【珠玉のコース料理×ペアリング<第2弾>】割烹渡辺で旬の新潟食材を心行くまで堪能する!/新潟市


2022年07月27日 3529ビュー
こんにちは。ライター&カメラマンのリョウヘイです。

珠玉のコース料理×ペアリングを巡る旅。シリーズ第2弾は新潟市西蒲区にある、割烹渡辺さんです。
さっそく向かってみましょう。

▶シリーズ第1弾の記事はこちら

旧巻町の中心部に立つ、会席料理に特化した割烹

JR巻駅から徒歩3分。昔ながらの街の中にある割烹渡辺さんは、蔵のような落ち着いた佇まいの建物です。

白い壁と黒い板張りの建物に「渡辺」という小さな表札が見えます。
黒い壁を背景に植栽の緑が際立って見えますが、背景に徹しようとする建物の在り方に奥ゆかしさが感じられます。

アプローチは光が抑えられた細い通路で、正面には対になった狛犬のシンボルマーク。
ここを歩いて行くことで別世界へと誘われるようなワクワクした感覚に浸ることができます。

建物内は中央に光を落とした廊下が伸びており、その左手にはカウンター席、右手には2卓のテーブル席が配されています。
どちらの空間も、絵画のように切り取られた坪庭の緑が目を楽しませてくれます。
割烹渡辺は昭和8年(1933年)に川魚専門店うろこやとして開業し、その後、割烹渡辺に名前を変え現在に至っています。

以前は全150席を擁する大規模なお店でしたが、2021年春の移転リニューアルを機に大幅に縮小。
現在は少人数のお客様に対して会席料理のみを提供するスタイルに変化を遂げています。

こちらが4代目店主の渡辺大生(わたなべひろお)さん。
渡辺さんは1974年生まれで、新潟市中央区西堀にある割烹で修業を積み、24歳で家業に入り4代目になったそうです。

「少しずつ宴会スタイルから会席料理にシフトしていき、15年以上かけて会席料理が受け入れられるようになったんです。僕たちが本当に納得したものをお出ししたい。その形が会席料理。コロナ禍でお弁当を出していた時期もありましたが、普段は会席料理のみを提供しています。料理に使う食材は新潟で採れるものが中心です。山菜や夏野菜、キノコ、カニ、ジビエなど…、新潟は四季を通じてスペシャルなものがあり、この豊かな土壌のおかげで、献立に悩むことがありません。新潟ならではのおいしい料理を食べに、県外の人にもっと新潟に来てほしいという思いがありますし、普段新潟の食材を食べている県内の人も驚くような非日常的な体験を楽しんで頂きたいと考えています」と渡辺さん。

少しお話を聞いただけでも、渡辺さんの料理に対してあふれる想いが伝わってきます。

新潟食材が百花繚乱。ユニークな地酒と共に

今回私が頂いたのは、スタンダードコース11,000円(税込)+3,000~4,000円(税込)相当の日本酒という組み合わせです。

では、さっそく渡辺さんの解説を伺いながら珠玉の料理の数々を地酒と共に味わいたいと思います。
料理ごとに選ばれた、食洗器使用不可のこだわりの器の数々にも注目です。

一品目 たこのお造りと柔らか煮 × 越後鶴亀 越弌(こしいち) 純米大吟醸

調理法を変えたたこを2種類味わえる料理で、お造りの方はたこの頭と十日町産のアケビの新芽。
そこに辛子酢味噌がかけられ、さらに紫色のアサツキの花が彩りを添えています。

もう一品は、たこの足を柔らかく煮たもので、溶きがらしと木の芽(山椒の若い葉)がのっているお造りと煮もの。

それぞれ彩りが美しく、たこの食感とうまみ、酢味噌や木の芽の風味も豊かで、目を閉じて全神経を舌に集中して味わいたくなる一品目なのでした。

ペアリングの越弌は、ふくよかで香りが高く、酸も利いたお酒。
今や新潟の酒は淡麗辛口だけではありません。

一品目でこの銘柄を選んだのには、「変わってきた新潟のお酒を体感してほしい」という渡辺さんの意図があります。酢味噌や煮だこの甘みを補う味わいもポイントです。

二品目 真鯛の潮仕立て × 峰乃白梅酒造 菱湖(りょうこ) 純米ドライ

近海で採れた真鯛に、渡辺さんたちが地元西蒲区で採ったタケノコを添えた潮仕立ては、だしの繊細な風味が味わえるお椀物。江戸時代後期に作られた輪島塗のお椀で供されます。

お酒は繊細なだしを壊さず、寄り添ってくれる菱湖 純米ドライが選ばれています。

三品目 さざえのお造り × 大洋酒造 鄙願(ひがん) 大吟醸

三品目は、佐渡産さざえに十日町産のわらびを合わせ、ポン酢としょうがでさっぱりと仕上げたお造り。

ペアリングの鄙願(びがん)は、燕市旧分水町にある酒・ほしのさんのプライベートブランドで、「料理を絶対に邪魔しない」というコンセプトでつくられたものなのだそう。

「さざえは香りや苦みが強く、合わせるお酒によっては生臭く感じることもありペアリングが難しいんですよ。鄙願は料理の後を一歩下がって付いてくるお酒で、香りや苦みもリセットしてくれます」と渡辺さん。

