一本一本、花の絵に思いをこめて。温かい贈り物がそろう、小池ろうそく店/新潟市


2023年07月29日 2981ビュー
こんにちは!フリーライターの竹内ありすです。

桜にチューリップ、バラ、あやめ、アジサイ、ひまわり、そして「花火」も……春と夏だけでも、新潟県には花を楽しむスポットや機会があちこちにあります。

そのほかに、私は県内の道の駅や物産館などでこんな「花」も見かけました。
コロンと丸いキャンバスに温かみのあるタッチで描かれた花々。こちらはなんと、ろうそくなのです。その名も「花丸ろうそく」

このろうそくを作り、販売しているのが新潟市江南区にある「小池ろうそく店」です。

心を和ませる可愛らしいろうそくをどんな思いで作っているのか、お話を伺ってきました。

「小池ろうそく店」の、「花ろうそく」のこと

やってきたのは、新潟市江南区の袋津エリア。
かつての亀田砂丘の上にまちができ、昔ながらの地形が今でも残るノスタルジックな雰囲気の地域です。
その袋津エリアの中心部から一本小路を入った所島にあるのが、「小池ろうそく店」。
出迎えてくれたのは、「小池ろうそく店」の5代目・小池深香(こいけ・みか)さんです。(のちほど4代目の小池社長も登場するので、ここからは深香さんと呼ばせていただくとしましょう)
店内にずらりと並ぶのが、ろうそくに花の絵を描いた「花ろうそく」の数々!

種類豊富な「花ろうそく」を見て楽しみつつ、深香さんにお話を伺いました。
ーー「小池ろうそく店」は、明治26年に創業とお聞きしました。

深香さん:そうなんです。もともとろうそくって、今でいうティッシュとかトイレットペーパーなどといった日用品だったんですよね。昔から近所の人たちにとっても、日用品を購入する店の一つとしてすごく身近だったと思います。
ーーろうそくに花の絵を描いた「花ろうそく」も、創業当初から作っていたのでしょうか。

深香さん:うちで作り始めた時期ははっきりとは分からないのですが、「花ろうそく」も含まれる「絵ろうそく」自体は北国発祥で、歴史は江戸時代にさかのぼります。新潟って雪がたくさん降るじゃないですか。昔は寒さが厳しいあまり、1年の中でも花が育てられない季節が長かったんです。

お仏壇にお供えするお花が手に入らない時期でも、少しでも華やかにしたいということで、ろうそくに絵を描きはじめたのが始まりなんですよ。
今はお仏壇のない家も増えてきましたが、昔はお仏壇ってもっと「家におじいちゃん、おばあちゃんがいる」みたいな、身近な存在でしたよね。

ーーたしかに!お仏壇のある部屋に、ご先祖さまの写真がずらっと並んでいますもんね。

深香さん:そうそう、ご先祖さまと一緒に暮らしている感覚が強かったというか。そういったなかで、お供えのときに「大切なひとに気持ちを届けたいな、お花をお供えしたいな」という思いから「花ろうそく」が生まれました。
ーー「小池ろうそく店」といえば「花ろうそく」のイメージが強いのですが、ずっと作り続けてきたんでしょうか?

深香さん:ここまで「花ろうそく」に注力してメインの商品にしたのは、父(4代目)なんですよ。それまでは絵のない普通のろうそくがメインで、「花ろうそく」の生産は注文があったら作っていたという程度でした。

でも、時代の流れで電灯やキャンドルも普及しましたし、安くて大量生産できるものが手に入るようになってくると、こうした手工業ってどうしても衰退してしまうんですよね。そんななかで父は、どのようにして「小池ろうそく店」を残していくかということを考えたそうです。

それで今から30年ほど前に、“手描きで気持ちを届ける”という思いの面にも焦点を当てて、「花ろうそく」を復活させました。


ずらりと並ぶ「花ろうそく」。描かれる花の種類は四季折々、色合いもさまざまです。
「お供えする季節に合わせて花の種類を選ばれる方が多いですか?」とたずねると、「故人の好きだった花を選ぶお客さんが多いですね」と、深香さん。
お花屋さんで贈る相手のことを考えて好きな花を選ぶことと、「花ろうそく」の楽しみ方は似ているなと感じました。

