【珠玉のコース料理×ペアリング<第1弾>】すしあらいが追究し続ける、奥深きシャリと魚の世界へ。/新潟市


2022年07月09日 876ビュー
はじめまして。
ライター&カメラマンのリョウヘイです。

この度、新潟県が誇る割烹・レストラン・すし店・旅館を巡り、コース料理とお酒のペアリングを味わう旅に出ることになりました。

プロフェッショナルのこだわりが詰まった料理の数々を、丁寧に選び抜かれたお酒と共に味わう贅沢な時間。
そこでは、料理のおいしさはもちろんのこと、極上の料理を探求し続ける料理人の飽くなき好奇心や、新潟の風土・文化といった背景まで、五感を使って深く堪能できるのです。

この特別な体験は、県外から訪れた人にとっては、新潟という土地のイメージをがらりと変えるものになるでしょうし、県内に住む人にとってはまだ知らなかった新しい新潟の発見につながることでしょう。

街にひっそりと佇む、隠れ家のようなすし店

前置きが長くなってしまいましたが、さっそく最初のお店へ出掛けてみましょう!

本シリーズ第1弾は新潟市中央区東万代町にある、すしあらいさんです。 新潟駅を背に万代方面に歩いて行くと、新しいアパホテル&リゾートが立つ流作場五差路に出ます。そこを右に曲がると、アーケードが架かった万代町通りが伸びており、300m程進んだところに今回の目的地すしあらいさんがあります。

アーケード沿いに立つ黒塗りの杉板外壁の建物が印象的ですが、入口が見当たりません。
角に面した壁に「すしあらい」と書かれた矢印付きの看板がありますので、そちらへ進んで行くと…
ありました!入口が。
とは言え、とても控えめな看板で、知る人ぞ知る隠れ家…といった風情が漂っていますね。
玄関土間で靴を脱ぎ、中に入ると広がるのがこちらです。
梁を現しにした古民家のような空間で、左手に6席のカウンター。
右手にはテーブルが2卓置かれています。
厨房は少し下がった場所にあるため、席から調理風景を眺めながら食事を楽しめます。
奥にはカーペット敷きの個室も用意されています。
すしあらいは新発田市出身の荒井大心(あらいだいし)さんが独立して始めたお店で、完全予約制。料理は、にぎりのみのコース14,300円(税別)と、おつまみとにぎりのコース14,300円(税込)、おつまみとにぎりのコースに日本酒のペアリングが付いたコース19,800円(税込)の計3種類を用意しています。

こちらが店主の荒井大心さん。
荒井さんは1978年生まれ。秋田市のすし店で修業した後に新潟に戻り、西堀通のすし店で十数年修業をして2017年に独立しました。

「すしは、シャリ8ネタ2の割合でシャリが大事」という荒井さん。
そのこだわりについて聞いてみました。

「うちでは岩船産のコシヒカリを使っていますが、新米は使わず春まで低温で保管し水分を抜いてから使っています。新米は瑞々しくて香りがありますが、実はうまみは古米の方があるんですよ。それから、お米はある程度の等級を超えると産地や銘柄に関わらずどれを食べてもうまいです。私が岩船産コシヒカリを使っているのは、修業時代から扱っていて熟知しているからですね。最初にシャリの味と温度を決めます。そこに、仕事を施したネタと煮切り醤油がピタリと合わさるとおいしいすしになるんですよ」と荒井さん。

シャリに対しての並々ならぬこだわりが、発する言葉一つ一つから伝わってきました。

一品料理からすしへ。調和と変化に富んだペアリングコース

 では、シャリの重要性を教えて頂いたところで、日本酒のペアリングが付いた「おつまみとにぎりのコース」をさっそく頂きたいと思います!

一品目 佐渡の根もずく × 頚城酒造株式会社 八恵久比岐 純米大吟醸 風

だしの豊かな風味あふれる加減酢に浸かった根もずくは、程よい酸味で食欲をそそります。
夏にふさわしい爽やかな一品目ですね。

佐渡の根もずくは一般的なもずくよりも太くしっかりとしています。

このさっぱりとした一品目に合わせるお酒は、上品な香りと爽やかな酸を感じさせる「八恵久比岐 純米大吟醸 風」。冷やですっきりと頂きます。美しい曲線を描く木本硝子の酒器が相まって、清涼感のある幕開け。

この後に続く料理への期待感も高まりますね!