コリコリとした食感と磯の香りを味わっていると、目の前に佐渡の風景が浮かんでくるようです。

四品目 黒むつのお造り × 渡辺酒造 根知男山(ねちおとこやま) 純米酒

ノドグロ以上に脂がのっているという糸魚川産の黒むつは、10日間熟成させた後に、炭火で炙ってお造りに。
先ほどのさっぱりとしたさざえに対して、こちらは脂がのりコクっとしたうまみが特徴です。

花穂じそが散りばめられた切り身を口に含むと、スッと溶けていくような滑らかな食感と炙ることで生まれた香ばしさが堪能できます。

お酒は同じ糸魚川産の根知男山。黒むつの強い脂をすっきりと流し、クリアにしてくれるお酒です。

五品目 南蛮海老とアスパラガスの春巻 × 笹祝酒造 笹印 低精白生もと純米無濾過酒

五品目に揚げ物の登場です。南蛮海老は佐渡産を、アスパラガスは燕市旧吉田町の宮路農場産を使用。下に敷かれたほろ苦いふきのとうのたれを絡めれば、新潟の海と山と畑の恵みを同時に体感できます。

こちらに合わせるのはコシヒカリを使い天然酵母で醸されたお酒。熱々の料理に合わせて熱燗で頂きました。

六品目 尼鯛とこごみのたたき梅添え × 加茂錦酒造 荷札酒 純米大吟醸

揚げ物の後はさっぱりとした寺泊産の尼鯛の出番。こちらは魚沼産のこごみとたたき梅が合わせられています。小皿にのっているのはパリパリとした食感が心地いい鱗せんべいです。

合わせるお酒はマイナス5度で貯蔵される加茂錦酒造の荷札酒。芳醇な味わいが、こごみのクセや梅肉の酸味と融合します。

七品目 桜鱒の炭火焼き山椒の香り × 君の井酒造 恵信 純米大吟醸

七品目になり焼き魚が登場しました。炭火で焼き上げた桜鱒は、口に運ぶたびに幸福感に浸れるぜいたくな肉厚さ。そこにキンピラと醬油漬けにしたウドが添えられています。上にのっているのはブドウの新芽の天ぷらで酸味がアクセントに。

今回はお酒とのペアリングですが、炊き立てのご飯との相性も抜群に良いことでしょう。

ペアリングの恵信は純米大吟醸特有のふくよかさと香り高さに加え複雑味もあるお酒で、桜鱒の香りと脂、ウドのクセのある風味と重なりさらに深い世界へと誘ってくれます。

八品目 自家製からすみ2種仕立て × 武蔵野酒造 スキー正宗 別注

もう既に大満足なのですが、ここで小皿にちょこんとのせられた料理が運ばれてきました。

自家製のからすみと大根おろしです。上に散りばめられているのは同じからすみを削ったもので、塊で食べるのとは違った味わいや香り、食感を楽しむことができます。

ペアリングはカワセミのラベルがかわいらしい、甘みと酸味が強めのスキー正宗<別注>。
うまみと塩味が強いからすみと対照的ですが、あえて一組だけ対極的なものを合わせることで変化を付けているのだそうです。

九品目 新発田牛のすき焼き ぜんまいの一本煮添え × 宮尾酒造 〆張鶴 銀ラベル 大吟醸

最後の料理は、脂がよくのった新発田牛とぜんまいを甘辛く仕上げたすき焼きで、こってりと濃厚な味わいです。上にのせられた花山椒の香りが鼻の奥へスッと抜けていきます。

最後にすっきりとした新潟らしいお酒を、ということで〆張鶴が登場。
甘いすき焼きを食べた後に口に含むと、大吟醸の甘さが重なってすき焼きの甘みや脂を打ち消し、持ち前のキリっとした風味が口の中をリセットしてくれます。

シンボルマークに込められているのは、お客様との阿吽の呼吸

渡辺さんの料理にかける情熱と、新潟の食材の豊かさ、お酒の種類の豊富さが伝わりましたでしょうか?

24歳で家業を継ぎ、そこから24年。かつての宴会スタイルから、一品一品を丁寧に提供する会席料理へと形を変え、理想の形に辿り着いた渡辺さん。

「以前の大規模な店ではできなかった、カウンターを挟んで料理をお出しするスタイルが長年の目標でした。シンボルマークの狛犬は、カウンターで向かい合う僕たちとお客様の阿吽の呼吸を意味しているんです」と渡辺さん。
なるほど!よく見ると、狛犬の一方は口を開けて、もう一方は口を閉じているんですね。まさに阿吽です。

料理は季節や仕入れによって変化するため決まった献立はなし。
「一品一品お客様に驚いてほしいから、お品書きも置いていないんですよ」と渡辺さん。

新潟という地域性を深く味わえる大人のエンターテインメントがここにあるのです。
ここでさまざまな食材やお酒に触れることで、今度は県内各地へ、産地を巡る旅に出たくなるのではないでしょうか。
割烹 渡辺

割烹 渡辺

住所:新潟市西蒲区巻甲2443
電話:0256-72-2859
営業時間:9:00~23:00
※昼営業 12:00~13:00まで入店
※夜営業 18:00~20:00まで入店
定休日:水曜日 (第1・3週は火、水曜日連休)

エリア

新潟・阿賀エリア

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この記事を書いた人
リョウヘイ

ライター・カメラマン・編集者。1983年生まれ、新潟県五泉市育ち。
建築学生時代に旅に目覚め、20代の頃に25カ国を旅行。東京都内の出版社で海外旅行情報誌の編集に携わった後、新潟へUターン。
2018年に独立。日本の地方から世界の辺境まで、旅をしながら多様な文化と暮らしを探るのがライフワーク。

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