坂口安吾ゆかりの地を巡る/新潟市
2023年01月17日
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最近気になる坂口安吾
坂口安吾といえば、新潟市出身の戦後の日本を代表する文豪のひとり。最近だとアニメから興味を持つ若い子も多いとか。
ちなみに私はアレです。中学時代に、「太宰はミーハーだよね」と言いつつ「堕落論」を手に取ったけどいまいち良さが分からず、社会人になってからデジタルアーカイブの「青空文庫」で読み直して、ようやく面白さとか凄さが分かったクチ。
もちろん、地元ゆかりの作家だということは知っていましたが、これまで安吾ゆかりのスポットを巡ったことはなかったな、ということで、今回は新潟市内を巡ってみました。
ちょうど、2月17日は安吾の命日でもありますし。
ちなみに私はアレです。中学時代に、「太宰はミーハーだよね」と言いつつ「堕落論」を手に取ったけどいまいち良さが分からず、社会人になってからデジタルアーカイブの「青空文庫」で読み直して、ようやく面白さとか凄さが分かったクチ。
もちろん、地元ゆかりの作家だということは知っていましたが、これまで安吾ゆかりのスポットを巡ったことはなかったな、ということで、今回は新潟市内を巡ってみました。
ちょうど、2月17日は安吾の命日でもありますし。
まずは、旧市長公舎「安吾 風の館」へ
インモラルなモチーフや破天荒な生涯、「無頼派」のイメージから、未読の方から「なんだか難しそう」と思われてそうな安吾ですが、端正な文章と普遍的なテーマ、さらに純文学からミステリ、時代小説まで色々手掛けていて、すごく間口が広い作家でもあります。今でも新規のファンがこちら、中央区西大畑の旧市長公舎「安吾 風の館」にも訪れるそうです。
市長公舎として1922(大正11)年に竣工の木造平屋建てで、2002年に任期を終えた長谷川義明市長まで、主に会議や来賓のおもてなし等に利用されていたそう。
その後、2009(平成21)年に、坂口安吾の生まれ育った西大畑にある旧市長公舎を活用し、坂口家から市に寄贈された遺品や所蔵資料などの調査・研究、様々なテーマによる展示を行う施設となりました。
座敷には、「安吾のいる風景 今むかし」と銘打って、安吾の長男でカメラマンの坂口綱男さんによる安吾ゆかりの写真が多数展示されています。原稿の複製もあって、実際にめくってみると文豪の気分がほんのちょっぴり味わえるかも。安吾ファンが交流するスペースになっているようです。
市長公舎として1922(大正11)年に竣工の木造平屋建てで、2002年に任期を終えた長谷川義明市長まで、主に会議や来賓のおもてなし等に利用されていたそう。
その後、2009(平成21)年に、坂口安吾の生まれ育った西大畑にある旧市長公舎を活用し、坂口家から市に寄贈された遺品や所蔵資料などの調査・研究、様々なテーマによる展示を行う施設となりました。
座敷には、「安吾のいる風景 今むかし」と銘打って、安吾の長男でカメラマンの坂口綱男さんによる安吾ゆかりの写真が多数展示されています。原稿の複製もあって、実際にめくってみると文豪の気分がほんのちょっぴり味わえるかも。安吾ファンが交流するスペースになっているようです。
また、庭も立派。こちらは比較的新しく平成になってから造られたそうです。他の季節に来たかった……。
展示室はこちら
展示室では、企画展「安吾の捕物帖」を開催していました。「捕物帖」はシャーロック・ホームズなど海外の探偵小説を日本向けにアレンジした時代小説の人気ジャンルのひとつ。安吾の手掛けた「安吾捕物帖」シリーズは明治20年代を舞台にイケメン探偵が活躍する作品、って言うと、なんだかすごく親しみ湧くと思いません? 実際、娯楽作品として面白いし、語り口も全然古くならない。一方で、安吾ならではの風刺もあって、やっぱり一筋縄ではいかない作品たち。
展示では、直筆の原稿がやっぱり気になりました。学芸員の岩田多佳子さんによると、原稿用紙はルビなしの格子枠を使っていたそう。それにしても、ワープロやパソコンでの執筆が当たり前の人間からすると、原稿用紙で百枚以上書くというのはなかなか大変だったんでしょうね。
また、安吾捕物帖は2020年にNHKで「明治開化 新十郎探偵帖」としてドラマ化されており、ポスターや台本なども展示されていました。ポスターなどを見る限り、「安吾原作」などあまり強調されていないのが印象的で、きっと、ドラマを楽しんでから原作に興味を持った方もいるんじゃないかな、と思いました。
他にも、安吾の蔵書類も興味深いです。いくつかは「読んだことある!」というのが入っていたりして。
こちらは年3回展示替えをするそうです。現在は「安吾って!?Part5」だそう。この時期は、毎年、安吾本人をテーマにした展示だそうで、その第5弾になるようです。安吾の愛用した文房具やオーバーコートなどを展示するほか、著書の初版、近年出版された安吾作品の書籍なども並んでいるとのこと。
