ものづくりに触れる旅~歴史の奥深さと匠の技を満喫~参加レポート(前編)/燕市・三条市・田上町


2022年03月25日 5682ビュー
こんにちは。
手先は不器用だけれど、好奇心だけは自信がある!なんでも体験したがり系ライターの中林憲司です。

ものづくりが盛んな県央地域(燕市、三条市、加茂市、田上町)を巡る2日間のモニターツアーに参加してきました。

旅のテーマは「ものづくりに触れる旅~歴史の奥深さと匠の技を満喫~」

県央地域に古くから伝わり現在も進化し続ける「ものづくり」の現場を訪れ、体験を通して匠の技や歴史の奥深さを知る2日間をレポートいたします!

今回はレポート前編です。
◎1日目の行程

・燕市産業史料館/燕市
・釜めし松月/燕市
・玉川堂/燕市
・三条鍛冶道場/三条市
・湯田上温泉ホテル小柳/田上町

盛りだくさんの1日目!
いざ、ものづくりの旅へ。

匠のルーツを知る場所。「燕市産業史料館」/燕市

先ず訪れた場所は、北陸自動車道三条燕I.Cから車で7分、燕市産業史料館。
燕三条地域の産業といえば、日本全国に誇る「金物のまち」。

ここでは、金物産業が発展してきた歴史を、数々の展示品などから学ぶことができます。
今回のモニターツアーをナビゲートしていただいたのは、燕市産業史料館で学芸員をされている齋藤優介さん。
燕市の産業史の知識はもちろん、県央地域全体の地理や歴史・・いや、新潟県全域にも精通されていらっしゃる人物です。お話がお上手で面白い!

ものづくりに触れる旅で最初に触れた「匠」は、齋藤さんのトークでした(笑)
本館に入るとすぐに大型スクリーンがあり、約5分間の映像が流れるのですが、これがとても重要!
約400年つづく金物産業がなぜ県央地域に生まれ、そして現代までどのようにして発展してきたのか。その理由や歴史をぎゅっと凝縮して分かりやすく伝えてくれます。
原材料や燃料、職人の技術や川が活用された流通網。それらの要素が絡み合い、誕生した金物産業。

「ここ燕は奇跡の地だったのです」と話す齋藤さん。

金物産業の歴史を地理的視点で理解すると、これまで何気なく見ていた県央地域の道や川、山々などの景色ががらりと変わって見えてきました。

燕市産業史料館は県央地域の「ものづくりに触れる旅」のスタートにふさわしい場所。
ものづくりの歴史や基礎知識をここでしっかりと学びましょう!
さまざまな展示がある中で、ひときわ目を惹いたのは鎚起銅器(ついきどうき)の展示です。

鎚器銅器とは、数百種類に上る金鎚と当て金(あてがね)を使い分けて、銅板から立体製品を生む技術。
鎚器銅器の技術でつくられた「やかん」や「花瓶」など多数展示されています。
銅板を職人の手仕事でつくりあげていく鎚起銅器。
職人技術の匠さはもとより、アート作品としての美しさにも驚かされます。
2010年に重要無形文化財保持者「鍛金」に認定され燕市名誉市民となられた、人間国宝の玉川宣夫さんの作品が多数展示。
 
木目金(もくめがね)という超高等技術の作品が並びます。
金属の色の違いを利用して木目模様を創り出す「木目金」。
まさに木目のような模様が、金属だけで表現されているということには本当に驚かされました。
本館にはほかにもヤスリ、煙管(きせる)など職人の技術が見事に表現された作品が多数展示されています。
 
一つ一つの作品に燕市の歴史や職人技術の伝承に思いを馳せながら、じっくりと学ぶことができました。
新館の「日本の洋食器展示室」では、金属洋食器の歴史を知ることができます。
 
燕市は金属加工製品の中でも、最も盛んにつくられているのがスプーンやフォークなどの金属洋食器。
日本国内で製造されている金属洋食器95パーセントが燕市でつくられているということには驚きでした!
これは貴重!
約90年前に横須賀海軍で使われていたというフォークやスプーンが箱付きで展示されています。これも燕市でつくられたものだそうです。
このスプーンで横須賀海軍カレーが食べられていたのでしょうかね!
現代に近づくにつれ、洋食器としての使いやすさが洗練されていくのが分かります。
特徴的なデザインが施されたものや、ノーベル賞晩餐会で使用されたものなど、歴史の1ページに立ち会ってきた燕の洋食器が多数展示されています。
展示室の見学だけでも一日過ごせそうなほど、とても濃い内容の「燕市産業史料館」ですが、ここはそれだけにとどまりません。
 