深香さんに聞く、絵師のお仕事のこと

2019年に家業の「小池ろうそく店」に入り、絵師をはじめた深香さん。「花ろうそく」への絵付けを、今回特別に見せていただきました。
細い筆で、迷いなく繊細な線を重ねています。
絵師をはじめるにあたり、生け花教室に通い実物の花に触れ、花同士の自然な間隔や高さやボリュームといったバランスを学んだのだそうです。
そんな深香さん、家業に入るまでは、学生のころからシンガーソングライターとして本格的な音楽活動をされていました。

「県内や都内でライブをしたり、テレビ番組への楽曲提供をしたりしてましたね。ずっと音楽をやってきたので、武道館でワンマンライブをすることが当時の一番の目標でした」と深香さん。

しかし挫折してつらい思いをするなかで、浮かんできたのが実家のろうそく店の現状のこと。家業を継ぐことを決めました。

「音楽とろうそくで共通していると感じることは?」とたずねると、「何かを作る、生み出すという点では、似ているのかなと思います」と、深香さん。

「一つ一つ同じ柄を描いていても、違うものができるんですよ。うちでは通販もやっているのですが、沖縄とか北海道にもろうそくが渡るわけじゃないですか。そこでお客さんに使ってもらえるというのは、自分の生み出したものを届けられているという点では同じなのかな」

ちなみに、家業に入った5年前は高齢化による絵師不足に悩んでいたそうですが、今では共にろうそくの絵師として活動する方が増えつつあるそうです。
 
「絵を描く技術の高さももちろん大切なのですが、やはり気持ちをこめて描ける方にお願いしたいという思いが強いですね」と、深香さん。「ありがとう」を伝えるときにお供えするろうそくだからこそ、思いをこめて描くことを大切にしていきたいと話してくれました。

それにしても、手のなかで次々とろうそくに花が咲いていく様子は魔法みたいで思わず見惚れてしまいます。お父さま(4代目)が「花ろうそく」に注力された際も、こうしてお客さんの目の前で実演をしたことが功を奏したのだとか。

老舗ろうそく店のニューフェイス!「花丸ろうそく」開発秘話

「小池ろうそく店」では、ザ・ろうそくといった細長い形状のものだけではなく、コロンと丸いこちらの「花丸ろうそく」も作られています。
実はこの「花丸ろうそく」を開発したのは、深香さんなのです!
ーーパッケージからして和菓子みたいで、可愛らしいろうそくですね。

深香さん:ありがとうございます。「花丸ろうそく」はろうそく立てもいらないので、お皿の上に乗せて気軽に楽しむことができるんですよ。
ーー使いやすさにもこだわっているんですね。2020年に発売されたと伺いましたが、開発は大変だったのではないでしょうか。

深香さん:はい、かなり大変でした!家業に入ってからすぐに開発をはじめたんですが、特に丸い形状のろうそくは斬新だったようで、家族からも結構反対されましたね。だから、一人で孤独に燃焼実験を繰り返していました(笑)

今でこそ「花丸ろうそく」用の型ができたのでたくさん作れるようになりましたが、初めは形やサイズ、質量など考えることは山ほどありました。

ーー従来から作られていたろうそくと違う形だと、燃焼の仕方なども変わってきそうですよね。

深香さん:たとえば、キャンドルの芯は糸なので順当に燃えていくのですが、和ろうそくは芯に和紙を使っていて、ロウを吸い込むんですよね。ろうそくの中で空気の循環を行いながら燃えるんです。
「花丸ろうそく」も、ほかのいわゆる「和ろうそく」と同じく、蜜ろうやはぜろうといった「植物ロウ」を使って作りたいとは思っていたんですよ。でも開発を進めていくと、燃焼において細長いろうそくの形状って理にかなっているんだなってあらためて気づきましたね。

開発中は火がきれいに燃え続けられるよう、芯の長さや形をあれこれ作って試していました。

ーー開発にはどのくらい時間がかかったんでしょうか。

深香さん:1年くらいです。最終的にはメーカーさんとも相談しながら、直して作ってを繰り返してようやく完成しました。
ーー開発した「花丸ろうそく」には、どんな思いを込めていますか?

