日本最後の即身仏に会える「観音寺」/村上市


2020年12月28日 120292ビュー
みなさんは即身仏をご存知でしょうか?

僧侶が米や麦などの穀物を食べない「穀断ち」などの厳しい修行を経て、土に掘った穴の中に入って「土中入定(にゅうじょう)」し、3年後に掘り起こされて即身仏として安置されるというものです。

こうして未来永劫まで残るミイラの姿となって、人々の救済を祈り続けようというのが即身仏なのです。

日本最後の即身仏は村上にいた?

即身仏は全国に17体あるといわれていて、そのうちの4体が新潟県にあることをご存知だったでしょうか?
しかも日本最古の即身仏日本最後の即身仏がどちらも新潟県にあるのです。
日本最古の即身仏は長岡市にある西生寺の弘智上人(こうちしょうにん)。
そして今回紹介する村上市の大悲山 観音寺」に、日本最後の即身仏・佛海上人(ふっかいしょうにん)が安置されているのです。
 
今回は「観音寺」のご住職からお話を伺ってきました。
先代住職のお弟子さんで、現在は村上市内で4つの寺院を管理されているそうです。
 

佛海上人ってどんな人?

佛海上人は、俗姓を近藤庄次郎といい、文政11年(1828年)5月8日に村上市安良町の近藤家長男として生まれました。
 
16歳の頃から「湯殿山 注連寺」に入門したのをはじめとして、いろいろなお寺で修行を重ねます。
35歳の頃から五穀断ちをする木食行(もくじきぎょう)を始め、即身仏になるための準備を始めたということです。湯殿山仙人沢に3年間山ごもりする修行は、水行、滝壺の座禅といった荒行のほか、冬の間は積雪が3〜10mにもなる地で木の根や草の根を食べて生をつなぐ過酷なものでした。
 
下山後は村上に戻って「観音寺」の住職となり、多くの寺社仏閣の再興や貧民救済につとめ、新潟県知事から7回も感謝状や賞状が贈られています。
 
そして明治36年(1903年)3月20日に76歳で入定したのです。
言い伝えによると、佛海上人は不思議な力をいろいろと持っていたそうです。
 
顔を見るだけで人の心が読めてしまうため、道を歩くときは顔を上げずに歩いていたといいます。
また、未来を見通す力もあり「今日は昼から○○が訪ねてくる」というと本当にその人が訪ねてきたのだとか。
 
その能力が生まれつきのものだったのか、厳しい修行で身についたものだったのかは定かではないそうです。
 

どのような方法で即身仏になったの?

木食行によって五穀断ちをして、腐敗の原因となる脂肪をなくすことで、ミイラ化しやすい身体を作っていきます。
防腐作用のあるを飲んだという説もあるようですが、ひ素を飲んで腸内の大腸菌を殺菌したのではないかという説もあるそうです。
そんな厳しい修行を続けた末に76歳で入定したのです。
観音寺」の裏には墓地があり、佛海上人のお墓もあります。
そのすぐ裏に入定墓の穴が今も残されています。
 
この穴を作っているときに警察官が飛んできて、自殺にあたる行為として土中入定を止められたそうです。
そこで佛海上人はお寺の中で息を引き取った後、穴の中に移されたのでした。
 
3年後に穴から出すよう遺言があったものの、明治の初めに発令された、お墓を掘り起こすことを禁止する墳墓発掘禁止令」のために掘り起こすことができず、ようやく発掘されたのは昭和36年7月になってからのことだったのです。
村上市教育委員会日本ミイラ研究学会の手によって発掘調査され、ようやく人々の前に姿を現したのでした。

 
そのときに佛海上人が納められていた木棺は本堂に保存されていて、自由に拝観することができます。
 

どうして即身仏になろうとするの?

現在、本堂にある弥勒菩薩像の向かって右奥に佛海上人の即身仏が安置され、自由に拝観することができます。
(ただし写真の撮影はできません)
 
どうして佛海上人は即身仏になろうとしたのでしょうか?

真言宗を開いた弘法大師が高野山で即身仏になったといわれ、その姿に憧れて即身仏になろうとする修行僧が次々と現れたそうです。
 
即身仏とは厳しい修行の末に生きた姿を残したまま入定し、この世の人々の救済を祈り続けている生き仏
佛海上人もまた末永く人々の救済を祈ってくれているのかもしれません。
 
私も佛海上人の即身仏に手を合わせ、新型コロナウイルス感染症が早く終息して、来年が明るい年になるようお祈りしてきました。
大悲山 観音寺

大悲山 観音寺

新潟県村上市肴町15-28
tel.0254-52-4707
営業時間/8:00−17:00

大悲山 観音寺

この記事を書いた人
田中新之助(たなかしんのすけ)

新潟を愛する万年新米ライターです。持ち前の粘り強さで味わい深い記事を書いていきたいと思ってます。とくに観光ガイドには載っていないような、新潟の珍スポットや変スポットに力を入れて紹介していきたいです。