映画『峠 最後のサムライ』のロケ地をめぐってサムライ気分を満喫No.5 オオクラ見晴台・朝日山古戦場・西脇邸/小千谷市


2022年05月30日 7305ビュー
2022年6月17日に公開となる映画『峠 最後のサムライ』。昨年、4回連続でロケ地をご紹介してきましたが、今回は小千谷市の撮影スポットをお届けいたします。

榎峠のシーンはじつはここ、オオクラ見晴台

ご紹介するのは3箇所。まずは北越戊辰戦争で新政府軍と長岡藩軍の攻防戦が行われた激戦地、榎峠のシーンです。じつはこのシーンの撮影は小千谷市川井の高場山山頂付近にある「オオクラ見晴台」で行われました。ロケに立ち会った小千谷市観光協会の阿部真也さんによると「榎峠は古地図をみると『白岩』と表記されています。そのため撮影隊は信濃川沿いの対岸から白い山肌が見えるところを探して」いたのだとか。それで選ばれたのがこの場所だったのです。そこまでこだわっていたとは脱帽です!
ロケ地巡りで訪ねてきた方たちのために、解説パネルと「小千谷市歴史・ロケ地MAP」も用意されています。
撮影が行われたのは2018年10月6日。エキストラが150名ほど参加しました。草を刈り、側溝やコンクリートブロックを隠し砂利を敷き、丁寧に作り込みを行ったそうです。
まさに「絶景かな!」という風景。川口方面の蛇行する信濃川を一望できますよ!
オオクラ見晴台の前後は未舗装の林道になっているため車での行き来も楽ではありませんが、途中で道がなくなることはなく反対側に抜けられるのでご安心ください。また近くにコンビニや自販機もないので、これからの季節、熱中症対策をお忘れなく。

朝日山古戦場

小千谷市浦柄にある朝日山古戦場は、劇中でも同地の設定で登場します。ここは北越戊辰戦争で長岡藩の拠点となった要衝です。
山頂のロケ地に行くには山道を登っていかなくてはいけません。一応舗装されていますが、かなり道が狭いため運転に自信のない方は麓の駐車場に停めて、歩いて行くことをおすすめします。案内看板には浦柄神社の駐車場から山頂まで徒歩70分と表記されていました。こちらもオオクラ見晴台同様、ドリンクや虫除けスプレーなどがあると安心です。
山頂には無人の休憩展望所があります。まずは一休みも兼ねて訪ねてみました。
河井継之助岩村精一郎の肖像画や書簡、司馬遼太郎さんの「峠」関連の資料、地元の浦柄史蹟保存会の資料などが展示されています。ここにもロケ地解説パネルとマップが置かれていました。
河井継之助が母に宛てた手紙です。読み下し文がなかったため、残念ながら何が書いてあるかは分かりませんでしたが、歴史を感じることはできました。
展望台にも登ってみました。360度パノラマビューが楽しめます。一瞬「えっ、また歩くの?」と思ってしまいましたが、こちらは休憩所脇の階段を上がってすぐなので、ぜひこちらの絶景もお楽しみください。
激戦地だった朝日山古戦場には、当時の様子を伝えるものがいくつか残されています。これはそのひとつ。看板には「第一砲塁の地」と書かれていました。
砲塁とは大砲を据え付けた場所のことです。
継之助が築かせたというフランス兵法による塹壕も残っています。ここで映画『峠 最後のサムライ』の撮影が行われたのは2018年10月7日、8日です。まず7日が準備日で山頂まで機材を上げました。大型車が途中までしか入れないため、そこから先は地元の方たちの軽トラックを5台を使って運びました。翌日の撮影に参加したエキストラはおよそ100名。途中まではマイクロバスで、残りは兵士の衣裳を身に着けたまま20分ほど歩いてもらったそうです。
往事に思いを馳せ、塹壕の中に立ってみました。150年余り前、まさにこの場所で激戦が繰り広げられたのかと思うと、神妙な気持ちになります。

継之助とおすがが長岡甚句を踊った旅籠枡屋

継之助が行きつけにしていた長岡の旅籠「枡屋」。芳根京子さん演じる看板娘が継之助と会話を交わします。この枡屋に継之助が愛妻・すがを連れていって長岡甚句を踊るシーンは、小千谷縮で財をなした豪商の西脇邸で撮影が行われました。
通常、庭園は公開されていますが、建物内部は非公開です。今回は特別に入れていただきました。
敷地内には蔵や座敷棟などの建物もありましたが、2004年の中越地震で被害を受け、残るのは江戸時代に建てられた主屋(本館)と、およそ100年ほど前に建てられ迎賓館として使われていた離れ(新館)の2棟のみとなります。
離れの2階和室を旅籠枡屋の一室と見立てて、撮影は行われました。継之助やおすがが長岡甚句を踊るシーンは、昔から踊り慣れているようで驚かされましたが、阿部さん曰く「お2人は覚えるのが早かった」そうです。
西脇邸は国道に面しており、車や信号の音も聞こえてくるため、警察にも協力を仰ぎ、本番中は万全の体制で臨んだそうです。
離れを設計したのは日本近代建築の父、ジョサイア・コンドルに学んだ曽禰(そね)達蔵と、曽禰の後輩の中條精一郎の2人です。この両氏が手掛けた個人宅はほとんど残っておらず貴重な一棟ということです。小泉監督も雰囲気あるこの邸宅を気に入っていたそうです。
1階の和室では枡屋の帳場のシーンが撮影されました。枡屋の看板娘と継之助が会話をしているのがこちらです。
西脇邸の建物内部は非公開ですが、庭園と新しくできたギャラリー内部は公開されています。ギャラリーは、離れと主屋をつなぐ渡り廊下の下をくぐった先にあります。
1階は書家の平野壮弦さんの作品が展示されています。書かれている文字はすべて「西脇邸」です!
2階は小千谷市の昔懐かしい生活の様子を伝える写真などが展示されています。また今の西脇邸の写真も展示してあり、邸内を巡る代わりに写真で楽しめるようになっています。
庭園は自由に散策できます。緑あふれる素晴らしい環境で、一瞬ここが小千谷の市街地だということを忘れそうになりました。
有料でお抹茶と和菓子をいただくことも出来ます。こちらはセルフお点前で、お抹茶が入った茶碗にお湯を注ぎ、自分で点てます。茶筅を使ってシャカシャカできるのが楽しいらしく、お作法を知らない小さなお子さんにも人気だそうです。
お庭でゆっくりお抹茶をいただきました。椅子に腰掛けて、日本庭園でのんびりといただくことができます。
受付脇にはお土産コーナーもありました。
県内酒蔵の地酒、小千谷市の特産小千谷縮を使ったマスクなどが置かれていました。
映画とともにロケ地めぐりもぜひお楽しみください。

西脇邸

住所:新潟県小千谷市本町2-7-6
TEL:0258-82-3000
開園時間:午前10時から午後4時(庭園のみ開放)
入場料:大人300円/小中学生150円
    お抹茶セット(入園料+セルフお抹茶)大人600円/小中学生550円
休園日:火・水曜日
 ※冬期閉園、HP内の営業日カレンダーにてご確認ください

オオクラ見晴台・朝日山古戦場・西脇邸

この記事を書いた人
和田明子

長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中