手しごとに出会う旅 後編/柏崎市
2025年04月15日
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長岡・柏崎地域振興局★ふらっと旅を楽しみ隊の廣田です。
柏崎エリア、田尻~安田をめぐる旅の後編です。
柏崎エリア、田尻~安田をめぐる旅の後編です。

蔵人たちの個性あふれる酒蔵
1804年に創業した阿部酒造。原酒造、石塚酒造と並ぶ柏崎の酒蔵のひとつです。
こちらの6代目が、製造責任者を務める阿部裕太さんです。
こちらの6代目が、製造責任者を務める阿部裕太さんです。
阿部さんは酒屋のこどもとして育ちました。ちょうど4代目から5代目になる時、自分のところの直売と他社のお酒も扱う酒販業を主にすることになったのです。やがてコンビニやスーパーでもお酒が買えるようになって競争が激しくなり、お父さまは自分の代で廃業を考えていたそうです。だけど清酒の免許は新規でとることができない、価値あるもの。本当にやめていいの?と思った阿部さん。どうせ廃業を考えているのだったら最後に悪あがきしてみようと、酒づくりをしたことはなかったけれど、3年くださいと言いました。
そこから11年。諸先輩方にお世話になってきたので、お酒のことを知らない同世代や若い方に自分が伝えることで恩返ししたいと考えています。
現在は阿部さんや研修生を含め15名ほどが酒づくりを行っています。趣味や得意なことを活かしながら人として自立してほしい、オーナーシップを持ってもらいたいとの思いから、3~4年で卒業する研修生を受け入れていて、卒業生は南相馬や博多、京都など全国各地でご活躍されているのだとか。そしていよいよ今年、初めて同じ柏崎市内で酒づくりを行う卒業生を送り出しました。どんなお酒がつくられるのか楽しみです。
お客さまは市外県外からわざわざ体験しに足を運んでくださるのだから、すぐ近くに販売も製造もあったほうが満足度が上がると、2022年に製造と同じこの場所に直売所を移転しました。試飲は行っていませんが、それぞれのお酒が手書きのコメントで紹介されていて、どんな味なんだろうと想像が膨らみます。
谷根(たんね)で栽培されている米山トウキを使ったノンアルコールのクラコーラシロップは、炭酸で割ったり牛乳で割ったり、いろいろな楽しみ方が。店内でもいただけます。
直売所では、仕込みが比較的落ち着く夏の時期限定で、飲食を楽しめる日も。また、ガラス越しに併設された製造スペースでは、少量生産のものをつくっていて、特に午前中は酒づくりのようすを見られることがあるのだとか。 別棟の製造工場は見学を行っていませんが、同じ敷地内で今年秋に引き渡し予定の新棟では、予約制で見学できるように考えているそうです。
ここ中道(なかんど)地域でも増えてきている空き家を活用して、いずれは飲食、さらにその先には宿泊できるような場所も考えている阿部さん。訪れる楽しみがまだまだ広がりそうです。
阿部酒造直売所
住所 新潟県柏崎市安田3560
営業時間 10:00~17:00
定休日 日曜日

地元で愛されつづけるお菓子屋さん
国道252号線を走っていると目に飛び込んでくる「ほんのびまんじゅう」の茶色い看板。
お店に入ると、5代目の大塚和典さんと奈津子さんご夫妻が迎えてくださいました。
100年以上つづく大和屋菓子舗は、製材などと兼業でお菓子もつくっていたのがはじまりだそう。和典さんがこどもの頃、お店は高柳町の岡田地区にありましたが、駐車場が少なく手狭になり2013年に現在の場所に移ってきました。
100年以上つづく大和屋菓子舗は、製材などと兼業でお菓子もつくっていたのがはじまりだそう。和典さんがこどもの頃、お店は高柳町の岡田地区にありましたが、駐車場が少なく手狭になり2013年に現在の場所に移ってきました。
つやつやもちもちのほんのびまんじゅうは、和典さんのお父さま、4代目で社長の和成さんが考案しました。当初は黒糖まんじゅうという名前でしたが、心を込めてつくる、ほんのり温かみのあるの「ほん」と、高柳じょんのび村の「のび」を合わせてほんのびまんじゅうになったのだとか。人気商品になりましたが、手を広げて地元の人が買えなくなるよりも、ここに来て買ってもらいたいとの思いから、実店舗ではこちらのお店とじょんのび村のみで販売しています。電話でひとつからお取り置きもできるとのこと。ありがたいです。
さらに、もっと親しんでもらえるようにと、手芸や絵を描くことがもともと好きという奈津子さんがイラストを手掛けたキャラクター「ほんのびくん」が誕生しました。
和典さんはこどもの頃、タイムカプセルにケーキ屋さんになりたい、と書いていました。あんこは苦手でしたが、ほんのびまんじゅうのおかげで食べられるようになり、それからほかの和菓子にも広げていったそうです。高校、専門学校とお菓子づくりの技術を学んで、市内の菓子店で技術を磨いたあと、大和屋菓子舗に戻ってきました。
4代目がほんのびまんじゅうをつくったように、自分の代でも新しいものをつくりたいと考えている和典さん。一押しの米粉フィナンシェは、柏崎産の材料にこだわり、新道(しんどう)で生産した「あきぐも」の米粉を使っています。米粉は粒の大きさによっても材料の吸い込みがちがい苦労しましたが、こどもたちがごはんでなくてもお米を食べられたら、また小麦粉アレルギーの方にも食べてもらいたいとの思いから、しっとりおいしいフィナンシェが完成しました。
店内には焼きドーナツじゅんのゆめや季節のパウンドケーキなどの焼き菓子、ロールケーキなどの洋生菓子、そしてもちろん和菓子も並び、次々に訪れるお客さんたちの笑顔が印象的でした。
大和屋菓子舗
住所 新潟県柏崎市安田1790番地2
電話 0257-41-5111
営業時間 9:00~18:00
定休日 月曜日火曜日(祝日、ゴールデンウィーク、お盆、お正月は営業します)

