「新潟5大ラーメン」を食す!【⑤三条カレーラーメン 編】/三条市


2021年04月08日 71814ビュー
豊かな食文化を誇る新潟県。
ラーメンも県内外から「新潟はレベルが高い!」と評価されています。

中でも「長岡生姜(しょうが)醤油」「燕背脂」「新潟濃厚味噌」「新潟あっさり醤油」「三条カレー」の5種類のラーメンは「新潟5大ラーメン」といわれています。

そんな県内各地で愛されている5つのご当地ラーメンのご紹介も今回がラスト。
個性派ぞろいの「三条カレーラーメン」です!

大衆食堂 正広

1軒目は大衆食堂 正広さん。
創業は1960年代後半(昭和41~42年ごろ)。
看板商品のカレーラーメンをはじめ、麺類や丼物などを提供しています。

こちらの阿部圭作社長は「三条カレーラーメン部会」の会長ということで、まずは三条カレーラーメンの歴史についてお聞きしました。
 
三条でカレーラーメンが食べられていた歴史は古く、金属産業のまち・三条で働く鍛冶職人たちの出前の定番として、70年以上も前から親しまれていたそうです。
また、国内でも有数の繁華街だった「本路小路(ほんじこうじ)」では、飲みの締めの定番だったとのこと。

2004(平成16)年に三条市を襲った「7.13水害」からの復興を目的に、カレーラーメンを内外にPRする動きが活性化。その後ご当地グルメとして名を広め、5大ラーメンの1つといわれるようになりました。
 
それでは、正広のカレーラーメンについてご紹介しましょう。
今回はおすすめのセットメニューをいただきます。
 
カレーラーメンセット(1,000円/税込)
 
カレーラーメンにご飯と福神漬けが付いたセット。
この見た目は…まるでカレーライスです (◎_◎;)

ちなみにカレーラーメン単品は890円(税込)。ミニタレかつ丼との「最強セット」(1,350円/税込)もあります。
 
カレーラーメンは、お店によってはラーメンの上に(スープとは別に)カレーを後載せするタイプもありますが、正広の場合はあらかじめカレーとスープを合わせる一体型。
豚肉やニンジン、ジャガイモ、タマネギが入ったカレースープ。
第一印象は「これぞ日本のカレー」と言わんばかりのビジュアルなのですが、中身は普通のカレーではありません!
 
正広のメニューにはカレーライスもあるのですが、カレーライス用に作ったカレーに、さらに一手間を加えたのがカレーラーメンのスープ。
スパイスなどを加えた“ラーメンのためのカレー”を作っています。
 
そのラーメン専用カレーと合わせるのは、豚骨と鶏ガラをベースに煮干しや日高昆布、花かつおや香味野菜などで煮込む風味豊かなだし。
「昭和の中華そば系のだしですね」と阿部社長。
店内で打つ自家製麺は、中細と中太の間くらい。つるりとしてコシがあります。
手もみで縮れを加えており、カレースープがよく絡みます。

だしを合わせたカレースープは、口に含んだ瞬間は甘いのですが、だんだんと辛さが追いかけくる、変化のある味わい。
普通のカレーやそば屋さんのカレーとも違う、厚みのあるうま味。
これはクセになりますね…一口、もう一口と箸が止まりません!
(そして口のまわりはカレーまみれに...(^o^;)

カレーも麺も、数日寝かせることでベストな状態になるそう。

ご飯のセットはスープカレーとしても楽しめます。
ご飯にカレーをかけるもよし、丼のスープにご飯を浸すのもよし。
いずれにしてもこのスープはご飯ともよく合います。
麺と食べるときよりも、だしのうま味を感じやすい気がします。

カレーラーメンとスープカレーを一度で楽しめるのはいいですね。

このカレーラーメンの味を提供するために、正広の厨房ではかなりの手間をかけています。

カレーはラーメンのスープよりも焦げやすいので、中火で優しく混ぜる作業が常に必要。
そこで正広では、スープの基になるカレーを高・中・低と温度帯が異なる寸胴に分け、カレーの状態を細かく管理しながらスピーディーかつ安定した味をお客さんに提供しています。

