冬をむかえる前の下田をゆったりと楽しむ一日旅。~みひろ窯・そば処山河・下田の森の美術館~/三条市


2021年11月03日 8035ビュー
こんにちは。
秋が深まるにつれちょっと寂しい気持ちになる・・・センチメンタルライターの中林です。
 
今回訪れたのは、新潟県内でも有数の豪雪地域である三条市下田地区。
例年、人間の高さを余裕で超えるほどの積雪を記録するところも多く、冬のあいだは雪に包まれ白銀の世界になります。
 
10月下旬。本格的な冬を迎える前の下田まで足をのばし、深まる秋をゆったりと過ごす一日旅を楽しんできました。

みひろ窯楢山工房(みひろがまならやまこうぼう)

朝9時半。
はじめに訪れたところは、陶芸体験ができる三条市楢山の「みひろ窯楢山工房」
北陸自動車道三条燕I.Cから約40分。三条市街地から下田地区へ向かう国道289号線からやや細い脇道へ入ると工房があります。
 
工房の中に入る前にちょっと立ち止まって、工房前に広がる景色をご覧ください!
広大な牧草地帯がひろがり、奥には粟ヶ岳が見えます。
そして写真中央に立つ木が「楢山一本桜」とよばれるしだれ桜です。
 
2012年に「みひろ窯」を営む尾崎さんが楢山集落の方たちと一緒に植えられた、樹齢39年の桜の木。
春、桜が咲くころにはこの景色を見るために多くの人が訪れる知る人ぞ知る桜のビュースポットです。
 
花が咲いていない今の時期でも、このような開放的な眺めを楽しめます。
もう少し秋が深まると粟ヶ岳が雪化粧をして、また違った表情を見せてくれそうですね。
みひろ窯のギャラリーに入ると、さまざまな陶器がたくさん並んでいます。
お茶碗、お皿、花瓶など美しく個性的な作品の数々。
もちろん展示されているだけでなく、販売されています。
一点一点尾崎さんが手作りしているものですので、ひとつとして同じものはありません。
「みひろ窯楢山工房」を営むのは、尾崎實さん尾崎洋子さんご夫妻。
以前は三条市街地(東三条地区)で工房をもっておられましたが、2010年にここ下田地区楢山へ工房を移されました。
「この場所に惚れた」とお話されていた尾崎さんご夫妻の言葉が印象的でした。
それでは陶芸体験開始!
まずは實さんが土の準備をしてくれます。
さっそくプロの手仕事がでました。土を練るにも技術が必要。
土の水分量や硬さなど、適度に調節してくれます。
これは「菊練り」という練り方。
尾崎さんのお話を聞きながら、プロの手仕事を見させていただくのも面白いものです。
体験で使う道具は、手回しロクロ。
電動ロクロもありますが、「初心者には相当難しい」とのことです。
今回、陶芸は初体験の私。いざスタート!
実際にやってみると、イメージしていたよりも難しく・・・
なかなか思いどおりに進みません!
でも大丈夫。實さんが丁寧に教えてくださいます。
ちょっと失敗しても、なんとかリカバリー。徐々にカタチになっていきます。
「土殺し」といって、水で土のクセをとる作業。
だんだん完成に近づくにつれて、緊張感が増してきます!
できました!(實さんの多大なるサポートをいただきながら笑)
今回私たちが作ったのは、お茶漬け用のちょっと大きめお茶碗と、小鉢を2つ。
 
お伝えしきれませんが、完成するまでには他にも細かい作業がありました。
それをひとつひとつ丁寧に教えてくださり、無事完成。
所要時間はおよそ一時間。
集中していたせいか、本当にあっという間に時間が過ぎました。
工房の奥の窯を見せていただきました。
今回つくったものが後日この窯で焼かれます。

ただし火をいれるのは月に1回程度。
大きな窯なので、複数の作品をまとめて焼くのだそうです。

できあがりまでは早くて2ヶ月程度。ただし、土の種類などによりもっと時間がかかるときがあり、長いときは4ヶ月ほどかかる場合があるそうです。

ということは、12月ころに作ったなら、ちょうど桜の咲く3月か4月ころに完成となるということ。作品の受け取りと一緒に、ちょうど満開の「楢山一本桜」を眺めることができるかもしれませんね!
「陶芸は、1に焼き、2に土、3・4がなくて、5に造形。とよく言われるんですよ」とお話くださった實さん。

今回陶芸体験させていただいたのは、造形作業の部分のみ。全行程のほんの一部分。

完成するまでは、焼き方、土の調合などが大事で、それができるようになるには熟練の技術が必要なのですね。
絵付けを担当されるのは洋子さん。

お二人は陶芸を本格的に勉強するために、愛知県瀬戸市と岐阜県多治見市へ一時期移り住んでいた時期があったそうです。
實さんは陶芸全般、洋子さんは絵付けの勉強をそれぞれが行い、陶芸の技術を高めていかれました。
「みひろ窯」の名前の由来は、實さんの「み」と、洋子さんの洋(よう)の字を「ひろ」と読みかえ、合わせて「みひろ」として工房の名前にされたそうです。

