「新潟5大ラーメン」を食す!【④新潟あっさり醤油ラーメン 編】/新潟市


2021年04月06日 59342ビュー
豊かな食文化を誇る新潟県。
ラーメンも県内外から「新潟はレベルが高い!」と評価されています。

中でも「長岡生姜(しょうが)醤油」「燕背脂」「新潟濃厚味噌」「新潟あっさり醤油」「三条カレー」の5種類のラーメンは「新潟5大ラーメン」といわれているのをご存じですか?

そんな県内各地で愛されてきた5つのご当地ラーメンをご紹介するシリーズもいよいよ第4弾。
湊町・新潟で愛されてきた「
新潟あっさり醤油ラーメン」です。

三吉屋(本店)

1軒目は、1957(昭和32)年創業の「三吉屋」さん。
新潟市に3店舗あり、創業者の息子さんご兄弟3人でそれぞれのお店を営んでいます。
 
今回は本店におじゃましました。
本店を継いでいるのは次男である坂田和男さん。
新潟のラーメン業界では“レジェンド”と慕われている方です!
三吉屋がお店を構えた頃は、お店がある古町地域はまだお堀が張り巡らされていたそう。
(古町地域には、東堀通りや西堀通りなど、「堀」が付く通りが多いのは、本当にお堀があったから)
 
あっさり醤油ラーメンは、繁華街の“締めのラーメン”として食べ継がれてきた味。
 
坂田さんが「普通のラーメンなんだよ」と言いながら作っていただいたのがこちらです。
中華そば(650円/税込)
 
確かに、私たちが「ラーメン」というものを想像する時って、実はこういう感じかもしれません。
優しい味わいの透明スープにチャーシューとメンマ、ネギ、そしてナルト。
 
創業当時はラーメンが1杯35円だったそう。
昭和真っただ中の雰囲気が残る店内でいただくあっさりラーメンは、ノスタルジーを感じずにはいられません。
優しい味わいのスープを口に運べば、​心に染みるうまさ。
シンプルなだけにごまかしが効かない味です。

「スープ(だし)が大事っていう人もいるけど、ラーメンはかえし(たれ)の方が重要」と語る坂田さん。
昔から変わらない秘伝の醤油だれは、お店の命です。
たれと合わせる琥珀色のだしは、豚ガラと野菜を主体に丁寧に炊き込んだ、まろやかなうま味。
煮干しも入っていますが隠し味程度とのこと。
最近は魚介の香りが強いラーメンもありますが、「自分の好みもあって、香りを立てないんだよ」と坂田さん。

たれやだしの作り方は、ご兄弟の2店舗も同様とのこと。
寸胴の大きさや火力などの環境の違いによって多少の差は出るそうですが、基本的には同じラーメンを作っています。
麺は昔から極細。やや縮れています。
スープとの相性は言うまでもありません。
女性でも食べやすいこともあり、昔から女性客が多かったそう。

もも肉のチャーシューも美味♪
ラーメンはバランスなんだなぁ…と実感させられます。

飲んだ後の締めにするするっといただける、スープまで飲み干せる、あっさりとしたうまさ。
 
繁華街とともに歴史を紡いできたあっさり醤油ラーメン。
街の風景が変わっても、三吉屋の“普通のラーメン”は変わりません。
 
現在は夜の営業はやっていないため、残念ながら締めの一杯という訳にはいきませんが・・・いや、次は昼飲みしてから来ようかな!

ちなみに、お兄さんがやっている信濃町店、弟さんがやっている駅南けやき通り店は、夜も営業されています。
三吉屋

三吉屋

新潟県新潟市中央区西堀通5-829
TEL.025-222-8227
【営業時間】11:00~16:00
【定休日】火曜日
※信濃町店、駅南けやき通り店(いずれも新潟市中央区)もあります。


 

蓬来軒

2軒目は、1956(昭和31)年創業の「蓬来軒」さん。
もともとは屋台からスタートしたお店です。
現在は3代目の三井篤司さんとお母さまの百合子さんたちがのれんを守っています。
あっさり醤油ラーメンをご紹介する前に、現在の蓬来軒にまつわるお話を少しだけ…
 
蓬来軒の味は、実は一度途切れかけたことがありました。
それは約20年前、2代目(百合子さんのご主人)が急逝された時。

当時、広告代理店で働いていた篤司さんはそれまでお店を継ぐ気持ちはなかったそうですが、会社を辞め一念発起。蓬来軒を継ぐという道を選びます。
「私自身が父親が作るラーメンが好きだったので、その味がなくなるのが嫌だったんです」と篤司さんは語ります。
 
初代の屋台の頃から店の手伝いをしていた百合子さんと力を合わせながら、ラーメン作りを一から勉強。
「最初は、平ざるを使って上手に湯切りをするだけでも苦労しましたね」と篤司さん。
先代の味になっているか、常連さんに何度も味見をしてもらったそうです。

常連さんたちと共に、お二人が試行錯誤を重ね受け継いだラーメンがこちらです。
らーめん(620円/税込)
 
