新潟ガストロノミー おいしさの裏側を求めて①――十日町の今の風景をお皿に表現「会席 ゆげ」/十日町市


2023年01月07日 3873ビュー

すべてがある地方

日本中がコロナ禍に覆われていた2021年3月、弓削朋子さんは郷土料理を提供する「ゆげ」を故郷十日町に開業した。

大学卒業後料理の専門学校を経て首都圏など都会の料理店で働いていた弓削さんは、食材を他の地域から取り寄せていることに疑問を感じていた。
「東京に取り寄せた山菜は時差があるので、小さい頃地元で食べたのと味が全然違うんです。産地で食べることが一番のごちそうではないだろうかと感じたのがUターンをする動機となりました」

子供の頃は何もないと感じていたが、Uターンしてみて「ここにはすべてある」と思ったそうだ。

自ら山菜を収穫して、伝統的な保存方法で貯蔵し、調理する素材を最大限に活かす。
雪深い土地だからこそ育まれた、豊かな食文化。
「ここでやるしかない、と決心すると地域の食材が輝いて見え始めました。見たこともないような新鮮な食材。しかもそれがその辺に自然に生えている。 日当たりや水源、標高の高さなど生育した環境までわかるから、素材から料理のインスピレーションをもらうことができるのです。もうここでしか作れません」

長い冬を暮らす知恵

昔ながらの少し低い扉をくぐると「ゆげ」の店内は、濃い色の床、畳、囲炉裏などどこか懐かしく感じられる空間が広がる。

まず目を引かれるのが自家製の保存食がずらりとならべられた箪笥だ。
「長い冬を越えるための雪国の知恵がここにあります。山で採取したクロモジはジンにつけたり、山ホップを塩漬けにして天ぷらでお出ししたり、どくだみ、青じそ、熊笹、柿の葉などは野草茶にしたり、もちろんジュースや果実酒にも…ここにはなんでもあります」

十日町の今の風景をお皿に表現

本日弓削さんに作っていただいたのは旬の食材を活かした八寸料理。

獲れたての岩魚、かきのもとと糸瓜の胡麻酢和え、車麩と鰊の煮物、春菊と岩ノリのお浸し、生落花生の白和えなどがきれいに並ぶ。
「旬の食材と対話しながら料理すると、自分も季節の中で生きている感覚がするんです。“ゆげ”の料理は十日町の今の風景をお皿に表現しているんです」

一口いただくと里山の情景が目に浮かび、旅をしてる感覚さえ感じる。
会席 ゆげ

会席 ゆげ

住所:新潟県十日町市駅通り128
電話:025-755-5263
営業時間:18:00~22:00(最終入店 19:30)
定休日:日曜・月曜日
駐車場:なし
総席数:10席

エリア

湯沢・魚沼エリア

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NIIGATA GASTRONOMY

「美食学」と訳され、料理と文化の関係性を考察することを指す“ガストロノミー”。
口にすることで地域の風土や歴史を感じられることから、成熟しつつある食文化の中で、注目を集めている考え方。多様な歴史と文化、豊かな自然に恵まれた新潟県はガストロノミーの宝庫。