【珠玉のコース料理×ペアリング<第3弾>】素材の滋味を引き出す、魚幸の技と姿勢を体感/燕市


2022年08月09日 751ビュー
こんにちは。ライター&カメラマンのリョウヘイです。

珠玉のコース料理×ペアリングを巡る旅。シリーズ第3弾は燕市米納津にある、日本料理 魚幸(うおゆき)さんです。
さっそく向かってみましょう。

▶シリーズ第1弾の記事はこちら
▶シリーズ第2弾の記事はこちら
ところで「米納津」という地名、みなさんはどう読むか分かりますか?
こめのうづ…?よねのうづ…?
正解は「よのうづ」です。

燕市のホームページによると、元々は独立した米納津村でしたが1954年の合併で吉田町になり、2006年の平成の大合併で燕市になったという歴史が解説されています。
そんな米納津へ行ってみましょう。

米納津の中心に立つ日本料理店

こちらが米納津の中心を東西に貫く県道250号線です。

板張りの外壁に瓦屋根。味わいのある住宅や蔵が立ち並ぶ昔ながらの景色が広がっています。
この道を吉田方面から東へと進んで行くと…。ありました。
縁起のいい七宝文様の壁に「魚」と染められた白いのれん。右手の看板には「魚幸」と書かれています。

左側の壁は左官仕上げで、弧を描くコテの跡が魚のウロコを連想させますね。
入口の引き戸を開けると、そこは待合スペースになっており、ガラスケースにはテイクアウトできるお料理が並んでいます。
そこから入って左手を見ると細い通路が伸びており、左右にテーブル席があります。
白い列柱が印象的ですが、こちらは竹をモチーフにした陶器の柱。
和を基調としながらも、色味を抑えてシンプルにまとめた空間です。
のれんをくぐると4人掛けのテーブルが2卓。
こちらはグループで食事会をするのに良さそうですね。
通路の反対側にも4人掛けのテーブルがありますが、こちらは個室風の空間です。
一度待合に戻って、今度は正面へ進んでみましょう。
こちらはL字型のカウンター席。
装飾を抑えたシンプルな空間で、落ち着いて料理と向き合うことができそうです。
日本料理魚幸は、2014年の夏にオープンした会席料理のお店。

お昼は2,530円と3,850円のお弁当、5,500円・7,000円・11,000円のコース料理(要予約)を提供しています。
夜は完全予約制で、8,800円・11,000円・13,200円~のコース料理のみを提供しています。 (上記金額は全て税込)

こちらが料理長の渡邉雄太さん。
渡邉さんは1984年生まれで、ここ米納津出身。
新潟調理師専門学校を卒業後に京都の料亭で5年間修業を積み、その後新潟市内の日本料理店で2年間修業。
そして、30歳になる2014年に日本料理 魚幸を新設しました。

「元々祖父の代からここで“魚行”という名前で商売をやっていて、父の代では仕出しをやっていました。僕は3代目ですが、親からは店を継いでほしいと言われたことはありませんでした。でも、親の後ろ姿を見て漠然と料理人になりたいと思っていたんです。調理師学校に入った頃は、イタリアンやフレンチの料理人に憧れていたのですが、学校の研修で京都の料亭を訪れたのが転機となりました。その時に食べた日本料理が惹き込まれるくらいおいしくて、その体験があって日本料理の道を歩むことに決めました」と渡邉さん。

渡邉さんが大切にしているのは、豪華さや派手さではなく、シンプルでありながらも素材やだしのうまみを引き出して完成度を高めることだと言います。
「魚の手当てを丁寧にしたり、焼く時の炭の品質にこだわったり。お客さんから見えない仕事にこそ力を入れています。それから魚を仕入れる時、必ず市場で自分で見て選ぶようにしています。食材は地元のものを中心に使っていますが、特に新潟の野菜は在来種が多いのが魅力ですね。コース料理で使う食材の100%が県内産になることもあります。県外から訪れた方に喜んで頂けますし、地元の方には『こんなにおいしくなる野菜たっだのか!』と驚かれたりもします。おいしい日本料理にすることで、地元の野菜の魅力を伝えていきたいですね」と渡邉さん。

新潟の季節を体感できる、会席料理と日本酒のペアリング

それでは、夜に提供される11,000円(税込)の会席料理と日本酒のペアリング、とくと味わわせて頂きましょう。

一品目 玉蜀黍すり流し × 八海醸造株式会社 純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年

はじめに登場したのは玉蜀黍(とうもろこし)のすり流しです。

地元燕市にある宮路農場で朝穫れた新鮮なとうもろこし。これをミキサーにかけてから裏ごしします。そして、それをとうもろこしの芯・昆布・水でとっただしで伸ばしていきます。上に添えられているのは、燕市吉田本町産の「もとまちきゅうり」の雷干し。

