また「ただいま」と言える新潟の離島「粟島」へ。民宿「ますや」と巡る大人の島旅/粟島浦村


2025年07月23日 645ビュー
みなさん、こんにちは!ライターのナガシーです。

仕事で立て込んでいる。常に時間に追われて、慌ただしく過ぎていく毎日。
そんな日々に、少しだけリセットしたくなるときはありませんか。

新潟県の北部、日本海にぽっかりと浮かぶ周囲わずか23kmの小さな島、粟島
ここは、そんなあなたのための「心の処方箋」になるかもしれない場所です。

そして、その最高の舞台を用意してくれるのが、温かい思い出と共に再生した「民宿ますや」 。
この宿を拠点に、ありのままの島の姿に触れながら、忘れられない島旅が、ここから始まります。

友情が灯した宿「ますや」で、静かに始まる旅

粟島の玄関口、内浦港からほど近い場所に、その宿は静かに佇んでいます。
かつて粟島で、多くの人から深く愛された「民宿ますや」。
切り盛りしていたのは、宿の息子・本保正義さんの母。

彼女は休む間もなく働き、自ら育てた野菜で料理を振る舞い、その人柄と笑顔で訪れる人々を魅了しました。
人々は宿に泊まるためだけでなく、「お母さん」に会うために島へ。
彼女が亡くなった後も、遠く福島からわざわざお墓参りに訪れる人がいるほど、その存在は大きかったとのこと。
「また再開しないの?」

常連客からの声援を受け、
母の想いが詰まったこの場所を何とかしたいと願っていた本保さん。
2024年の夏、彼は一つの決断をしました。高校時代の親友、上村さんに電話をかけたのです。
「宿、やってみない?」

当時、茨城県で暮らし、転職を考えていた上村さんは、最初こそ戸惑ったものの、親友の熱い想いに心を動かされます。
様々な仕事経験を持ち、「なんとかなる」が信条の上村さん。

「新しいことをやるなら今しかない」

彼は30年近く住んだ土地を離れ、粟島への移住を決意しました。
今年4月、島へ渡った上村さんを待っていたのは、人の温かさでした。
ある時は「これ、持ってきな」と大量のワカメを、またある時はブリを丸ごと一匹。
島の人々の飾らない優しさに触れ、彼はすぐにこの島に溶け込んでいきました。

こうして、たくさんの想いを乗せて、
上村さんは民宿ますやで新しい物語を歩み始めました。

星の名を持つ部屋で、デジタルデトックスを

新しくなった「ますや」は、訪れる人に「のんびり過ごす時間」を提案します。
ここには、心を奪う派手な娯楽はありません。
その代わり、携帯電話をそっと置いて、ただ静かに自分と向き合う贅沢な時間があります。
リノベーションされた客室は、元々3部屋だった空間を、
プライベートが保てる鍵付きの個室へと作り替えられました。
部屋の名前は「アルタイル」「ベガ」といった星の名前。
これは、漁師だった本保さんのお父様が、 漁に出る際に星座を目印にしていたという名残りから。
1階の共有スペースには、骨董品好きの本保さんが集めた様々なデザインのソファが置かれ、
宿泊客が思い思いの場所で寛げるようになっています。
食事は、あえて「素泊まり」スタイル。
これは「島の飲食店にも活気づいてほしい」という上村さんの願いから。
宿を拠点に、今日はどこの食堂で食べようかと考えるのも、この島ならではの楽しみ方です。

「お客さんに満足してもらいながら、自分も無理せずやっていきたい。やれる範囲で、一緒に島の時間を楽しみたいんです」。

そう語る上村さんの言葉には、
利益や効率だけではない、豊かな生き方への哲学が感じられます。 ​
この宿は、ただ泊まる場所ではなく、
島のゆったりとしたリズムに心を調律するための、特別な空間でした。

【大人の島探訪】島の恵みと時間に、心をゆだねて

「いってらっしゃい!」という上村さんの温かい声に見送られ、
島の空気に溶け込んでいきました。
まずは港の目の前にある観光案内所で、 相棒となる電動アシスト自転車をレンタル!
​いざ、心ゆくまで島を巡るサイクリングへ出発です。
海沿いの道は、まるで自分だけのもの。
仏崎展望台」や「八幡鼻展望台」から見下ろす透き通る粟島の海と奇岩のコントラストは、
日常の悩みを忘れさせてくれる圧倒的な美しさでした。
心地よい汗をかき、たどり着いたのは釜谷集落の「かもめ食堂」 。
ここでいただいた「磯ラーメン」は、 ​タコやサザエの滋味深い旨味が溶け込んだ、体に染み渡る一杯。
忘れられない島の味です。
かもめ食堂

