個性派古書店「ニュースナック四ツ目長屋」/新潟市
2022年02月17日
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古書店の魅力
だれかが本を売りに訪れ、店主がその価値を見定め、次のだれかがその価値に共感して本を買っていく。大袈裟ではなく、古書店は地域の文化そのものである。店舗数や規模、蔵書数だけでなく、それぞれのお店の扱うジャンルや雰囲気、客層などからも、それは如実に表れる。個性的な古書店の多いまちは、だいたい、雰囲気も住む人たちも魅力的だ。
「お売りください」の黄色い看板のチェーン店もたしかに魅力的だし便利だ。買いそびれたベストセラーを探す時には「あるじゃん!」という気分になる。でも、地域の個性的な古書店を巡り、そのラインナップからお気に入りの店を見つけ、運命の一冊と出会う楽しみはまた別格。旅行やまち歩きの中で偶然立ち寄って、一目で気に入ってしまうお店も少なくない。
電子書籍が普及し、一方で「出版不況」や「本離れ」と言われて久しい中、新潟県内でも頑張っている古書店もいくつか見られる。いずれも店主の個性が反映されたユニークなお店ばかり。
そんな中、このコロナ禍の昨年4月、新潟市中央区上大川前通りに酒場を併設した超個性的な古書店「ニュースナック四ツ目長屋」がオープン。地域のミュージシャンやアーティストから熱烈に支持されている。
「お売りください」の黄色い看板のチェーン店もたしかに魅力的だし便利だ。買いそびれたベストセラーを探す時には「あるじゃん!」という気分になる。でも、地域の個性的な古書店を巡り、そのラインナップからお気に入りの店を見つけ、運命の一冊と出会う楽しみはまた別格。旅行やまち歩きの中で偶然立ち寄って、一目で気に入ってしまうお店も少なくない。
電子書籍が普及し、一方で「出版不況」や「本離れ」と言われて久しい中、新潟県内でも頑張っている古書店もいくつか見られる。いずれも店主の個性が反映されたユニークなお店ばかり。
そんな中、このコロナ禍の昨年4月、新潟市中央区上大川前通りに酒場を併設した超個性的な古書店「ニュースナック四ツ目長屋」がオープン。地域のミュージシャンやアーティストから熱烈に支持されている。
中央線沿線にありそうな雰囲気
東京で古書店といえば、神田神保町の古書店街が有名だが、ニュースナック四ツ目長屋は、どちらかといえば中央線沿線の西荻窪あたり、少し奥まった裏路地にありそうな尖った雰囲気を醸している。
入り口には3冊100円の本にテーブルに椅子。
そして、中に入れば狭い店内には所狭しと本が並ぶ。
天井には古書店らしからぬ怪しげなミラーボールが回り、シュールな小物や張り紙がいたるところで主張する。
カウンターに雑多に積まれているのは、哲学書と成年コミック。「どっちも、ほぼ同じものじゃないですか?」と店主の藤田泰輔さんはぽつり。
サブカルに絶大な影響を与えた「ガロ」のバックナンバーはもはや定番。隣には竹久夢二の全集も。
「新潟で日の目を見ないような本を高く買い取ってるんですよ。ベストセラーなんかはブックオフに行った方が高く買い取ってくれると思います」と藤田さん。
そのお店のカラーを気に入ってくれたお客が、また、そういった本を持ちこんでくれるのだそう。
そのお店のカラーを気に入ってくれたお客が、また、そういった本を持ちこんでくれるのだそう。
コミュニティーの場として
尖った店には尖った人たちが集まる。
面白いのは掲示された「部員募集」の張り紙。サークル的なものから、趣味の語らい、なんだかよく分からない「鈴木部」にいたるまで色々と並んでいる。まるでキャンパスの掲示板によくあるサークル募集のよう。かなりアンダーグラウンドな募集もある。それにシュールな張り紙や落書きも目を引く。どれも酔っ払いが勢いで書いた(描いた)ようだが妙に心に引っかかる。
面白いのは掲示された「部員募集」の張り紙。サークル的なものから、趣味の語らい、なんだかよく分からない「鈴木部」にいたるまで色々と並んでいる。まるでキャンパスの掲示板によくあるサークル募集のよう。かなりアンダーグラウンドな募集もある。それにシュールな張り紙や落書きも目を引く。どれも酔っ払いが勢いで書いた(描いた)ようだが妙に心に引っかかる。