二品目 蒸し鮑と鮑の胆の味噌漬け × 株式会社マスカガミ 萬寿鏡 F50

三陸産の鮑(あわび)は2時間かけてじっくりと蒸された逸品。
サッと湯がいて味噌漬けにした胆が添えられています。

「鮑はすし屋の永遠のテーマと言えるくらいゆで加減が難しいんですよ。蒸し過ぎると味が抜けてしまうし、蒸し足りないと堅い。いかに鮑のうまみを引き出せるかが、職人の腕にかかっています」と荒井さん。

お酒は蒸し鮑の温度に合わせたぬる燗。先ほどの冷やの後に温度を変えることで、単調にならないように気を遣っているのだそうです。酒器も華やかな九谷焼に変わり、先程とは全く異なる印象です。

それにしても、絶妙な歯ごたえと味わい深い鮑…。
いつまでも味わっていたくなります。

三品目 いさきのお造り × 鮎正宗酒造株式会社 純米にごり生酒 毘(びしゃもん)

三品目は、皮目を炙ったいさきのお造り。
日本海の塩とレモンがアクセントになっており、炙りによる香ばしさとレモンの酸味が見事に融合しています。

「お酒は先ほどの辛いぬる燗から、冷たくて甘酸っぱいものへと変わります。はじめにお出しする3つのお酒に変化を付けて、味覚を動かすようにしているんですよ。料理の方も、海藻、貝、魚…と、味も温度も異なるものを出していますが、最初の3つに変化を付けるのが私のやり方なんです。ペアリングについては、酒器と温度と食べ合わせを特に重視しています」と荒井さん。

次にどんな料理とお酒が来るんだろう!?と、ワクワク感がどんどん高まっていくのを感じましたが、それは荒井さんの意図通りだったのですね!

四品目 鰹の漬け × 朝日酒造株式会社 久保田 純米大吟醸

血合いを取り除いた鰹(かつお)は、外側の1~2mmにだけ火を入れ、その後、特製の漬けだれに5時間ほど漬けているのだそう。
上にはタマネギ醤油がのっていますが、すりおろしたタマネギと甘めの煮切り醤油が融合して、口に入れると豊かな香りがフワッと広がります。

先程のさっぱりとした塩レモンから、タマネギ醤油の強いうまみへ。白身魚から赤身魚へ。そんな変化も考えられています。

お酒は久保田の純米大吟醸。通称「香る久保田」と言われるくらい香りの良さに特徴があるそうですが、甘いタマネギ醤油と合わさることで、さらに豊かな香りを楽しむことができます。

五品目 太刀魚の炙り × 高の井酒造株式会社 田友 特別純米

こちらは、塩と酢で仕事をした太刀魚(たちうお)の皮目を炙り、醤油を付けた刺し身。塩と酢で仕込むことで水分を出し、炙ることで皮目に付いている脂のうまみをじわっと引き出しています。

あくまで炙るのは皮目だけで、身の部分はレアを味わえます。 この炙り刺しに合わせるのは、ぬるめの燗にした田友の特別純米。

「先程の甘くて香りのあるお酒から、ぎゅっと引き締まった甘くて酸のある温かいお酒に変えています。この流れで、田友が一層お酒らしく感じられるんですよ」と荒井さん。

六品目 岩牡蠣 × 今代司酒造株式会社 IMA(アイエムエー) 牡蠣のための日本酒

次に登場したのは、なかなかお目にかかれない大きな岩牡蠣!大分産の岩牡蠣にレモンを添えただけのシンプルなものですが、荒井さんのこだわりは前後の料理や使う包丁に現れています。

「牡蠣は鉄分との相性が悪いため、鉄分を多く含む鰹がコースの前後に並ばないようにしています。包丁も鉄ではなくステンレス製を使っているんですよ」と荒井さん。

この岩牡蠣に合わせるのは、今代司酒造のアイエムエー。なんとこちら、牡蠣に合わせるために作られたお酒なのだそうです。

鉄分は少なく、逆にリンゴ酸を多く含ませていますが、これが牡蠣に抜群に合うんですね。白ワインのような風味が特徴です。

七品目 時不知鮭 × 緑川酒造株式会社 緑川 Cask Collection マスターブリュワーズセレクト

七品目は北海道産の「時不知(ときしらず)」と呼ばれる鮭で、こちらは5kgアップの貴重なときしらずなのだそう。

皮目に火を入れ、ワラを焼いた煙で薫香を付け、日本海の塩を振るという調理法により、生・燻製・焼きの3つを楽しむことができます。

お酒はウイスキー樽で仕込んだという緑川のマスターブリュワーズセレクト。
18.5度と高めのアルコール度数で、薫香を漂わせるときしらずとの相性が抜群なのです。

八品目 鮪の皮ぎしのお吸い物 × 高千代酒造株式会社 髙龗(こうりゅう)

鮪(まぐろ)の皮と身の間にある、特にうまみが凝縮した「皮ぎし」と呼ばれる部位を使ったお吸い物。

合わせるのは、高千代酒造の髙龗(こうりゅう)。一般売りされない珍しい銘柄なのだそうです。

「精米歩合48%の県内産のお米を使い、アルコール添加をなるべく少なくしてゆっくりと醸したお酒で、究極の普通酒という感じでしょうか。フワッと香るんですが、キレもいい。その間にうまみがあるんですよ。お吸い物の温度と合わせた熱燗が味覚を刺激してくれますよ」と荒井さん。

九品目 鯛とアオリイカのにぎり × 株式会社北雪酒造 北雪 甚九郎

九品目になり、ようやくおすしが現れました!

