ものづくりに触れる旅~歴史の奥深さと匠の技を満喫~参加レポート(後編)/加茂市・三条市・燕市


2022年03月30日 4728ビュー
好きな言葉は、JUST DO IT!ライターの中林憲司です。
 
ものづくりが盛んな県央地域(燕市、三条市、加茂市、田上町)を巡るモニターツアーに2日間参加してきました。
 
今回は後編、2日目のレポートです。
 
前編(1日目)レポートはこちら▼
◎2日目の行程
・加茂紙漉場/加茂市
・諏訪田製作所/三条市
・燕三条地場産業振興センター(道の駅 燕三条地場産センター)/三条市
 
では2日目のものづくりの旅へ、JUST DO IT!

楮(こうぞ)5分間たたき続け体験!? 加茂紙 漉場(かもがみ すきば)/加茂市

ものづくり探訪ツアー2日目は、加茂市からスタートです。
「北越の小京都」と呼ばれる加茂市。
「加茂」という名は京都にルーツがあり、独特の町並みが特徴的です。
加茂駅前から約1.5キロある商店街の雁木通りは、たとえ雨の日でも町並みを楽しみながらウォーキングができます。
加茂駅前から雁木通を歩いて約10分。
商店街に並ぶ「加茂紙 漉場(かもがみ すきば)」へやってきました。
 
加茂紙の歴史やこの場所が出来た経緯などは、こちらの記事で詳しく知ることができますので是非チェックしてみてください↓
加茂紙漉場で製造を行う鶴巻由加里さんに、作業工程や特徴などをお聞きしました。
加茂紙ができるまでには、原料となる楮(こうぞ)を蒸して皮を剥ぎ、楮煮や楮たたきを行い、そして紙漉きや乾かしと、たくさんの工程があります。
その工程の一部を見せていただきました。
楮の皮を煮て、汚れやキズを取り除く「チリ取り」を行います。
チリ取りした楮をソフトボール台ほどの大きさに丸く固めておき、水気を絞ります。
今回の体験はここからです!
通常の体験は紙漉き体験がメインですが、今回は特別に楮を叩いて繊維をバラバラにほぐす「楮たたき」を体験させていただきました。
 
丸めた楮を石の台の上に広げて・・・
繊維をほぐすために木槌で叩き続ける!これが「楮たたき」!

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・
ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・
ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・
 
叩く時間は、5分間。
なかなか体力を使う作業に、ちょっとタイマーのアラーム音が待ち遠しく感じました(笑)
楮たたき、完了!(いい運動でしたー)
のしイカのようになりました。
これを、1日に20玉ほど叩きつづけるそうで、鶴巻さんでも毎回筋肉痛になるのだとか。
 
かつて加茂で行われていた伝統的な手法でつくられる「加茂紙」。
完成品の裏にある、和紙づくり職人の地道な作業を体感しました。
こちらは紙漉きの作業をするところ。
この日紙漉きの作業は行っていませんでしたが、前もって予約をすれば、こちらを体験することが可能とのことです。(令和4年度の体験日程は未定)
写真を加茂紙に印刷したものや、しおりなどの小物が展示されていました。
やわらかさを感じる独特の風合いを感じます。
市内加茂山公園にある神社「青海神社」では、御朱印に加茂紙が使われているそうです。
一度、途絶えかけた加茂紙の歴史を復活させ、伝統の技法と歴史を学べる「加茂紙 漉場」
加茂市のまち歩き立寄りスポットとして、訪れてみてはいかがでしょうか。
加茂紙 漉場

加茂紙 漉場

住 所:新潟県加茂市上町1-22
電 話: 0256-52-4184
時間:9時〜16時
営業日:月曜〜金曜

感動の連続!工場見学・ショッピング・グルメを堪能「諏訪田製作所」/三条市

加茂市「加茂紙 漉場」から車で約40分。
次に伺った場所は三条市の「諏訪田製作所」です。
 
ここでは超人気商品の「つめ切り」をメインに製造販売しており、さらに工場見学をすることができます。
エントランスに入ると、2体の兵士?
つめ切りの製造過程で出る排材を利用して職人さんたちが作ったもの。
ちなみにお腹部分をよく見ると、「つめ切り」が格納されています。
こちらは大きなライオンの作品。すごい迫力!
細かいところまで本当に手が込んでいます。
こちらはヨーロッパの貴族が住む洋館にありそうな照明器具。
 
ここは美術館ですか?