「作品一つ一つが自分の子ども」
尾崎さんご夫妻のお話をお聞きして、とてもあたたかい気持ちになりました。
完成した頃に、もう一度ここに訪れて尾崎さんご夫妻にお会いするのが楽しみです♪

みひろ窯楢山工房(みひろがまならやまこうぼう)

・住所:新潟県三条市楢山412番地17
・営業時間:9:30~16:00
・定休日:水曜、木曜
・駐車場:あり
※ギャラリー見学のみも可

<陶芸体験>
・要予約
・予約はお電話にて尾崎實(おざきみのる)さんへ
(固定電話)0256-34-581
(携帯電話)090-6928-2352
・体験可能曜日:月曜、火曜、土曜、日曜
・所要時間:2時間程度
・体験可能人数:2名~(最大8名まで)
※体験人数は4名程度までを推奨しています。
※手洗い後のタオル(ハンカチ)、汚れてもいい服装もしくはエプロンをご持参ください。

そば処 山河(やまか)

時刻は12時。
本日の昼食は「お蕎麦」です。
 
「みひろ窯楢山工房」から車で約10分。国道289号線を五十嵐川沿いに上流方面へ向かい、日帰り温泉施設「いい湯らてい」を過ぎ3分ほど進むと見えてくるのが「そば処 山河」
 
自然の中にポツンとたたずむ、素朴ながらも存在感を感じるお店です。
 
実はこちらのお店は、先代であるお父様が営んでいた頃の2011年に、五十嵐川の水害によりお店が倒壊してしまいました。
休業を余儀なくされましたが、水害から5年後の2016年に二代目の中山博貴さんがお店を再建され、現在に至ります。
店主の中山さんがこだわり抜いてつくる手打ち蕎麦が人気となり、多くの蕎麦好きが訪れる人気のお蕎麦屋さんです。
「ミシュランガイド新潟2020」には「ミシュランプレート」として掲載されました。
私が訪れた日は平日にもかかわらず、お店の外まで人が並んでいるほどの人気ぶりでした。
客席はカウンター席が4席と、子上がり席が三つ。
大きな窓があり、そこからは雄大に流れる五十嵐川が見えます。
紅葉の見ごろにはまだ少し早かったですが、もう少し秋が深まるとより美しい景色が見られそうです。
お蕎麦をいただく前に、下田の大自然を眺めて心を整えましょう。
今回いただいたのは十割そば。(900円・税込)
しっかりとしたコシと、鼻から抜ける蕎麦ならではの風味を感じます。
手打ち蕎麦ならではの食感と風味がたまりません!

ちなみにそば粉は下田産の「とよむすめ」を使用しています。
メニューと一緒に「山河のこだわりの3箇条」が書かれておりました。
 
一.「挽きたて」・・・その日に提供するお蕎麦の分だけ石臼で挽く
二.「打ち立て」・・・石臼で挽いた新鮮な蕎麦粉を手早く打つ
三.「茹でたて」・・・お客様の注文が入ってから茹でる
 
このこだわりにより美味しいお蕎麦が提供されるわけですが、その反面、一日で提供できる量が限られています。
 
予想外にお客さんが多く訪れるときは、早めに完売となるときがあるとのこと。
特に土日には「確実に食べたい!」というお客さんが11時のオープン前からお店の前で待っていることも多いのだとか。
 
今回は十割そばをいただきましたが、「二八そば」もおすすめです(800円・税込)
本当はどちらも食べたかったですが、この日は完売でした。
次回は「二八そば」をいただきたいと思います!
天ぷら盛り合わせを注文。
主に地元下田産の野菜をつかった食材を提供されており、季節のよって内容が変わるそうです。(内容、料金は入口掲示板をご確認ください)
 
この日の天ぷらの内容は、かぼちゃ、まいたけ、ナス、ピーマン、菊、春菊、カニカマ。
サクサクの衣と、それぞれの食材の味が口の中に広がります。
 
これからのさらに秋が深まる時期になると、キノコの種類が増え、さらに自然薯も加わってくるとの事です。
もちろん春には地元でとれた山菜を楽しめます。
訪れるたびに変わる季節の野菜を楽しめるのは嬉しいですね!
窓の外を流れる五十嵐川でとれた鮎の塩焼き(900円・税込)
中までしっかり火が通っていて、香ばしさとアユ独特の苦みがたまりません。
一緒に日本酒を飲みたくなってきます!
ちなみに日本酒の提供もされていて、三条市の地酒「五十嵐川」を呑むことができます。
運がよければ、五十嵐川でとれた鰍(カジカ)酒や天ぷらもいただけるそうです。
※鮎、カジカは時期によりご提供できる数が限られます。
 
