静かに辿る文化財と、島おやつ&コーヒー、グルメの旅


このコースでは趣のあるお寺やかつて北前船で栄えた集落を探訪。もちろん佐渡の食材を使ったおいしい食事や小休止を入れながら、のんびり時間を過ごす旅へ。
2泊3日モデルプラン
【DAY.1】
»「鮨 長三郎」でランチ
↓クルマで約6分
»「東光山 清水寺」を参拝
↓クルマで約40分
»「おいしいドーナツ タガヤス堂」でドーナツ休憩
↓徒歩すぐ
»「ニカラ」で掘り出し本さがし
↓クルマで約25分
»「岩屋山石窟」を参拝
↓クルマで約3分
»「御宿 花の木」で夕食&宿泊
【DAY.2】
»「佐渡国小木民俗博物館」宿根木散策
↓クルマで約5分
»「Origine」で朝ごはん
↓徒歩約3分
»「カフェ日和山・南書店」でカフェランチ
↓クルマで約30分
»「MANOCAMINO」で夕食
↓徒歩約3分
»~「伊藤屋」に宿泊
【DAY.3】
»「北豊山 長谷寺」を参拝
↓クルマで約20分
»「Mr.Tono café」でひと休み
↓クルマで約15分
両津港へ
1
鮨 長三郎
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佐渡を代表する味覚、天然ブリを使ったご当地グルメを食べるため、島のほぼ中心地にある「鮨 長三郎」へ。
とことん佐渡産にこだわった「佐渡天然ブリカツ丼」は、天然のブリを使うこと、カツは5切れ、特製のあごだし醤油や佐渡市認証米「朱鷺と暮らす郷」の米粉を使うといった細かな定義があり、それをクリアしないと認定されないというご当地グルメです。
「鮨 長三郎」では、刺身でいただける新鮮な天然のブリをそのまま分厚く贅沢に使用。米粉ならではのサクッとした軽い食感とあごだしのタレがよく合い、身はふっくらやわらかくジューシーに仕上げています。
佐渡の地魚を使った寿司で評判のお店ですが、じつは「ラーメン(醤油)」も名物。聞けば、先先代が食堂を営んでいて、その名残で食堂メニューも残しているそう。鶏ガラでとっただしは煮詰めて旨みを凝縮してから「ラーメン(醤油)」のスープに使用。その深い味わいに飲み干す人も多いとか。
2
東光山 清水寺(佐渡市指定有形文化財)
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食後は「鮨 長三郎」の近く、新穂大野にある「東光山 清水寺」へ。「きよみずでら」ではなく「せいすいじ」と読むこちらの寺は、京都から布教に来た賢応法師が佐渡へ布教に訪れたとき、京都の清水寺に参拝できない人のために808年に建立されたという古寺。佐渡島は流刑の島としても知られますが、遠く離れた都を偲ぶ思いから京都や奈良の名刹と同じ字の寺が建てられてきたともいわれます。
仁王門を抜けるとたちまち杉の巨木に囲まれた異空間。苔むした石段を上がって山門をくぐると、庭が広がり、その奥に京都の清水寺を模して作られた「救世殿」が現れます。周囲は木々で覆われていますが、脇にある石段から舞台まで登ることができるので、そこで参拝。少し朽ちた柱や梁にはかつて鮮やかな装飾だった痕跡が。佐渡と京都をつなぐ由緒あるお寺は静かで美しく、こぢんまりとした風情があります。
3
おいしいドーナツ タガヤス堂
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佐渡中心部から宿根木方面へ向かう途中、のどかな山間にある羽茂大崎集落に寄り道。
目指すはドーナツ。何もなさそうなくねくねとした道を何度か曲がると辿りつく「おいしいドーナツ タガヤス堂」は、2016年にオープンしたドーナツ屋さん。販売しているのは、素材にこだわったシンプルなドーナツで、やさしい甘みと小麦の風味を楽しめると評判です。
無添加の菜種油で揚げているドーナツは、油っこさはなく、しっとりとした口当たりで素朴な味わい。プレーンときび和糖の定番2種類のほか、佐渡産無農薬レモンを使った「佐渡レモングレイズ」「キャラメリゼ」「干し柿クリームリーズ」など、季節や仕入れによってさまざまなバリエーションも用意。
レンタカーで訪れる女性たちや、ふらっと自転車でやってきた男性がうれしそうにドーナツを買って帰る姿を見ると、佐渡のスタンダードなおやつとして老若男女に愛されているのがわかります。