すり流しを口に含むと、想像をはるかに超えた濃厚さに驚かされました…。ざらりとした舌触りと共に、とうもろこしが持つ甘さと香りが体中に広がっていき、それは、幼少の頃からの夏の記憶が全て呼び起こされるような体験でした。

お酒は辛口でキレのいい、八海山の純米大吟醸雪室貯蔵三年。このお酒でとうもろこしの甘みをスパッと切り、続く二品目へ備えます。

二品目 養老豆腐 枝豆 花穂 × 大洋酒造株式会社 鄙願(ひがん) 大吟醸

二品目は、だしと寒天とゼラチンを火にかけて溶き、叩いた長芋と合わせて冷やし固めた養老豆腐。

その下には、だし・醤油・みりんを合わせたジュレが敷かれています。冷たくさっぱりとした養老豆腐に、これまたさっぱりとしたジュレが合わさり清涼感抜群。燕市で採れた枝豆“初だるま”が夏の訪れを感じさせます。

お酒は鄙願(ひがん)の大吟醸。燕市分水にある酒・ほしののプライベートブランドで、非常にすっきりとしたお酒です。
さっぱりとした養老豆腐にぴたりと寄り添ってくれます。

三品目 海老しんじょう × 高千代酒造株式会社 高千代 美山錦 純米生原酒おりがらみ

さっぱりとした料理が続いた後は、佐渡産の南蛮海老を使った海老しんじょうが運ばれてきました。

南蛮海老を切らずに一尾ずつ丸ごと入れているのが特徴です。柔らかいすり身と、しっかり形を残した南蛮海老。噛むごとに海老のうまみが口の中に広がっていきます。

そこに合わせるお酒は、高千代のおりがらみ。辛口でうまみも強い純米酒で、海老しんじょうを引き立ててくれます。

四品目 御椀 焼茄子 鯛 柚子 × 宮尾酒造株式会社 〆張鶴 特撰 吟醸酒

輪島塗のお椀の登場です。蓋を開けると内側には美しい沈金が施されていました。非常にデリケートな器で、洗う時はガーゼを使うそうですよ。

吸い地(お吸い物の汁)は本枯れ節というカビ付けした鰹節を昆布だしに入れてとったもので、豊かな香りがあります。そこにふっくらと仕上げた佐渡産の鯛と焼茄子のスモーキーな香りが加わり、実に深い滋味を堪能できます。

お酒はお椀の温度に合わせて、〆張鶴 特撰をぬる燗で。お吸い物の香りに負けないけれど、出過ぎない。そんなバランスを考えて選ばれた吟醸酒です。

五品目 御造里 あら × 合名会社渡辺酒造店 根知男山 山廃仕込

温かい料理が続いた後は、再び冷たい料理に戻ります。こちらは佐渡産の本あらのお造り。

きれいな薄いピンク色の身は、処理をして10日程熟成させたものなのだそう。「身全体に脂が回っておいしいですよ」と渡邉さん。

醤油は長岡市摂田屋で醸造されている「越のむらさき」を酒で2倍に薄め、それを火にかけ鰹節を加えたもの。魚沼産の香り高いわさびをのせ、醤油をつけて頂く本あらは、生臭さが一切なく滑らかで美しい味わい。

「仕入れる前の処理がうまいからできる熟成です」という渡邉さんの言葉には、漁師さん・魚屋さんへの信頼と敬意が感じられました。

お酒は根知男山の山廃仕込。米作りも行う酒蔵なのだそうで、強いうまみが脂ののったあらと好相性。酸味がアクセントになっています。

六品目 御造里 のど黒 胡瓜ジュレ × 鮎正宗酒造株式会社 鮎正宗 純米酒

もう一つお造りが続きます。今度はフレンチの前菜のように美しく仕上げられたのど黒です。

佐渡産ののど黒は、皮目に焼いた炭を押し付けた後すぐに氷水で冷やす“焼き霜造り”という調理がなされています。その上にのっているのは、すりおろしたもとまちきゅうりと土佐酢をあえたジュレ。さらにその上に、みょうがと花穂じそがのっています。のど黒の脂とうまみ、炭の香り、酢の風味、きゅうりやみょうがの爽やかさ…。さまざまな要素が重なり合い共鳴します。

お酒は妙高市の鮎正宗の純米酒。さっぱりとした香りと味わいが、きゅうりの酢の物と重なります。

七品目 青梅白ワイン煮 × 樋木酒造株式会社 鶴の友 純米酒

6品を頂いたところで箸休め。加茂市のいりえ栄蔵果樹園の青梅の白ワイン煮は、酸味を抜くために表面に針を打ち、1日濃い塩水に浸け、それを沸かさないように湯がき、その後に水にさらすのだそうです。その後も湯がく、水にさらすを繰り返し、計4日かけ、最後に砂糖を加えた白ワインで煮て完成。