「体験工房室」では、実際にものづくりを体験することができます。
今回体験させていただいたのは、銅製のタンブラーへの「鎚目(つちめ)入れ」体験。
 
鎚起銅器は本来一枚の銅板から器の形にしていきますが、この体験では既にタンブラーの形にしてあるものに、鎚目を入れていく作業を行います。
 
つまり、最終仕上げとなる鎚目のデザインを施して、自分だけのオリジナルタンブラーを作り上げることができるのです!
もちろん持ち帰ることができるので、自宅でお好みのドリンクと共に「匠」の思い出に浸ってください♪
カンカンカンカン・・・
カンカンカンカン・・・
 
この作業、侮るなかれ。
 
意外と大変です!!!
しっかり力を入れて叩かないと、鎚目が付きません。
 
所要時間は約30分、イメージするデザイン(鎚目の入れ具合)を目指し、一生懸命に叩きました。
若干ムラがあるものの、一応完成!
 
なかなかの体力消耗でした(笑)
しかし、それだけにしっかりと達成感を味わえます。
 
そして、先ほど見学した鎚起銅器を思い出しました。
「金属を叩いて形を作る・・相当大変ですごい技術だ・・・」という事を、体験することでより理解できました。
 
この他にも、「ぐい吞み製作」「洋白コーヒースプーン製作」「鎚起銅器の小皿づくり」など初心者でも楽しめる体験メニューが用意されています。
燕の金物産業を深く知るためにも、「ものづくり体験」はおすすめです!
燕市産業史料館

燕市産業史料館

住所:新潟県燕市大曲4330-1
開館時間:午前9時~午後4時30分(体験受付は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
入館料:大人400円、小・中学生、高校生100円、団体(10名以上)/大人300円、小・中学生、高校生80円、年間パスポート/大人2,000円、小・中学生、高校生500円
お問い合わせ:TEL 0256-63-7666

ものづくりのまちに根付いたハレの日の食文化「釜めし松月」/燕市

(画像提供:燕市観光協会)
 
燕市のグルメといえば、「背脂ラーメン」を思い浮かべる人は多いと思いますが、実はもう一つ燕の地に根付いている食文化があるのをご存じですか!?
 
それは「釜めし」です。
 
昭和34年に開業した「松月食堂」(現・釜めし松月)が、お店で「釜めし」を提供しはじめたことをきっかけに釜めし人気に火がつき、金属産業界の社長たちを中心に支持されたそうです。

大きな仕事を受注した時や、さまざまな祝い事などの「ハレの日」に、社長が社員らに「釜めし」を振る舞うということがありました。

釜めしは、そんな嬉しい場面に登場し、燕市に根付いた食文化なのです。
燕の金物産業の歴史を、食でも体感!
ということで、燕の釜めし文化の元祖といえるお店、「釜めし松月」へ伺いました。
 
店内はテーブル席や小上がり席のほか、団体客にも対応できるお座敷も用意されています。
五目釜めし(990円・税込)
釜の蓋を開けると、ほかほかの釜めしから立ち上る湯気と、醤油のいい香りが漂い、空腹の胃袋を刺激します!
途中まで食べたところで、味変に挑戦。
必殺、バター落とし!!!
バター(55円・税込)を追加することができます。
 
このバター落としはやばいです・・・
味が変わるというか、旨味が増すというか、とにかく釜めしとの相性が抜群!
 
