秘境・吉ヶ平へ行ってみよう!/三条市


2021年08月08日 2361ビュー

さて、夏休み!

観光シーズン真っ盛り!
山行く? 海行く?
というわけで、今回は「山」。三条市下田地区の「吉ヶ平自然体感の郷」に行ってきました。

君は吉ヶ平を知っているか?

まずは、吉ヶ平について。
下田から三条市街地を流れ、三条っ子の愛する五十嵐川の支流・守門川の上流にある近年は釣りやハイキングの拠点、あるいは山奥の静かなキャンプ地として人気のエリアですが、実は、1970(昭和45)年まで、ここには小さな集落がありました。
このほど「峠 最後のサムライ」として映画化された司馬遼太郎の「峠」でも有名な、幕末から戊辰戦争で活躍した長岡藩の家老・河井継之助が会津に落ちのびるために越えた「八十里越え」の新潟側の要衝として、あるいは炭焼きなどで生計を立てていた村でした。
江戸時代後期から明治時代には栄え、ピーク時には200人以上が住んでいましたが、鉄道開通などにより通行者が減少、炭の需要も減り、昭和49年に集団離村し、その歴史の幕を下ろしました。
今でも、地域にはかつての村の面影を感じさせる石柱や橋の名残りなどを見ることができ、なんだかセンチメンタルな気分にさせてくれます。
また、平安時代末期、後白河天皇の第三皇子である以仁王(もちひとおう)が源氏に呼び掛け平氏追討のために挙兵するも失敗。その後、関東から会津に落ち延び、八十里を越えてこの地に隠れ住み、吉ヶ平の起こりとなったというスケールの大きな伝説もあります。

そして今は

そんな歴史ロマンを感じさせてくれる吉ヶ平は、今は活動拠点となる吉ヶ平山荘、釣り堀、キャンプ場が三条市によって整備され、アウトドアを満喫できるスポットになりました。また、自然体感の郷脇の守門川の1キロメートル区間は、五十嵐川漁業協同組合により「吉ヶ平フィッシングパーク」として、管理釣り場として人気を博しています。

まずは行ってみよう!

新潟市から三条市街地を通り下田方面に向かう国道289号線を走ります。
なお、新潟県側の289号線は、現在は五十嵐川上流の大谷ダムまでしか一般車両は通行できません。そのため、今、山の向こうの福島県只見町側の国道289号線へ、一般車両が通行できる新たな幹線道路としての新八十里越を整備しているところだったりします。開通したあかつきには、きっと福島県からも下田に遊びに来る人が増えるはず。
しかし、今回向かうのは旧の八十里越の方。国道289号線を途中で折れて守門川沿いの県道183号線を走ります。
そして、のどかな集落を走り抜けた先にゲートを発見。ここから先は冬期間通行止めになるそうです。
地元の人曰く、「昔に比べたら随分と車で走りやすくなった」という山道を慎重に上っていきます。一応、車1台が十分に通れる車幅はあるけれど、なかなかスリリング。下は崖なのにフェンスもないし。なんだか、どこかの一軒家を探しに行くテレビ番組にありそうなシチュエーションですね。

吉ヶ平自然体感の郷に到着!

駐車場も整備されていて、芝生広場もあり、なかなか過ごしやすそう。
この一帯は、かつて、森町小学校吉ヶ平分校があった場所らしく、キャンプ場の入り口には門柱や石段の名残が見えます。そして、中心にある吉ヶ平山荘も、六年ほど前に建て替えられる以前は分校の校舎を利用していたそう。
吉ヶ平山荘は、このエリアの拠点施設になっていて、釣り堀やフィッシングパークの管理窓口になっているほか、テントの貸出も行っています。また、トイレも完備。携帯電話の電波も届かず、コンビニどころか他に民家もないこのスポットでは、緊急時にもとても重要なところ。
建て替えられたばかりとあってとてもきれいでした。
なお、キャンプは日帰り(午前9時から午後7時まで)で1,000円(税込)、宿泊(午前9時から翌午前9時まで)で2,000円(税込)。

絶好の釣りスポット

また、この日は絶好の釣り日和ということもあり、管理釣り場であるフィッシングパークとなっている守門川には多くの釣り人がいました。時には40センチを超える大型のイワナや25センチ以上のヤマメを放流していて、大自然の中で釣りを楽しめるとあって人気のスポット。
料金は1日2,000円、年間10,000円で魚はキャッチ&リリース、使えるのはフライとテンカラ、ルアー(シングルフックのもの)のみ。
とはいえ、家族連れなどで訪れ「もっと気軽に釣りをしたい」という人には山荘裏の釣り掘りがおすすめ。
取材当日は絶好の行楽日和ということもあり、三条市内から遊びに来ていた家族連れが釣りを楽しんでいました。
放流されているのは20センチほどのイワナとヤマメ。初心者でも簡単なウキ釣りで連れちゃいます。子どもを連れてきたお母さん曰く「川や海より安全だし、子どもにはぴったりです」とのこと。
料金は大人1,000円(税込)、中学生以下500円(税込)。もちろん竿や仕掛けは用意されてあります。
 

名水「城ノ腰の清水」

キャンプ場の脇には、吉ヶ平の人々が愛してきた故郷の名水「城ノ腰の清水」が湧いています。下田地区にはいくつも名水がありますが、ここも新潟県の名水のひとつに数えられており、今でも汲みに来る人が絶えないそう。
かつて八十里越を旅する人たちも、きっと、ここで喉を潤していたんだろうと思うとなかなかロマンがありますね。キャンプの調理に使えるのもすごい。

せっかくなので雨生ヶ池に行ってみよう!

