「越後妻有の冬 2025」で雪を活かしたアートやアクティビティを楽しもう!/十日町市・津南町


2025年02月05日 117ビュー
3年に1度開催されている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。実は芸術祭の里ではトリエンナーレの時以外にも、楽しいアートイベントを行っているのです。2025年1月25日から3月9日までは「越後妻有の冬 2025」を展開。豪雪地帯という地の利を生かして、冬ならではのお楽しみを用意しているのだとか。開催初日に、早速行ってきました!

モネ船長の航海で楽しい冬遊び 越後妻有里山現代美術館 MonET

2024年の夏、越後妻有里山現代美術館 MonETの回廊に突如出現した《モネ船長と87日間の四角い冒険》が、今回は《モネ船長と大雪原の航海》として冬バージョンで登場です。回廊に入ると見えてくるのは大輪龍志-TAiRiN《モネ船長の方舟》。雪原に浮かぶ船に乗りこめば、ペンギンたちがお出迎えし、その向こうに広がるのは、原倫太郎+原游《雪の阿弥陀渡り》です。雪の迷路を進んで行くと「次にすれちがった人に『すてきな日を!』と言ってみよう」など、行く先々で楽しいミッションが待っています。どんな言葉に出会うのかは、あなたがたどった道次第です。
回廊のあちこちに楽しい仕掛けがたっぷり。ヌーメン/フォー・ユース《Tape Echigo-Tsumari》や、加藤みいさ《溢れる》などの夏からの展示作品に加え、5作家による新作が登場です。
下平千夏《光と水と、...》は、水盤が鮮やかな色彩の糸に吊されている作品。覗いてみると水面には糸が映り込み、中央には方位磁石が置かれています。モネ船長はこれをコンパス代わりに進むのかな…と思わず楽しい想像をしてしまいました。
巨大なからくり人形を操る気分を味わえるのが西原尚《ヒューチャー・ヒューマン2》です。作品解説には「今はあまりにニンゲンセイがないがしろにされていると思います。そんななか、改めて大切にしたいのが手足の仕事です」と記されていました。自分の手を使ってグルグルとハンドルを回せば、どんな仕組みで目の前の装置が動くのか一目瞭然。動かした手応えもしっかりと感じられます。
同じく西原尚《ガラガラぶんぶん》は、手押し車を押すと音が出るという仕掛け。もちろん子どもが楽しんでもOKですが、解説パネルには「大人用の手押し車おもちゃ」と書いてあるので、童心に帰って遊んでみましょう。
遊びながら音を楽しめるのが、つちやあゆみ《輪唱の〇》《音の道》です。モネ船長の「ボールを転がしてみよう!」という指示に従って、レール状の木琴の上に玉を置くと、コロコロと転がりながら曲を奏でるのです。どんなメロディが流れるのかは、実際に転がしてからのお楽しみ。ぜひ体験してみてください。
《輪唱の〇》の隣にあるのが、原倫太郎+原游《越後妻有立体双六》です。2021年に、秋山郷のかたくりの宿に恒久設置された《妻有双六》は巨大双六場シリーズとして、長崎、東京、横浜、信濃大町、さらに中国へと展開してきたそうです。双六はシンプルだからこそ、年齢を超えて誰もが楽しめる遊びのひとつ。《越後妻有立体双六》は妻有ならではのエピソードが書かれたマスや、卓球などのスポーツイベントのマスも配置されています。ぜひ家族や友達同士で参加してみてはいかがでしょうか。

