村上藩が映画になった?『大名倒産』いよいよ公開!/村上市
2023年06月15日
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越後・丹生山(にぶやま)藩を舞台にした松竹映画『大名倒産』が、いよいよ2023年6月23日に公開になります。丹生山藩というのは架空の存在ですが、シーズンを迎えると鮭が遡上する美しい川が流れる、自然豊かな越後の小藩です。この設定に合う越後の場所といえば……そう、村上藩がモデルなのです。
主人公の松平小四郎は鮭売りの息子。しかし実は殿様のご落胤でした。身分を明かされた小四郎は、庶民から殿に大抜擢。これぞまさにシンデレラストーリーと思いきや、このおいしい話には裏がありました。
主人公の松平小四郎は鮭売りの息子。しかし実は殿様のご落胤でした。身分を明かされた小四郎は、庶民から殿に大抜擢。これぞまさにシンデレラストーリーと思いきや、このおいしい話には裏がありました。
切腹か100億円返済か、究極の選択
丹生山藩は万年赤字体質のビンボー藩。にも関わらず歴代の藩主はそれを放置し、積もり積もった借金は何と25万両(現在の価格に換算して100億円)!!
不良債権に頭を抱えた殿様は隠居を決意。息子・小四郎に藩の計画倒産という無理難題を押し付けます。しかし事が予定通りに進んだとしても、小四郎は債務不履行の責を問われ、切腹は免れません。切腹か、100億円返済か。小四郎は究極の二択に悶え苦しむ…という展開です。
不良債権に頭を抱えた殿様は隠居を決意。息子・小四郎に藩の計画倒産という無理難題を押し付けます。しかし事が予定通りに進んだとしても、小四郎は債務不履行の責を問われ、切腹は免れません。切腹か、100億円返済か。小四郎は究極の二択に悶え苦しむ…という展開です。
映画化のいきさつ
原作は浅田次郎先生の同名小説になります。映画を監督したのは『そして、バトンは渡された』で報知映画賞監督賞を受賞した前田哲さんです。
前田監督は撮影所で大道具のバイトから美術助手を経て、伊丹十三、滝田洋二郎、大森一樹、崔洋一、阪本順治、松岡錠司、周防正行ら、そうそうたる映画監督の現場に助監督として携わってきたという経歴の持ち主です。夫のリストラなど、お金の災難に次々と見舞われ経済危機に陥った主婦を描いたコメディ『老後の資金がありません!』を監督した方でもあります。
前田監督は撮影所で大道具のバイトから美術助手を経て、伊丹十三、滝田洋二郎、大森一樹、崔洋一、阪本順治、松岡錠司、周防正行ら、そうそうたる映画監督の現場に助監督として携わってきたという経歴の持ち主です。夫のリストラなど、お金の災難に次々と見舞われ経済危機に陥った主婦を描いたコメディ『老後の資金がありません!』を監督した方でもあります。
書店で『大名倒産』というインパクトのあるタイトルに引かれて、手に取って読んだら、その面白さにすっかりはまったという監督。「大名が貧乏で大変だったとは知っていたが、その状況を現代に通底するテーマとして書いた浅田先生のすごさ」にうならされ、ぜひ映画にしたいと思ったそうです。
今作のプロデューサーを務めた松竹の石塚慶生さんは『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』でも前田監督とタッグを組んだ方です。「当社は『チャンバラがない時代劇』というものを、作り続けている」と話します。確かに近年の松竹時代劇『武士の家計簿』『決算!忠臣蔵』『超高速!参勤交代』などは、いずれも「お金がなくて困った」という状況で奮闘する人たちを明るくユーモラスに描きつつ、ホロリとさせられる珠玉の作品たちです。
撮影前に「まずは村上市や鮭について学ぼう」と、2022年6月に助監督とともに本県を訪れたラインプロデューサーの山田智也さんは、日本初の鮭の博物館「イヨボヤ会館」や、伝統鮭料理の製造販売店「千年鮭 きっかわ」などを訪ね「鮭の作り方や、村上における鮭の歴史などを教えてもらいました。原作の浅田次郎先生も、調査で村上市を訪ねたそうで、期せずして(浅田先生と)同じ取材ルートを辿ることになりました」。なるほど、このルートは、映画鑑賞と合わせた観光ルートとしてもおすすめですね!
