縄文体験から地域の自然をより深く知る「農と縄文の体験実習館なじょもん」へこの夏なじょも!/津南町


2024年08月07日 52ビュー
夏休みは子供も大人も縄文体験なんていいんじゃない?(個人的な見解)ということで「津南町農と縄文の体験実習館 なじょもん」へ行ってきました。
国道117号線に入り火焔型土器の飛び出た案内看板から信濃川方向へ入った場所に「なじょもん」があります。
位置としてはJR飯山線の津南駅から車で10分ほどの距離にあります。

「なじょも」は「どうぞ」

広い畑のようでもあり公園のようでもある大きな敷地の中に体験実習館があります。
今年で20周年を迎える「津南町農と縄文の体験実習館なじょもん」は土器づくりなどの縄文体験や自然体験、農業体験などさまざまな体験ができ、津南町で出土した土器や石器の展示、季節ごとの企画展示なども行っている施設です。
「なじょもん」の名前は「なじょも」「なじょ」「なじょなじょ」といった津南の方言と「縄文」を組み合わせた造語です。
「なじょも」は「どうぞ」といった意味だそうで、同じ新潟県民ですが「なじょも」や「なじょなじょ」はちょっと聞いたことがありませんでした。新潟でも住む場所が離れると方言は変化してくるんですね~。

次世代に種を残すための畠

敷地内にはいくつかの畑があり、アワやヒエなどの雑穀を育てる「雑穀畠」や、アンギン編みの素材になる「カラムシ」を育てる「カラムシ畠」などの、最近は農家でも育てることが少なくなった作物を、種の保存を目的に育てているとのことです。

そのほか訪れた時はひょうたんが実をつけていました。これもひょうたん細工体験の材料になるそうです。
ひょうたんの置物、前は民家の床の間や旅館の玄関先なんかに飾ってあった気がするんですが見なくなりましたね…。
縄文時代から水を入れる容器として使われてきたのに、ステンレスの水筒やペットボトルにその座を奪われてしまったのでしょうか。

それ以外にも「芝生広場」や散策のできる「縄文の森」、春先は菜の花畑に変わる「ひまわり畑」などもあります。

まーるくおさめる環状集落

ひまわり畑の隣には「縄文ムラ」があり、津南町にある沖ノ原遺跡を参考にした環状集落をモデルに竪穴式住居が輪を描くように復元されています。
内部が見学できる住居もあり、今年はその内のひとつに「JOMONの風」のアート作品が展示されています。
そしてこの縄文ムラ内にひっそりと縄文ごみ捨て場があります。
貝塚もそうですが地域によっては土偶や人骨も一緒に埋められていたりする場所もあり、
縄文時代はただ「ごみを廃棄する場所」ではなく「役目を終えた道具を葬る儀礼の場所・神聖な場所」ではなかったかと考えられているようです。
使い捨てや大量生産・大量廃棄が当たり前になっている今の時代と比べて考えてみるのもいいかもしれませんね~。

ちなみにこの場所はあえて木片や土器の欠片を置いて風化や土に埋もれていく様子を観察する研究の場でもあるそうです。

川と火山がつくりだしたJOMON

館内に入るとすぐの「地域コーナー」には「苗場山麓ジオパーク」についてのジオラマやパネル展示、書籍が置かれてあります。
学芸員の佐藤信之さんに聞いたお話を要約すると、津南周辺は「日本最大規模の河岸段丘」とも呼ばれていて、「信濃川」「中津川」の合流点にも広大な河岸段丘(ばかでっけー段々畑みたいなもん)が作られたそうです。
そこに30万年前に起きた苗場山の火山活動でできた「柱状節理」から全国名水百選の「龍ヶ窪」を含むたくさんの「湧水地点」が形成され、その湧き水の周辺に「縄文銀座」と呼ばれるほど密集した草創期から晩期までの縄文遺跡が見つかっているとのことです。

つまり個人的にまとめると「信濃川と苗場山のおかげで河岸段丘と湧水地点ができて、それが縄文銀座につながったんじゃないかな?」ということですね。
雪が多ければ湧水も豊富になりますからたくさんの縄文人が美味しいお水を飲めます。
雪に閉ざされる季節が長くても十分な水と食べ物が確保できた津南は、縄文人にとっては銀座の一等地だったということでしょうか?