連続企画展も開催中

MonETではゲストキュレーターがひとりのアーティストを選び、展覧会を行う連続企画展が開催されています。1月25日から3月23日までは「連続企画展VOL.7 三宅感『無色の人』」が開催中です。2016年に岡本太郎賞を受賞した巨大壁画《青空があるでしょう》は圧巻のひとこと!自身が睡眠中に見た夢や、家族の心象風景などをモチーフにした作品で、思わず引き込まれてしまいました。
《無色の人》は色彩豊かな《青空があるでしょう》とは真逆の、全く色のない作品のみが展示されています。昨年の十日町雪まつりで、作家の三宅感さんが夜に雪像を見て回った時に受けた印象を元に作られた作品です。「雪像を見ながら、もし自分が展示するならどんな作品を作ろうかとイメージを膨らませた」と振り返ります。冬の十日町で企画展を行うのなら、雪の白さと平行するような白い作品を作ろうという思いから、この色のない一連の作品は生まれたそうです。
コロナ禍でマスク生活が当たり前になったとき、人の顔が見えないままコミュニケーションするのが当たり前になったらどうしようかと思った三宅さんは、アクリル板ごしに会話を楽しみながら、ひたすら相手の顔を彫るという公開制作を行ったことがあります。それをふまえて「せっかく新潟で展示するなら、参加者とコミュニケーションできるワークショップをやりたい」と、1月25日から2月15日の土曜日(13〜16時)と日曜日(13〜15時)に「身近な人の顔彫刻を作ろう!」を開催しています。なお、コロナ禍で作った公開制作品は《失われた顔面を求めて》というタイトルで、MonETに展示されています。

雪のまつだい「農舞台」フィールドミュージアム

※設置場所は変動します。

まつだい「農舞台」フィールドミュージアムでは、夏の姿からは想像もできない冬のフィールドミュージアムを楽しもうというコンセプトで季節限定のアート、地域体験、スノーアクティビティが用意されています。
上の作品《クリーチャー》を手掛けたイ・ビョンチャンは、ビニールやプラスチック素材など、環境破壊の元になる素材を使って創作を行っている作家で、この作品のコンセプトは「大量生産・大量消費・大量破壊を表象するプラスチックを素材に、都市に集まる目に見えない資本のエネルギーを可視化する」ことだそうです。雪原に突如現れた謎の生物が蠢きます。
関美来​《ユキガセンリョウ》は、作品に映り込む十日町の雪の風景もアートの一部です。そのため同じ作品を見ても、時間や天候、角度などによって見え方が違うという楽しい仕掛けの作品。作家は冬の十日町に来て、電線や木の枝に降り積もった雪を見て、インスピレーションを得たそうです。
雪は、別名「白魔」と呼ばれることもあります。キレイな風景と共にアートになることもあれば、場合によっては自然災害の原因になってしまうことも。後藤拓朗《雪国─尾花沢の家》、《雪国─西根の家》は、まさにそんな怖さを感じました。雪で押しつぶされた家屋が描かれた作品の向こうに広がるのはひたすら美しい風景。雪が持つ多面性が伝わってきました。
農舞台に隣接した「まつだい郷土資料館」では囲炉裏体験(3月9日までの土日限定)ができます。寒い冬の日、パチパチと炭のはぜる音を聞きながら、囲炉裏端でゆっくりおしゃべりを楽しんでみてはいかがでしょうか。200円で餅焼き体験もできます。炭火でじっくり焼いたもちはひと味もふた味も違いますよ。地元のお母さん手造りのしょうが味噌を付けた焼き餅は絶品でした。(他にきな粉、のり醬油などあり)
Photo Yanagi Ayumi

農舞台近くの雪原では、2月22日から3月9日まで「里山雪の遊園地(土日祝のみ)」を展開。バナナボート(企画展チケットもしくは共通チケットで1回無料、2回目から100円)、スノーチューブ、手押しそり(企画展チケットもしくは共通チケットで無料)が楽しめます。
他に雪の中から地場の野菜を掘り出す「雪中収穫祭」(2月22日14時〜)、どんど焼き(要予約、2月23日・3月2日いずれも10時30分〜13時、共通チケットか企画展チケットをお持ちの方のみ1,000円で参加可能)なども開催されますよ!