4
ニカラ
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おやつ休憩をしたら、すぐ近くの「ニカラ」も覗いてみましょう。
元々は農機具の燃料を保管していたJAの物件。
大きな書店のように返本ができないことから、なるべくブームがなく、何年後に読んでもよさそうな本を必然的に取り扱っているそう。人文系や小説などの読みもの、写真集、エッセイ、レシピ本、絵本など、個人書店ならではのラインナップが魅力です。気になる本をゲットしたら、宿根木方面へ移動します。
5
岩屋山石窟(新潟県指定文化財)
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宿根木エリアに到着したら、暗くなる前に宿の周辺を散策。宿根木集落の裏の岩山には、「岩屋さん」と呼ばれ親しまれる「岩屋山石窟」がありました。古くから霊場として信仰されており、佐渡の島民の信心深さを見ることができる史跡です。竹藪の遊歩道を上がると洞穴前の広場には、四国遍路の八十八ヶ所霊場にちなんだお地蔵様が半円状にずらり。
奥へと足を進めると石窟があり、ただならぬ神聖な空気が。もとは波打ち際にあった海食洞が持ち上がったもので、中には観音堂、石仏、石塔などが置かれ、岩肌には弘法大師の作と伝わる磨崖仏が彫られています。さらに奥には「船魂様(ふなだまさま)」という船乗りの信仰が厚い十一面観音が安置されています。
また、縄文土器や石器などが出土しており、縄文時代は生活空間であった場所が、中世以降に信仰の場になったと考えられています。
6
御宿 花の木
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「岩屋さん」を散策後は、宿根木の隠れ宿へ。「御宿 花の木」は、2000坪の敷地の中に、約150年前の古い民家を移築した母家と宿坊風の離れが5室。離れの部屋の窓からは里山の田園風景が広がります。陶芸家で花の木主人でもある渡辺陶生さんの作品展示ギャラリーと風の窯(穴窯)もあり、全体的にゆったりと過ごすことができます。新潟ガストロノミーアワード受賞。
お楽しみの食事は、母家の食事処でゆっくりと味わえます。地魚の姿造りや、佐渡の旬の食材をふんだんに使った小鉢など、素材の持ち味をいかした逸品ばかり。
そして、ごはんがおいしいことが花の木の自慢。「コシヒカリBL」ではなく、こだわり抜いた栽培法で幻の米とも呼ばれる「クラシック米」を花の木用に特別にプロデュース。甘みといい、粘りといい、コシヒカリ本来の旨みが感じられる貴重なお米を味わえる幸せ。自然豊かな佐渡の美味を詰め込んだご馳走と、女将さんの心遣いに心がほどける名宿です。
7
佐渡国小木民俗博物館
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宿根木散策の前にちょっぴり予習を。「佐渡国小木民俗博物館」は、大正10年に竣工した旧宿根木小学校の木造校舎をそのまま残した博物館です。
展示館では、ドーンと大きな船が出迎えてくれます。この船は、1858年に宿根木で建造された北前船を当時の板図(設計図)をもとに実物大で復元した「白山丸」。北前船とは江戸時代半ばから明治にかけて大阪と北海道を結び、運送に加えて寄港地で商品を売買していた帆船のこと。北前船が往来することにより、京都や大阪、九州や瀬戸内などからさまざまな生活文化が佐渡にもたらされるようになりました。
海運の歴史を物語る貴重な品々だけでなく、高度経済成長によって捨てられていく生活道具など、かつて民俗学者の宮本常一が住民に呼びかけて集めたというもの。そのため館内には、国指定重要有形民俗文化財の南佐渡の漁業用具から昭和レトロな日用品まで民俗資料も数多く陳列されています。
8
宿根木
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宿根木は、江戸時代後期から明治時代初期にかけて北前船の交易で栄えた集落です。廻船業を支える船大工など、船にかかわる技術者が全国から集まるようになり、人口が増えては谷を切り崩し、称光寺川を埋めて宅地を広げていきました。入り江の狭い地形に、200棟を超える板壁の民家が軒を連ね、迷路のような石畳の路地や堀など、当時の面影を残しています。船大工の技術が結集した町並みは、国の重要伝統的建物群保存地区に指定されています。