バター落としは、燕の伝統技術といわれているとかいないとか・・・
ぜひお試しを!!
釜めしを折箱に入れてもらって、テイクアウトすることも可能です。
 
燕の金物業界では、会合などの帰りに釜めしをお土産に持ち帰ると、家族は大喜びで食べるという光景があるそうです。
 
「冷めた釜めしも、旨いんですよ!」と齋藤さん。
 
燕の金物産業の中で「ハレの日」に登場する釜めしは、燕のものづくり文化を知るには、外せない一品ですね!
釜めし松月

釜めし松月

住所:新潟県燕市大字桜町227
営業時間:11:00~14:00 17:00~22:00(L.O)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)
TEL:0256-62-4075

「釜めし松月」から車で約10分。
次にやってきたところは鎚起銅器の老舗「玉川堂」(ぎょくせんどう)です。
 
燕産業史料館に展示されていたあの「鎚起銅器」。その伝統技術が脈々と受け継がれている現場がこちらです。
築100年を超えるこの建物は国の登録有形文化財に指定されています。
一歩足を踏み入れると目に飛び込んできたのは、職人さんたちが仕事をしている作業場です。
黙々と作業をしている職人さんを本当に目の前で見ることができます。
 
まるで見学者の存在に気が付かないように見えるほど、集中して作業をしている職人のみなさん。
金属を叩く音だけが部屋の中に鳴り響いています。
10人ほどの職人さんが作業をしていました。
驚いたのが若い人や女性の職人さんが多かったこと。
 
なんでも、玉川堂で技術を学びたいと、県外から移住をして仕事をされている人も多くいらっしゃるのだそうです。
こちらは、金属を特殊な液体などに通し化学反応を起こさせて、色をつける作業をする場所。
 
鍛金の技術のみならず、様々な工程で高度な技術があり、それが長い年月をかけて磨かれ続けています。
こちらはギャラリー兼ショップ。
趣のある落ち着いた和室で、鎚起銅器の完成品をじっくりと眺めることができます。
特に注目いただきたいのは、1枚の銅板からつくられる「口打出(くちうちだし)」という“やかん”です。
「口打出」は玉川堂の職人技術の真骨頂とよばれ、これが作れるようになるまでには10年くらいの修行が必要だとか・・・
使えば使うほど、時が経てば経つほど色や光沢に味がでてくるそうです。
他にも一品ものの作品を手に取り、じっくりと見ることができます。
 
長い間受け継がれてきた技術によって生まれた“一生ものの逸品”に会えるかもしれません。
玉川堂

玉川堂

住所:新潟県燕市中央通2丁目2番21号
営業時間:8:30〜17:30
定休日:日曜・祝日
<工場見学>
・5名以上の団体様の場合は予めご予約が必要です。
・工場見学時間 10:00〜、11:00〜、13:00〜、14:00〜、15:10〜
・所要時間 約20〜30分
・料金 無料(団体様は別途お問い合わせ下さい)
・休業日 日曜日、祝日、年末年始、夏期休業
・対応人数 1名〜25名様
※その他注意事項などは、ホームページにてご確認ください。

一本の釘がペーパーナイフに!「三条鍛冶道場」/三条市

次は三条市へ。
やってきた場所は、玉川堂から車で約15分、「三条鍛冶道場」にやってきました。
三条市は「鍛冶」のまち。

鍛冶というと日本刀などの「刀鍛冶」をイメージする方も多いかもしれませんが、現代に近づくにつれ和釘や鉈(なた)、包丁などの日常を豊かにする道具が多くつくられるようになっていきました。

ここ三条鍛冶道場では、鍛冶の歴史を学ぶことができ、さらにちょっとディープな鍛冶体験をすることができます。
三条市の鍛冶の歴史を語る上で、もっとも重要なものが「和釘」です。
 
日本家屋に古くから使用されてきた「和釘」づくりが盛んに行われ、全国に流通していったといいます。
 
現在では、和釘の製造は減ってしまったものの、神社仏閣や日本家屋の修復などには今も三条の和釘が使われるそうです。
こちらは鍛冶体験ができる施設。
鉄を熱するコークス炉、グラインダー、ハンマー類など普段目にすることがあまりない機械や道具が揃っています。
 
ちょっと素人では手が出せなそうな機械ばかり・・・

しかし大丈夫!ベテランの職人さんが寄り添ってくださり、鍛冶体験をすることができます。

この日は、1本の釘からつくるペーパーナイフづくりを体験させていただきました!
釘をコークス炉に入れて、約1500度の炎で釘を熱します。
若干怖くてドキドキしましたが、なかなかできない初めての経験にワクワクします。
「鉄は熱いうちに打て!」を、実際に行うのは初めてでした。
この時点でアドレナリンが分泌!私の気持ちは完全に鍛冶職人に!
職人さんに手伝ってもらい、ペーパーナイフの取っ手部分をつくる為に一気にねじります!
ここ、エキサイティングポイントです!!
形が整ったら、次はグラインダーで刃の部分をとがらせていきます。
先に職人さん見本をみせてくれてたあとに実際に自ら体験。
力の入れ具合や角度など細かい動きを、とても丁寧に教えてくれます。
最後に職人さんが刻印を入れてくれたら完成です!
いかがでしょう!
一本の釘がオリジナルのペーパーナイフに!
 
