【大地の旅路】新潟―佐渡を「大地」でめぐる
世界文化遺産候補として注目を集める「佐渡島の金山」で採掘される、島外持ち出し禁止の赤土で作陶する幻の陶器「無名異焼(むみょうみやき)」や、新潟の”大地”の魅力を語る上で欠かせない「越後妻有 大地の芸術祭」などを巡る。
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清津峡
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清津川を挟んで切り立つ巨大な岸壁がV字型の大峡谷をつくる清津峡は、日本三大峡谷のひとつ。雄大な柱状節理の岩肌とエメラルドグリーンの清流が流れる景勝地に開坑したトンネルが、2018年に「大地の芸術祭」のアート作品として再生した。全長750mのトンネルを潜水艦に見立て、見晴所や通路をアート化。パノラマステーションでは、峡谷の景色を水鏡で反転させた幻想的な空間で、絶景を眺めながら芸術作品と一体化できる。
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十日町産業文化発信館 いこて
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建築家・手塚貴晴さん、由比さんが手掛けた作品兼カフェ。使用する食材は、十日町の大地が育んだ旬の食材を地元の生産者から仕入れたものばかり。それらを伝統的な調理法をベースに、現代のアプローチで仕立てた手づくり料理が味わえる。開放的な空間は、雪国の象徴・かまくらをイメージし、大きな梁とせりだした桁が大きな屋根を支える新潟の伝統工法「せいがい造り」。木の温もりを感じながら楽しむくつろぎの時間をぜひ。
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十日町市博物館 TOPPAKU
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十日町市の多様で豊かな自然と歴史、文化を国内外に発信する博物館。笹塚遺跡から出土した日本唯一の縄文土器の国宝・火焔型土器を全方向から鑑賞できる「国宝展示室」、縄文人の生活を疑似体験できる「縄文時代と火焔型土器のクニ」や、弥生時代から現代まで連綿と続く技術革新を展示した「織物の歴史」、十日町文化の本質をひもとく「雪と信濃川」など、最新技術も取り入れた“体験型”の展示群は、知的好奇心を楽しく刺激する。
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まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」
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「都市と農村の交換」というテーマの下、地域資源を発掘・発信する雪国農耕文化とアートが融合した総合文化施設。まつだい「農舞台」を拠点に多数のアート作品が点在するフィールドミュージアムとなっている。周辺に広がる里山には、棚田の中の彫刻と、稲作の情景詠んだ詩が立体絵本のように浮かび上がるイリヤ&エミリア・カバコフの『棚田』や草間彌生の『花咲ける妻有』など、ダイナミックな里山アート作品は必見。
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松之山温泉
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有馬(兵庫)、草津(群馬)と並ぶ日本三大薬湯のひとつ。いまから約700年前、新潟と長野の県境にある雪深い山あいで、一羽の鷹が舞い降りて傷ついた羽を休めているのを木こりが見つけ、そこに湧く熱泉を発見したという伝説が残る。戦後の一時期に塩を採ったというほど塩分が強いため湯冷めしにくく、天然保湿成分を潤沢に含んだ泉質は、美肌と薬湯の効果が期待できる。四季折々の美景を眺めながら、身体を芯から温めたい。
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美人林
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新潟・松之山松口の3haほどの丘陵に、樹齢約100年のブナの木が壮大に生い茂る“美しすぎるブナ林”。春は残雪の中に芽吹く若葉が春陽の訪れを届け、夏には鮮烈な緑に色づいた木々から吹き抜ける爽やかな風が頬をなでる。そして、名画のような紅葉空間に目を奪われる秋、陽の光を浴びた雪がきらめく銀世界の冬――。野鳥の生息地としても保護されている美人林は、日本の四季の豊かな表情を感じさせてくれる。
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Tsubamesanjo Bit 燕三条本店
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新潟・燕三条の魅力を世界に発信するイタリアンの名店。厳選して仕入れる旬の地元食材にこだわるだけでなく、燕三条の匠たちと共創した調度品をちりばめた空間やうつわ、カトラリーで楽しむ独創的な美食は、この地の恵みを五感で堪能できる。プロジェクションマッピングを取り入れた新感覚の食体験や、ものづくりの街ならではの“食べられる鉄”で生み出した斬新な手土産スイーツ「Fe(エフイー)」は、まさに唯一無二だ。
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玉川堂
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江戸時代、洪水が多い地勢がゆえに農家の副業として和釘生産がはじまり、弥彦山から採れる銅を用いた鎚起銅器の製造が盛んになった。玉川堂は、1816年の創業以来200年余に渡って、一枚の銅板を金鎚で打ち延ばし、打ち縮めて仕上げる鎚起銅器の伝統技術を継承し続ける工房。深く艶やかな「紫金色」など、独自に開発した着色技法でつくる名品は、世界中の目利きを魅了している。間近で製造の見学ができるのもうれしい。
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燕市産業史料館
