「阿賀の清川焼 光越窯 羽田光範」と「水ト川ノとうふや/道の駅みかわ」を繋ぐ沖縄由来の焼き物を訪ねる/阿賀町
2025年07月28日
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「阿賀の清川焼 光越窯 羽田光範」
焼き物の器が大好きな小柴ぱせり。日常使いにできる器は日々の気分を上げてくれる重要アイテムです。そんなことを言いながら素敵な器を見つけるとついつい買っちゃって、持っている茶器カップ類が増える増える。
それなのにまたお気に入りを探す展示即売会に行ってしまう。
そんな小柴ぱせりは江南区の北方文化博物館西門ステージ脇のギャラリーで開催されていた、陶芸家羽田光範さんの展示即売会を訪ねました。
「光越窯の器展」は、羽田さんの作品はもちろん、陶芸教室の生徒さんの作品も一緒に展示されます。
ちょっとお買い得な焼き物もあり。
ここで阿賀の清川焼 光越窯 羽田光範さんを紹介しましょう!
美術大学卒業後、自転車での日本一周を夢見つつも会社勤務をしていた羽田さん。27歳のときに会社を辞め、念願の自転車旅に出発します。平成元年春、新潟を出発して南下。
国の重要無形文化財「琉球陶器」技能保持者であり、沖縄で初の人間国宝の金城次郎さんに興味があり、会いに行きました。
沖縄読谷村に着いたら、金城さんはちょうど登り窯を焚いていました。
1週間後に品物を出すということで、金城さんの「急ぐ旅じゃなかったら、窯出し手伝わないか」との言葉に、しばらく沖縄に居座ることに・・・。
「また2ヶ月半後に登り窯を焚くから、それまでバイトしないか。バイトしながら、なんか品物を作って窯で焼けば、人間国宝の窯で焼いたって自慢できるぞ」
と言われて、「それおもしろいな、そんな人誰もいないよね。じゃあやってみよう」って、2か月半バイトしながら陶芸のいろいろを教えてもらったそうです。
金城さんの次郎窯の窯入れは2ヶ月半ごと。
2ヶ月半バイトをして次の窯入れを手伝ったら、また次の窯入れまで2ヶ月半・・・そのまま居てもいいかな、と飲み会の席で話をしたら、可愛がってくれていた先生が急に怒り出したそうです。
「ダメだ。そんな中途半端なのがここにいると目障りだ。正式に修行するなら俺は許す」と。
「一人前の職人になるにはどのくらいの時間が必要かと聞いたら、10年かかると言われ、そのとき僕は27歳だから、一人前になる頃には37歳。もし10年で僕が一人前になれなかったら、新潟に帰っても潰しがきかない歳になる。だから「諦めます」って言ったんだ。そして「自転車旅を再開して北海道に向かいます」って続けたら先生が「いや10年というのは昔からの職人の世界の話で、今は5年で一人前」って言って・・・。
5年でも一人前になる頃には32歳。「30歳超えてしまったら大変だな」
って言ったら今度は「今は器用な子なら3年で」って、だんだん短くなるの(笑)
で、「じゃあチャレンジします」って答えた」
「まさかこんなに続くとは思わなかった」
と言う羽田さん。
なんとなく見学のつもりで寄った沖縄で、自転車旅を中断し職人の修行をするようになって5年。沖縄ではいろいろ賞も取り、陶芸家として新潟に帰ってきました。
だから羽田さんの作品には、なんとなく沖縄の焼き物の雰囲気があるんですね。
見習いとして3年、職人として2年働いたあと平成6年春に新潟に帰ってきて、自分の登り窯のための場所を探し始め、いろいろな人の縁で津川にその場所を見つけます。
1年目、土砂を運んでもらって20度の傾斜地面を作ってもらう。重機で踏みしめ、雪で締めて18度に落ち着かせる。
2年目、屋根をかけて地面を乾燥させる。
3年目、屋根の下で窯の基礎工事。
4年目、窯の側面壁を立ち上げ。
そして5年目にかまぼこ型に屋根を乗せて、平成10年に傾斜を利用した四室連房式登り窯が完成。
これが光越窯の登り窯です!大きい!大きすぎて画面に収まりません!