「普通のラーメンより神経を使います」と阿部社長は苦笑い。
常にベストの状態のカレーラーメンを楽しんでほしい…そんな想いを持つ阿部社長は、スパイスを研究し味の改良も重ねてきました。
「以前よりもおいしくなっているんじゃないかな」と自信を見せます。
 
カレーラーメンを探求し、常に進化し続ける正広に注目です。

最後に、お店でこんなものを発見!
オリジナルのインスタント袋麺(200円/税込)です!
店舗限定とのことなので、ご来店の際はぜひお土産にどうぞ。
大衆食堂 正広

大衆食堂 正広

新潟県三条市石上2-13-38
TEL.0256-31-4103
【営業時間】火・水・木曜日 11:00~14:30(昼営業のみ)
      金・土曜日、祝日 11:00~14:30、17:00~21:00
      日曜日 11:00~15:00、17:00~20:30
【定休日】月曜日、第3火曜日

大黒亭 松屋小路店

2軒目は大黒亭さん。
三条市内に3店舗があり、本店は1933(昭和8)年創業でカレーラーメンを提供するお店としては三条で最も歴史があるといわれています。

松屋小路店は本店の創業者の息子さんがのれん分けで1957(昭和32)年にお店を開かれたとのこと。
今回は2代目と共に厨房に立つ、3代目の八木裕之さんにお話を伺いました。
「3店とも作り方の基本は同じです」と八木さん。
今のように即席のカレールーがまだない時代、東京の洋食店で修業した(本店の)初代がカレールーの製法を学んだそうです。
各店ではその製法を今も受け継ぎ、小麦粉から自家製のカレールーを作っているそう。
松屋小路店のルーとそれを長年作り続けてきた木ベラ。
大きさが一回り、二回り…と小さくなり、黒ずんでいるヘラが歴史を感じます。

味は店ごとに細かい違いがあり、地元の人々にはそれぞれ“推し”のお店があるようですね。
 
松屋小路店さんのカレーラーメンがこちらです。
カレーそば(650円/税込)

創業時から続くカレーラーメンは、カメラ泣かせののっぺりとした見た目。
それもそのはず、具はチャーシューとタマネギのみ。
きれいな肉色のおいしそうなチャーシューは越後もち豚を使用。
ご覧のように隠れています。
スープは固すぎず、ゆるすぎずという印象。
塩気とタマネギの甘さを感じるシンプルな味わいです。
​調味料は塩と複数のスパイスのみで、スパイスは辛さというよりも風味を引き立てていますね。
煮干しや昆布から取った和風だし。カレーの味に深みを与えます。
タマネギは直前にカットして生のままカレーに入れ、さっと煮たてて食感を残しながら甘さを加えます。
麺は自家製の細ストレート。
かん水を少なめにして、スープがよくなじむようにしているそう。
弾力がありもちもちとした麺にカレースープがよく絡みます。

創業からのスタイルを受け継ぎ、地元で愛され続けるシンプルなカレーラーメン。
シンプルなんだけど奥深い味わいに脱帽です!

大黒亭 松屋小路店では他にも、各種ラーメンやご飯物などもあります。
野菜たっぷりの「カレーつけ麺」(830円/税込)も人気です。
 
大黒亭 松屋小路店

大黒亭 松屋小路店

新潟県三条市本町3丁目7−14
TEL.0256-32-2728
【営業時間】 11:20~19:30
【定休日】水曜日 ※祝日の場合は営業


 

龍昇園

創業は1970(昭和45)年頃という龍昇園
店主の刈屋栄二さんは三条カレーラーメン部会の初代リーダー。
2004年の水害からの復興の想いを胸に、カレーラーメンでまちおこしを!と立ち上がった発起人のお一人です。
 
龍昇園のカレーラーメンはまず、見た目のインパクトがあります。
それがこちら。
黒カレーラーメン(950円/税込)
 