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燕市特有の地理的条件と土壌が育んだ、世界有数の金蔵加工技術の歴史を体系的に伝える史料館。人間国宝・玉川宣夫さんの木目金作品をはじめ、江戸時代から続く鎚起銅器、ヤスリ、彫金などの伝統的金属工芸技術の展示のほか、実業家・清水次郎長や政治家・犬養毅といった著名人の愛用品など稀少品に目を奪われる丸山コレクション矢立煙管館が見どころだ。錫の小皿、ぐい吞みの製作体験でその技術に触れることもできる。
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新潟市内で宿泊
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新潟港から両津港へ
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ジェットフォイルで67分
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古民家空間 京町亭
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ノスタルジックな江戸時代の古民家をリノベーションしたカフェ。飼料から繁殖まで循環型農場で上質な肉質に育てられた「島黒豚のハンバーグ」や約1700種の植物が自生する佐渡島のハーブを使用したドリンク、四季折々の新鮮野菜など、風土が育んだ食材にこだわる。日本海に面したゆったりとした店内にはテラス席も用意。眼前に広がる佐渡・相川の絶景を一望しながら佐渡が育んだ大地の恵みを味わう食体験をぜひ。
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きらりうむ佐渡
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世界文化遺産候補地として注目を集める「佐渡島の金山」の魅力を伝えるガイダンス施設。4つの展示室を有し、入り口すぐのウェルカムシアターでは、大スクリーンの映像で佐渡金銀山の概要を伝える。そのほか、3面スクリーンやプロジェクションマッピング、立体的なレリーフ模型など江戸時代から近代化以降の歴史をグラフィックでわかりやすく紹介。現地を訪れる前に見ておけば、より深く佐渡金銀山の魅力に感じられるだろう。
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史跡 佐渡金山
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西三川砂金山と相川金銀山、鶴子銀山の3つの鉱山で構成される日本最大の金銀山。江戸幕府の天領として奉行所が置かれ、原料の採掘と貨幣製造が同じ場所で行われた、世界でも類を見ない高度な金生産システムは、日本の近代化に多大な貢献を果たした。江戸時代初期に開発された手掘り坑道の一部を探検できる「宗太夫坑 江戸金山絵巻コース」や、山頂から深さ約74mまで手掘りされた佐渡金山のシンボル「道遊の割戸」は必見だ。
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北沢浮遊選鉱場
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銅の選鉱に使用されていた、採掘・砕石した鉱石を水槽の中で浮遊させ鉱物を収集する浮遊選鉱法を金銀に応用し、日本ではじめて実用化に成功した佐渡金銀山の遺跡群(国の史跡)。鉱石処理量が1カ月5万t以上に達した大規模設備は、かつて「東洋一」とうたわれた。神秘的かつダイナミックな情景は、当時のままの勇姿を残し、季節によりライトアップやプロジェクションマッピングで、昼夜を問わず訪れた人を魅了している。
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相川温泉
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佐渡島の西岸に面した相川エリアは佐渡金銀山の麓に位置し、江戸時代に佐渡奉行所が置かれた佐渡国の中心地だった。かつて鉱山町として栄えた面影を残す文化的景観地には知る人ぞ知る温泉があり、神経痛や筋肉痛、疲労回復の効能が期待される泉質が国内外のトラベラーに人気を博している。佐渡金銀山や佐渡奉行所など史跡にも近く、雄大な日本海が眼下に広がるロケーションで、夕陽に目を奪われながら旅の疲れを癒やしたい。
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京町通り
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相川金銀山と奉行所を結ぶメインストリート。「時鐘楼」のある下京町から中京町、上京町へと坂道を上ります。かつて鉱山関係者の住居や多くの商店が軒を並べた通りは、細い路地も随所に見られ、往時の都市計画の名残りを留めています。6月初旬、当時の姿のまま「相川音頭」で踊り流す「宵乃舞」は、京町通りを象徴するイベントです。
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佐渡うどん蒼囲
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畳のきしむ音や古民家の香り、大広間から望めるのどかな田んぼの情景……。伝統的な建築様式の旧農家を改装した情緒あふれる店内に宿っているのは、往時を偲ばせる佐渡の日常風景だ。佐渡の海草「ぎばさ」を練り込み、のど越しと食感、香りにこだわった名物の佐渡うどんをはじめ、南蛮海老ごはん、佐渡ずわい蟹の前菜盛りなど、地元の生産者から仕入れる食材で仕立てた佐渡の美味は、この地の豊かな口福を伝えている。
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椿屋陶芸館
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1819年に製造がはじまって以来、佐渡島に脈々と続く伝統的工芸品「無名異焼」を中心に、島で活躍する陶芸家の作品を一堂に集めたアンテナショップ。佐渡で採れる原料の赤土は島外への持ち出しが禁じられていることから“幻の陶器”と呼ばれ、使用するほどに光沢を増す独特の窯変美が魅力。人間国宝・三浦小平仁さんの名品展示をはじめ、作品の購入ができるほか、併設された椿茶屋では、作品を見ながらお食事やコーヒーを楽しむことができる。
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