村上の鮭が登場
小日向文世さん演じる小四郎の育ての父は、鮭役人という設定です。そのため劇中で実際に塩引き鮭を作るシーンが登場します。「きっかわ」の15代目社長・吉川真嗣さんは、塩引き鮭作りの監修者として、撮影協力を行いました。「村上藩をモデルにした作品で、かつ村上の大切な文化である鮭がポイントになる映画。ぜひ力になりましょうと快諾しました」と、話しました。
というわけで映画の中で、作兵衛が塩引き鮭作りをするシーンは要注目です。吉川さんが小日向さんに作り方を一通り指南。小日向さんが実際に作業を行いました。
天井から無数にぶら下がる鮭の様子は、まるで「きっかわ」の店内そのもの。吉川さんが何十匹もの鮭を送り、それが実際に使われました。
上の写真は村上市にある「千年鮭 きっかわ」の店内の様子になります。
天井から無数にぶら下がる鮭の様子は、まるで「きっかわ」の店内そのもの。吉川さんが何十匹もの鮭を送り、それが実際に使われました。
上の写真は村上市にある「千年鮭 きっかわ」の店内の様子になります。
江戸時代の塩引き鮭作りを撮影するため、吉川さんはスタッフと事前に打ち合わせて、当時の道具まで作ったそうです。
撮影隊は村上の鮭漁解禁日に合わせて現地入りし、実際の漁の様子も撮影。江戸時代の格好をして鮭捕りをしている人たちは実際に村上の漁師の方たちです。
また劇中、三面川から村上城が見えるシーンがあるのですが、それは村上の実景にCGでお城を合成したものです。映画を観るときには、ぜひこれらのシーンにも注目してくださいね!
また劇中、三面川から村上城が見えるシーンがあるのですが、それは村上の実景にCGでお城を合成したものです。映画を観るときには、ぜひこれらのシーンにも注目してくださいね!
新潟産直映画
最後に映画の見どころを聞いてみました。
山田ラインプロデューサーは「新潟県は何を食べてもおいしかった。この映画を通して村上の鮭のことなど、改めて新潟の食文化の豊かさを再認識するきっかけになれば」と話しました。
石塚プロデューサーは映画の中で、高田延彦さん演じる小池越中守が、塩引き鮭や鮭の酒びたしに舌鼓を打ち「うまい!」というシーンに言及。「あのときの高田さんは演技ではなくリアルだったと思います。私たちも実際に村上の鮭を食べて滋味深いその美味しさに驚きました。ふるさと納税など、近年は地方の名産物に着目する動きがあります。映画を観た方たちが、自身の身近な文化の素晴らしさに気づいてもらえたらうれしいですね」
山田ラインプロデューサーは「新潟県は何を食べてもおいしかった。この映画を通して村上の鮭のことなど、改めて新潟の食文化の豊かさを再認識するきっかけになれば」と話しました。
石塚プロデューサーは映画の中で、高田延彦さん演じる小池越中守が、塩引き鮭や鮭の酒びたしに舌鼓を打ち「うまい!」というシーンに言及。「あのときの高田さんは演技ではなくリアルだったと思います。私たちも実際に村上の鮭を食べて滋味深いその美味しさに驚きました。ふるさと納税など、近年は地方の名産物に着目する動きがあります。映画を観た方たちが、自身の身近な文化の素晴らしさに気づいてもらえたらうれしいですね」
前田監督は「これは新潟と江戸が舞台の『新潟産直映画』です」ときっぱりと宣言。「そもそも主人公の小四郎は越後生まれ。新潟の人たちにぜひ観てもらって、盛り上げていただきたい作品」と期待を込めました。「今、日本は様々な問題を抱えていて、若い世代にそのしわ寄せが行くかもしれない。でもきっと希望はあるんです。小四郎たちが互いを思いやりながら、現状を打破しようと立ち向かっていく姿を通して、困難な時代や状況の生き方みたいなものが見えてくると思います」と語りました。
越後が舞台だったので、私は原作をすでに読んでいたのですが、小説とはちょっと違うオチが用意されていて楽しめました。小四郎を演じる神木隆之介さんのコメディアンぶりも必見です。とうてい解決不可能と思われる無理難題を押し付けられながらも、仲間と必死に頑張る姿は、おそらく多くの働く人たちの共感を得るのではないでしょうか。
映画『大名倒産』、ぜひご覧ください!
映画『大名倒産』、ぜひご覧ください!
映画『大名倒産』
2023年6月23日公開
監督:前田哲
原作:浅田次郎『大名倒産』(文春文庫)
出演:神木隆之介、杉咲花、松山ケンイチ、小日向文世/小手伸也、桜田通/宮﨑あおい、浅野忠信/佐藤浩市ほか
©2023映画『大名倒産』製作委員会
映画『大名倒産』
この記事を書いた人
長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中