黄金色の澄んだスープと極細麺、具材が上品に並べられたあっさり醤油ラーメン。
古き良き時代のぬくもりが感じられます。
優しいうま味のあるスープは、昔からの常連さんも認める味。
だしは豚と鶏ガラ、ウルメイワシや香味野菜など。
麺は、極細の割にはぷりっとしつつ、歯切れのよさもあります。
しっかりとした味付けのチャーシューはやわらか。バラ肉を使っているそうですが、それほど脂っぽさはありません。
「余計な脂は手作業で全部取っているんですよ」と百合子さん。
 
「屋台では火力が弱かったから、細い麺じゃないとだめだったんです」と教えてくれた篤司さん。
ゆで時間の短い麺も、じっくり煮込む澄んだスープも、屋台ならではの必然だったんですね。
 
店内には屋台時代の貴重な写真が。
当時は「蓬【莱】軒」だったんですね。
イスに腰かけている後ろ姿が、当時から手伝いをしていた百合子さん。
「料亭の料理人さんなどもよく食べに来てくれていたんですよ」とほほ笑みます。

なつかしの屋台ラーメンの味を常連さんと共に守りつなぎ、今に伝える蓬来軒。
 
実は一番人気はタンメン(850円/税込)なのですが、そのご紹介はまたの機会に!
その他、各種麺類やチャーハンなどもそろっています。

蓬来軒

新潟県新潟市中央区上大川前通1262
TEL.025-222-7208
【営業時間】11:00~14:00、17:30~20:00
【定休日】日曜日


 

元祖ラーメン 信吉屋

3軒目は、1986(昭和61)年創業の「元祖ラーメン 信吉屋」さん。
店主の土田洋生さん・文江さんがご夫婦で切り盛りされているお店です。
 
かつての市場の風情を残す「人情横丁」。
浜焼きの店や乾物店、飲食店などさまざまな店舗が軒を連ねる長屋の一角に信吉屋はあります。
店名の「信吉(しんきち)」は織田信長の“信”、豊臣秀吉の“吉”から取ったそうです。
 
こちらのお店はとにかく営業時間が短く、11時開店~麺が無くなり次第終了なのですが、13時にはだいたい終わっています。
カウンター7席の店内は朝から満席。順番待ちの行列は日常の光景。
「ありがとうございました」とご主人の声が響きます。
 
ある日の12時半頃。営業終わりの最後の1杯をいただきました。
あっさり醤油の「支那そば」をベースに、「チャーシュウメン」や「メンマラーメン」などのメニューがあります。今回は人気の「ワンタンメン」をいただきました。
ワンタンメン(800円/税込)※2021年4月より価格変更
 
こちらも透明感のある一杯。
ぷるんとしたワンタンに食欲がそそられます。
ご主人が「醤油と塩の中間」と表現するスープは、うま味がありながらも本当にあっさりとしています。

カツオの風味が豊かなたれに合わせるのは、豚骨や煮干し、昆布などからとっただし。
「朝は寸胴から離れられません」ご主人。
早朝から仕込みに入り、ていねいにあくを取っているため、雑味がありません。
大きな皮がスープのうま味をまとうワンタンが5枚。
つるりとした食感が楽しめます。
信吉屋の極細麺はスープと絡みやすいのが特徴。
しっかり噛み応えのあるチャーシューも昔ながらのスタイルです。

五泉市(旧村松町)出身のご主人。
福島の中華料理店で基本を覚え、その後東京でさまざまな飲食店で経験を積んだそうです。
新潟市出身の文江さんとは東京でご縁があり結婚。
このラーメンの作り方はご主人のオリジナルとのこと。
これまでの経験を活かし「すぐにいいのができた」とひょうひょうと語ります。
「この人、頑固で他人の言うことを聞かないんですよ」と奥さん。
 
そんなこだわりの味で、新潟あっさり醤油の名店となった信吉屋。

短い時間を狙っていくのは難しい人もいるかもしれませんが、ぜひご賞味を。 
期間限定の冷やし中華もオリジナリティーの高い味わいでおすすめです。
元祖ラーメン 信吉屋

元祖ラーメン 信吉屋

新潟県新潟市中央区東堀前通423-7
TEL.025-228-3436
【営業時間】11:00~麺が無くなり次第終了(12時台には無くなることが多い)
【定休日】木・金曜日


 
今回は新潟あっさり醤油ラーメンのお店を3店ほどご紹介しました。

前回の新潟濃厚味噌とも全く異なる魅力でしたね。
いずれも新潟市の繁華街・古町で愛されてきた名店です。
他にもおすすめしたいお店がたくさんありますが、今回はここまで!

その他の4大ラーメンはこちら
①長岡生姜醤油ラーメン編
燕背脂ラーメン編
③新潟濃厚味噌ラーメン編
⑤三条カレーラーメン編

新潟あっさり醤油ラーメン

この記事を書いた人
ケバブー

長岡生まれ新潟育ち。 ​
郷土料理からラーメン、地酒やスイーツまで新潟の食を広く愛するフォトライター。

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