驚きと感動のオープンファクトリー

いよいよ工場見学へ出発!
ご案内いただいたのは、ショップ店長の鈴木晃子さん。
 
はじめに製造工程を説明する動画を見て、つめ切り製造の基礎知識を学びます。
惹きつけられる数分間の映像と鈴木さんの解説に、職人たちが作る現場へこれから入っていく!というワクワク感が高まります。
 
いざ、製造現場へ・・
一歩足を踏み入れると、飛び込んでくるこの光景。
これまでの工場のイメージを覆す、とても綺麗で洗練された空間が広がっていました。
 
ここはSF的な未来空間ですか?
作業場の壁や機械が、黒に統一されていることに気付きます。
 
黒は諏訪田製作所のコーポレートカラーであり、その理由は様々。
まず「鍛冶屋」を英語で、ブラックスミスと呼ぶということ。
さらに職人さんは、火の色、鉄の色で温度を判断しており、周りが明るいと見えにくいため暗くするという合理的な側面。
そして、「自分達も玄人(くろうと)になろう!」という職人たちの思い。もとは緑色だった機械を、職人さん達自らの手で黒く塗ったのだそうです。
 
黒への思いやこだわりを知り、とても感動しました!
火花を散らしながら作業をする女性。
職員さんたち一人ひとりが真剣な表情で作業をしている様子が、本当にかっこいい!
職人は若い人や女性がとても多いことに驚きます。
聞くと男女比率は半々。ベテランから若手職人まで幅広く働いているそうです。
 
研削、研磨、刃付けなど、各工程には、それぞれの作業に適したスペシャリストの職人が配置されています。
 
老若男女の職員が適材適所で活躍する職人たち。これまでの古い工場のイメージとは、まったく違った光景で、本当にカッコイイ職人さん達を見ることができました。
こちらは刃が左右ぴったりと合うように仕上げる、合刃(あいば)という工程。
刃と刃の間から光が漏れないようにチェックをしながら、やすりから指先に伝わってくる微妙な感覚を頼りに調整していきます。
もしここで失敗をしてしまうと、ここまで作り上げられてきた約1ヶ月~3ヶ月の工程が無駄になってしまうという、とても重要で難しく、高い技術が要求される作業だそうです。
最終チェックを行う、検品の工程。
このお部屋はチェックしやすいようにと、あえて白を基調とした明るい部屋となっています。
小さな傷が無いかや、刃物にとって最も重要な切れ味などを厳しく検査しています。
工場見学の通路脇にはこれまで製品されてきたものが展示されており、諏訪田製作所の歴史とともにご説明下さいました。
 
工場内の雰囲気、作業の様子、そして歴史。
驚きと感動の連続でした!
オープンファクトリ―

オープンファクトリ―

営業時間:午前 10:10〜12:10、午後 13:00〜17:00(休憩時間 12:10〜13:00、15:00〜15:10)
定休日:毎週月曜日、日曜祝日、年末年始、4/1休業

工場見学の次は、ファクトリーショップへ。
諏訪田製作所でつくられた商品はもちろんのこと、県央地域で生活用品なども販売されています。
オシャレなもの、珍しいもの、便利なものなどが多数あり、じっくり眺めているだけでも楽しいセレクトショップです!
諏訪田製作所の商品は、県内外の取り扱いで販売されているのですが、この場所でしか買えない限定品が売られています。
 
そのひとつがこれ!
一番人気!『FACTORY LIMITED』(工場限定販売)

定番商品のクラシックLと同じ材質・同じ大きさで柄の形状を滑らかな曲線に仕上げ、手に握った際にピタッとフィットするように作られています。
そして「ここでしか買えない!」という事で、柄の内側に工場のロゴが特別に刻印されているのです!

お値段もクラシックLと比べだいぶお得になっている『FACTORY LIMITED』
工場でしか買い求めることができない特別なアイテムなのです!!
※月の生産数が限られていますので、売り切れの際はご容赦ください(諏訪田製作所より)

この他にも、手作業で製造する際にできてしまった傷や磨きむらなどの理由でのアウトレット品も販売されています。
※アウトレット品は、出た時に出た分だけの販売となります(諏訪田製作所より)
同じつめ切りでも、足の爪用や、猫用のものなど、様々な種類のつめ切りがあります。
そして、試し切りも可能!
切れ味が素晴らしく、切った後の爪はヤスリの必要が無いほど綺麗に切れるから驚きです。
私、商品の素晴らしさと匠の技術に感動し、SUWADAのつめ切りを購入!現在自宅で愛用しております♪
ファクトリーショップ

ファクトリーショップ

営業時間:10:00~18:00(年末年始は除く)
定休日:年中無休

SUWADAショクドウ「レストラン クイキリ」

諏訪田製作所は工場見学とセレクトショップだけではありません。
レストラン&カフェも楽しめる!本当にスゴイとしか言いようがありません。
 
ここはテーマパークですか?
レストランの名前は「SUWADAショクドウ RESTAURANT CUIQUIRIT(クイキリ)」
 
諏訪田製作所のルーツの製品である「喰切り」。そして、フランス語で料理を意味する”CUISINE”の”CUI”と、笑顔を意味する”qui rit”を組み合わせた「笑顔になる料理」という言いを込められているそうです。
本日のパスタランチセットA(1,320円・税込)をいただきました。
<お料理の内容>
アマトリチャーナ パンチェッタ(イタリア産塩漬けポーク)のトマトソース、ローマ風。
チーズはグラナパダーノを削っているもの。自家製フォカッチャ カップスープ ミニサラダ付。


まさにお料理が登場した瞬間に笑顔になってしまうほど美しさ。
そして食べてみると、もちもちのパスタに絶妙のチーズの塩気。もちもちのパン、自家製のスープも暖かくて味わい深い美味しさ。
 
ほっと心が落ち着くような、温もりが感じるお料理。
自然と笑顔になりました♪qui rit!
 
