小さな集落の真ん中にある宿「長者温泉ゆとり館」で暮らしを体験する旅を/糸魚川市


2021年05月28日 748ビュー
糸魚川の観光といえば、みなさんは何を思い浮かべますか?
ジオパークにヒスイ、カニなどの新鮮な海の恵みでしょうか。

今回はそんな「いつもの糸魚川観光」とはちょっと違う視点で、新しい糸魚川の旅のかたちを見つけに行ってきました。

糸魚川にはさまざまな宿泊施設がありますが、今回宿泊するのは木浦(このうら)地区にある「長者温泉ゆとり館」。

平成7年に竣工されてから、地域の方々の手によって運営されてきた宿と温泉は、平成30年から株式会社tsugihagi blueが引き継いでいます。

「長者温泉ゆとり館」を中心に、どんな新しい体験ができるのでしょうか。 

海から山へ。川を上った先に「長者温泉ゆとり館」はあった

糸魚川を横断する国道8号線は、海沿いの道。

どこまでも広く続く青い景色や心地よい海風を感じながら車を走らせます。 

「長者温泉ゆとり館」へは、その海沿いの国道を曲がりぐんぐんと山の中へ上っていきます。
景色はあっという間に海から山へ。
川沿いの道をくねくね進んでいきます。  

本当にこの先に宿があるの?

不安になりながらも、車を走らせていると……  

ありました!
手前が日帰り温泉施設の「長者温泉ゆとり館」、奥の茅葺屋根の施設が宿泊棟の「ふぁみりー館」です。

古民具好きにはたまらない!ゆったりできる古民家宿

茅葺き屋根の外観も圧巻ですが、中に入っても古民具好きにはたまらないものばかり。

こちらのふぁみりー館の建物は移築されてから100年以上は経っているとのこと。
ずっしりとした梁や柱は、その月日を物語っているようです。
さらに施設内には至るところに古民具が。

ひとつひとつ名前や用途が記されているので、何に使っていたんだろう?と想像を巡らせるだけでもわくわくします。 
今回は1歳の息子と一緒に宿泊しました。
私たちが泊まったお部屋は、ふぁみりー館内のこのお部屋。

襖で仕切ることができる二間続きの部屋は、子どもが寝た後も手前の部屋でゆっくりくつろぐことができて、とても快適でした。
 
奥の部屋からは、鯉が泳ぐ池が見えます。

お部屋でくつろいでいると、チョロチョロチョロと水の音が聞こえたり、部屋から部屋へ風が通るのを感じたり。

ただ「ここにいる」だけでもなんだか心地よく、リラックスできました。
その他、温泉棟のゆとり館2階にも宿泊室が4部屋あり、最大で24名宿泊が可能です。

この日は私たちの他に素泊まりの方がいました。

「子どもの声や遊ぶ音が迷惑にならないだろうか」

古民家宿だとこの辺りの音問題も気になるところです。
今回は棟が離れていたため他のお客さんを気にすることなく、私も子どもものびのびと過ごすことができました。
息子もこの通り、いろいろなおもちゃを貸してもらい遊びに没頭していました。
 
宿のすぐ横にはえんじょい広場があります。
ここは夏になると流しそうめんやBBQをすることも。

この撮影の後、地域の方がやってきて草刈りをしてくれていました。

体験できるのは、「ありのままの暮らし」

今回は「暮らしを体験する旅」をテーマに来たので、特に予定を決めていなかった私たち。

運営を担う株式会社tsugihagi blue代表の屋村靖子(おくむらやすこ)さんにおすすめの過ごし方を聞いたところ、「これから畑に行くので、一緒に行きますか?」とのこと。

屋村さんは昨年から地域の方に畑を借りて、野菜を育てているそう。 
畑までは宿から歩いて10分くらいとのことで、着いて行くことにしました。
畑には靖子さんの夫・祥太さんと秋田犬の吉も一緒に。
宿を出て、山の方へぐんぐん上っていきます。