見た目もすごいのですが、味のこだわりもすごいのがこの黒カレー。
具材が溶け込んだ自家製のカレーは小麦粉ではなく米粉を使っているそうです。
健康にいいとされる竹炭パウダー使い、この黒さを生み出しています。
やや緑がかった黒。
 
カレーに合わせるスープは黄金色。
豚足やもみじ(鶏の足)をはじめ、カツオ節、サバ節、昆布、野菜などを沸騰させずににじっくりと炊いた清湯(チンタン)スープです。
1日寝かせて味を安定させるとのこと。
ゼラチン状に固まったスープを温めて戻します。
コラーゲンたっぷり♪

そして具材です。
チャーシュー、タマネギ、ニンジン、ピーマン、揚げたジャガイモとカボチャ、しめじ、ヤングコーンなど…

 
なんと11種類!
地元産の野菜をふんだんに使用。
カボチャの甘さなどもアクセントになっています。

カレーペーストを加え、中華鍋で一気に炒めます。
カレーの香りが一気に立ち上がります!
 
カレー味の「ライスボール」や半熟の煮卵も美味!!
そして、その後ろで存在感抜群の大きな唐辛子は、泡辣椒(パオラージャオ)という塩漬けした赤唐辛子。
発酵食品です。
 
「飾りみたいなものだけど、それが一番コストがかかってるね」と笑う刈屋さん。

試しにかじってみると、しょっぱいのと辛いので口の中がちょっとしたパニック状態に.....( ̄▽ ̄;;)
軽くカミカミ程度だったら、いけるかな? お好みで楽しむことにしましょう。
コシがある中太麺はクロレラ入りで、やや緑がかっています。
また、手もみで縮れを加えています。
 
龍昇園のカレーラーメン、始めから最後まで驚きの連続でした。
驚きすぎて忘れそうですが、黒カレースープがちゃんとおいしいんですよね。
 
アイデアマンでサービス精神旺盛な店主が作るカレーラーメンは、見た目のインパクトや楽しさだけでなく、地元の食材や体にもいい素材をふんだんに使っています。
そして何よりこだわりの黒カレーと具材による、飽きの来ないうまさ!
 
下準備に相当の手間暇がかかっている渾身の一杯。
コスパは大丈夫かな(笑)
そんな無駄な心配をしてしまうほどの魅力あふれる黒カレーラーメンでした。

龍昇園では他にも豊富なメニューがあります。
ピリ辛の白髪ネギともやしがたっぷりの「三条っ子ラーメン(ねぎみそ)」や「カレー焼きそば」などもおすすめです。
龍昇園

龍昇園

新潟県三条市元町12-11
TEL.0256-34-4174
【営業時間】平日 11:00~14:30、17:00~21:30
      日曜・祝日 11:00~15:00、17:00~21:00
【定休日】月曜日 ※祝日の場合は営業


 
“ものづくりのまち”という土地柄もあってか、三条カレーラーメンは、職人気質のこだわりにあふれています。
三条カレーラーメンは、本当にお店ごとに個性が異なるので、3店のみのご紹介では魅力をお伝えしきれませんが、今回はここまで。

三条カレーラーメン部会では「食べ歩きマップ」を作成し、ホームページで公開していますので、そちらもぜひチェックしてみてください。
その他の4大ラーメンはこちら
①長岡生姜醤油ラーメン編
燕背脂ラーメン編
③新潟濃厚味噌ラーメン編
④新潟あっさり醤油ラーメン編

新潟が誇る5大ラーメンを5回に分けてご紹介してきました。
どれも歴史を感じるストーリーや地域との繋がり、店主のこだわりを感じる自慢のラーメンです!
そしておいしい♪

ぜひ機会を見つけてご賞味ください!!!!!

他のラーメンもまた機会があれば(^-^)
 

三条カレーラーメンマップ

この記事を書いた人
ケバブー

長岡生まれ新潟育ち。 ​
郷土料理からラーメン、地酒やスイーツまで新潟の食を広く愛するフォトライター。