芸術は縄文だ!

2024年の7月13日から11月4日までの企画展「JOMON×ART 原始感覚が響く JOMONの風2024」です。
火焔型土器に代表される縄文の魅力的な造形デザインや縄文文化にインスピレーションを受けて制作された、20名以上の現代アート作家による絵画や彫刻、陶芸、書道、イメージ動画、編み物オブジェなど多様な作品が館内の展示室のほか、敷地内の芝生広場や縄文ムラに展示されています。
「これは縄文っぽい!」という作品から「これが縄文なのか!?」という非常に芸術的な作品や「これはアイヌだ!」というアイヌアートまであります。
縄文文化とアイヌ文化はいろいろな部分が似ているんですよね~。
企画展の一部では津南町で出土した縄文時代草創期から、早期、前期、中期、後期、晩期までの縄文土器を一同に展示。土器のカタチや文様の変化を見ることができます。
この展示コーナーのように草創期から晩期までの6つの時代の土器が、まとまった数で一つの地域に出土することは珍しいそうです。

そこでやはり目に付くのは「土器文様の到達点」と展示説明文にあった縄文時代中期の「火焔型土器」です。
その複雑な文様は「縄文人の精神性や観念を映す装飾を超えた意味」があるのではないかとのことでした。カッコイイ!
その火焔型土器の前の時代に作られたとされる「五丁歩式土器」や、後の時代に作られたとされる「栃倉式土器」なども火焔型土器の左右に展示されています。
長岡市栃尾地域の栃倉遺跡で出土したものと同じ特徴を持つ栃倉式土器は火焔型土器に似た部分もありつつ、また違ったダイナミックで複雑な文様をしていますね。

学芸員さんのお話で面白かったのが「自動車のモデルチェンジのようだ」という言葉でして、同じ車種でも時代によって四角いフォルムから丸っこいフォルムに変化したりするような様子が、土器の時代による形の変化と確かに似ていると感じました。
前段階の五丁歩式土器がどんなものかはぜひ実物を見に行ってください!
また芝生広場や縄文ムラの展示は森や畑、復元住居と融合した作品になっています。まさにここでしか見られない芸術です!
企画展の他に巡回展「東南アジアの洞窟遺跡」も7月13日から11月4日まで行われています。
東南アジアと九州と新潟の洞窟遺跡にどれも生活や信仰の痕跡があることを改めて知ると、人類の歴史の長さや広さを感じます。

歴史発見!アンギン編み

ホールの一角には「アンギン編み」についての展示があります。
個人的にまとめると(塩沢の牧之通りで有名な)鈴木牧之の書物だけにあった「アンギン」を民俗学研究者が50年近くかけてやっとのことで津南町結東で初めて発見。
それをきっかけに1960年には当時92歳の男性からアンギンの製作技術を教えてもらうことに成功したのですが、このアンギン編みの独特な文様が縄文土器の底面にできていた布の跡の編み目文様と同じである、ということらしいのです。
 
これは例えば縄文時代の火焔型土器と同じ模様の壺の作り方がごく一部の人たちに伝わっていて、それを失われるギリギリのタイミングで伝承できたみたいなものですよね。すごい物語じゃないですか!
 
なじょもんでは保存会のみなさんによって体験実習が行われていたり、育てたカラムシから作られたアンギン編み製品がミュージアムショップで販売されたりしています。

ホンモノが持てます

見過ごされてしまいそうなのが奥の「整理室」にある「持てる縄文土器」で、職員さんに声をかけて立ち会ってもらえれば復元した本物の火焔型土器を自分で持ち上げることができます!

