新たな歴史を刻む新店オープン! 湊町新潟ガストロノミー「宇呀(UGA)」/新潟市


2026年01月31日 22ビュー
新潟市中央区・本町通り。古くから商いの町として栄えてきたこの通りに、いまの新潟を映し出す新たな食の拠点が誕生しました。2025年12月にオープンした薪火レストラン「宇呀(うが)」

宇呀が掲げるコンセプトは、「新潟の食文化を未来へつなぐ、湊町新潟ガストロノミー」。新潟の食材や生産者の魅力を県外・国外へ発信すること、そして新潟に暮らす人にとっても「この県に生まれてよかった」「住んでいてよかった」と、あらためて感じられる場をつくることです。

実際に訪れ、食事を通して感じたのは、料理そのもののおいしさにとどまらず、新潟という土地の輪郭が立ち上がってくるような体験でした──。

140年の時を受け継ぐ、本町通りの隠れ家

本町通りから一歩路地へ入ると、煌々と明かりを灯した一軒の古民家があります。かつては刃物屋、包丁屋として営まれていた「古山正房商店」という、大正建築の古民家長屋をリノベーションして、レストランへと生まれ変わったのです。
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至る所に新潟らしさが散りばめられた店内。カウンターや箸、器の一部は「新潟漆器」。カトラリーは、燕市の老舗ブランド「ラッキーウッド」にオリジナルで依頼し、おしぼり置きは鎚起銅器を制作する「玉川堂」による特注品。その他、陶器はシェフ自らが制作し、皿や急須、鍋に至るまで手作りされています。

料理が始まる前から、メイド・イン・ニイガタの手仕事に触れる時間が用意されているとは、なんというぜいたくでしょうか。
この店を営むのは、長岡市出身の諏佐 尚紀(すさ なおき)シェフ。県内外の名だたるレストランや寿司店、海外の星付きレストランで研鑽を積んできた料理人です。

諏佐シェフが提供するのは、ジャンルレスなガストロノミー。一流店で学んできた日本料理やフレンチ、買い物に行く本町市場のお母さんたちから学んだ郷土料理、海外の友人から教わった多国籍料理など、それらすべてが料理に溶け込んでいます。
メニューには一品ごとにタイトルが付けられ、シェフとともに食の旅をたどるような時間が始まります。カウンター8席のみの店内では、18時30分から一斉スタート。「いただきます」から始まり、食材や命をいただくことへの感謝を共有しながら、コースが進んでいきます。(2月までは18時~、3月から18時30分~に変更)

薪火が消えるまでの約2時間半、火の温度とともに過ごす、静かで濃密なひとときです。

“火”の物語から始まるガストロノミー

風の運ぶ文化

最初に供されたのは、3種のアミューズ。自然栽培の「紅はるか」と佐渡産のクリームチーズを練り合わせた一品は、外側にローストした昆布パウダーをまとわせてあります。次に、鬼ぐるみのペーストと新川漁港の岩海苔を合わせたタルト。そして、ビーツを使用したムースの下には新潟のもち米を練り込んだ揚げ煎餅が添えられ、手でつまんで食べられる構成です。

海と山、港と畑、そして人や文化を運んだ北前船。その要素がひと口に凝縮され、湊町新潟のローカルガストロノミーが静かに始まります。
冬トマト 未完

続くヒラメは、冬の寒い海で育ったものを神経締めにし、1週間寝かせたものです。しかし、この料理の主役は魚ではなく、トマト。未熟の青いトマトをメインに、みかんオイルを組み合わせています。

完熟トマトを濾して作ったクリアウォーターに、辛くない唐辛子「ひもとうがらし」と「笹川流れのにがり」を重ね、仕上げに佐渡の柑橘農家さんの完熟したすだちの皮を散らします。未熟トマトの青い香りや食感、酸味が際立ち、冬ならではの空気感まで伝わってくる一皿でした。
土に聴く 蓮の声

五泉市の無農薬・無肥料のれんこんブランド「KEIKO PRINCESS OF LOTUS」を使い、部位ごとに調理方法を変えています。最初の節はねっとり、先端はシャキッと。マグロで言えば大トロ、中トロ、赤身のように、それぞれの個性を生かした構成です。

中央の部分は油通しして薪の香りをまとわせ、餅状に練ったレンコンに新芽を混ぜ、米粉で揚げています。節の部分は焙煎して「レンコンコーヒー」に。ソースには同じ水域に生息する淡水ガニ「モクズガニ」を使用し、香りの変化を楽しませます。

五泉の土、川の水、薪火の香りが重なり、レンコンという食材を通して新潟の地形が感じられました。
忘れられた宝物 春を待つ

未利用魚として扱われることが多い「エソ」という魚の焼き干しに、2年熟成させた利尻昆布を合わせ、丁寧に引かれた出汁。派手さはありませんが、かつて北前船の往来で栄えた湊町・新潟の食の記憶が、静かに舌に残ります。
荒れゆく海 命の恵み

