新潟ガストロノミー おいしさの裏側を求めて⑭――手間ひまかけて、ここでしか食べることのできないフランス料理を BISTRO NAOMI(ビストロ ナオミ)/燕市


2023年01月11日 4698ビュー

隠れ家的フランス料理店

燕市吉田駅前に、隠れ家的フランス料理店がある。旬の地場産食材をふんだんに使った創作フレンチが人気のお店だ。オーナーシェフである塚原直己さんによると、以前はファミリーレストランだったという。
「このお店は元々父親が運営していました。父親が本格的サイフォンでたてるコーヒーはとても評判がよかったですし、ドリアやハンバーグも人気でした」 料理が身近にあった塚原さんは、自然と料理人の道を歩んでいくこととなる。

フランス・リヨン、東京・銀座のフランス料理店などで修業を重ね、2009年「BISTRO NAOMI」をオープン。お店はかなりの盛況ぶりだったそうだが、塚原さんは当時について、「東京の味をそのまま持ってこようとして、東京の修行時代に使っていた食材でフランス料理を作ろうと突っ張ってた」と振り返る。
そんな塚原さんを変えたのは、お客さんとして来店した地元食器メーカーの社長の一言だった。 「“東京でも食べることができる料理だ”と言われたんです。」 このことがきっかけとなり、塚原さんは「地元食材を使ってここでしか食べることのできないフランス料理」を目指すようになったという。

食器もメイドイン燕

考えを変えた塚原さんは、地場産食材を探すべく奔走する。 「地元の農家さん6〜7人に来てもらってどんなものが採れるかインタビューして、当店のコンセプトをお話しして。皆さんの食材をリスト化しました」。 現在、特に多く使用しているのが宮路農場さんの野菜。アスパラ、ブロッコリー、カリフラワーなど、宮路さんの畑で採れる食材をベースにメニューを考えるという。
食材だけではない。食器もメイドイン燕にこだわっている。レストランがある燕市は、洋食器のまちとして世界的にも有名。BISTRO NAOMIではフォークやナイフはラッキーウッド社、タンブラーはアルチザン社のものを使っているとのこと。

アルチザンは永年金属加工に関わってきた長澤政幸社長が立ち上げた会社だ。金属製品、とりわけ洋食器の伝統的な技術を活かした美しく魅力溢れる工芸的な食器や茶器を、もっと多くの人々に知ってもらいたいという思いで商品開発に取り組んでいる。

タンブラー“折燕ORI-EN”は、「燕の金属加工」に「高岡の着色」という2つの技術をかけわせた逸品。金属の腐食・錆びを人為的に発生させることによって作られた奥深く複雑な斑紋は、職人の手による世界に一つだけの柄だ。

手間をかけることで複雑性を生み出す

「見た目は普通のどこにでもある食材だけれど、手間をかけることで複雑性のある味」を追求したいと語る塚原さんは、十分な下ごしらえのために週1日だった定休日を2日にしたほど。2日間かけて下ごしらえしたあと、丁寧に作られた料理は、口に入った時印象が長く残っていく。塚原シェフの飾らない人柄のままの料理が、地元の食材とカトラリーに支えられて今日もBISTRO NAOMIのテーブルの上に提供される。
BISTRO NAOMI(ビストロ  ナオミ)

BISTRO NAOMI(ビストロ ナオミ)

住所:新潟県燕市吉田堤町3-1・2F
電話:0256-92-2234
営業時間:LUNCH/11:30〜14:00(ラストオーダー13:30)
DINNER/17:30〜22:00(ラストオーダー21:00)
定休日:月曜・火曜日
駐車場:有(20台)

この記事を書いた人
NIIGATA GASTRONOMY

「美食学」と訳され、料理と文化の関係性を考察することを指す“ガストロノミー”。
口にすることで地域の風土や歴史を感じられることから、成熟しつつある食文化の中で、注目を集めている考え方。多様な歴史と文化、豊かな自然に恵まれた新潟県はガストロノミーの宝庫。