スプーンを入れてみるととっても柔らかく、青梅と白ワインの香りが口の中にあふれました。煮汁を使ったシャーベットにも梅の香りが染み込んでおり、これだけでもデザートとして頂きたいくらいのおいしさです。

お酒は鶴の友の純米酒。フルーティーな味わいとすっきりとした後味が、爽やかな青梅と調和します。

八品目 甘鯛松笠焼き × 八海醸造株式会社 純米大吟醸 八海山 浩和蔵仕込(こうわぐらじこみ)

お次は寺泊港で水揚げされた甘鯛です。表面がごつごつしていますが、こちらは鱗に高温の油をかけて松ぼっくりのように仕上げた松笠焼き。

仕上げに自家製のからすみを粉状にして振りかけています。パリパリとした鱗に肉厚な身。からすみと絞ったすだちの香りが融合し、改めて日本料理の奥深さを感じました。

お酒は八海山の浩和蔵仕込。八海山の中でも特別な純米大吟醸酒で、ワインのような香りを持っています。からすみとも、甘鯛の上品な白身とも相性のいいお酒です。

九品目 食事 こしひかり 本枯れ節 黄味醤油 × 有限会社加藤酒造店 金鶴 純米酒 拓(ひらく)

いよいよコースも終盤を迎えました。ここでごはん物です。新潟市南区にある鷲ノ木地区で採れたコシヒカリを、弥彦山の湧き水を使い土鍋で炊いたご飯が運ばれてきました。地元ツバメファームのアスタ卵の卵黄をかけ、その上に鰹節をかけて頂きます。

粘りのある卵黄は、調味した醤油に3日間浸けたもの。本枯れ節は美しく見えるように幅広に削っています。これまでの料理の数々を振り返りながら、余韻と共に噛みしめるごはん。これもまた乙なひとときです。

ごはんを味わった後は、佐渡の純米酒「拓」の熱燗ですっきりとして最後のデザートに備えます。

十品目 水菓子 ガンジー牛 蜂蜜アイス × 大洋酒造株式会社 イチゴ花酵母 Junmai Ginjo Yechigo-Murakami 大洋盛

デザートは長岡市和島の加勢牧場で飼育しているガンジー牛のミルクを使ったアイスクリーム。

さり気なく練り込まれているのは新潟市西蒲区にあるはちみつ草野のアカシアの蜂蜜。上品な香りが鼻に抜けていきます。添えられているのは村上市産のパッションフルーツで、甘酸っぱい果肉がアイスとよく合います。

お酒はイチゴ花酵母を使った大洋盛の純米吟醸酒。入り口の甘さがある純米吟醸酒は最後のデザートとの相性も良く、締めくくりにふさわしいお酒なのでした。

日々精進し、高みを目指していく

実に緩急がついたバリエーション豊かなコース料理で、心に響く映画を見終えた後のような余韻に浸れます。最後に渡邉さんに、会席料理の魅力と今後の目標について聞いてみました。

「会席料理には野菜だけの料理があったり、うまみの強い魚があったり、揚げ物、お吸い物、蒸したもの、生のもの、ごはん、デザートと、幅広い調理法のものを少しずつ食べられるのが魅力だと思います。抑揚を付けたり、ストーリー性を持たせたりできるのも会席料理の面白さですね。あと、今後の目標というのはないんですよ。昨日よりも上手にできるように日々努力を繰り返すのが僕にとっての料理だからです。1日たりとも完璧にできたという日はありませんし、完璧な料理は一生たどり着かないものだと思います。それでもずっと頑張り続けていきたいですね」と渡邉さん。

魚幸を開いて8年。渡邉さんの挑戦はこれからも続いていきます。
日本料理 魚幸

日本料理 魚幸

住所:新潟県燕市米納津3216
電話:0256-93-2657
時間:11:30~13:30入店(14:30閉店)、18:00~19:00入店(21:30閉店)
定休:火曜日

※訪れたのは2022年6月下旬です。2022年夏に内装のリニューアルを予定しているそうで、2022年中に新たな空間に生まれ変わります。

この記事を書いた人
リョウヘイ

ライター・カメラマン・編集者。1983年生まれ、新潟県五泉市育ち。
建築学生時代に旅に目覚め、20代の頃に25カ国を旅行。東京都内の出版社で海外旅行情報誌の編集に携わった後、新潟へUターン。
2018年に独立。日本の地方から世界の辺境まで、旅をしながら多様な文化と暮らしを探るのがライフワーク。