自分で作ったことが信じられませんでした。(職人さんの指導があってこそでしたが笑)
 
他にも和釘づくりの体験や、包丁砥ぎ体験も行える「三条鍛冶道場」
 
本格的な機械を使って自ら作り上げるものづくり体験はとても貴重な体験です。
ちょっとスリリングな本格鍛冶体験を行ってみてはいかがでしょうか!
三条鍛冶道場

三条鍛冶道場

住所:新潟県三条市元町11-53
営業時間:9:00~17:00
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、臨時休館日12/29~1/3
TEL:0256-34-8080

時刻は17時ころ。この日の宿泊先、湯田上温泉「ホテル小柳」に到着しました。
 
ロビーに入ると目に飛び込んできたのは、カウンター奥の美しいオブジェ。
日中見学した燕市の「玉川堂」の彫金技術と、加茂市の「渡辺建具店」がつくる組子細工がコラボレーションされたもの。
 
県央地域ならではのアート作品。なんでも、時間帯によって組子の位置をずらし、見え方を変えているのだそうです。
チェックイン・チェックアウトの際には、是非ご注目ください!
レクリエーションスペースにも匠のこだわりが。
「天童木工」の職人によってつくられ、リオ・オリンピックに採用された本格的な卓球台は一番人気。
 
他にも地元「茂野タンス店」が製作した無垢のフローリングスペース。
無垢の桐製品を使用した玩具などがあり、お友達や親子連れまで楽しめるスペースです。
めずらしいのが、加茂市の名産「桐玉」を用いた足浴。
桐の玉が足の裏を刺激すると心地よく、不思議と足湯のようにポカポカしてくるから不思議です・・・
ディナータイムは、夕食会場の「味彩厨房ゆごや」へ。
この日いただいた夕食は、「新潟うまいもん会席」
新潟ならでは旬の食材をふんだんに使ったコース料理です。

先ずは2段の重箱が登場。佐渡のえご、紅鮭糀漬、胡麻豆腐、鱈親子漬け、水蛸とサーモンのハーブサラダ。
どれも新鮮で上品な味付けです。
メイン料理は、新潟和牛せいろ蒸し、旬のお造り、のど黒塩焼き、栁カレイ天ぷら、茶わん蒸し。そしてご飯は越後こしひかり。
 
実に贅沢な新潟産づくしのお料理の数々。美味しいごはんがどんどん進みます!
美味しい新潟の料理には、新潟のお酒ですよね!
地酒の飲み比べセットを注文。麒麟山、〆張鶴、景虎の3種類が登場しました。
 
なお湯田上温泉ホテル小柳では、温泉と食事が付いた日帰りプラン「日帰りde温泉」が、とても人気があります!
その模様はコチラの記事をご参考にご覧ください↓
明朝、まだ日が昇りきらない時間にホテル小柳自慢の露天風呂へ。
 
眼下には越後平野が広がり、ものづくりの旅として巡った田上町・加茂市・三条市・燕市を一望できます。

今まで知らなかったものづくりの地政学的なルーツや歴史を知ったせいか、この景色が感慨深いものがありました。
湯船に柵のないインフィニティ式の露天風呂。

ちょうど目の前には月が浮かび、お湯にも浮かんでいました。
 
ホテル小柳の様々な「匠」のおもてなしをご堪能ください。
湯田上温泉ホテル小柳

湯田上温泉ホテル小柳

住所:南蒲原郡田上町大字田上乙1322-1
送迎:JR信越線田上駅からの無料送迎あり(要予約)、新潟駅南口より無料送迎(前日まで要予約)
お問い合わせ:0256-57-5000

「ものづくりに触れる旅」1日目に訪れた場所

この記事を書いた人
中林 憲司(なかばやし けんじ)

1978年新潟県加茂市出身。サラリーマンからライター&ブロガーに転身し第二の人生をスタート。愛する新潟と人生を探訪中。