すると前方から車が。
私たちの前で停まりました。
「師匠!」

屋村さん夫婦がそう呼ぶのは、畑を貸してくれている地域の方でした。
元々長者温泉ゆとり館の館長をしていた方で、屋村さんたちのことをよく理解してくれているんだとか。

右も左もわからない畑作業も一から教えてくれて、時には手伝ってくれる心強い方だと教えてくれました。

この日も「あの苗はそろそろ植えたほうがいい」「枝豆はこう育てるのがいい」と道端で屋村さんにレクチャー。
普段の屋村さん夫婦と地域の方の姿が垣間見れた瞬間でした。
そんな話題の畑は、ピチピチと鳥の声が聞こえる山の中にあります。

でも実はこの畑からは海も見えるのです!
遠くの方にうっすら海が見えるのですが……
写真でうまくお伝えできないのが心苦しいです。

ぜひ実際に訪れてこの景色を見てください!
この日は枝豆を植える畝(うね)を作るという屋村さん夫婦。

「師匠がこう言っていた」
「〇〇さんは〜」

畑初心者のお二人の会話からは、たびたび地域の方の名前が挙がります。

きっと屋村さん夫婦は普段から地域の方を尊敬し頼ることで、地域での暮らしやゆとり館の運営を続けているんだろうな。

地域の方たちも実直な屋村さん夫婦を見て、関わりたい、一緒になにかやりたいという気持ちで見守り支えてくれているのだろうな。

そんなことを思いながら、この地域での暮らしをありのまま感じる時間でした。

今回は息子も一緒だったので私はできなかったのですが、希望する方は一緒に畑作業ができるそうです。 

ぜひこの気持ちのよい畑で、屋村さんや地域の方の日常に仲間入りしてみてください。

併設する日帰り温泉は地域の溜まり場

畑から帰ってきた後は、温泉で汗を流します。

「長者温泉」という名前からわかるように、こちらの宿には日帰り温泉も併設されています。

こちらの温泉は肌の修復機能があるとされる「メタけい酸」が含まれる美人の湯。肌のくすみをとり、ツルツルになるそうです。

源泉の「中尾北湧水」は昔から皮膚病に効くとされ、薬代わりにも使われていたのだとか。
実際に入ってみると、お湯はかなり熱め。 

1歳過ぎの息子は平気でしたが、小さなお子さんには熱すぎるかもしれません。  

その場合はベビーバスも置いてあるので、こちらでぬるめにして入れてあげるとよいと思います。
そんな対応が整っているのも、実は屋村さんには1歳過ぎになる娘さんがいるからです。

夕方になると温泉のエントランスは、保育園から帰ってきた娘さんと温泉に来た地域の人で賑やかに。 娘さんはすっかり常連さんと仲良し。

みなさん入浴後はアイスやビールを買って、おしゃべりしてから帰っていきます。
まさに地域の溜まり場!
ここでもこの地域の日常を垣間見ることができました。

息子もはじめは人見知りしていましたが、徐々に慣れてきて仲間に入れてもらっていました。

子どもにとっていろんな大人に見守られて育つ経験は、とても貴重だなぁと感じます。

山と海の恵みが詰まった里山ごはんを堪能

こちらの宿は素泊まりも可能ですが、今回は朝夕のごはん付きで宿泊しました。

こちらが夕食。

旬の山の恵み・フキを煮たものや、海の恵み・マグロや甘海老のお刺身など。

「豪華じゃないですけど……」と屋村さんは話しますが、山と海の恵みがすぐ近くにあるからこそできる素材を生かしたメニューは十分すぎるほど豪華でした。

 
朝はワンプレートごはん。
野菜中心のお惣菜がいくつも並んでいます。

素材を生かした素朴な味つけが木浦地区内で採れたはさかけ米の甘みを引き立ててくれるので、朝からご飯をおかわりしちゃいました。

今までは地域の方から譲ってもらった食材を使っていましたが、今後はあの畑で収穫した野菜も食卓に並ぶ予定とのこと。

この取材の翌日に夏野菜の苗を植えると言っていたので、夏頃に泊まりに行くのがおすすめですよ。収穫体験もできるかも!