見学の際は、集落入口のバス待合所前に協力金箱が設置されているので、町並み保全協力金(100円程度)へのご協力を。
9
Origine(オリジヌ)
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モーニングは小木へ移動し、佐渡の自然を感じる料理とナチュラルワインのお店「Origine」へ。店主の伊藤薫さんは、佐渡島の風土やトキと共生するために島全体で畑も田んぼも農薬を減らすといった環境にも惚れ込んで、3年前に佐渡に移住。琴浦で畑をやりながら、2023年4月に小木漁港のすぐそばに「Origine」をオープン。先日発表された「新潟ガストロノミーアワード」若手シェフ部門30でも特別優秀賞に選ばれた気鋭のお店です。
食材は島内で自ら直接仕入れており、自分の畑で育てた野菜やハーブも取り入れているので、100%佐渡産に近いそう。モーニングセットでは、同じ南佐渡にある「T&M Bread Delivery SADO Island」の天然酵母パンを使用。
この日は米の麹から酵母を起こしてつくられた食パンが登場。季節のスープは、カルム農園の無農薬にんじんのポタージュ。佐渡の牛乳でつくった自家製のチーズに赤泊の特産カヤの実もアクセントに。セットはこれにオケサドコーヒーか佐渡の野草茶がつきます。
10
カフェ日和山・南書店
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小木の街歩きのブレイクやお昼ごはんに立ち寄りたいのが、築110年以上の古民家を改装した「カフェ日和山・南書店」。2020年に東京からUターンした小黒さん夫婦がお店を切り盛りしており、佐渡焙煎のコーヒーや佐渡にちなんだ食材を使ったフードを提供。見た目も華やかな季節のお花のレアチーズケーキや島のフルーツを使ったパフェなど、地元の人にも親しまれています。
自家製シロップにこだわったカラフルなクリームソーダは、人口着色料は使わず、ハーブやフルーツの色味なのがうれしいところ。店内には佐渡島の歴史文化をモチーフにした手ぬぐいや雑貨、本なども扱っているので、お土産選びや旅のおともにも。
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MANOCAMINO
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夕食は料理自慢の宿で食べるもよし、街中で食べるもよし。今宵は近年続々とおいしい料理店がオープンしている真野新町エリアの「MANOCAMINO」へ。
2021年にオープンした「MANOCAMINO」は、スペイン巡礼に魅了された瀬下さん夫妻が営むバル。スペイン巡礼で出合ったバルの素朴な味を表現した料理を、アラカルトからコースで楽しめます。メニューはすべてスペイン料理ですが、スペイン北部のガリシアやナバーラ地域の料理が多く、そこに佐渡の食材がうまくハマったといいます。
なかでもガリシア料理の代名詞ともいえる「プルポ・ア・フェイラ」は、やわらかくゆでた佐渡産のイシダコにじゃがいもを添え、塩、オリーブオイル、パプリカパウダーでシンプルにいただくもの。「これがとてもおいしくて、これがやりたくて店をはじめたといっても過言ではないです」と瀬下さん。
また、ガリシア地方特有のクンカという酒器でワインを飲んだ経験から、こちらでは、876 pottery(陶工房 弥七郎)に特注してあつらえた無名異焼のクンカでワインをいただけます。ワインの味がまろやかに感じられ、グラスとは違ったアロマを堪能。
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ご縁の宿 伊藤屋
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観光に便利な真野エリアにある、1878年創業の老舗旅館「ご縁の宿 伊藤屋」。懐かしさ溢れる古い部屋の意匠も残しつつ、2023年4月に「榧(かや)の間」「松の間」「欅(けやき)の間」の3部屋をリニューアル。各部屋に配した佐渡材木で作ったそれぞれのテーブルの木の名前を部屋の名前にしているそう。