奴奈川キャンパス 冬の五感体験美術館

奴奈川キャンパスでは、2024年にできた新作4作品を1月25日から3月9日の土日祝限定で公開。
松本秋則+松本倫子《惑星トラリスin 奴奈川キャンパス》は、夏とは違う景色が見られます。「宇宙船から地球を見たときのイメージ」で作られた小さな穴を、ぜひ覗いてみてください。
期間中は作家によるワークショップも行われます。1月25日・26日は入江早耶「超・粘土日記」が開催されました。粘土を使って立体的な日記を作ろうというもので、制作前には作家が自身の作品解説を交えながら、過去のワークショップの様子も紹介。参加した親子は、一生懸命粘土をこねながら、楽しそうな様子で制作していました。
2月1日・2日には加治聖哉「かんなクズでバラを作りましょう!」も盛況のうちに開催されたようです。
ほかにはトートバッグやポーチなどに描かれたアートに塗り絵をする松本倫子「Hoppeの塗り絵」(開館中いつでも、800円〜+共通チケットか入館料、作家は滞在しません)が行われています。
校庭は「雪上グラウンド(2月9日まで土日開催)」(奴奈川キャンパス入館料か企画展チケットのいずれかで入場可能)として開放され、楽しい雪遊びのスペースになっています。
取材時は雪がしんしんと降っていましたが、そんな天候をものともせず子どもたちは大はしゃぎ。元気な声を響かせながら、思う存分遊んでいました。もちろん大人も参加OKですよ。
こちらはバブルサッカーの様子。バルーン状の球体を身に付けてサッカー遊びをしようというものです。2月1日・8日は、FC越後妻有による雪上バブルサッカー大会も開催されます。
他に雪上パターゴルフ、雪で作った大きなすべり台、巨大福笑い、雪中つり、雪玉あてなどがあります。

キョロロの企画展「美人林ものがたり」

「越後妻有の冬 2025」のイベントではありませんが、大地の芸術祭の拠点施設のひとつ越後松之山「森の学校」キョロロでは、現在ふたつの企画展が行われています。まずは、秋冬季企画展アンコール展2024-2025《美人林ものがたり-里山の美しきブナの森の秘密》からご紹介。
タイトル通り、十日町が誇る美人林にまつわるトリビアや、秘密などについてパネルで解説。1枚ずつにクイズが付いているので挑戦しながら見ていくと楽しいですよ。
もうひとつが、十日町市博物館との連携企画展《キョロロ×TOPPAKU 2024-2025 「学芸員・研究員が紹介したくてしかたがない スノウリッチ*とおかまち」》です。両館10名の学芸員・研究員が、相手館の「推し」を専門分野から紹介という内容です。「ミュージアム DE ビンゴ」「ミュージアム DE 謎解き」と展示を参考にチャレンジする2タイプのワークシートが用意されており、完成するとプレゼントがもらえるそうです。
キョロロには、豪雪に耐えるために水族館でも使われている厚いアクリル板の窓があります。これはアート作品ではありませんが、豪雪を感じることのできる仕掛けだなあと、しみじみ思いました。
「越後妻有の冬 2025」いかがでしたでしょうか。冬ならでは、まさに今だけのお楽しみがギュッと詰まったアートイベントです。ぜひお出かけください!

越後妻有の冬 2025

期間:2025年1月25日(土)~3月9日(日)
定休日:火水曜日(祝日を除く)※開館日は施設により異なる
共通チケット:一般2,000円/小中学生800円

●越後妻有里山現代美術館 MonET
美術館入館料 一般1,200円/小中学生600円、または「越後妻有の冬 2025」共通チケット
※料金には、越後妻有里山現代美術館 MonET常設展示と企画展示鑑賞料含む
「モネ船長と大雪原の航海」は入場無料(作品により別途体験料必要)

●まつだい「農舞台」
入館料 一般600円/小中学生300円、または「越後妻有の冬 2025」共通チケット

●奴奈川キャンパス
入館料 一般800円/小中学生400円、または「越後妻有の冬 2025」共通チケット

●越後松之山「森の学校」キョロロ
入館料 一般600円/中学生以下無料

越後妻有の冬 2025

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湯沢・魚沼エリア

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この記事を書いた人
和田明子

長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中