3年ぶりに開催!初夏の風物詩『三条凧合戦』で思いっきりミズベを走り回ろう/三条市


2022年05月31日 6167ビュー
新潟の梅雨入りが目前になったこの時期。例年以上に晴天が続く今、初夏のシーズンを楽しみたいとお考えの方もいるでしょう。

かくいうライターの水澤も、一足先に初夏のおでかけ先を探していたところ、6月4日と5日の休日に開催される『三条凧(イカ)合戦』のうわさを聞きました。コロナ禍前となる2019年には二日間で約4万人を動員、江戸時代の慶安2年(1649年)から続く三条の伝統文化のお祭りが開催間近だと。

ただ伝統と聞くと、どうしても守り継ぐ側面にスポットが当てられがち。しかし、2022年の三条凧合戦では新しく誕生した5つの凧組をはじめとする「とにかくやってみよう!」という新風がビュービューと吹いているそう。
三条凧合戦に今年から参戦する新たな凧組。左から順に『福ノ島会(Candle JUNE代表)』、『越後三条鍛冶集団(曽根忠幸代表)』、『下田村羚羊会(今井将智代表)』、『燕三条愛粋組(吉田鉄平代表)』、『保内植木組(吉川敬之代表)』。
※新加入の凧組には凧揚げ初心者がいるため、ベテランの凧組の揚げ師がサポートに加わる『兄弟組制度』を初導入。

初夏に吹く風に乗せ、空高くまでゆらゆらと舞う凧。この地域で育つ子どもたちの成長を祈って、ベテランとあたらしい揚げ師が一同に会する三条凧合戦。

今回、ミズベリング三条で開催直前(5月22日)に行われた三条凧合戦の新組お披露目会と模擬戦にお邪魔しました。主催する三条凧協会の須藤謙一会長に、ことしの見どころと凧揚げを初めて見られる方たちにとっても楽しめるポイントも伺いました。
三条凧合戦について教えてくれた人:須藤謙一さん。創業174年を迎える三条市伝統の六角巻凧を製作する『須藤凧屋』の6代目。その傍ら、三条凧合戦を後世に残すべく2019年に三条凧協会会長に就任。

大空をキャンパスに。凧同士の戦いは風の読みあい?

新潟県三条市はいわずと知れた金物のまち。三条市では江戸時代から受け継ぐ鍛冶技術の他に、たくさんの文化が派生し生まれました。そのひとつが三条凧合戦です。

心地よい風と気候に誘われて、外にでかけたくなる今。
 
揚げ師が持つ手はほどよい風を読み合い、天高くまで自由自在に凧を操って相手の凧糸を切って勝敗を決める戦いこそ三条凧合戦。日本でこうした凧揚げが広まったのが、古くは江戸時代までさかのぼります。
「凧揚げは江戸時代から子どもたちの遊び道具として親しまれてきました。だから三条凧合戦は毎年、子どもの成長を祈願して旧暦となる端午の節句シーズンに合わせて開催しています。
 
私自身も高校卒業後から本格的に三条凧協会に入りましたし。今回、新組として初めて参画する若手揚げ師も最年少で20代。伝統文化といえども下の世代から新しい風が吹いていると思います」(須藤)

新潟でも時代変化によって、子どもたちの凧揚げクラブとして残っているのは数カ所。須藤さんは、「初めて凧を見るお子さんにとって親しみを覚えていただくために、三条凧合戦の『凧』はタコとイカ、どちらで呼ばれているのかを聞いています」と小さな子でも覚えられる雑学で凧揚げについて教えているそう。

ここで質問。
 
三条では『凧』をタコとイカ、どちらで呼ばれているのかご存じでしょうか。

きょうから使える豆知識「三条ではイカと呼ばれるわけ」

地方によっては「凧はタコと呼ぶと教わったけど……?」と思われる方もいるでしょう。ただ、三条と凧、歴史を紐とくとどう呼ぶのかは大切な事柄です。

全国各地では凧にまつわる文化がありますが、新潟県内で開催される合戦は喧嘩凧が所以とされます。江戸時代中期にブームとなった凧揚げは、子ども同士の喧嘩の火種になってきたそう。
当時、根強く残っていた身分制度。この地では、村上藩陣屋の役人の子どもに対してうっぷんを積らせていた町内の子どもが戦いを挑んだことが三条凧合戦の始まりだといわれています。その頃、凧はイカと呼ばれていました。