地域の人たちの思いと暮らしを守りたい

1泊2日、宿を中心にゆっくり過ごす中で、地域の人の話し声、草刈りの音、おすそ分けの野菜など、ここで暮らす人たちの息遣いをたくさん感じることができました。

集落の真ん中にあるゆとり館。 その周りを歩いていると、気軽に声をかけてくれる方も。

それはこの「長者温泉ゆとり館」がもともと地域の方たちの手で運営されてきたからだと屋村さんは話します。 
平成7年に竣工した「ゆとり館」は、平成30年に屋村さんたちが引き継ぐまで23年もの間、地域の区長さんを中心に運営がされてきたのです。  

そんなふうに地域の宝として維持し外から来る人たちをも受け入れ続けることは、並大抵のことではなかっただろうと思います。  

屋村さんはそんな地域の方たちの思いと暮らしを守りたいと、この宿の運営を引き継いでいました。 
「ゆとり館をただいま、おかえりと言い合える場所にしたい。 観光スポットを回るのではなく、ここの暮らしをありのまま味わってほしい。 特別なものはないけれど、私たちの暮らしを一緒に楽しんでくれる人にぜひ来てほしいですね。」

ワーキング移住体験も募集中

長者温泉ゆとり館ではワーキング移住体験も受け入れています。

宿や畑の仕事を手伝ってもらいながら、暮らしの体験ができるプログラム。

1泊や2泊の宿泊だけでは物足りない、もっと暮らしを体験したいという方にはぜひおすすめです。

車で5分!海も山も楽しめる糸魚川

最後に屋村さんおすすめの糸魚川スポットを教えてもらいました。 

長者温泉ゆとり館から車で10分の能生海洋公園。  

屋村さんファミリーは、よくここで海を見ながら朝ごはんを食べるそうです。この日も家族連れで賑わっていました。
遊具も充実していて子どもも楽しめますし、隣には道の駅マリンドリーム能生も併設しているのでここでお昼ごはんを食べるのもおすすめです。

海と山がこんなに近くにあるってうらやましいですよね。
能生海洋公園

能生海洋公園

住所:新潟県糸魚川市能生小泊3596ー2
駐車場:有り(無料)
トイレ:有り

糸魚川の日常に、わたしの日常を重ねる旅

旅に求めるもの。
それは人それぞれ、そのときどきで違います。   

今回訪れた「長者温泉ゆとり館」では、糸魚川の暮らしをありのまま感じることができました。

糸魚川の日常は、旅する私にとっては非日常。
でもどこか私の日常にも重なり、いつもの暮らしを見つめなおす時間にもなります。   

「ありのままの糸魚川」を感じに、ぜひ訪れてみてくださいね。
長者温泉ゆとり館

長者温泉ゆとり館

住所:新潟県糸魚川市木浦18778
電話:025-566-3485
FAX:同上
mail:yutorikan.onsen@gmail.com
営業時間:日帰り温泉 10:00〜21:00(冬季20:00)
利用料金:【日帰り温泉(1回湯)】
      大人400円・小人250円・幼児150円
     【宿泊(1泊2食付き)】
      大人8500円・小人6500円・幼児2500円
     【宿泊(素泊まり)】
      大人4500円・小人3500円・幼児1000円
その他のメニュー、詳細はHPまたはお問い合わせください。

この記事を書いた人
諸岡江美子

千葉県出身。津南町と妙高市の二拠点居住。一児の母。 築150年の古民家を民泊として開きながら、フリーで編集・執筆をしています。雪国の暮らしの知恵が大好きで、地域のじいちゃんばあちゃんから教わったことを日々研究中。