この他にも、ステーキ丼やカレーなど、食材や調理にこだわった匠のお料理が堪能できます。
工場見学に訪れたなら、食事もセットで楽しんでいただくことを超絶お勧めします!
 
デザートにはお隣の見附市の諏訪乳業の牛乳を使ったソフトクリーム。
エスプレッソとの組み合わせは抜群!デザートでも食の匠を堪能しました♪
実はここ「クイキリ」は、諏訪田製作所の社員食堂にもなっています。
一般客と分けられているエリアを覗くと、ちょうど社員さんたちがランチ中。
このような風景を垣間見られることが、ちょっと嬉しいと言いますか、工場見学が続いている感じがします。
ベテランから若手までがコミュニケーションしやすい環境で、切磋琢磨してものづくりをして製品を生み出している。そんな背景が、「食」を通しても感じられました。
SUWADAショクドウ レストラン クイキリ

SUWADAショクドウ レストラン クイキリ

営業時間:12:30〜14:00 、日曜11:30~14:00
定休日:毎週月曜日、祝日、年末年始、4/1休業

■CAFE Smiths’(カフェスミス)
営業時間:10:00〜17:00 (軽食提供の時間帯は10:00~16:00)
定休日:年末年始、4/1休業

株式会社 諏訪田製作所

株式会社 諏訪田製作所

住所:新潟県三条市高安寺1332番地
TEL:0256-45-6111

ものづくりに触れる旅のしめくくり!道の駅 燕三条地場産センター/三条市

2日間巡ったものづくりに触れる旅の最後に訪れた場所は、「道の駅 燕三条地場産センター」
北陸道三条燕インターから約5分。上越新幹線の燕三条駅からも歩いて5分ほどの場所で、まさにものづくり2大都市の中心地点。
 
燕市のカトラリーやタンブラーなどの磨き上げられた洋食器と、三条市の包丁や金槌や鋸などの鍛冶技術の製品。
 
それらの商品約1万点が並ぶ物産館の道の駅です。
物産館の中央奥にある、緑地に白でデザインされているロゴマークは、「燕三条ブランドマーク」です。
燕市を表すツバメと、三条に流れる3本の川(信濃川、中ノ口川、五十嵐川)と三条の「三」をイメージしています。
この物産館の特徴は、様々な商品を見比べることができる!という点。
 
包丁ひとつにしても、メーカーによって様々な種類の包丁があったり、同じ種類でも微妙な違いがあったりします。
メーカーごとの違いやこだわりを見比べながら、自分に合ったお気に入りを探すことができます。
むむっ!
特別な存在感を発するブースを発見。

こちらは今話題となっている大人気のおろし金「ツボエの極上おろし金」!
「大根おろしの概念が変わるほど使いやすい」と聞きとても気になりましたが、メーカー長期欠品中・・

もし見つけたらラッキーかもしれませんよ!
燕三条地場産センター物産館でも体験メニューが用意されています!
こちらは、スプーン磨き体験(料金:300円・税込)
本格的なバフ研磨機により、カレースプーンを磨いてピカピカにする体験です。
自分の力でピカピカにしたマイスプーンはもちろんお持ち帰りができます。
 
所要時間は5分程度なので、サクッと体験したいという人にはお勧めです!
燕三条で生まれた製品がもっとも集結している場と言っても過言ではない、道の駅 燕三条地場産センター。
ものづくりを巡る旅の終着「駅」として、匠のお土産をゲットしてみてはいかがでしょうか。
燕三条地場産業振興センター(道の駅 燕三条地場産センター)

燕三条地場産業振興センター(道の駅 燕三条地場産センター)

住所:新潟県三条市須頃1-17
営業時間:9:30~17:30
定休日:毎月第一水曜日、年末年始

様々な「匠」を見て、触れて、食べて、体験をした二日間。
どの場所でも、思い出がしっかり残っているのは、ものづくり体験や裏側を知ることで、しっかりと心に刻まれたからでしょう!
 
ものづくりの奥深さ。知る楽しさ。作る喜び。
 
新潟県を代表するものづくりの地・・・
いや、日本を代表するといっても過言ではありません。
 
燕市、三条市、加茂市、田上町で、「匠」の奥深さに触れてみてはいかがでしょうか。

今回訪れた場所

この記事を書いた人
中林 憲司(なかばやし けんじ)

1978年新潟県加茂市出身。サラリーマンからライター&ブロガーに転身し第二の人生をスタート。愛する新潟と人生を探訪中。