深香さん:目に留めてもらい、新しく知ってもらえるきっかけになる商品になったらいいなと思っています。

お仏壇がない家も増えたなか、「ろうそく=お仏壇とセットのお供えもの」というイメージを持っている方も多いかもしれません。それだけではなく新潟の伝統手工芸として、花ろうそくが現代の生活にも合った身近な商品になってほしいですね。
最近は、今まではろうそくを手に取らなかったような若い方に、手描きのハンドメイド品や香りと共に癒しのインテリアとして購入いただくケースも増えています。もらった側の方も、純粋に手描き工芸のプレゼントとしてお部屋で花ろうそくを使ってくれたら嬉しいです。

新潟の工芸品の認知度を上げていきたい

「小池ろうそく店」のろうそくは、「小池ろうそく店」のほか、県内各地の土産店や道の駅などで購入することができます。新潟伊勢丹1階の「越品」コーナーでも取り扱っており、ポップアップイベントの際には絵付けの実演も見ることができますよ。
「以前は仏壇店に置いてもらうことが多かったんですが、若い方の目にも触れる場所に置くことで、うちのろうそくを知ってもらいたいなと思って。商品を置いてもらう店舗を増やしました。
朝ドラでも話題の、野の花や山の植物を描いている画家の外山康雄氏の絵をろうそくにつけたコラボ商品を作らせていただき、南魚沼市にある「外山康雄 野の花館」限定品の「野の花ろうそく」(転写)を製作しました。地元の人とも作品を通してつながっていけたら」と、深香さん。

そんな深香さんはろうそくだけではなく、新潟の工芸品の認知度自体も上げていきたいと話します。

「新潟って全国的に見ても、食べ物がおいしいイメージが強いじゃないですか。それは素晴らしいことだと思うのですが、食べ物以外にも魅力的なものはたくさんあるんですよね。工芸品に携わる方々も高齢化してきて、素晴らしい技術はあるのに若手がいないという悩みを持っているケースも多いんです。
地元のお土産屋さんやギャラリーなど地元の方とのコラボレーションをすることで、まずは少しでも新潟の工芸品を知ってもらえる機会が増えたらいいと思っています」と話してくれました。

今は長岡市の「道の駅 ながおか花火館」でも、深香さんが手がけたという花火が描かれたろうそくに出会うことができますよ!(「ながおか花火館」内「御貢屋」での限定販売商品です)


「小池ろうそく店」の絵師として、そして広報担当としても、深香さんは県内外で「花ろうそく」「花丸ろうそく」の実演販売などでろうそくの魅力を伝え続けています。
みなさんも「小池ろうそく店」のろうそくに出会った際はぜひ、作り手のあたたかな心も感じてみてくださいね。

おまけ:社長のイチオシ、縄文ギャラリー

さまざまな場所で購入できる「小池ろうそく店」のろうそくですが、新潟市江南区の「小池ろうそく店」を訪れた方だけのお楽しみもありますよ。
ここは、ろうそくがずらりと並ぶお店の片隅。気になるコーナーがありました。……縄文?

「ああ、それは父の趣味なんですよ」と、深香さん。

取材中、深香さんのお父さまであり、社長の4代目・小池孝男さんにもお会いすることができました。
「ここだけじゃなくて、ギャラリーが隣にあるのでちょっと見ていきませんか」と誘われるがままに、「小池ろうそく店」に併設された縄文ギャラリー「JOMON」にやって来ました。(通常、観覧の際は予約が必要です)
長年、縄文時代にロマンを感じていた小池社長。実は縄文土器、新潟県でもたくさん出土されてきたのだそう。縄文土器のレプリカや土偶をあしらったグッズを所狭しと並べたギャラリーに一歩足を踏み入れてみると、縄文文化のいぶきが感じられます。

「こうして土器にろうそくをのせてみると、素敵でしょ」と小池社長。電子のろうそくで実演して見せてくれたのが、こちら!
ゆらゆらと揺れる火に土器の複雑な模様がよく映えて、ますます縄文時代にタイムスリップしたような気分になれます。
小池ろうそく店

小池ろうそく店

住所:新潟市江南区所島2-2-76
営業時間:10:00-17:00
定休日:土曜日、日曜日、祝日
※休日にご来店希望の方は、事前にお電話にてご連絡ください。
※ギャラリー「JOMON」の観覧は予約制となっています。

TEL:0120-87-6009(ハナローソク)

駐車場あり 2台

小池ろうそく店

この記事を書いた人
竹内ありす

1995年新潟市生まれ。放送局での番組制作を経て、フリーランスのライター・ディレクターへ。 昭和歌謡と喫茶店、新潟の日本酒が大好き!もの・こと・人にまつわる、魅力あるストーリーをお伝えします。
Twitter→ https://twitter.com/atelier_aliswan