手作り感あふれるユーモラスな棧俵神楽(さんばいしかぐら)/新潟市
神楽のひとつに「獅子舞」があります。
「獅子舞」といえば塗りの獅子頭を使うのが一般的ですが「棧俵神楽」はかなり変わっているんです。
米俵のふたにあたる棧俵を2枚合わせて大きな口を作り、かぼちゃの鼻になすの目、髪は田んぼに生える「熊稗(くまびえ)」と呼ばれる草、歯は唐竹に金紙を貼ったもので作られているんです。
いうなれば「農家だったら、そのへんにあるもの」が材料に使われています。
でも、その風貌はどこかユーモラスでインパクト抜群。
人気ロールプレイングゲームのモンスターに、こんなのいませんでしたっけ?
どうして、このような手作り神楽が誕生したのでしょうか?
神社に集まっていたところ、御神酒に酔っ払った若者が棧俵2枚と蚊帳を使って即興の舞を披露したそうです。
あまりに滑稽な舞は、その場にいた人たちを爆笑の渦に包みました。
でも、それは「来年こそ、ちゃんとした神楽を買ってほしい」という、氏子役員に対するアピールを込めたデモンストレーションだったのです。
新之助も子どもの頃に欲しいおもちゃが買ってもらえず、空箱を使って手作りしていたことを思い出して勝手にシンパシーを感じます。
では、どうして神楽を買ってもらえなかったのでしょう?
「棧俵神楽」が伝わる下木津地区は、川の堤防が決壊する「木津切れ」と呼ばれる水害が何度も起こった地域なのです。
そのたびに稲をはじめとする農作物や家屋は大きな被害を受け、人々は苦しい生活を余儀なくされてきたことで、とうてい神楽を買うような余裕などありませんでした。
あきらめた地元の人々は、手作りの「棧俵神楽」を続けてきたのです。
祭りまでの1週間は、集会所から毎晩のように賑やかな声が聴こえてきます。
「棧俵神楽保存会」の方々が10人ほど集まって、神楽の獅子頭を製作するのです。
ベテランが若手に教えながら作り方を伝える様子を見ていると、冗談が飛び交って家族のような雰囲気が漂っています。
現代では失われつつあるものが、ここには残っているように感じました。
力を入れすぎると材料の竹が割れてしまうそうで、慎重に作業しています。
お祭りは2日間にわたって行われます。
1日目の晩は宵宮。
賀茂神社にはのぼり旗が立てられ、鳥居に取り付けられた行燈には灯りが点りました。
表には「御神灯」、裏には「五穀豊穣」と書かれています。
石灯籠にもろうそくが入れられ、ムード満点です。
内容は両日共に同様なので、宵宮は省略させていただきます。
(実は暗くて写真がうまく撮れなかったのでした)
心配していた雨も降らず、2日目の本宮を迎えることができました。
会場は宵宮と同じ賀茂神社です。
こちらには「新潟県文化財保護天然記念物」に指定されている御神木の大けやきがあります。
目の前にするとかなり大きくて存在感ありありです。
まだツクツクボウシが鳴いていました。
祭りの始まりを待つ棧俵神楽。
ユーモラスな顔は地元の子ども達にも親しまれているようです。
そして、子ども達のTシャツには棧俵神楽のプリントが!
おじさんも欲しいっす。
…こっち見られると怖いっす。
ちょっと覗いてみると、おとなしくひれ伏してお祓いを受ける神楽の姿が…笑
ふざけた顔の割に真面目なやつのようです。
ちなみに獅子頭は歯で噛みながら支えているので、舞うのも大変なんです。
お疲れ様でした。
獅子頭が太鼓の音に乗りながら、保存会や地元の子ども達の手で「渡し場広場」へと運ばれてきました。
新之助も日本酒で清められたい…
いよいよクライマックス。
厄を封じ込めた獅子頭は人々が見守る中、小阿賀野川へと流されます。
棧俵神楽を知らない人が川でこれに遭遇したら、やっぱり河童だと思うのだろうか…
ビビリな新之助は、夜に出会ったら腰を抜かすと思う。
賀茂神社
住所:新潟県新潟市江南区木津4-5-8
交通アクセス :
最寄り駅からのアクセス/JR信越本線「亀田駅」より車で20分
最寄りICからのアクセス/日本海東北自動車道「新潟亀田IC」から車で25分
駐車場:普通車3台
問い合せ先:新潟市江南区産業振興課 TEL.025-383-1000
新潟を愛する万年新米ライターです。持ち前の粘り強さで味わい深い記事を書いていきたいと思ってます。とくに観光ガイドには載っていないような、新潟の珍スポットや変スポットに力を入れて紹介していきたいです。