燕のものづくり体験と、金属加工の歴史を学べる「燕市産業史料館」へ/燕市


2020年10月05日 17950ビュー
ものづくりの町と呼ばれる燕市。金属洋食器や鎚起銅器、金型製作など世界に誇れる製品をつくる企業がたくさんあります。最近は、工場を一般の人が見学できる「オープンファクトリー」も増えてきましたね。
 
でも、こうした製品を自分で作ってみたり、ものづくりの歴史を知ってから工場をまわったら、より一層楽しめる気がしませんか?
 
そんなものづくりを体験でき、かつ歴史を学べる施設が燕市にあるんです。今回はJR燕三条駅から車で5分ほどにある「燕市産業史料館」にお邪魔してお話を伺ってきました!

純銅タンブラーの鎚目入れ体験ってなに?

入り口で入館料(大人400円、小・中学生、高校生100円)を支払い、まず向かったのは、「体験工房館」。ここでは、燕市の金属加工技術の一端を職人になった気分で気軽に体験することができます。
さまざまなメニューがある中でも一番人気は、「純銅タンブラー鎚目入れ体験」(体験料2,200円)。

金鎚で打つだけなので一見簡単そうに見えますが、同じ大きさの鎚目をきれいに並べるのが難しいのだとか。参加者の方も「難しい…!」と声を上げながら、楽しそうにつくっているそうです。ご家族や友達と一緒につくって、出来上がりを見比べてみるのも面白そうですね!
ちなみに、鎚目入れのほかにも、錫のぐい呑みづくりや小皿づくり、鎚起銅器の製作体験(要予約)もできます。見学はできても、なかなか自分で作る機会のないものづくりの世界。「燕市産業史料館」で、ものづくりの面白さと大変さを肌で感じてみるのはいかがでしょうか?

ものづくりの奥深さを知ろう!

ものづくりの面白さを体験したあとは、ものづくりの裏側を学んでみるのはいかがでしょうか?
 
今回案内してもらったのは、学芸員の齋藤優介さん。燕のものづくりだけでなく、歴史や地理まで幅広く、マイナーの知識まで詳しく知っていらっしゃる方なので、話を聞いているだけでも充分面白いんです…!
そんな齋藤さん案内のもと、まず訪れたのは燕市でものづくりが発展した理由が学べる映像コーナー。江戸時代、水害が多く稲が育たなかった燕市では和釘づくりが奨励されていました。

その後、燕を代表する伝統工芸である「鎚起銅器(ついきどうき)」をはじめ、ヤスリや煙管(きせる)が燕で発展したのは、「銅山が近くにあったこと」、「仙台や会津から技術者がたくさん訪れたこと」、「燃料となる木炭が豊富だったこと」、「流通の要となる川が流れていたこと」の4つの理由からなんだとか。
燕市の金属加工が発展した理由を教えてもらったあとは、その変遷が丁寧に記された展示スペースへ。

「和釘から始まった金属加工が、どのようにして金属洋食器や金型製作などいまの燕の産業につながっていったか」を図式でわかりやすく展示しています。
次に出てきたのは、各製品の作業場の再現。実際に使われていた、貴重な道具類達が並んでいます。

鎚起銅器や煙管、ヤスリなどの製品がどんな場所で、どのようにしてつくられるのかを教えてもらいます。
金属を加工してものをつくるには、2つの方法があります。溶かした金属を型に入れて形をつくる「鋳金(ちゅうきん)」と、金属を叩いて形をつくる「鍛金(たんきん)」です。

このように金属を加工した後には、金属を切ったり、押したりして模様をつくる「彫金(ちょうきん)」作業を行う場合があります。彫金作業は、写真の通り、さまざまな道具を使いながら金属に模様をつけていきます。

燕市はそれぞれの作業ができる工場が揃っているからこそ、市内でものづくりが完結できるのだそうです。

鎚起銅器や煙管など、歴代の銘品を堪能しよう!

次に案内されたのは、鎚起銅器や煙管などの燕の職人がつくってきた作品の数々を展示してあるスペース。

200年以上鎚起銅器をつくり続ける「玉川堂」の歴代の作品を中心に燕の職人によって作られたさまざまな作品が展示されています。当時の需要に合わせて少しずつ改良を重ねていった様子がよくわかります。
煙管も燕市の重要な産業のひとつでした。日本で唯一の煙管職人・飯塚昇さんは、全国の煙管業界の中でも一目置かれる存在。テレビや映画で使われる煙管や、その修理はほとんど飯塚さんがつくっているそうです。そんな凄い人が燕にいたんですね…!

芸術品としての鎚起銅器に触れてみよう!

鎚起銅器といえば、やかんや花瓶、茶器など生活で使う品を思い浮かべると思いますが、さまざまな技法や着色が施され、優美なデザインが見られる美術品も数多くあります。
そんな美を追求した作品を展示しているのが、この「鎚起銅器の美の世界」のスペース。人間国宝・玉川宣夫氏の作品を間近で楽しむこともできます。
 
2010年9月に重要無形文化財「鍛金」保持者に認定された玉川宣夫氏。その際、最も評価された点は、鍛金技法の中でも難易度が高い「木目金(もくめがね)」でした。

木目金とは、数種類の金属板を何十枚も重ねて模様を出す技法。金属によって融点が異なるため、何十枚も模様に出すのは難しいと言われてきた技法を玉川氏はやっとの思いで完成させたのです。
 

燕のものづくりを知ってから「オープンファクトリー」へ

ものづくり体験から、燕にものづくりが伝承された経緯まで、幅広くかつ深く燕の産業について学べる施設が、「燕市産業史料館」です。

他にも、多くの煙管が展示されている「矢立煙管館」や、日本での金属洋食器の歴史がわかる「日本の金属洋食器展示室」など、まだまだ見足りないくらい情報が集まっていました。
ここで燕の産業について学んだあとに各工場を訪れると、ものづくりについての知識が深まるだけでなく、職人にもっと深い質問ができるかもしれません。

ぜひ燕市に訪れた際には、最初に「燕市産業史料館」でものづくり体験と、ものづくりの歴史について学び、あわせてオープンファクトリーにも訪れてみてはいかがでしょうか?
燕市産業史料館

燕市産業史料館

料金:大人400円 小・中学生、高校生100円
営業:9時~16時30分(入館は16時まで)
定休:月曜日(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、年末年始
場所:新潟県燕市大曲4330-1
電話:0256-63-7666

この記事を書いた人
madoka

新潟県在住ライター。旅での気づきを日常に持ち帰ってもらえるように、地域の人や暮らしも含めて伝えるようにしています。