まるで江戸時代にタイムスリップ!? 時代劇映画の撮影にも使われた水原代官所/阿賀野市


2021年06月02日 10728ビュー
時代劇によく登場するお白洲の場面。さまざまなドラマに登場する見せ場のひとつですよね。そんな江戸時代をリアルに体感できるのが阿賀野市にある「水原代官所」です。映画のロケにも使われたこちらの建物、さてどんな場所なのでしょうか。

部屋数なんと19!さまざまな役割を担っていた代官所

かつて水原城があった跡に幕府直轄領として代官所が置かれたのは1746年(延享3年)のこと。幕末の戊辰戦争の際には会津藩預かりとなりました。西軍の侵攻により会津が退散したことで、1868年に代官所はその歴史に幕を下ろしたのです。
その後、残された古文書の間取り図と絵図を元に1995年8月に復元、かつての様子を忠実に再現した施設として誕生しました。

よくドラマで「お代官さまぁ!」などと町民や農民が叫んでいますが、そもそも代官とは幕府の領地を管理する役職のことです。代官所の主な仕事は年貢の徴収などを行う「地方(じかた)」、現在の警察や裁判にあたる「公事方(くじかた)」の2つがありました。税務署に市役所、警察署から裁判所まで担っており、まるで総合庁舎のような存在だったのです。
同代官所では加えて福島潟の開発事業も行っていたそうです。部屋数は全部で19室。見学コースは正門ではなく御台所脇の扉をくぐるところから始まります。
館内に入るとまず出迎えてくれるのが、水原常陸介親憲(すいばらひたちのすけちかのり)の大きな肖像画です。親憲は水原城最後の城主だった人。「水原」という地名は彼にちなんだものなのです。
次は湯呑処です。かつての代官所詰めでお勤めしていた人たちは、この囲炉裏で火にあたり疲れを癒やしていたのでしょう。今のオフィスで考えると給湯所脇の休憩室のようものですね。昔も今も一緒なのだなあと微笑ましくなりました。

映画のロケはここ!

事務室に当たるのが御用場です。年貢徴収など財政面を仕切る「地方(じかた)」と呼ばれる仕事がここで行われていました。映画『殿、利息でござる!』に登場したのはこの御用場、そしてそこから一段低い所に設けられた訴所(うったえどころ)です。
映画『殿、利息でござる!』は『武士の家計簿』で知られる歴史家・磯田道史さんの評伝『無私の日本人』に収録されている『穀田屋十三郎』の映画化で、2016年に公開されました。
重税に苦しむ仙台藩の町民たちが、殿様にお金を貸して利息を得ることで経済的苦境から脱しようと奮闘したという実話が元になっています。村々を束ねる大肝煎(おおきもいり)の千坂(千葉雄大)が、代官(斉藤歩)に嘆願書を届けに行く場面が撮影されました。館内には映画のポスターや監督、出演者のサインが飾られています。
実際に映画の登場人物になりきってやってみてもいいですよと許可をいただきました。というわけで平身低頭「お代官さまぁ!お頼み申します!」という感じで頭を下げて、映画の中で必死に代官に願い出ていた大肝煎の気分を味わいましたよ。
時代劇『遠山の金さん』や『大岡越前』で主演の奉行が悪人たちをかっこよく裁いていくのは白洲と呼ばれる場所。奉行所は屋外に、代官所は屋内に設けるのが一般的だったそうです。
水原代官所では壁一枚を隔てて訴所の隣にありました。
一段上がった所の座敷が、お裁きを行う「公事場(くじば)」です。なお罪人を裁く場所のため、白洲には取り調べの道具がいくつかありました。まず拷問座と呼ばれるギザギザの板の上に座らせ、その上から重さ40kgの抱石を載せていくそうです。テレビドラマなどでは「何を負けるか」とばかりに歯を食いしばって耐える人物が出てきますが、実際は2つほど載せられれば耐えきれずに白状したそうです。

コスプレイヤーも訪れる場所

中庭に面した廊下にたたずむと、ここが令和の日本ということを忘れてしまいそうです。この和の情緒は若い人たちにも受けていて、新型コロナウイルス感染症流行以前はコスプレイヤーたちの撮影で賑わったこともあったそうです。
江戸時代の人たちは、美しい庭を愛でるためにこの空間を設けたのかと思いきや、ここは明かり取りや雪捨て、屋内に風を通すなど実用的な役割を担っていたそうです。
代官所内には「温故堂」という名前の学問所もありました。1850(嘉永3)年に作られたと伝わっています。これは明治まで続き、学制発布後は公立学校へと引き継がれました。
文机なども置かれ、当時の様子が再現されています。ここで論語などを学んだのでしょうか。
その場に立って当時に思いを馳せるのはとても贅沢な時間です。歴史好きにとってはたまらない空間だと言えるでしょう。