柏崎の土を使った味わい深い器
JR安田駅の近くにある明城焼恒炎窯。片桐恒友さんが1994年に開いた窯です。
京都で働いていた片桐さん。せっかく京都にいるので、伝統文化をやってみたいと思い立って、清水焼の窯元で修行を始めます。九州、備前など各地でも修行を重ねるなか、当時、別の窯場があった故郷の柏崎でもできるのではと思い、戻ってきました。明城焼は、穴窯をかまえる明神(みょうじん)と出身地の城之組(じょうのくみ)から名付けました。
工房内にはさまざまな作品が並んでいます。柏崎の土は鉄分が入っているので、表面に黒い点々が現れるのだとか。宮川海岸の砂鉄を掛けてできるという縞模様の器や、鉄分が抜けるときに斑点のような模様になったもの。
お話を伺っていると、ひとつひとつ手にとってじっくり選びたくなります。
ふたつある窯のうち、工房の窯は灯油が燃料。還元焼成という焼き方ができるので、つよい焼き物になるのだそう。頑丈なのは日常使いにもうれしいですね。(ご提供いただいた写真です)
もうひとつの穴窯で焼かれた作品は、同じものがないとっておき。取材時は雪が残っていて残念ながら見られなかったのですが、工房から車で5分ほど、片桐さんが地盤をつくるところから7年かけてつくったという穴窯があります。1回の焼成で5~6トンの薪を使い、長岡など近隣から手伝いに来てもらって1週間焚き続けるといいます。炎が抜けないよう後ろに捨て間がつくってあり、とても高温になるので、灰が溶けて作品にかかり、それが自然釉になるそうです。(ご提供いただいた写真です)
窯の中に置く位置によって焼け方もちがうので、ひとつひとつちがうものができ上がります。下にくっつかないようだんごを付けて焼いた跡が裏側にあるのもいい感じ。気に入った模様のお皿を見つけたので、たくさん使います。
工房では、予約制で陶芸の体験もできます。ビアカップとお茶わんをつくりたいと伝えたところ、大胆にもろくろに挑戦することに。
まず片桐さんがお手本を見せてくださいます。
いよいよやってみます。上に高さを出したり幅を広げたりするために、両手の指を同じ力で器の表と裏から同じところをおさえること、ろくろを回しながら下から上にゆっくり両手を動かしていくこと、など教わったのですが・・びっくりするぐらい思うようにできません。
自転車と同じで、1度できればできるようになるよ、と片桐さん。修整していただいて、無事に器の形になりました。釉薬を選んだら終了です。数が揃ったら焼いてもらえるとのことで、楽しみに待ちます。
明城焼恒炎窯
住所 新潟県柏崎市安田3506-5
電話 0257-21-2122
来訪時は事前にご連絡ください
今回の旅はここまで。けっして大きくないけれど、とっても魅力的な工房やお店でした。ご協力いただいたみなさま本当にありがとうございました。

手しごとに出会う旅 後編/柏崎市 訪れた場所
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地域で親しまれている隠れたスポットや住民ならではの贅沢な時間の過ごし方があります。
初めて訪れた方でもバスや電車でふらりと行けるプチ旅行や時間の過ごし方をレポートします。