相模湾で獲れた鯛は、塩をして3日置くことでうまみを引き出し、シャリと合わせているのだそう。
三重で獲れたアオリイカは、生きたまま仕入れたものをさばき、立て塩をして3日くらいたったものを使っています。イカの甘みを感じやすくするために、細かく刃打ちして断面を広くしているのもポイント。

お酒は北雪の甚九郎で、有機栽培のコシヒカリを使って仕込んでいます。
コシヒカリらしい甘みがあるお酒で、シャリの温度に合わせて常温で出されています。

十品目 鮪、トロ、コハダのにぎり × 株式会社越後鶴亀 越弌(こしいち)

お次は新潟の鮪とトロ、佐賀のコハダのにぎりです。

「コハダは塩と酢で締めていますが、これを食べればそのすし屋が分かると言われています。コハダがおいしく感じる条件というのが一つあり、それはシャリに合っているかどうか?ということなんです。コハダはしっかり締めないと生臭い。でも、しっかり締めるとしょっぱくなる。ではどうすればいいか?しっかり締めた上で、シャリに合わせてあげることが大事なんです。そうすると、しょっぱさや酸っぱさは感じなくなるんですよ」と荒井さん。

お酒は、鮪やコハダの酸味に同調する越弌が選ばれています。

十一品目 南蛮海老と鳥貝 × 越銘醸株式会社 壱醸

佐渡で獲れた南蛮海老は、塩をして1日置くことで甘みを引き締めているそうです。食べてみるとねっとりと濃厚な味わいを堪能できました。その隣には京都舞鶴で獲れた貴重な鳥貝が並んでいます。

お酒は壱醸。「うまみ・甘みのバランスのいいお酒で、南蛮海老と鳥貝にピタッと合わせています」と荒井さん。

十二品目 ウニと穴子 × 宮尾酒造株式会社 〆張鶴 純 純米吟醸

濃厚な味わいのウニは北海道のバフンウニ。
そこに伊勢湾の海苔、シャリ、煮切り醤油が調和した逸品です。穴子は江戸前の煮穴子で、生きた穴子を押さえ付けてさばいたものなのだそう。

「うちの煮穴子は歯がいらないと言われるくらい柔らかいです。温かい状態でお出ししますが、口に入れた瞬間に穴子の香りがフワッと鼻の奥へと抜けていきますよ」と荒井さん。

そこに合わせるのが〆張鶴の純のぬる燗。お酒の温かさによって、ウニの香りがさらに豊かに感じられます。

十三品目 ネギトロ巻きと玉子焼き × 菊水酒造株式会社 品評会用出品酒

最後は、トロを叩いて巻いたネギトロ巻きと、見た目がカステラのような玉子焼き。
玉子焼きは、南蛮海老のすり身と大和芋、新発田の川瀬養鶏場の思い出たまごと調味料をすり鉢で1時間くらい合わせ、それをフライパンでさらに1時間かけて焼く…という、非常に手間がかかったものなのだそうです。

それに合わせるのは、菊水酒造の「品評会用出品酒」という珍しいお酒で、扱っている酒屋さんが非常に少ないのだとか。こちらは新発田の大野屋さんという酒屋さんから仕入れているそうです。

すし職人として、引き算の料理を追究し続ける

十三品の料理と十三種類の日本酒というペアリングコース。
全ての仕事に一切の妥協がなく、前後の関係性までが丁寧に考えられたコースなのでした。

「すしは単純だけどものすごく奥行きがある料理。いくつものお米の種類、炊き方、味付けがあり、そこに魚を寄せ、さらにそれに合う煮切り醤油が加わる。何万通りもの組み合わせがある中から決めていく必要があり、そこが難しくもあり面白さでもあります。私は珍しいことをやろうとする人間ではないので、シンプルな引き算の料理を今後も追究していきたいですね。今私は44歳ですが、もっともっと職人としてスキルを磨いていきたいです」と荒井さん。
すし職人として、日々お米と向き合い、魚と向き合い、日本酒と向き合う荒井さん。
カウンターの向こう側で繰り広げられる荒井さんの真剣勝負を、ぜひ体感してみてはいかがでしょうか?
すしあらい

すしあらい

住所:新潟市中央区東万代町9-26
電話:025-385-6007
営業時間:15:00~22:00
定休日:水曜日

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この記事を書いた人
リョウヘイ

ライター・カメラマン・編集者。1983年生まれ、新潟県五泉市育ち。
建築学生時代に旅に目覚め、20代の頃に25カ国を旅行。東京都内の出版社で海外旅行情報誌の編集に携わった後、新潟へUターン。
2018年に独立。日本の地方から世界の辺境まで、旅をしながら多様な文化と暮らしを探るのがライフワーク。