三条凧合戦にまつわる歌の中でも、「町民出の鍛冶屋が侍に対して公に戦える」遊びとして伝承。ものづくりのまち、三条を支えてきた鍛冶屋の誇りが、この合戦に、またイカという呼び名にも込められてきたのです。
「三条には俗にいう喧嘩凧で広まってきたので、『好きなことをして喧嘩しているだけでしょ』という世間の冷たい目線がありました。

しかし、私たちは凧のたのしさを知ってほしい。揚げ師にはできれば長く続けてもらえる環境をつくりたい。そう考え、ことしから始まる新加入の凧の揚げ師に対してベテランのみなさんが技を教える『兄弟組制度』などを準備してきました。たとえ勝敗を決したとしても、時間をかけて凧揚げの技術や合戦の醍醐味を教え合える文化をつくっていきたかったんです」(須藤)
※兄弟組制度で凧揚げの魅力を伝えるベテランの揚げ師たち。

そうそう。うんうん。
 
須藤さんのそばで静かに頷くのは兄弟組制度でサポートするベテランの揚げ師。彼らは加えて、「新組でもね。もう凧揚げについて筋がいい子がいるな。本番がたのしみだ」と太鼓判を押すほど。
 
時代にあわせたルールや制度をつくって実施することも、ことしの三条凧合戦を観戦する上での醍醐味です。

信濃川のせせらぎを感じながら観戦 大迫力の三条凧合戦を間近で見よう!

※2014年から三条凧合戦の開催地となるミズベリング三条。

昨今のキャンプブームをきっかけに、にわかにキャンパーたちに注目を集めるミズベリング三条。燕三条駅から近くシティキャンプを楽しめる場として、さらに会場まで足を運びやすいよう駐車場が450台完備。バスケットゴールやスケートボードパークも併設する大人気の遊び場です。
 
新潟を象徴する信濃川にも隣接し、天気が良いと景色の先には高嶺山といった山々を見渡せる、自然豊かな地が三条凧合戦の決戦場。
ミズベリング三条で開催される三条凧合戦、ことしの見どころを須藤会長に伺いました。
 
「3年ぶりに開催となる三条凧合戦。初めて合戦を見る方にとってわかりやすく、たのしんでもらえるお祭りにするために得点の表示やアナウンスの仕方など変更しています。お久しぶりに観戦する方にとっても、これまでの違いをたのしむことができる合戦となっています。
 
他にも凧組の中には女性だけで編成したチームや、三条在籍の外国人があたらしいメンバーとして加わったチームなど、当日は個性豊かな戦いが繰り広げられるでしょう。もちろん、新型コロナウイルスの感染対策を行いながらも、40店舗ほどの飲食店が出店する三条マルシェ(5日)とのコラボレーション、さらに個人的にはイカを始めとする三条弁を聞きながらと自由に観戦してほしい」(須藤)
「新組を加えて23チームが集結し、たとえ3年ぶりであっても全盛期に戻りつつある姿をご覧ください」と自信をのぞかせる須藤さん。
三条の地を思いっきり走る。子どもたちの成長を促すような初夏の風、そして三条凧合戦も一緒にエンジョイしてみてくださいね。
三条凧合戦(さんじょういかがっせん)

三条凧合戦(さんじょういかがっせん)

開催期間 2022年6月4日(土曜日)、6月5日(日曜日)
開催時間 9:00~16:00 ※両日とも雨天中止の可能性もあります。
事前予約 なし
定員 なし
住所 新潟県三条市上須頃地先
交通アクセス
●JR弥彦線「北三条駅」より徒歩で20分
●北陸自動車道「三条燕IC」より車で5分
駐車場
●普通車:約450台(三条防災ステーション)
料金 無料
※三条マルシェ等での飲食物は有料となります。

この記事を書いた人
水澤 陽介(みずさわ ようすけ)

新潟県生まれ、東京、沖縄を経て地元新潟にUターン。2021年2月、三条市の中央商店街に本屋「SANJO PUBLISHING」を立ち上げ、“まちを編集する本屋さん”をモットーにまちの魅力を集め、届けています。 まちを編集する本屋「SANJO PUBLISHING」(https://note.com/ncl_sanjo

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