ふるさと農業歴史資料館で地域を知る

代官所の隣には、ふるさと農業歴史資料館があります。産業、文化、観光と3つのゾーンがあり、それぞれ阿賀野市の魅力を紹介しています。
観光ゾーンでは瓢湖の白鳥や五頭温泉郷の観光情報などを紹介しています。阿賀野市の公式イメージキャラクター「ごずっちょ」と一緒に写真を撮れる顔出し看板もありますよ。
文化ゾーンは展示室が2つに分かれており、広い展示室1では阿賀野市が収蔵する美術品を中心に展示しています。
訪ねたときには「笹神支所所蔵品展」の第2次展が開催中でした。こちらは令和3年5月23日で終了してしまいましたが、現在は第3次展が開催中です。(令和3年5月29日〜7月25日)
展示室2では2020年春から21年冬にかけて、出湯温泉の老舗旅館だった「石水亭」の主人、二瓶武爾(にへいたけじ)氏の蒐集コレクション展示を3回に渡って行いました。
二瓶氏は芸術に造詣が深く、氏の元には多くの文化人や芸術家が訪れ親交を結んでいました。
現在は4回目となる企画展示「春〜夏季展」(令和3年3月27日〜7月25日)が開催中で、二瓶氏と親交のあった竹久夢二関連の小品が展示されています。
夢二の版画作品のほかに、二瓶氏と夢二のツーショット写真、お葉(夢二の恋人で絵のモデルも務めた女性)に宛てた恋文など、夢二ファン垂涎もの資料が展示されています。大正ロマン好きの女性なら、間違いなく心震える内容ですよ。
阿賀野市の地場産業や民芸品、特産品など紹介しているのが産業ゾーンです。ここではあえて商品販売はせず、興味を持った方はぜひそれぞれの場所を訪ねてほしいという仕掛けになっています。
江戸時代から続く歴史ある安田の名産、安田瓦も展示されていました。
鬼瓦、迫力ありますね!
この円錐形の人形、水原名物の三角だるまです。雪国にちなんで雪の精「雪ん子」の姿をモチーフにして、この形になったと伝わっています。
青が男性、赤が女性で夫婦を表しています。女性の赤だるまのほうが大きいのは「女性が大きく構えているほうが物事が円満に運ぶ」ということにちなんでいます。
残念ながら現在は作り手が途絶えてしまっているそうです。

水原代官所・水原ふるさと農業歴史資料館

住所:新潟県阿賀野市外城町10番5号
TEL:0250-63-1722
開館時間:午前9時30分から午後4時まで(12〜3月は午前10時から午後4時)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)/年末年始(12月28日から1月4日)
入場料:水原代官所 大人300円/小・中・高校生200円 ※ふるさと農業歴史資料館は無料

三角だるまに惹かれ最上屋へ

飾られていた地域名産のお菓子に三角だるまを発見!
「御菓子司 最上屋」のお菓子です。気になったので早速訪ねてみましょう。水原代官所から西に向かって商店街を歩き、約7分で着きました。
6個入りを購入。インゲン豆の一種・手亡豆(てぼうまめ)を使ったあんにしそが入っためずらしい最中です。さて、どんなお味なのでしょうか。
本物の三角だるまは赤いほうが大きいのですが、お菓子は青も赤も同じ大きさです。円錐の独特の形と、への字口のちょっととぼけた表情まで忠実に再現されていて愛らしいですね。
生地はさくりとして歯ごたえがあり、中の白あんは甘さ控えめでした。軽い味なので和菓子好きはもちろん、ちょっぴり苦手という方もおいしく食べられると思います。

映画のロケ地を見てみたいという思いから訪ねた水原代官所でしたが、さまざまな地域の魅力を発見する良いきっかけになりました。

御菓子司 最上屋

住所:新潟県阿賀野市中央町2丁目11-11
TEL:0250-62-2206
営業時間:9時〜19時
定休日:第2・4水曜日
駐車場:なし

水原代官所・水原ふるさと農業歴史資料館・御菓子司 最上屋

この記事を書いた人
和田明子

長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中