和モダンのベッドルームは、浮いたように見える畳の小上がりなどが特徴で、隈研吾建築都市設計事務所のデザイナーが手がけたもの。今治職人による布団カバーと枕カバー、エアウィーブ社の枕などこだわりの寝具を採用し、雲の上のような寝心地を誘うベッドに。また、環境に配慮したアメニティなど、快適に過ごせる工夫を凝らしたお部屋です。
「佐渡牛ステーキ」が人気の「レストランこさど」も併設され、佐渡海洋深層水のお風呂も贅沢な楽しみです。
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北豊山 長谷寺
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最終日は、世阿弥が立ち寄り「金島書」を記したゆかりの地へ。「北豊山 長谷寺」は、大和の長谷寺を模したといわれる807年開基の古刹です。「はせでら」ではなく「ちょうこくじ」と読むそう。本堂や庫裡、経蔵、米蔵、鐘堂など、江戸時代に建てられた建造物も多く残り、参道のボタンの古木も美しく、花の寺としても知られています。
展示室は6室あり、33年に1度開帳される、秘仏の「木造十一面観音立像3体」(国指定重要文化財)と同じ様式の「木造十一面観音立像」(県指定有形文化財)を拝観することができます。「木造矜羯羅童子立像」(県指定有形文化財)、「木造白山女神坐像」(市指定有形文化財)をはじめ、平安期の金剛力士像、五智堂など、歴史を物語る文化財を数多く所有しています。
また、「うさぎ観音」の寺としても有名ですが、種類豊富な体験コースも魅力です。写経や座禅といった仏教を学ぶコースから、アトラクション感覚で楽しめるものまで、自由な発想力でさまざまなコースを用意。お棺の中で住職の法話を聞いて、「生まれ変わる」という暗闇体験や肝試し体験も人気があります。
そして、長谷寺のパワースポット、「高野槙」(県指定天然記念物)には実際に触れることも。高野槙は、心霊が宿るとされる神聖な木。この木の根元には、300年前から地蔵尊が鎮座しており、高野槙の幹のコブに触れることで、大地の力と合わせて二重のご利益がいただけるといわれています。せっかくなのでダブルのパワーを注入して帰路へ。
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Mr.Tono café
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歴史ある古刹を巡ったあとは、「Mr.Tono café」でくつろいでから港へ。
子ども服ブランド「oto」を手がけている溝上ご夫妻。2年前に自然を求め東京から佐渡へ移住「服を見ていただきながら、ゆっくりくつろげる環境をつくりたい」と、かつて東京銀座でバリスタとして勤めていた経験を活かし。2023年5月に「Mr.Tono café」をアトリエ「oto」と併設することに。
選べるコーヒー豆は、数量限定とその月の豆の2種類で提供。この日は「コスタリカ」と「パナマ」。豆の特徴については解説プレートが用意されており、味の個性だけでなく、農園の特徴、そしてその国の背景までもががわかり、コーヒーをさらに愉しむことができます。
飲み方はハンドドリップからエスプレッソソロ、カフェアメリカーノ、カフェラテ、キャラメルマキアートと選べ、2杯目以降は150円〜おかわりできるという太っ腹なシステム。種類を変えても、アイスにしてもOK!
また、銀座のフレンチシェフから伝授されたという濃厚な「自家製 Tono プリン」も絶品です。帰りのクルマの中ではテイクアウトした「Tono プディングフラペ」を片手に、旅の余韻に浸りながら飲んでもよし。
窓際の席では、ときおりトキの舞う姿も見ることができるかも!
15
両津港へ
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両津港へ戻って終了!
趣のあるお寺や歴史ある街並みをゆっくりと満喫した2泊3日の佐渡島旅はいかがでしたか。カフェでくつろぎながら、佐渡の恵みに癒される美食も堪能。
3日間の佐渡島プチ文化財巡りをご案内しました。