炭火で焼いた10キロ台の佐渡アンコウを、鬼ぐるみとレタスで薪焼きにし、新潟・新川漁港のハマグリ、佐渡牛乳のソース、フェンネルオイルを添えた一皿。ブリンっと弾力のあるアンコウに、思わず声を失うほど!
雪国、火で包む

まさかの、タコスが登場です! オール新潟食材の宇呀流タコスは、自家栽培のトウモロコシを乾燥させ、薪の灰で煮て皮を溶かすニシュタマリゼーション製法で生地を作ります。具材には、猪を佐渡みかんとともに煮込み、香草や薬草を。異国の料理でありながら、新潟の食材と手仕事によって、土地に根ざした味わいに昇華されていました。
冬鹿と森 炎の宴

肉料理は鹿の内ももを使用。野生肉に合う“土っぽい香り”を皿に持たせるため菊芋を合わせ、重たくなりすぎないよう人参で輪郭を整えています。ソースは、五泉のアロニアベリーにねずの実を加え、針葉樹の香りを重ねたもの。

鹿肉は、捕獲後30分以内の解体を徹底する猟師によるもので、ジビエの概念が一新するほど臭みのないクリアな味わいでした。
ご飯のおとも(奥から、なまぐさこうこ、えごま、赤かぶ、オータムポエム、ハマグリ佃煮、りゅうのひげ、納豆麹、赤ひげ)
稲の記憶 二千五百年の一皿

締めには、絵の具のパレットのような皿に“ご飯のおとも”が並び、新潟の時代や土地の記憶を添えて、4種類のご飯を楽しむ構成です。

赤米は「約2500年前に日本へ伝わった米の形は赤米だったのでは」とされる話題から始まり、三条市の農家が育てる珍しい“うるち米品種”の赤米を圧力釜で炊いています。続く「農林1号」は1931年に誕生した品種で、香りとミネラル感が際立ちます。3つ目は、在来品種のもち米「やなぎもち」を使い、しょうゆ味のおこわ「長岡赤飯」を。最後が、コシヒカリの原型にあたる品種「農林100号」と、これまでにない食べ比べ!

ご飯のおともとの相性の良さも含めて、締めの一皿が米どころ新潟の歴史をたどる、小さな食の旅になっていました。
冬いちじく 静かな余韻

デザートはイチジクを題材にしながら、果実ではなく“木”を使う意外性のある一皿です。木を煮出して香りを移し、長岡市の加勢牧場のガンジー牛乳でアイスクリームに仕立てます。アイスの中にイチジクの実は入っておらず、冬のイチジクの余韻を表現。
手渡す一口 未来へ

食後には、シェフが目の前で米粉を使った落雁を手作りしてくれる演出も。落雁に使う米粉は佐渡産で、粒子が非常に細かいのが特長。焙煎した糠と合わせ、水を少しずつ回しながら仕上げることで、口に含むとほどける食感を生み出しています。

合わせる村上茶は「日本の北限のお茶」ともいわれ、豪雪地帯で育つ茶ならではの、雪解け水を思わせるすっきりとした味わいが印象的です。食後の余韻を静かに整える一杯として、締めにふさわしい存在でした。

本町通りから、新潟を旅する理由が生まれる

宇呀の魅力は、料理の華やかさ以上に、土地の情報が味覚へと変換されていく点にあります。北前船の歴史、湊町の記憶、平野の穀物、里山の実り、そして日本海。生産者の名前と地名が並ぶメニューをたどりながら食べ進めるうちに、新潟という土地が点ではなく、一本の線として立ち上がってきます。

さらに、その食材が本来あった自然の姿や、土地の空気、温度までもが、料理を通して伝わってくるように感じられます。それは、諏佐シェフ自身が生産者の元に足を運び、声に耳を傾け、畑や山の現場でともに汗を流してきたからこそ見えている景色。その実感が、一皿一皿に込められて、私たちに伝わってくるのです。
新潟がどれほど豊かで物語に満ちた場所なのだろうと、さらにもっとこの土地のことを知りたくなりました。湊町の風は、海だけから吹くものではなく、畑から、山から、人の手からも吹いてくる──宇呀で過ごした時間は、そのことをあらためて教えてくれました。

ここを目的に、新潟を訪れる理由は十分にあります。ぜひ、その時間を体験してみてください。

【Menu】 ※2日前までに要予約

・フルコース 16,500円
・メニューアルコールペアリング(6杯)6,500円
・ノンアルコールペアリング(5杯程度) 5,000円

宇呀(UGA)

宇呀(UGA)

住所 新潟市中央区本町通9番町1326
TEL なし
営業時間 18:30一斉スタート ※土・日曜はランチも営業、12:00一斉スタート
定休日 不定休
席数 8席
駐車場 なし

※取材時のメニューです。料理内容は季節によって変わります。

この記事を書いた人
新井まさみ

富山県生まれ、新潟市在住のママライター。 グルメな夫、子鉄の長男、肉食の長女、リアクション芸人の私、の4人家族。 外食費と娯楽費が家計を圧迫していますが、おいしいモノとたのしいコトを求めて日々開拓中!
Instagram : https://www.instagram.com/maconnect2022/