その日なにができるか体験カレンダーを見て考えよう!

なじょもんの大きな特徴と言えるのが土日祝日や夏休みに行われる「体験実習」の種類の多さで、年間で約80種類も実施されているそうです。(予約制・別料金)

一番実施回数が多いのが「勾玉づくり」で柔らかい滑石(かっせき)を細いノコギリで大まかに削り、ヤスリで磨いて整えます。
ほかに「石鏃(せきぞく)づくり」や「石鏃と矢づくり」体験では押圧剥離(おうあつはくり)と言って叩いて砕くのではなく、鹿の角で黒曜石を押してけずり矢じりを作る方法を体験します。石器なのに叩かないんですか?
このほかわら細工や編み物、染め物、土器づくりや、ひょうたん細工など敷地内で育てた作物を材料にした体験などいろいろな体験があります。
完全予約制ですので、興味のある方は事前になじょもんのホームページを確認してお申し込みください。

おうちに持って帰れる縄文

「ミュージアムショップ」にはTシャツや手ぬぐい、アクセサリーなどのたくさんの縄文グッズのほか、わら細工や陶芸品、津南町の書籍などありますが、やはり何といっても保存会のみなさんによって手間暇をかけて作られたコースターなどの「アンギン編製品」が購入できるのが嬉しいです。
また最近注目なのが「旅する縄文」シリーズの製品で、これは「趣味は火焔型土器」というプロフィールを持つ新潟県内専門のフリーバスガイドなぐも友美さんの企画による、ポップでカラフルなTシャツやトートバックなどの縄文製品シリーズです。
このなぐも友美さんは、なじょもんとしては珍しい小さい子供でもできる「プラバン縄文キーホルダーづくり」体験(対象:保護者同伴3歳以上)の講師もされています。近日中ですと8月11日に行われますので、興味のある方は要予約です!
訪れた時のなじょもんの「ひまわり畑」はまだ咲きかけでした。例年8月の上旬から中旬が見頃になるそうです。
ほかになじょもんから10kmほど離れた場所には「津南ひまわり広場」もあります。この津南ひまわり広場は縄文ムラのモデルになった沖ノ原遺跡のある場所のすぐそばです。ひまわりを見ながら縄文の集落があった立地条件を体感するのもいいかもしれません。
さらに縄文集落と地形の関係が気になれば津南町では「川の展望台」に行けば「河岸段丘」を見渡せますし、「津南見玉公園」に行けば津南町のグランドキャニオンとも呼ばれる「柱状節理」を見ることができますし、名水百選の「龍ヶ窪」に行けば「湧水」を飲むことができます。
資料だけではない「ホンモノ」が近くにあるってとても魅力的です。

縄文のことを知ると、地域の観光の楽しみ方に深みが出てくるような気がしませんか?
なじょもんは体験実習から、アートから、植物から、地理から、いろいろなジャンルから縄文時代を知るきっかけになる場所だと感じました。

なじょもんとその周辺を訪ねてみて、なじょもんの目指す歴史的自然環境を守り、後世へ伝えていくための「自然と人とのつながり」を体感してみるのは、なじょだい??
津南町 農と縄文の体験実習館 なじょもん

津南町 農と縄文の体験実習館 なじょもん

住所:新潟県中魚沼郡津南町大字下船渡乙835
電話:025-765-5511
開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、12/28~1/4
駐車場:200台・大型バス5台
入館料:無料(有料企画展開催時は大人300円、中学生以下無料 ※7/13~11/4は有料) 
※体験学習へ参加の場合は体験実習料が必要

この記事を書いた人
まきたろう

若い頃は自転車日本縦断や四国八十八ヶ所の歩き遍路など旅を住み家とし、新潟に戻っても漂泊の思いやまず仕事の傍ら県内外をさ迷っている人生まだまだ旅の途中の人。 昭和とか縄文とか古いものが好き♪五泉市在住。