年始

企画展「にいがた てしごと・ものづくり」
2025年4月12日(土)~6月8日(日) 
一般500円 大学生・高校生300円 中学生・小学生200円(常設展も含む)
※中学生・小学生は土日祝日無料

新潟市歴史博物館みなとぴあ

この記事を書いた人
和田明子

長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中。