新潟ガストロノミー おいしさの裏側を求めて⑬――イタリアで学んだ地産地消を、村上で「アンフォラ」/村上市
2023年01月11日
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意固地なまでに地域の食文化を守るイタリア人
2021年にオープンしたイタリア料理店「アンフォラ」は、新潟県村上市のメインストリートから少し離れた場所にある。民家を改装したというその佇まいはひそやかで、注意しないと通り過ぎてしまうほどだ。
オーナーシェフである本間泉さんは村上生まれ。2001年から新潟市でイタリア料理店を経営していた本間さんはかねてから「景色のあるところに店舗を構えたい」と思っていたという。あちこち探すうち、辿り着いたのは故郷村上のこの物件。借景の緑が豊かであることに加え、海・山・川・畑も全て近くにあることも理想的だった。「自分の育った場所である村上で料理を探究するのが最適だと、すとんと腑に落ちた」と本間さんは語る。
15歳で料理の道に進んだ本間さんは、日本のイタリア料理店の魚料理に不満を持っていた。より美味しく魚を調理する方法を探ろうと27歳で本場イタリアに渡った。現地で強く印象に残ったのは、意固地なまでに地域の食文化を守るイタリア人の姿。小国の集まりだった時代が長く続いたことで、イタリアには異なる食文化が根強く残っている。
「彼らは自分たちの地域の料理しか食べません。地元のパン屋が休みの時でも、他の地域のパンを“これは私たちのパンではない”と言って決して食べようとしないんです。」
そういった地産地消が当たり前のイタリアで、地域ごとに根付いた食材や食文化を継承していくスローフード運動が起こったのは必然のことかもしれない。
「彼らは自分たちの地域の料理しか食べません。地元のパン屋が休みの時でも、他の地域のパンを“これは私たちのパンではない”と言って決して食べようとしないんです。」
そういった地産地消が当たり前のイタリアで、地域ごとに根付いた食材や食文化を継承していくスローフード運動が起こったのは必然のことかもしれない。
神経締めをする若手漁師とシェフたちの連携
アンフォラで振舞われるのは旬の村上の食材を生かしたイタリア料理。初夏はスズキや甘鯛、秋はサワラと魚は白身中心だ。魚の仕入先は地元岩船港で漁師を営む髙木雅貴さん。祖父、父も漁師という漁師一家に生まれたという髙木さんは、普段は板引き網でヒラメを、夏場の7〜8月は素潜りでカキやもずくを、秋は船釣りでサワラや鯖を獲っているという。
仕入れのやり取りはメッセンジャーアプリの「LINE」も使用する。漁師は漁の最中に、釣り上げた魚を船上から投稿。希望する魚があった場合、料理人が応えるとのこと。料理人は船が戻ってくる頃に港に向かい、魚をその場で購入するという。
目指すのは村上土着料理
本間さんが目指すのは“村上土着料理”。アンフォラでは背景のある地産地消を貫くため、コース料理のみのメニュー構成にしている。「日本料理やイタリア料理も、地方料理の集まり」だという本間さん。 「南北に細長い国土の中で、地方ごとに郷土料理がある。わざわざお金と時間をかけて村上まで来てくれるのだから、ここでしか食べることのできない料理をお出ししたい。」 地域で獲れる食材を、土地、風土に合わせた料理に仕立て上げ、景色のあるレストランでいただく。そんな贅沢なひと時をアンフォラで楽しみたい。
アンフォラ
住所:新潟県村上市三之町11-9
電話:0254-75-5235
営業時間:ランチ 11:30~15:00(13:00最終入店)
ディナー 18:00~22:30(20:30最終入店)
定休日:不定休
駐車場:あり(8台)
この記事を書いた人
「美食学」と訳され、料理と文化の関係性を考察することを指す“ガストロノミー”。
口にすることで地域の風土や歴史を感じられることから、成熟しつつある食文化の中で、注目を集めている考え方。多様な歴史と文化、豊かな自然に恵まれた新潟県はガストロノミーの宝庫。