図書館で!? 新潟の郷土料理と地酒を堪能 /新潟市


2025年11月14日 15ビュー

図書館で"のっぺ"が食べられる


「のっぺ」といえば、新潟の家庭に古くから伝わる郷土料理。
里芋のとろみと鮭のうまみ、そして色とりどりの野菜が調和した、どこか懐かしい味だ。
その料理を味わえる"図書館"がある。
その図書館は新潟市中央区の本間文庫 にいがた食の図書館。
築年数を重ねた木造の建物。
玄関を入るとお茶の間のような空間が広がる。

壁際には天井までの書棚が設置され、3列スライド式の書棚に本がぎっしりと並んでいる。
背表紙には「郷土料理」「年中行事」「生活の知恵」など食と酒にまつわる本ばかりが並ぶ。

文庫は「BOOK CAFE つきうえ」にもなっていて毎月第3水・木曜に『のっぺデイ』を設け、
郷土料理「のっぺ」の単品(500円・税込)と『郷土料理のっぺセット(1,500円・税込)』を提供している。
※2025年11月は第2水・木曜

 

セットはメインの「のっぺ」に「けんさん焼き」か「麩ずし」のどちらかを選ぶ。
さらに「せんぞうぼう」(そば)と旬の小鉢がついてくる。

「のっぺ」は新潟県内各地域でその作り方や味、使う具材は様々で奥深く、新潟を代表する郷土料理の一つ。

図書館でいただけるのは主に新潟市に伝わる冷たいのっぺ。
干し貝柱の出汁が使われているので、出汁のきいた味わい深い一品だ。

郷土料理セットを味わう


のっぺデイ以外の開館日にも『郷土料理セット(1,300円・税込)』が用意されている。

新潟市西蒲区旧西川町に伝承される「麩ずし」、県内全域で親しまれる「けんさん焼き」、
佐渡市赤泊地区の「せんぞうぼう」、そして旬の小鉢「煮菜」が並んでいた。
どの皿にも、地域に根付いた歴史が感じられる。

【岩船の麩を使った】麩ずし


新潟市西蒲区旧西川町の家庭で受け継がれる郷土料理。
「岩船麩」「新発田麩」「まんじゅう麩」などと呼ばれる村上市や新発田市など県北地域特産のお麩を甘辛く煮含め、お麩で酢飯を包む——いわば“お麩のいなり寿司”だ。
ユニークなのが煮た麩を裏返しながら酢飯を包むこと。

その昔、村上から旧西川町の代官所へ北前船でさまざまな物資が運ばれた中に岩船麩があり、
油揚げの代用品として麩が使われ保存がきく食材として地域に根づいたとされる。
しっとりとした麩は煮干しと昆布の出汁で煮ている。
まろやかな酢飯が寄り添い、一口食べれば出汁の香りとともに、懐かしい食卓の記憶がよみがえる。

【米どころの香ばしさ】けんさん焼き


おにぎりを平たく握り、両面を素焼きしてから
しょうがを入れた甘味噌を塗って香ばしく焼く。
戦国時代、上杉謙信の兵が剣の先で焼いたという「剣先焼き」説、
年貢米の残りを使った「献残焼き」説など、名前の由来も興味深い。
しょうが味噌の香ばしさと米の甘みが重なり、
囲炉裏の記憶を思わせる素朴な一品だ。
 

【佐渡からの贈りもの】せんぞうぼう


佐渡の山間地ではそばの栽培が盛んで"そば文化”が根付いている。
図書館でいただける「せんぞうぼう」は佐渡市赤泊に伝わるそばだ。

そばつゆの出汁は佐渡では馴染み深いアゴ(トビウオ)に干し椎茸や昆布でとっている。
そばの上に千切り大根を乾煎りして黒ゴマであえた薬味をたっぷりのせるのが大きな特徴だ。

この大根の千切りは戦後の食糧難の時代、そばを食べるときのかさましとしてのせ始めたのがルーツだという。

そして、この日の小鉢は「煮菜」。
塩漬け菜を塩抜きして煮る冬の保存食で、
打ち豆と一緒に炊き、最後に酒粕を加えている。
素朴ながら新潟の冬の暮らしを感じさせてくれた。

郷土料理とともに、日本酒の飲み比べも

本間文庫では、郷土料理に合わせて新潟の日本酒の飲み比べも楽しめる。
『地酒3種類きき酒セット(1,000円税込)』は季節によって内容は変わり、その時期おすすめの地酒から好みの3種類を選べる。
日本酒は単品(400~500円)でも提供している。

同じ米と水から生まれた味の違いを、静かな図書館でじっくり味わう体験だ。

“食の図書館”ができるまで


本間文庫 にいがた食の図書館は、2021年6月に開館。
新潟を代表する食文化研究家の本間伸夫さん(94)が生涯をかけて集めた蔵書をもとに設立された。
館内には、『聞き書 日本の食生活シリーズ』(農文協)全48巻がそろい、
本間さんたちが編集した『新潟の食事』も含まれる。

また、本間さんが執筆した新潟の風土・食・食文化をまとめた『食は新潟にあり』(新潟日報事業社)や、
今年発売された最新刊『新・食は新潟にあり』(ニール)も販売されている。

本棚には本間さんの論文や原稿もあり、原本を読むことができる。
図書館の資料や書籍の貸し出しは行っていないが、コピーは可能(有料)。
誰でも訪れて本や資料を閲覧できる“開かれた場”だ。

NPO法人が運営し、食文化を未来へ

運営しているのは、NPO法人 にいがた食の図書館。
展示や食イベント、資料の保存を通じて、新潟の食文化を未来へつないでいる。
中心となるのが、郷土食研究や出版を手がける髙橋真理子さん。
彼女が代表を務める出版会社株式会社ニールでは、 新潟の食や日本酒にまつわる書籍や雑誌を発行しており、図書館内でも販売されている。

文化庁の食文化ミュージアムとして


図書館は2025年3月に文化庁の「食文化ミュージアム」に認定された。
新潟市では初で、新潟市食育・花育センターとアグリパークの3施設が同時に認定された。

「食文化ミュージアム」は文化庁が食文化への学びや体験の提供に取り組む博物館や食の体験・情報発信施設に
取り組んでいる場所を認定している取り組み。

“食でつながる図書館”という新しい文化のかたちがここにある。

新潟を旅行するのなら、まずはここへ立ち寄り新潟の食と酒を堪能し、
さらに本や雑誌で観光情報を仕入れて街に繰り出すのもいいのではないか。
その時は髙橋さんからの旅のアドバイスが聞けるかも!
 
本間文庫にいがた食の図書館

本間文庫にいがた食の図書館

住所:〒951-8067 新潟県新潟市中央区中央区本町通1番町178-3
開館情報: 水・木・土曜 11時~20時  日曜休館 ※それ以外の曜日は応相談
TEL:025-378-3564 
FAX:025-378-3665
駐車場:なし ※近隣の有料駐車場をご利用ください

この記事を書いた人
Akiko

大阪出身の新潟市在住。趣味は昼のみ。3人の子育てもひと段落し、おいしい「食」とおいしい「酒」を求めて各地をまわるのが大好きです。パワフルに情報発信中!