いずれも常連客がその場の雰囲気でやっているそうで、お店をきっかけに交流が始まることも多いそう。やって来るのは地元のミュージシャンやアーティスト、手仕事の職人、詩人などクリエイティブなシーンで活躍する面々が多い。
そのためイラストの個展や詩の朗読会なども度々開かれ、演奏用のギターなど楽器類もちらほら。即興で演奏会が開かれる様子が目に浮かぶようだ。
そのためイラストの個展や詩の朗読会なども度々開かれ、演奏用のギターなど楽器類もちらほら。即興で演奏会が開かれる様子が目に浮かぶようだ。
古本のほかに地元インディーズ作家による書籍も販売。地域文化の伝道師的な役割も果たしているようす。
もちろん、特別な人だけでなく幅広い世代の地域の人も買い物、あるいは遊びに訪れる。コロナが落ち着いていたころは、SNSなどで魅力に気づいた県外からの観光客も訪れていたそう。
この日も近所の女性が訪れ、昼間からソフトドリンクを飲みながら藤田さんとのおしゃべりを楽しんでいた。
この日も近所の女性が訪れ、昼間からソフトドリンクを飲みながら藤田さんとのおしゃべりを楽しんでいた。
こだわりはない
尖ったジャンルの古書店と酒場の組み合わせは、県内でもおそらく他に見当たらない。しかし、藤田さんの目指していたものはもっと違うところ。「元々、海外のポルノショップに憧れてたんです。映画に出てくるような――。ものすごく格好良くて、そういう雰囲気にしたかったんです。お店の名前も江戸時代の『四目屋』ですし」
その摩訶不思議なアングラ世界を表現する場として、愛する古町でのオープンにこだわり1年かけて場所を選んだのだそう。
「でも、みんな、こだわりがあるように思ってくれるんですけど、そうでもなくて――、いえ、まじでないですもん。そういうのはお客さんなんです。この店はお客さんが作ってるんです。それでいいのかな、って」
その摩訶不思議なアングラ世界を表現する場として、愛する古町でのオープンにこだわり1年かけて場所を選んだのだそう。
「でも、みんな、こだわりがあるように思ってくれるんですけど、そうでもなくて――、いえ、まじでないですもん。そういうのはお客さんなんです。この店はお客さんが作ってるんです。それでいいのかな、って」
もちろん、お店の核となっているのは藤田さん本人に違いない。けれども、お店の雰囲気が気に入って集まる人たち、本を持ちこむ人たち、それに本を買いに来る人たちが店を作っていく。だから、このお店は新潟の文化の一端なのだ。
だれでも気軽に
一見さんお断りのように見えるがそんなことはない。気軽に古書を覗きにくる近所の人も多いし、市内にいくつもある魅力的な古書店を楽しむ「古本屋巡り」の一環として訪れる本好きも多い。
お酒もかなりリーズナブルに飲めるし、フードメニューについてはメニューがない代わりに持ち込み自由。出前を頼んだっていい。
サブカルの権化、という風貌の藤田さんも気さくに歓迎してくれる。
お酒もかなりリーズナブルに飲めるし、フードメニューについてはメニューがない代わりに持ち込み自由。出前を頼んだっていい。
サブカルの権化、という風貌の藤田さんも気さくに歓迎してくれる。
そうそう、余談だが藤田さんはパロディー宗教「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」の神官であり、同店は新潟支部でもある。その宗教?の成り立ちとお店の方向性を考えれば、なるほどな、と思ってしまう。
一見、下品でふざけているように見えて、実はとても知的ですべてに寛容。そんなお店である。
一見、下品でふざけているように見えて、実はとても知的ですべてに寛容。そんなお店である。
ニュースナック四ツ目長屋
住所:新潟県新潟市中央区上大川前通6番町1211-5
営業時間:19時ころから24時まで
定休日:不定休
※ただし「まん延防止等重点措置」期間中は土・日・祝の14時から19時まで営業
アルコール類も提供休止
※営業詳細はSNSで告知
TEL:050-3748―4278
この記事を書いた人
新潟市秋葉区在住。サラリーマンの傍らkindleストアで電子書籍にて地元・新潟を舞台にしたエンタメ小説を発表。インディーズながら一部で熱烈な人気を集め、どっちが本業か分からなくなりつつある中年男。