3DやVRのルーツ?のぞきからくりがある「新潟市巻郷土資料館」/新潟市


2020年12月21日 10067ビュー
映画やビデオなどの映像も3D、VRなど、より立体的に見えるものへと発展を遂げてきました。

そのルーツといえるもののひとつに、今回ご紹介する「のぞきからくり」があります。

のぞきからくり」は江戸時代末期に誕生し昭和10年頃まで続いた大衆娯楽のひとつで、お祭りなどの縁日でやっていた見世物です。
映画や紙芝居の登場で人気が衰退し姿を消していきましたが、巻町の民家で発見され、現在は新潟市西蒲区にある「新潟市巻郷土資料館」で保存管理されているんです。

そんなわけで「新潟市巻郷土資料館」へのぞきからくり」を見に行ってきました。
旧消防庁舎を利用したユニークな資料館なので、初めて行く方にも見つけやすいです。


 
展示してある所蔵品はほとんどが近隣の民家から寄贈されたものだそうです。
巻で暮らしている人々が昔から使ってきた民具がそのまま展示してあって、リアリズムを感じることができます。
 

 
中には映画の映写機といった珍しいものも見ることができます。


 
この資料館が力を入れている展示のひとつが全国的にも有名な「越後毒消し」の展示です。
 
じつはこの「越後毒消し」を作って行商していたのが、かつて巻にあった「角海浜(かくみはま)」という、今はなき村なんです。
 
角海浜」は「五ヵ浜」の隣にあった海岸の村で、江戸時代には250戸の世帯があったようですが、「マクリダシ」と呼ばれる海岸の浸食現象が定期的に起こり、その度に何軒かの家屋が波にさらわれてしまい、1969年には人口が一桁になってしまったそうです。最終的には「巻原発」の建設予定地になり、残っていた人たちも村を離れ、1974年に廃村となってしまいました。
 
 
 
越後毒消し」と並んで目玉となっている展示が今回ご紹介する「のぞきからくり」です。
民家で発見されたのは「幽霊の継子いじめ」の屋台一式と「八百屋お七」の中ネタです。
中ネタというのは物語本体の紙芝居みたいなものです。
 
のぞきからくり」の屋台は全国でも数台しか残っていない上に、口上師が実演できる状態のものはここにしかないため「新潟市指定有形民俗文化財」に指定されています。
 ちなみに屋台や中ネタなど「のぞきからくり」一式の値段は家一軒以上建てられる金額だとか。


 
幽霊の継子いじめ」の中ネタがストーリーと共に展示してあります。
どの絵も遠近感を意識して描かれた奥行きのある絵になっています。


 
お金を払った人だけが屋台の周りにある覗き窓から、中ネタを鑑賞することができるわけです。
覗き窓にはレンズがついている上に、照明の効果も手伝って立体的に見えるようになっています。



 
屋台の上には客寄せのための「看板絵」がありますが、これがまた豪華なんです。
押絵」と呼ばれる立体的な技法が使われ、姫路の羽子板職人が制作したものらしいです。


 
たしかにこんなの見たら、どんなお話なのか気になって仕方ないかもしれないですね。


 
もうひとつの「八百屋お七」は中ネタだけが見つかったので、現存する資料を元に屋台を復元したそうです。
 現在は他の博物館に出張中ということで残念ながら見ることはできませんでした。


 
今回取材に協力していただいた「新潟市巻郷土資料館」の佐藤館長さん、色々教えていただきありがとうございました。


 
現在「のぞきからくり」の見学はできますが、新型コロナウィルス感染症対策ということもあって、人を集めての口上実演はお休みしているそうです。
また実演が見られる日が早く戻ってくれるといいですね。

新潟市巻郷土資料館

新潟県新潟市西蒲区巻甲3069-1
tel.0256-72-6757
営業時間/9:00−16:30(最終入館16:00)
休館日/月曜(休日の場合は翌日)
    休日の翌日(日曜の場合は翌々日)
    年末年始(12月28日〜翌年1月3日)

新潟市巻郷土資料館

この記事を書いた人
田中新之助(たなかしんのすけ)

新潟を愛する万年新米ライターです。持ち前の粘り強さで味わい深い記事を書いていきたいと思ってます。とくに観光ガイドには載っていないような、新潟の珍スポットや変スポットに力を入れて紹介していきたいです。