この写真は窯に向かって左側、作品を収める入口が開いています。
羽田さんのいるのが右側、のちほど薪を追加投入する窓があります。
かまぼこ型の部屋は4つ、傾斜の上に段々に作られています。
下から2番目以降、4番目までの部屋に棚を組んで品物をいっぱいに並べ、1番手前の部屋で薪を焚きます。薪に使うのは松や杉です。松は松ヤニが油分で、一気に燃えて高温になり、すぐ灰になる。その空いた場所に更に薪をくべていく。これを3日間続けます。
一番手前の部屋で燃え始めた炎の熱は1250度まで上がります。その熱が上の部屋に伝わり900度くらいまで上がったところで、部屋の両脇にある小さな投入口から同時に同じ量の薪を入れて、部屋全体が1250度になるようにしていく。するとその上の部屋が900度になり、さらにその部屋に薪を投入して、陶器は最終的に1250度で焼き上がります。
薪に使う松は鉄分が多く、灰が硝子化して窯の部屋の壁がキラキラ光ってきれいなんですよ。
この次に登り窯を使うのは10月末。
今までは年3回窯入れをしていましたが、3月は雪が多く、数年前は雪で屋根が倒壊したこともあったので、6月と10月と年に2回にしていくらしいです。
羽田さんの陶芸教室は北方文化博物館の他にもいくつか開かれているので気になる方はお問い合わせをしてみてください。作品販売は狐の嫁入り屋敷、道の駅阿賀の里などに置いてあります。
また、11月のはじめに新津フラワーランドで展示即売会があります。
実は新潟市の沼垂四ツ角あたりにも窯を持っていて、周辺の陶芸・工芸家さんとで工房見学も企画しているようですよ。
阿賀の清川焼 光越窯
窯主 羽田光範
お問い合わせ Tel 090-6938-1848
陶芸教室 北方文化博物館 隔週 木・金曜日
今回の光越窯展示即売会では、なんだか一点物のコーヒーカップが多いなあと思って尋ねたところ、「新規開店のカフェで使うカップを頼まれ見本に焼いた」と聞きました。
羽田さんの器を使っている飲食店があり、新潟駅前で居酒屋をやっている方が、今度は道の駅みかわの食堂スペースでカフェを開業するんだそうです。
というわけで、三川へカフェを訪ねることになりました。

「水ト川ノとうふや/道の駅みかわ」
新潟駅前で居酒屋「奥阿賀の郷 山姥」を経営、羽田さんに四角い枡形の酒器を作ってもらい、お店で使っている石川さん夫婦に会いました。
もともと石川さんの家族が三川に縁があり、新潟駅前で居酒屋を、また津川では「とんかつ専門店 かつ丸」を経営している縁もあり、三川岩谷の組合が作っていた「三川とうふ」を引き継ぐことになりました。
石川さんは小さい頃から食べていて、お店でも使っていた三川とうふのことが大好きだったので、引き継ぐ話が出たときは「やってみたい!」と即答だったそうです。
引き継いでからしばらくは販売していたのですが、コロナ禍や施設の老朽化があり一時的に休業。このたび、リニューアルオープンに向けて動き出します。
もともと道の駅みかわは併設のとうふ工場の商品販売がメインで、食堂もありましたが地域の生産物と観光案内パンフレットを置いているような小さなものでした。
道の駅を再開するというよりは、とうふ製造販売を継承しながら道の駅の運営をするというカタチを目指しています。
大豆生産は難しい地域ですが、とうふは水が9割。建物のすぐ下にある新潟県の名水百選に選ばれた薬師清水を使用しています。
「白くて四角い見た目一緒のとうふですけど、舌触りとか噛み応えとか、それぞれみんな特徴がある。同じ人が同じ手順で作ってもやっぱりそれでも気候や気温・水温とかで若干変わってくるんですよね。もちろん商品なんで、安定して作らないといけない。
ただ多少日によって波があっても、季節で味が違うとか、手作りという意味では、それも1つの売りなのかなと思いますね」と、石川さん。
その日その時にしか食べられない一期一会ですね。豆好きとうふ好きぱせり、ああ早く三川とうふを食べてみたい!
取材に行ったときは準備の真っ最中。
納品された羽田さんの焼き物はすべてデザインが違います!
カフェの珈琲は薬師清水を使った自家焙煎珈琲、どのカップで提供されるか楽しみですね。
入口すぐの売店コーナーも品物が揃ってきました。
リニューアル完成は道の駅の方が先でしたので、先行してカフェがプレオープンです。
以前作っていたとうふ、生揚げ、豆乳チーズケーキ、おからドーナツがまた食べられるようになる日も近そう。ゆくゆくは水ト川ノとうふやでも三川とうふを取り入れたメニューを考えているそうです。
それまでは、おいしい名水の自家焙煎珈琲を飲みながら、展望窓からの景色に時間を忘れて、ゆっくりと過ごしませんか?ちょっと遠くに足を運べば、日常から離れた体験のできる場所が、特別なところがある。新潟市から三川に向かう道中もドライブには最適の距離と、楽しめる景色があります。
とうふ製造工場が完成し、三川とうふ販売も始まるグランドオープンに向けて、ゆっくりと準備していく、種が発芽して成長して花開いていく様子をぜひ見届けてください。
※7月上旬よりカフェオープン
※とうふの販売はグランドオープン後(2025年秋ころ)になります
水ト川ノとうふや/道の駅みかわ
住所:新潟県東蒲原郡阿賀町岩谷2865
電話:0254-99-3779
売店/10:00-16:00
カフェ/11:00-15:00(L.O14:30)
定休日:火曜または不定休
水ト川ノとうふや/道の駅みかわの道を挟んで向かい側には「平等寺薬師堂」、近隣には国の天然記念物「将軍杉」もあります。
将軍平維茂の墓碑と言われる将軍杉をぐるりと回って見られるように通路があり、その幹の太さ19.31m高さ40m、ちょっと見たことがないもので驚きました。
「将軍杉」他を取材したこちらの記事もご覧ください。
将軍杉
新潟県東蒲原郡阿賀町岩谷2242
TEL.0254-99-2639(落書庵)
駐車場:10台

今回寄ったところ
この記事を書いた人
72年新潟市生まれ、99年結婚、夫婦二人暮らし。イラスト描きます。 読書、創作、映画、音楽、演劇、着物など、文化系多趣味で、ちょっと?鉄子。企画運営好き。 15年-18年は信州暮らし。
https://314musubiya.9nzai.net/