こちらは年3回展示替えをするそうです。現在は「安吾って!?Part5」だそう。この時期は、毎年、安吾本人をテーマにした展示だそうで、その第5弾になるようです。安吾の愛用した文房具やオーバーコートなどを展示するほか、著書の初版、近年出版された安吾作品の書籍なども並んでいるとのこと。
旧市長公舎 安吾 風の館
住所:新潟県新潟市中央区西大畑町5927番地9
休館日:毎週月・火曜日(祝日等の場合は翌開館日)
年末年始(12月28日から1月3日まで)
開館時間:午前10時から午後4時まで
入館料:無料
TEL/FAX:025-222-3062
安吾ゆかりの碑を巡る
新潟市内にはいくつか安吾ゆかりの碑があります。まずは旧市長公舎からほど近い新潟大神宮の境内にある坂口安吾生誕碑。安吾の生まれ育った家が現存していないことから、2006年の10月、安吾生誕100年の節目に市民有志の寄付で建立されたもので、自伝的作品「石の思い」の、おそらく安吾がこの地を回想したであろう一節が刻まれています。
また、この日は悪天候で行けませんでしたが、護国神社境内の砂丘にも詩碑があります。
また、この日は悪天候で行けませんでしたが、護国神社境内の砂丘にも詩碑があります。
ちょっと移動して秋葉区へ。
新津は、安吾の父方の実家があり、安吾の本籍も現在の秋葉区大安寺で、こちらには安吾の眠る坂口家の墓もあります。そうした縁もあり、市民有志を中心にいくつかの安吾の文学碑が建立されています。
上は新津駅前、地域交流センターや新潟薬科大学のキャンパス近くのもの。安吾の色紙からとった「あちらこちら命がけ」。裏面には新潟を舞台にした長編「吹雪物語」の新津駅の登場する場面が自筆原稿のまま彫られています。
下は、新津図書館裏、新津川遊歩道を見下ろすところに建っているもので、安吾の代表作「桜の森の満開の下」の一節が彫られています。美しく、恐ろしく、寂しい物語にぴったりのロケーションなのかも。
新津は、安吾の父方の実家があり、安吾の本籍も現在の秋葉区大安寺で、こちらには安吾の眠る坂口家の墓もあります。そうした縁もあり、市民有志を中心にいくつかの安吾の文学碑が建立されています。
上は新津駅前、地域交流センターや新潟薬科大学のキャンパス近くのもの。安吾の色紙からとった「あちらこちら命がけ」。裏面には新潟を舞台にした長編「吹雪物語」の新津駅の登場する場面が自筆原稿のまま彫られています。
下は、新津図書館裏、新津川遊歩道を見下ろすところに建っているもので、安吾の代表作「桜の森の満開の下」の一節が彫られています。美しく、恐ろしく、寂しい物語にぴったりのロケーションなのかも。
坂口家の墓は静かな集落の一角に
坂口家の墓のある大安寺は、阿賀野川沿いにある集落。公共の交通機関で行かれるなら、新津駅からバスの下新線を利用して大安寺まで行くのが無難でしょうか。新津鉄道資料館から徒歩で歩けない距離ではないので、そこまで路線バスなどを利用するのもありかも。
昔ながらの農家が並ぶ集落の外れの方にある、小さな墓地にあります。
とはいえ、地域では有名な名家だったそうで、そのお墓の大きさからも当時が偲ばれます。
昔ながらの農家が並ぶ集落の外れの方にある、小さな墓地にあります。
とはいえ、地域では有名な名家だったそうで、そのお墓の大きさからも当時が偲ばれます。
また、集落周辺は水田が広がり、その先には五頭山が見えます。まさに越後平野、って感じですね。
今でも2月17日の命日には新津の有志らを中心に「安吾忌」が行われ、安吾を偲んでいるとのことです。
今でも2月17日の命日には新津の有志らを中心に「安吾忌」が行われ、安吾を偲んでいるとのことです。
今なお地域で愛される文豪
今回、巡ってみて感じたのは、地域の人の安吾への親しみや敬意でしょうか。間もなく没後70年になろうというのに、あまりそんな感じがしないのがすごく不思議でした。やはり、それこそクリエイターの強さ、というか時代を越えて愛される作品の力なのかなあ、と思ってしまいます。
安吾ファンはもちろん、そうでない方も是非、巡ってみて欲しいと思います。
それと、今回、坂口家の安吾忌が安吾が生涯を終えた群馬県桐生市で開かれるそうです。初めての取り組みだそうで、とても興味深いところです。
詳しくはこちらから
安吾ファンはもちろん、そうでない方も是非、巡ってみて欲しいと思います。
それと、今回、坂口家の安吾忌が安吾が生涯を終えた群馬県桐生市で開かれるそうです。初めての取り組みだそうで、とても興味深いところです。
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ぜひ、これを機に新潟市にも訪れる人が増えると嬉しいです。
この記事を書いた人
新潟市秋葉区在住。サラリーマンの傍らkindleストアで電子書籍にて地元・新潟を舞台にしたエンタメ小説を発表。インディーズながら一部で熱烈な人気を集め、どっちが本業か分からなくなりつつある中年男。