下田の大自然を眺めながら、美味しいお蕎麦を食べ、地元食材を使った野菜や魚、そして地酒「五十嵐川」を呑む・・
「そば処 山河」でこんな贅沢な時間を過ごすはいかがでしょう!
店主の中山博貴さん(左)とお弟子さんの須田さん(右)

中山さんは2010年の水害の後、一度蕎麦づくりの道を離れました。
しかしあるとき、中山さんのお子様が、そば打ちの真似をすることがあり、それがきっかけで「そば処 山河」の再建を決意されたそうです。
そして見事実現させた中山さんから、こだわりの蕎麦への熱い思いを感じました。


弟子の須田さんは、2020年に埼玉から下田に移住してこられました。
下田に出会い、そして中山さんに出会った須田さん。
「そばの修行させてほしい」と弟子を志願し、現在修行中です。


「このお店だけでなく、下田に人が来て欲しいんです」と語る中山さん。

四季折々の表情と見せる風景と、山菜や魚などの自然の恵みを堪能できる下田。
多くのひとに訪れてもらい、足を止めてもらいたい。
その場所の一つとして「そば処 山河」を楽しんでもらいたい。

下田愛にあふれる店主中山さんがつくるこだわりの手打ち蕎麦を、ぜひ一度ご賞味ください。

そば処 山河(やまか)

・住所: 新潟県三条市大谷地94-1
・営業時間:11時~蕎麦が無くなり次第終了
・定休日: 水曜日
※Facebook、インスタグラムにて営業カレンダーをご確認できます。
・駐車場:あり
・TEL :080-2140-556

下田の森の美術館(しただのもりのびじゅつかん)

時刻は15時。
「そば処 山河」から車で約20分。
この日、最後に訪れた場所は「下田の森の美術館」です。
 
静かな森の中に佇む独特の雰囲気。
映画のワンシーンに出てくるような建物です。
中に入ると一般的な美術館とはちょっと違った、ペンションのような暖かい雰囲気が漂う空間が広がっていました。
入館料はかかりません。
自由に入って展示されている作品を観たり、販売されているハンドメイドアクセサリーなどを購入したりすることができます。
作品だけでなく、館内の家具やお花、ながれる音楽、窓からの景色にも心が癒されます。
こちらのスペースは「喫茶やまぼうし」
コーヒーやハーブティーと一緒に、オリジナルケーキのタルトやパイを食べることができます。
オリジナルタルトをいただきました。
手作りヨーグルトとフルーツが付いて550円(税込)
タルトと一緒に飲んで最高に美味しかったのが「ハーブティー」(450円・税込)

ハーブティーのメニューは、ビューティー・リラックス・免疫力アップ、リフレッシュの4種類。その時の気分によって選べます♪
あらためて館長の関さん(右)と、トータルマネージャーの土田さんにお話しをお聞きしました。

「画家・貞永マミさんの作品を常設した美術館としてオープンしました。当時は入館料をいただき、展示スペース、物販スペースなどをきちっと分けていたのです。けれど、多くの人の作品や活動につかっていただこうと思い、入館料は無くし、館内をオープンな形にして開放することにしたんです。」

「下田の森の美術館」では個展ギャラリーとして、またヨガ教室や水彩画など、さまざまなワークショップや教室として館内のスペースを貸し出されています。
それがきっかけでたくさんの人とのつながりが生まれ、この場所が知られて多くのひとが訪れるようになったのだそうです。

毎年冬の期間は閉館となり、オープンは春4月からとなります。
「春にはたくさんの花が咲いておすすめですよ」
と話す関館長。

冬が訪れる前に。そして雪が解けた春。
「下田の森の美術館」で、芸術とスイーツを楽しんでみてはいかがでしょうか。

下田の森の美術館

・住所: 新潟県三条市馬場576番地
・営業時間:9:30~16:00
・入館料:無料
・休館日: 水曜日・木曜日
 ※冬季期間は閉館となります(2021年12月11日~2022年3月31日まで休館)
・駐車場:あり
・TEL:0256-46-5576

ゆったりと過ごし心がほっこり温まる一日を下田で

陶芸体験、手打ちそば、芸術とスイーツをたしなんだ一日。
濃い内容ながらも、下田の自然を楽しみつつ、ゆったりと過ごすことができました。
そして好きなことを生業としている人たちとたくさんふれあい、心が温まりました。

これから本格的な冬を迎える三条市下田地区。
自然の中でゆったり過ごし、心がほっこりする。

そんな一日を下田で過ごしてみてはいかがでしょうか。

今回訪れたスポット

この記事を書いた人
中林 憲司(なかばやし けんじ)

1978年新潟県加茂市出身。サラリーマンからライター&ブロガーに転身し第二の人生をスタート。愛する新潟と人生を探訪中。

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