懐かしくて新しい。昭和レトロな商店街に生まれた「神明マーケット」/新発田市


2025年09月11日 25ビュー

城下町に誕生したローカルカルチャーの新拠点

城下町として知られる新発田市は、市街地に城址公園や清水園といった文化財を有し、新発田駅から長く続く昭和の面影を残すアーケード街が特徴です。その商店街を駅から20分ほど歩いた一角に、2024年にオープンした注目スポットがあります。新発田藩時代に建立された神社・神明宮の境内に並ぶ「神明マーケット」です。

個性豊かな5つのテナント

「神明マーケット」の建物には、駅側から順に「かわうち鍼灸接骨院」「三角フラスコ」「小泉水果店」「街のお菓子屋さん Letter」「古着屋 Uncle style」が軒を連ねています。いずれも日常に寄り添うモノやサービスを扱い、若いオーナーが切り盛りしているのが特徴。今回はその中から、旅人もローカルも楽しめる喫茶に注目し、珈琲店「三角フラスコ」と台湾スイーツを提供する「小泉水果店」を訪ねました。

目印は「松田ペット」の看板 ― 珈琲店「三角フラスコ」

まずは、神明マーケットの開店1号テナント「三角フラスコ」。オーナーの星野良緒さんは2020年に新発田市内で開業し、2024年に現在の場所へ移転しました。新潟市の沼垂テラス商店街で営業していたこともあり、今でも新潟市から足を運ぶファンが多くいます。
店先で目を引くのが「松ペ」の愛称で親しまれる「松田ペット」の看板。長岡市の老舗で、ペットのトリミングやホテルを営む一方、味わい深い手描きイラストをあしらったグッズやコラボ商品が人気です。最近ではメディアでも取り上げられ、新潟の新しいアイコン的存在になっています。
愛犬家の星野さんはブーム以前からこの看板に魅了され、「松田ペット」本社の許可を得て、今ではコラボラベルのノンカフェイン・アイスコーヒーを製造販売しています。通常のアイスコーヒーには、愛犬・たつおさんを「松ペ風」に描いたイラストがあしらわれ、人気商品となっています。新潟市近郊でこの看板に出会える最寄りスポットとしても要チェックです。

希少豆もそろう自家焙煎コーヒー

店内には雑貨も並びますが、何よりの目玉は自家焙煎のコーヒー豆。オリジナルブレンドから珍しい産地のものまで揃い、他ではなかなか出会えない小規模取引の希少豆も並びます。近年は、生産農家から直接買い付けを行う独立系バイヤーが増えているそうで、星野さんの人脈による仕入れが光ります。希少なコーヒーとの出会いはまさに一期一会。足を運ぶ価値は十分です。「ただ希少であるだけでなく、その土地の特徴や背景を知り、微力ながら生産者を応援する気持ちを反映したセレクションを心がけています」と語る星野さん。100グラム単位で購入可能です(ブレンド850円〜・シングルオリジン900円〜/いずれも100gあたり)。
カウンターで好みや豆の特徴を相談でき、気になる豆はドリップコーヒー(600円)で試してから購入できるのもうれしいポイント。
ドリンクメニューは季節や日によって変化します。店頭販売品のおすすめは「Organic グラノーラ」(700円)。健康志向だけでなく、美味しいのが何より魅力です。見かけたらぜひ手に取ってみてください。

台湾の街角を切り取ったような「小泉水果店」

続いてはお隣の「小泉水果店」。水果店とは、台湾で果物やジュース、デザートを楽しめる街角の憩いのスポットのことです。カウンターとテーブル席を合わせて10席ほどの小さなお店ですが、その佇まいは、まるで台湾の街角をそのまま切り取ったかのようです。
オーナーの松木泉さんは台湾滞在中に水果店の魅力に触れ、結婚を機に移り住んだ新発田で2024年に念願の店をオープンしました。ちなみに「小泉」は苗字ではなく、愛称の「小」と名前の「泉」を合わせたもの。
「新潟、特に新発田は商店街に個人商店が多く、喫茶文化があるので、水果店が合うと思いました」と語る泉さん。

本格派の台湾スイーツ

看板メニューはタピオカ・ミルクティー(550円)と豆花(ドウファ/500円〜)。タピオカ・ミルクティーはアッサムティーをベースに、甘さ控えめでコクがあり、茶葉の香りも感じられる本格派です。豆花は、柔らかく固めた豆乳にシロップをかけ、フルーツやトッピングを載せる台湾スイーツです。3種のシロップ(しょうが・黒蜜・糖水)やトッピング(タピオカ・白玉・紅豆など)を自由に選べるのも魅力。この日は黒蜜に、トッピング全部載せ(800円)をいただきました。落ち着いた茶系のグラデーションが美しく、素材を生かした穏やかな甘さに心がほぐれます。ボリューム感と、豆やでんぷんの食べ応えから、女性客だけでなく男性客や親子連れも多いのが特徴です。
さらに台湾茶や漁師網バッグといった台湾雑貨など、お土産探しも楽しめます。お客さん同士で自然と会話が生まれる雰囲気もまた「台湾らしさ」を感じさせます。飛行機に乗らずとも異国の雰囲気を味わえるのは大きな魅力です。
このほか、台湾カステラ(480円)や、フルーツと氷をミックスした生ジュースの冰沙(ビンサー/600円〜)もおすすめ。

思い出を受け継ぐ「神明マーケット」

「神明マーケット」の名は、隣接する神明宮に由来します。現在「三角フラスコ」が入居する場所には、かつて「スギサキアイス」で知られた「杉崎茶店(スギサキ)」があり、参拝客や地元の人々に愛されていました。2022年に惜しまれつつ閉店しましたが、新たなオーナーによって「神明マーケット」として再生。今でもスギサキ時代の常連客が訪れています。
「三角フラスコ」と「小泉水果店」は、この場所に根付いた喫茶文化を今に伝え、過去の思い出と新しい日常をつなぐ空間となっています。星野さんも泉さんも県外出身でありながら、ローカルの人々が気づいていない新発田の魅力を引き出しているように感じます。

旅と日常がつながる場所

「神明マーケット」を訪れる際は、各店舗の営業日・営業時間を事前にチェックしておきましょう。少人数で運営しているため、臨時休業もあります。「神明マーケット」の公式サイトには各店舗のSNSリンクが掲載されていますので、参考になります。
今回紹介した「三角フラスコ」「小泉水果店」をはじめ、ほかのテナントや周辺商店街にも個性的なショップが増えています。懐かしさと新しさが同居する「神明マーケット」を拠点に、新発田のまち歩きを楽しんでみてはいかがでしょうか。旅好きの方なら、遠い空の下でなぜか感じる郷愁を思い出し、次の旅へのインスピレーションにもつながるはずです。
神明マーケット

神明マーケット

住所:新潟県新発田市大手町1丁目5番1~3号
営業時間:「三角フラスコ」10:00〜17:00 「小泉水果店」12:00〜18:00
定休日:「三角フラスコ」毎週日曜日、月曜日、火曜日 「小泉水果店」毎週火曜日、金曜日 ※臨時休業日あり
駐車場台数:11台(神明神社参拝者を優先の上、利用可)

神明マーケット

この記事を書いた人
もち

新潟→東京→新潟。新潟在住ながら、仕事で各地を行き来する生活をしています。アート、旅、本、動物が好き。新潟のおすすめローカルフードは餅菓子や旬の果物。旅行の計画を立てることや、お土産選びが趣味です。