かもめ食堂

新潟県岩船郡粟島浦村1099

TEL 0254-55-2533
営 業 5月~10月 11:00~20:00 期間中は無休
*営業の日時は、天候などの状況により変更になる可能性があります

そして無事に島一周、約23㎞走り抜けゴールしました!
サイクリングの締めくくりは、少し大人なデザート。
「直売所ばっけ屋」さんで見つけた「アマドコロのアイス」です。
島の山菜アマドコロの根を使ったアイスは、きな粉のような香ばしさと上品な甘さ。
火照った体に心地よい、まさに大人のためのスイーツでした。
アクティブに過ごした一日のディナーは、港近くのおしゃれな「CAFE&BAR そそど」へ。
ここで味わった粟島の幸は、大人の島旅を完璧に締めくくるものでした。
まずは、島のお母さんたちが丹精込めて作ったジャガイモ100%の焼酎「んっぽん」のハイボールで乾杯。
その名の通り、母のような優しさを感じるすっきりとした味わいです。
そして、お待ちかねの料理たち。ホクホクで甘い「粟島産ジャガイモのコロッケ」。
独特のねっとり感も絶品のコロッケでした。
そして、この日のメインディッシュが「魚カツバーガー」。
使われているのは、なんと地元で獲れたホシザメです。
ふわっふわのバンズにかぶりつくと、サクッとした衣の中から、驚くほど肉厚でジューシーな白身が現れます。
サメの中でも特に美味しいとされるホシザメは、臭みが一切なく上品な味わい。
食べ応えも抜群で、心から満たされる、まさに大人のための極上バーガーでした。
CAFE&BAR そそど

CAFE&BAR そそど

新潟県岩船郡粟島浦村字日ノ見山1513-10
TEL 0254-55-2800
FAX 0254-55-2800
営 業
11:30~15:00(L.O.14:30)、
18:00~21:00(L.O.20:30) ※季節により変動あり
*営業の日時は、天候などの状況により変更になる可能性があります。

島の恵みをいただく、原始の釣り体験

粟島は、釣り人たちが「楽園」と呼ぶ場所 。
透き通る海には豊かな魚たちが暮らし、旅人を温かく迎えてくれます。
専門的な道具がなくても大丈夫。
この島には、誰もが童心に帰れる、シンプルで奥深い釣りの楽しみ方があります。
それが「穴釣り」です。
 
宿でぐっすり眠れた翌日。海辺に行き実際にやってみることに。
これは、岩の隙間に隠れた魚を狙う、この島伝統の遊び。
使う道具は、木の棒に糸と針、そして重りをつけただけの驚くほど原始的なもの。
仕掛けをそっと岩の隙間に落とし、魚が食いつくのをじっと待つ。
竿を介さず、糸から直接伝わる「ブルッ」という力強い引きは、一度味わうと病みつきになるスリルと興奮があります!
今回は細長いウナギのような「ギンポ」や頭から背にかけて鋭いトゲがある「カサゴ」が釣れました!
この穴釣りは、かつて島の大人たちが子供の頃に楽しんだ遊びそのもの。
魚を釣るという行為を通して、島の文化や歴史の一端に触れることができる、貴重な体験でした。
穴釣り道具は「直売所ばっけ屋」さんで購入できます。
直売所 ばっけ屋

直売所 ばっけ屋

新潟県岩船郡粟島浦村 字日ノ見山1513-10
TEL 0254-55-2130
営 業 4月末~10月末頃 8:00~17:00 期間中は無休
*営業の日時は、天候などの状況により変更になる可能性があります。

旅の終わりに。また「ただいま」と言える場所

「ますや」で聞いた友情の物語。
自転車で駆け抜けた海岸線の道。
自らの手で釣り上げた魚の確かな感触。

そして、島の幸と人々の笑顔。
短い時間の中に、忘れられない記憶が深く刻まれていました。

粟島は、一度訪れたら、きっとまた帰りたくなる島。
それは、「おかえり」と迎えてくれる人々の温もりがあるからです。

さあ、あなたも日々の喧騒から少しだけ足を伸ばして、
新潟・粟島で忘れられない島旅を。
この優しい島が、あなたを待っています。

民宿ますや

新潟県岩船郡粟島浦村内浦112
0254-55-2426
masuya.awashima@gmail.com
15時チェックイン/11時チェックアウト
※宿泊は事前にお電話・メールもしくは専用予約フォームからご予約ください。
喫茶ますや営業/11:00~15:00、17:00~21:00 ※宿泊者対応によって変動します。
喫茶ますや定休日/水曜 

この記事を書いた人
ナガシー

元英会話スクールスタッフ・講師→にいがた地域おこし協力隊として現在活動中。
2022年の三条市でのデイキャンプがきっかけでI LOVE NIIGATA!
春夏秋冬たのしめる!大好きなニイガタをお届けします!
ブログ・SNS・YouTube:https://lit.link/ryoheinagashima