「秘境」というからには、もっと色々見てみよう、ということで、少しハイキングめいたこともしてみたり。
守門川を越えて、目指すは大蛇伝説のある山中の雨生ヶ池(まごいがいけ)へ。
かつての集落のかすかな名残を横目に少し歩くと、「馬場跡」の石碑と分かれ道に出ます。ここを右に入れば、司馬遼太郎の「峠」でも知られる古道・八十里越ですが、今回は左の雨生ヶ池方面へ。
ていうか、思ったよりハードっす。
入口には「池まで1キロ」なんて書いてあったけど、こんなに傾斜があるとは書いてなかったぞ。
などと思いつつも登っていきます。すれ違う人たちは本格的な装備で、ジーンズと半袖シャツの私は場違い感が半端ないし、熊避けの鈴もないし。
汗だくで20分歩き続け、ようやく対面。池の主である大蛇が若武者の姿で里に下り、夜な夜な名主の娘と会っていた、という伝説がある池は、とても神秘的な雰囲気で、水面には魚影もいくつか見えました。
その大蛇伝説は、下田の夏祭り「しただふるさとまつり」のシンボルともなっている「雨生の大蛇」のモチーフにもなっています。
平家物語の一節に重なる伝説は、やはり以仁王伝説とのかかわりを連想せずにはいられません。
やっぱり、吉ヶ平にはロマンがあるよなあ。

吉ヶ平自然体感の郷

住所:三条市吉ヶ平169番地
営業期間:例年6月1日から11月15日まで
TEL:090-3226―5912(午前9時から午後5時まで対応)
【注意】県道鞍掛八木向線が例年11月中旬から5月末頃まで冬季閉鎖となります。

帰りは「道の駅漢学の里しただ」へ

国道289号線を引き返す途中で立ち寄ったのが、漢学の里しただ。農産物直売所「彩遊記」、農家レストラン「庭月庵 悟空」からなる道の駅で、加えて、名前の由来であり、下田出身で日本の誇る漢和辞典「大漢和」の編纂で知られる漢学博士・諸橋轍次を顕彰する諸橋轍次記念館が隣にあります。
とりあえず駐車場から見える下田のシンボル「八木ヶ鼻」をぱちり。
昼食の時間には早いので、寄ったのは直売所の「彩遊記」。
連休中ということもあって観光客でにぎわっていました。
この時期は下田産の夏野菜がどっさり。枝豆に茄子とどれも美味しそう。
また、「併設の加工所で作った手作りスイーツもおすすめです」と駅長代理の中野貴史さん。下田の食材をふんだんにいかしたプリンなどの洋菓子はもちろん、新潟名物として定番の笹団子も、手作り感あふれるものがずらりと並んでいました。
とはいえ、ハイキングの後に欲しいのは、やっぱり冷たいもの。というわけで下田産のブルーベリーをふんだんに使ったブルーベリーソフトクリーム(税込390円)をいただきました。
 夏にぴったりのさっぱりとしたフルーティーな味わいで美味しい。
絵的にはミックスの方がきれいなんでしょうけど、この酸味と甘味のバランスがすごく良いので、こっちが正解だった予感。いや、私の好みなんですけどね。

道の駅漢学の里しただ「彩遊記」

住所:三条市庭月451―1
営業時間:午前9時から午後4時まで(冬期間は午前10時から午後3時まで)
休館日:1・2月の毎週月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月31日から翌1月3日まで)
TEL:0256-47-2230

半世紀前に思いを馳せ

吉ヶ平の集団離村は1970年。半世紀前は遠い昔のようで、そうでもないようです。地域の人によればかつての村民もまだまだ健在で、時折、墓参りに来たりもするとか。きっと、彼らは、離村した当時はまだ若者だったことでしょう。
実際、山道沿いの古い墓地には新しいお供えも見られました。村は地図から消えても、その思い出は人々の中に残っているのだと感じさせられました。
自然豊かなフィールドでキャンプや釣りを楽しみながら、彼らが時代の変化の中でどんな気持ちで住み慣れた村を離れたのか、思いを巡らせてみるのも良いのではないでしょうか。

今回のスポット

この記事を書いた人
ヤマダ マコト

新潟市秋葉区在住。サラリーマンの傍らkindleストアで電子書籍にて地元・新潟を舞台にしたエンタメ小説を発表。インディーズながら一部で熱烈な人気を集め、どっちが本業か分からなくなりつつある中年男。