新潟ガストロノミー おいしさの裏側を求めて⑯――食をつなげる料理人「YAGAIYA」/上越市


2023年01月12日 597ビュー

多彩な食のプロデューサー

上越市で「YAGAIYA」を経営する料理人信田紘基さんの仕事は多彩だ。飲食店「YAGAIYA」の営業のほか「YAGAIYAフードサービス」として地元認定こども園で給食を受託する飲食事業を経営。さらには直売所直結の惣菜加工施設を運営し、中山間地域の振興事業として桑取地区を舞台に書籍「レシピ遺産」を製作・出版。これをきっかけに「平左衛門カフェ」の運営補助役としても活躍。観光の分野ではリゾート列車「雪月花」にて特別料理コースを提供している。
そして地元の学校などで出張講座の開催や、他店舗のプロデュース…。上越地域の「食」に関わる事業の核となり地域の食文化の保存と発信をしたいという一貫した思いで活動している。

書籍「レシピ遺産」は消滅していく郷土料理に危機感と可能性を感じたから

信田氏が料理人を目指したのは幼少期の家庭料理の調理体験にはじまる。祖父母や母親と料理を通じて話をすることで物事の原理や原則に興味をもつことに繋がった。20歳で調理師免許を取得。以降、数年間日本各地の気候・風土や名産に触れる旅をした。その後東京に拠点を移し、約6年間飲食店で働く傍ら専門学校に通い栄養士免許を取得。常に故郷の食文化をどうやって次世代へつないでいくか思索を重ねてきたという。
東日本大震災後に帰郷。2016年には店長をしていた「やがい屋」を事業承継し「居食屋YAGAIYA」としてリニューアルオープンさせた。この頃から地域の文化を調査。郷土料理のレシピを保存し、将来につなげていきたいと思い、書籍「レシピ遺産」の出版を決意した。

同市の桑取地区は暮らしと自然の距離が近く、食と関わりの深い二十四節気に則った暮らしが今も活きている。編集する過程で、ふきみそやぜんまいの煮物、野沢菜のかす汁などの懐かしい料理は食べていても作ることができる人が少ないと知り、危機感を感じた。「地域の食材を使う者は、結局地域に伝わる知恵と文化が凝縮された郷土料理に突き当たる」ということを再認識したという。

食育にも携わる

給食は料理人ならではの色使いで、旬の上越野菜や地域食材を積極的に取り入れている。安心しておいしいと感じられる食事を園児に提供している中で、栄養士業務としても地域の食材の啓蒙活動を行い、その一環として規格外となった野菜やロスとなり得る過剰野菜を積極的に使用するため惣菜や加工品の製造販売も手がけることとなった。 「規格外の農作物を商品にするのは料理人の役目だと思っています。惣菜販売だけでなくYAGAIYAでは料理教室やセミナーを開催し、この食材の素晴らしさを説明・提供しています」。

居食屋から小料理屋「YAGAIYA」へ

YAGAIYAは先代より25年「居食屋」形式の営業をしてきたが、現在は「料理」を中心とした小料理屋「YAGAIYA」へと生まれ変わった。 “郷土料理をベースに自家製の加工品と鮮度が命の海産物を組み合わせる料理を提供したい”と、この地域ならではの在来作物や山菜・野草など幅広い食材に注目し、多くの農家と共に暮らすことで市場に出回らない農業を学びつづけている。

信田氏の料理コースでは上越の「食」を伝えたいという思いが素直に現れている。 今後、日本中の地方料理人が店舗運営を越えて、地域の「食」で人々と繋がってゆく生き方が主流となる。YAGAIYAの活動は新潟ガストロノミーの新たな可能性なのかもしれない。
YAGAIYA

YAGAIYA

新潟県上越市中央1丁目9−5
TEL 025-545-1865
営業時間18:00-23:00(L.O.22:00)
定休日 月曜日/日曜日
駐車場 あり(7台)

この記事を書いた人
NIIGATA GASTRONOMY

「美食学」と訳され、料理と文化の関係性を考察することを指す“ガストロノミー”。
口にすることで地域の風土や歴史を感じられることから、成熟しつつある食文化の中で、注目を集めている考え方。多様な歴史と文化、豊かな自然に恵まれた新潟県はガストロノミーの宝庫。

この記事を見ている人は、こんな記事も見ています